おっさん同士の愛憎劇に涙する「ジョン・デロリアン」ブラックな潜入捜査映画としても堪能

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世界的に有名なスポーツカーの名前として、誰もが知っているデロリアン。この車を開発した男が巻き込まれたスキャンダルを扱った映画が『ジョン・デロリアン』だが、実のところこの映画の主人公はジョン・デロリアンではない。


DMCはなぜ潰れたのか? デロリアンに迫るFBIの罠!
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主役メカとして、日本でもよく知られているスポーツカー、デロリアンことDMC-12。この「デロリアン」というのは、人名から取られたネーミングである。デロリアンを製造したDMC(デロリアン・モーター・カンパニー)は元ゼネラルモーターズの副社長であるジョン・デロリアンが設立した企業であり、そしてこのジョン・デロリアンは1982年にコカイン所持で逮捕。その余波によって元々経営がうまくいっていなかったDMCは資金繰りがストップし、倒産してしまう。

『ジョン・デロリアン』は、この倒産劇の裏には何があったのかを追った映画である。タイトルこそデロリアンと書いてあるが、実のところこの映画の主人公はジム・ホフマンという口髭の生えたおっさんだ。ホフマンは小型機のパイロットだったが、中南米からのコカイン密輸の片棒をかつぐ運び屋でもあるという実在の人物である。

1977年、南カリフォルニアでホフマンは家族とフライトしていたところをFBIに捕まり、飛行機に詰め込んだコカインのパッケージが大量に見つかってしまう。ホフマンはその場で取引し、罪を問われない代わりにFBIの情報提供者として活動することを了承する。FBIの目標は大物ドラッグディーラーであるモーガン・へトリックの逮捕。そのため、ホフマンは盗聴器をつけてへトリックと会話するなど、危ない橋を渡らせれることになる。

密輸で得た金でカリフォルニアに豪邸を構えるホフマン。ある日ホフマンが愛車のGTOを修理していたところ、隣の豪邸に住む大柄な男がそれを手伝ってくれることになる。ホフマンが素性を聞くと、彼はGTOをデザインしたカーデザイナー、ジョン・デロリアンであると名乗る。その場でデロリアンと仲良くなったホフマンはデロリアン宅で開催されるパーティに招待され、留守がちなデロリアンの豪邸を管理する仕事も任される。

デロリアンは新会社DMCを設立しDMC-12を発表。革新的なデザインから、会社は順風満帆に見えた。一方FBIはヘトリックの逮捕に向けた証拠固めをホフマンに要求。へトリックとFBIの間で板挟みになったホフマンは、新車開発のトラブルとアイルランド工場開設の援助をイギリス政府に打ち切られたことで徐々にDMCの経営が悪化していたデロリアンに、とある方法で事業資金を調達することを提案。2人は危険な取引へと踏み出していく。

『ジョン・デロリアン』は少々凝った作りになっている映画だ。ホフマンがデロリアンをめぐる裁判に出廷し証言をするパート、そして時系列を遡ってデロリアンとホフマン、FBIと麻薬ディーラーが入り乱れる陰謀劇のパートとがシャッフルされるような構成である。ホフマンはなんの裁判に出廷しているのか、そもそも主人公はジョン・デロリアンではないのかという点を小出しにし、徐々に観客を盛り上げるような映画になっている。

自宅で巨大なパーティを開催し、ド派手な生活を送る隣人デロリアン。鷹揚な男なのかと思いきや、遊びでやった卓球の勝敗に妙にこだわる癇癪持ちで、実のところ会社の経営もうまくいってないことがチラチラと見えてくる。虚飾まみれの生活を送り、嘘と本当がごちゃごちゃに入り混じるデロリアンの姿は、見た目だけは先進的でカッコいいけどトラブルが多い車だったDMC-12さながらである。

しかしなんども書くように、この映画の主人公はデロリアンではなく、その横に住んでいた男ホフマンである。その点が、『ジョン・デロリアン』を潜入捜査もののような味わいにしている。

おっさん同士の屈折友情劇、ホフマンに打つ手はあるのか
ホフマンはケチな運び屋であり、FBIに目をつけられたタレ込み屋である。ボスのヘトリックがブチ切れればビビりまくり、家では妻に頭が上がらない。見た目だってデロリアンのようにパリッとしていないし、密輸で儲けたとはいえものすごい大金持ちというわけではない。うだつの上がらないおっさんである。

そんなホフマンが、FBIと大物ドラッグディーラーとの板挟みになりながら、デロリアンとの関係をどう組み立てていくのかがこの映画のキモである。ホフマンにとって、デロリアンは憧れの男だ。しかし自分の立場を守るため、ホフマンはデロリアンを罠に嵌めざるを得なくなる。だが、ホフマンとデロリアンの間には妙な形ながら友情めいたものが存在している。自分のために、憧れの男であるデロリアンを裏切ることができるのか。車の話というより、潜入捜査ものの緊張感である。

困ったことに、デロリアン本人の車造りにかける情熱は本物である。色々問題のある人間なのは間違いないが、一応マジでいい車を作ろうとした結果がDMC-12なのである。しかしその情熱以外があまりにガバガバだったことが、デロリアン本人も感知しないFBIと麻薬密売人の全力バトルに引きずり込まれる原因となる。貧すれば鈍する。やはり金は頑張って稼がなくてはならない……。

FBIと麻薬組織にいいようにこき使われ、せっかく築いたデロリアンとの友情すら道具扱いされたホフマンはこのまま終わるのか。それは是非とも映画館で確認してほしい。タイトルから想像されるような車を開発する映画というよりは法廷ものの要素を含んだ犯罪映画のような趣(事実、DMC-12はとあるシーンに一回だけ出てくるだけである)だが、冴えないおっさんとセレブのようなエンジニアとのヘンテコ友情劇としても、ブラックな潜入捜査ものとしても楽しめる一本だ。
(しげる)

【作品データ】
「ジョン・デロリアン」公式サイト
監督 ニック・ハム
出演 リー・ペイス ジェイソン・サダイキス ジュディ・グリア コリー・ストール ほか
12月7日より順次公開

STORY
1977年、麻薬の運び屋をしていたパイロットであるジム・ホフマンはFBIに逮捕され、情報提供者としてスカウトされる。カリフォルニアに引っ越したホフマンは隣人ジョン・デロリアンと知り合いデロリアンの事業計画を知るが、一方FBIは麻薬組織壊滅のためにホフマンを利用しようとしていた

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