まだ間に合う!ワワフラミンゴの舞台『くも行き』鳥山フキ×北村恵インタビュー

SPICE

2019/12/4 18:00



ワワフラミンゴが、2019年12月18日より東京芸術劇場で『くも行き』を上演する。温もりあるデザインのチラシや、ポップでユーモラスな響きの団体名から、「名前は聞いたことがあるけれど、舞台を観たことはない」という方は、ワワフラミンゴに、小洒落た雰囲気のほっこりした作風を期待するのではないだろうか。

たしかにワワフラミンゴ(以下、ワワフラ)は、お洒落に見える。洒落たカフェやギャラリーでの活動が多いせいかもしれないし、別の要素のせいかもしれない。ワワフラには、ユーモアもある。鳩やハートやタヌキが登場し、メルヘンチックとも言える。しかし、ふわふわした癒しだけを求めて手を出すと、小さな棘にチクっとやられるかもしれない。

作・演出を手がけるのは、主宰の鳥山フキ。出演は、北村恵、生実慧、佐伯さち子、椎橋綾那、多賀麻美、森すみれ、柳沢茂樹。2004年の旗揚げより15年を迎えたワワフラの、かわいらしくも、ほんのり狂った世界は、どのようにして作り出されるのか。鳥山と北村に話を聞いた。



おめでとうございます、嘘でしょう?


──15周年おめでとうございます。

北村 嘘でしょう?

鳥山 そうなの?分からないよ。

──てっきり15周年を記念した劇場公演かと。

北村 そういうことにしちゃったら?

鳥山 そうだよね。はい、15周年記念公演です。

──(笑)意気込みをお聞かせください。

北村 2013年に芸劇eyes番外編「God save the Queen」に呼んでいただき、今回は「芸劇eyes」を進化させた「eyes plus」という枠で、東京芸術劇場さんから声をかけていただきました。せっかく与えてくれたチャンスだから、お返ししたいという気持ちがあります。そのために何ができるかだよね。

鳥山 唖然とするようなものをやった方が、期待に応えられるのかな。「ちゃんとしよう」とは、思わなくていいと思うんです。どうしようもないものをやれたらと思います。

左から、鳥山フキ、北村恵。
左から、鳥山フキ、北村恵。

──近年、劇場以外での活動が中心のワワフラにとって、「劇場であること」に特別感はありますか?

鳥山 東京芸術劇場のシアターイーストは私の中では、使いやすい劇場です。舞台と客席に一体感があり、劇場自体を一つの空間として感じられます。いつもと全く同じだとは思いませんが、ここでならば、そんなに変わらずにやれる気がします。

北村 (うんうん、と頷く)

鳥山 いつもの感じを、劇場サイズでやってみて、全然合わなかったら「力が足りなかったんだな」とは思います。けれど、それはそれでしょうがない。他をマネして上手くやろうとすることより、自分の思う通りにやることが大事だと思います。なので、自分の思い通りにしたいです。あ。いま私、良いこと言っちゃったね。

北村 自分の思い通りにしたいだなんて!良いことじゃないよ!ハートの女王だよ!

鳥山 そうじゃないよ!私だけでなく、みんなそれぞれ、好きにやってくれって感じだよ!



「くも行き」はどうなる?


──タイトルは「くも行き」。くもいき、と読むのですね。どのようなお話になりそうですか?

鳥山 まぼろしから今を書く、みたいな。

北村 ……(笑)鳥山は、私たちに対してもあまり意図をみせたがらないんです。だから公演を紹介する文を書こうとしても、本当に何を考えているのか分からないから、いつも何も明文化できない。今回は結局どうしたんだっけ。

──チラシには「とぼけと夢がまじる12月の物語」とあります。

鳥山 いいね。

北村 いいね。

鳥山 先日「81日前イベント」という稽古を公開するイベントをしました。その時、お客さんにどんな作品を観たいか、アンケートをとったんです。明るいか暗いかで言えば「暗い」、恋愛要素の有無でいえば「無」になりました。そういう話になると思います。

──「くも行き」を見たお客さんには、どんな感想をもってほしいですか?

鳥山 うーん。今回に限らず「言葉にならない」みたいになってほしいんです。「胸いっぱい」みたいな。胸いっぱいは違うかな。笑いがあってほしい。それと、スンとしてほしい気持ちがあるんだよね。スンって。

北村 面白いのも怖いのも、どっちも混ぜたいってこと?

鳥山 そういうこと!よく分かるね(笑)見ている時は笑っているけれど、観終わった後にスンって。普通の感じで始まって、真ん中は可愛くなり、最後はガーンってなって終わる。そしてスンって、すまして帰ってもらえたらうれしいです。



回し読みとぐるぐる稽古


──「81日前イベント」は、私も拝見したのですが、独特の稽古でした。

鳥山 稽古のたびに脈絡のない1シーンの台本を配って、回し読みしてもらいます。その会話は、本番で使うかもしれないし使わないかもしれない。それをつないで、公演にします。

「脈絡のない1シーンの台本」の一例

A:アイス泥棒が出るからアイスは買わないんだ。
B:へぇ~おいしいのに
A:アイス泥棒が出るんだよ
B:アイスだけ盗るの?
A:そう
B:夢みたいな話だね
A:そう言われると思ったよ

──AさんもBさんも、誰が読むかでまるで別のキャラクターでした。イベント以前の稽古で、ここに続くシーンがあったりしたのでしょうか?

(鳥山・北村、首を横にふる。)

──では今週のAさん・Bさんと、来週配られる会話のAさん・Bさん、まったく関係がないということですよね?

鳥山ないです。

北村ないです。

──役者さんたちは、何を軸にして台詞を読むのでしょうか。ちなみに81日前の稽古で北村さんは、初見と思えないくらいの、キャラクターを立ち上げていました。あて書きでもないですよね?

鳥山 最初の段階からあて書きはしません。役者さんが作ってくれたキャラクターに徐々に合わせていくのはあるかもしれない。

北村 私の場合は、長くやっているから。初めての人は戸惑うだろうなって思います。

──テキストの回し読みは、事実上、配役のオーディションですか?

北村 そうなっていると思います。鳥山は、ここで「誰が一番おもしろく読めるか」「この組み合わせありか?」とか、役者の掛け合わせまで見ている感じがします。それが台本の展開につながっている……はず!

鳥山 そうですね。私の中では、テキストの回し読みの稽古を何回かやった後に、ぐるぐる稽古があるんです。ぐるぐる稽古というのは、書き溜めた断片的な台本を、組み合わせも役も入れ替えながら、ぐるぐるみんなにやってもらう稽古。そこで、ある程度目途をつけて、その役になる人にあわせて調整します。そこから仕上げていく感じです。

──では、役者さんが台詞をとりあえず読んでみて、鳥山さんが台詞と人をマッチングし、その後は台詞やキャラを、役者さんに寄せていく?

鳥山 うーん。そうなのかもしれない。読んでもらった時のキャラクターにあわせて、後半を作っていく感覚です。そう考えると不思議ですね。最初は、誰にも当てはまらないように台詞を書くんです。喋ってもらうとなんとなく、この人にこの台詞が合うから、こんなキャラクターで、みたいにあてていくのかな。



──どんなメンバーを集めるかが、結構大事ですよね。人選にこだわりはありますか?

鳥山 こだわったわけではありませんが、演劇から離れたところでもステキな…いいなと思える人。あと穏やかな人。

北村 今回は、男性が2人もいます。これは過去最多です!

鳥山 『野ばら』の再演は全員男性だったのですが、初演の作品で創作の段階から男性が2人いるというのは初めてです。たまたま柳沢さんと生実さんというお願いしたい役者さんがいた、という事もありますし、自分の意識が少し変わってきた事もあるのかもしれません。

──北村さんに伺います。鳥山さんの台本を演じる時に大事なことはありますか?

北村 台本に載ってる活字をそのまま……“素”のまま読めるといいなと思ってます。いろんな役者さんが鳥山さんのテキストを読むのを見てきましたが、意外と難しいみたい。鳥山が「演劇から離れたところでもいいなと思える人」と言ったのは、これが理由かと思います。今回出てくれる元野鳩の佐伯さんや、マレビトの会によく出てる生実さんは、盛らない演技がすごく上手。一方で柳沢さんや青年団の多賀さんは、きっちり演技してるんですけどサラッとしてていいんですよね。せっかくなのでキャスト全員紹介すると、森さんはずっと可愛いすごく可愛い。初登場の椎橋さんも、ワワに新しい風を吹かせてくれるんじゃないかと期待してます。

鳥山 本当に北村さんの言う通りです。



──ぐるぐる稽古に話を戻します。この時点では、誰かと結びついた短い会話が、たくさんあるだけですよね?

鳥山 ここが私の努力の出番かな。いっぱい書いた台詞の、順番を入れ替えたりします。自分の意図が入らないように、構成だけを後から考えるんです。

北村 初期の作品は、今よりも具体的な設定があったよね。衣裳も指定があり、劇場でやって、オチ的なものもあった。

鳥山 その頃の私は、世間に合わせようと、自分で自分を騙しながらやってたんだよ。でも、今も世間にあわせたいという気持ちは、すごい強いよ?

北村 強いよって言うけれど、一体どこに、その気持ちが出てるの?

鳥山フフフ…。



──あて書きでもなく、脈絡もない台詞が、これだけたくさん出てくるのはすごいことだと思います。鳥山さんは、言葉そのものがお好きなのでしょうか。

鳥山 言葉は好きかもしれません。ネタ帳にため込んでて。あ、ネタ帳とか言うとイメージ崩れるかな?

北村 どっちでもいいよ!

──(笑)脈絡をなくすために、長い台詞をわざと削ったりバラしたりするのでしょうか。あるいは、はじめから一発ギャグを目指す感じでしょうか。

鳥山 色々やってるんですよね、でもどこかおかしみがあった方がいい。笑ってたいなって。

──鳥山さんが影響を受けたものに興味があります。「杉作J太郎さんが好き」とコメントされているのを各所で拝見していますが。

鳥山 杉作さんは大好きで、全体的に影響を受けてます。『くも行き』の台本を書いてる時は森元暢之さん、さくらももこさんのマンガなどよく読んでました。

北村 初耳だよ!



どうとでもなれ!という気持ち


──大事な質問を忘れていました。インタビューも終盤で恐縮ですが、「くも行き」の見どころをお聞かせください。

鳥山 うーん。どうなるかわからないところかな。今回に限らずどうなるか分からない、という方針でやっていて、「どうとでもなれ!」という気持ちでやっています。これが見どころかな。

──(笑)最後に、読者の方へ一言お願いします。

鳥山 見逃すな!まだ間に合う!

北村 これだね。(チラシを指す)

「見逃すな!まだ間に合う!」
「見逃すな!まだ間に合う!」

12月のワワフラミンゴ「くも行き」は、2019年12月18日(水)~22日(日)まで東京芸術劇場 シアターイーストでの上演。
PROFILE 鳥山フキ
東京都出身。劇作家・演出家・ワワフラミンゴ主宰。不思議で楽しい作風。杉作J太郎ファン。好きなお風呂は五右衛門風呂。

北村恵
千葉県出身。ロロ、「フルカワヒデオ、戯曲を読む」シリーズ等客演。坂道も暗い道も恐れない。好きなお風呂は露天風呂。

ワワフラミンゴとは
作・演出の鳥山フキを中心に活動している演劇団体。
カフェやギャラリー等、小さな空間での公演が多く、その場所の特性を生かした作品づくりを得意としている。エビ、カニ、ホッチキス、双子等、独自の興味関心をもとに、シュールな漫画を思わせるような不思議な世界観をつくりあげている。2004年旗揚げ。2013年東京芸術劇場の芸劇eyes番外編「God save the Queen」に招聘され、注目を浴びるも、やはりマイペースでの創作活動を続けている。

撮影:大倉英揮 取材・文:塚田史香

当記事はSPICEの提供記事です。

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