テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第99回 『プロ野球珍プレー好プレー大賞』来年は“スポーツ”全体でも良いのでは


テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第99回は、1日に放送されたフジテレビ系特番『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞2019』をピックアップする。

『プロ野球ニュース』内のコーナーをベースに作られた1983年11月の第1回から毎年放送されるなど人気を集めたが、視聴率は徐々に低下。05年でいったん打ち切られ、10年の復活後もローカル枠の午後放送に留まっていたが、中居正広の冠番組になった15年にゴールデン復帰して今回で5年連続となる。

ただ、プロ野球は地上波ではなくCSや動画配信サービスでの視聴が広まったほか、野球以外の人気スポーツが増える中、「野球単独のバラエティでは視聴率が取れない」と言われているのも事実。

実際、「プロ野球にわかファンも大歓迎! 1年1度だジャッカルSP!」という今回のサブタイトルには「ラグビー人気にあやかりたい」という願望が透けてみえるだけに、どんな構成で挑み、どんな結果を得るのか興味深い。

○■今年も「宇野勝のヘディング」がさく裂

番組は、いきなり珍プレーの映像からスタート。ナレーションは山崎弘也(アンタッチャブル)が務めているが、2010年の放送以来のレギュラーとあって、みのもんたイズムを受け継ぎつつ独自の笑いを織り交ぜるなど安定感たっぷり。画面左上のワイプで、秋山翔吾(埼玉西武)や松田宣浩(福岡ソフトバンク)らプレイヤーズゲストの表情が見られるのもうれしい。

映像がスタジオに切り替わると、MCの中居がひと仕事。秋山に「FAでメジャーに行く?」と尋ね、『プレミア12』で優勝に貢献したばかりの松田に話を振るなど、旬の話題を織り交ぜて盛り上げた。

続いて、宮司愛海アナウンサーが「今夜のラインナップを見て見ましょう」と進行。番組が「1.オープニング珍」「2.ハプニング珍」「3.痛い珍」「4.ジャイアンツ珍」「5.怒り乱闘珍」「6.パフォーマンス珍」「7.ハプニング珍」「8.MLB珍」「9.選手が選ぶ好プレー」と野球のイニングに見立てて1~9回の項目に分けられていることが明かされた。「12球団の選手500人へのアンケートで選ばれた珍プレー好プレー」というだけに、これだけのボリュームであるのも合点がいく。

その後、さまざまな珍プレーが紹介されていったが、大暴投、コケる、乱闘、審判のハプニング、ファンのファインプレーなど、時代と選手が変わっても、その内容はさほど変わっていない。合い間には、「昭和・平成の珍プレー」として宇野勝のヘディングなど、なじみのある映像が織り込まれていた。

かつての珍プレーは「何度見ても面白い」のだが、裏を返せば「それを超える珍プレーが生まれていない」ことになる。近年、「ホームラン」と言える珍プレーが生まれないのは寂しい限りだが、選手たちの技術やメンタルがレベルアップしているからなのだろうか。
○■好プレー集は4分弱でいいのか?

その他のコーナーでは、「プロ野球被害者の会」に真中満、西口文也、ニッチロー'(イチローのモノマネタレント)が登場してトホホなエピソードを披露。とりわけ「メジャーリーグ観戦中にフェアボールをファールボールと間違えてつかんでしまい、退場させられる」というニッチロー'の失態は爆笑ものだった。

最後にスタジオの審査員が選んだ珍プレー大賞は、「ロッテ・岡大海、タッチアウトと勘違い」。3時間番組のフィナーレにしては唐突な発表であり、しかも選ばれたのはありふれたプレーだっただけに「なぜこれが大賞なのか?」の説明がほしかったのではないか。岡大海がスタジオにいないため、トロフィーと30万円分の旅行券を受け取るシーンもなく、何とも微妙な表彰となった。

ただこの番組のラストには、とっておきの好プレー集が待っている。珍プレー大賞が微妙でも、素晴らしい好プレーのラッシュで気持ちよく終わらせられるのが強みだ。ところが好プレー集は、わずか4分弱で終了。番組が始まった昭和のころと比べると珍プレーの数は間違いなく減っているが、一方で好プレーは増えているのではないか。せっかく選手たちをゲストに迎えているのだから、技術的な解説も可能だろう。バラエティ番組とは言え、昭和から変わらない“珍プレー超偏重主義”の構成には疑問が残る。

それでも、進行役を務めた中居と山崎のコンビは、さすがだった。選手へのリスペクトを漂わせつつも、いい意味でのイジリを繰り返し、この番組らしいシーズンオフのゆるいムードを演出。野球の知識も含めて、もはや別のタレントは考えられないくらいの存在となっている。
○■有料コンテンツでも継続の価値アリ

冒頭に挙げたように、東京オリンピックを控えて野球以外の人気スポーツが増え、「野球単独のバラエティでは視聴率が取れないのでは?」と言われていたが、結果的に9.1%を獲得(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。『ポツンと一軒家』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の17.7%、『誰も知らない明石家さんま』(日本テレビ系)の14.6%に次ぐ3番手であり、及第点と言えるのではないか。

しかし、「プロ野球にわかファンも大歓迎! 1年1度だジャッカルSP!」というサブタイトルをつけたにもかかわらず、ラグビーとの関連はほとんどなし。スーパースターがメジャーリーグに進出するなど、「誰もが知る国民的な選手が減っている」という現実もあるだけに、「ラグビー人気に頼りたい」に象徴される不安は来年も続いていくだろう。

ならばいっそのこと、『プロ野球珍プレー好プレー大賞』を拡大解釈して、『スポーツ珍プレー好プレー大賞』も放送してはどうか。より多くの競技に注目が集まる2020年のニーズを最大限にとらえるとしたら、こんな番組があってもいいはずだ。

もちろん『プロ野球珍プレー好プレー大賞』は、今後も「年に一度の風物詩」としてプロ野球ファンたちを楽しませてほしい。もし低視聴率にあえぐときが訪れたとしても、地上波での放送に限らず『プロ野球ニュース』のようなCSでの放送も考えられるし、動画配信サービスでもいいだろう。昭和の人気番組が今なお続いていることだけでも価値が高く、フジテレビにとっては貴重な財産と言える。
○■次の“贔屓”は…「日本のウソ」を暴く2時間スペシャル 『世界一受けたい授業』

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、7日に放送される日テレ系バラエティ特番『世界一受けたい授業 日本の嘘SP』(19:00~20:54)。

同番組は「古今東西の名物講師が登場し、自ら『使える学問』を講義!」のコンセプトで、04年秋のスタートから15年が経過。土曜夜の名物番組として定着し、高視聴率を記録し続けている。

次回の放送は、あなたはダマされていませんか? 日本の8つのウソSP! 「お腹を引っ込めるために腹筋はウソ」「レタスは食物繊維が豊富はウソ」「夜ホットミルクでよく眠れるはウソ!」のほか、ラグビー・田中史朗選手が登場、最新がん検査、マグロの見分け方、『アナ雪』ヒットの秘密など、幅広いテーマが用意されている。「ダマされていませんか?」「8つのウソ」と、いつになく過激なフレーズを掲げているところが興味深い。

土曜夜の番組では、同じ04年にはじまった『天才!志村どうぶつ園』(日テレ系)と並んで、断トツの放送回数を重ねる理由は何なのか? 掘り下げていきたい。

○著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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