GLIM SPANKYの表現する音、アート、カルチャー――その真髄を高純度で浴びた『Velvet theater 2019』

SPICE

2019/12/2 19:00

Velvet Theater 2019 2019.11.29 東京キネマ倶楽部


GLIM SPANKYの音楽を中心とした様々な表現はどこまでも自由で、流行に迎合することなく我が道を貫くものだ。ただし、それは決して懐古趣味的でも、限られたシーンで鳴らされることに甘んじるものでもなく、演奏する現場のシチュエーションにある程度アジャストしていったり、時代が求める音を鋭敏に嗅ぎ取って咀嚼したりと、クレバーな魅力も併せ持ったバンドでもある。そんな彼らが臨む、おそらく最も自らの美学に忠実に、高純度に、ある意味やりたい放題にセットリストを組んで演出を考えたライブが『Velvet Theater』だろう。今年は3都市4公演、その最終公演となる東京キネマ倶楽部・2日目を観た。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

吹き抜ける夜風や動物の鳴き声を思わせるサウンドが鳴りだしてしばらくすると、徐々に暗転。静けさの中、まず3人のサポートメンバーが、続いて亀本寛貴(Gt)、松尾レミ(Vo/Gt)が現れると会場がドッと沸くが、ほどなくしてスッと静まり、ボン、ボン、ボンとアップライトベースのミュートした音色が一定のリズムを刻み、アコースティックギターを鳴らしながら松尾のリーディングが入る。その内容は「真夜中しか現れない街へ向かう」というこの日のライブが表す物語の導入部で、その世界観を謳う未発表の楽曲からライブをスタートさせた。もうこの時点で他のバンドはおろか、フェスやイベントで見るグリムとも、ツアーで見るグリムとも明らかに一線を画したライブが展開されるであろうことを確信する。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

「NIGHT LAN DOT」「MIDNIGHT CIRCUS」と、序盤は深い夜の気配とどこか怪しげな雰囲気をまとった楽曲が続き、指と弦が擦れる音やエフェクターを踏む音までが聴こえてくるほど、張り詰めた空気が場内を包む。が、それとは裏腹に溜め込まれた熱気はどんどん増大していき、曲が終わった際の歓声は曲を追うごとに大きくなっていく。バンドが提示する世界観にどっぷりと浸りながらも、ギターソロや、ジャムセッションから耳馴染みのあるイントロに遷移した際など、心を動かされる瞬間に送られる、惜しみない拍手喝采。GLIM SPANKYのライブにルールはないが、センスとリテラシーは抜群だ。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

「ダミーロックとブルース」冒頭では、亀本がギターソロ(他の楽器が演奏しない、本当のソロ)を弾きまくり、テンションの赴くままなかなか終わらないソロに松尾が思わず笑みをこぼし、会場全体が大盛り上がりに。さらにダンサブルな4つ打ちナンバー「いざメキシコへ」を軽快に繰り出して、ディープな没入感が一旦やわらいだところでMCヘ。初めて来た人はいるか、と客席に尋ねた際に結構な人数が手を挙げたことを受け、「これが最初っていうのはヤバい」と松尾。いやいや、ロックの英才教育でしょう。入門編から入るのも悪くはないが、「GLIM SPANKYの何たるか」を知るにはこっちの方が格段に説得力がある。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

「grand port」や「ハートが冷める前に」のコーラス部でシンガロングを巻き起こすなど、中盤にかけてより熱量を上げたところで、リリースされたばかりのシングル曲「Breaking Down Blues」を披露。亀本の繰り出すハードロッキンなギターリフやどっしりと重心の低いリズム隊は往年のロックナンバーそのものだが、ハンドマイクでの松尾が歌唱からどことなくラップにも通じるニュアンスとグルーヴが感じられたり、サビで多重に重ねるコーラスが印象的であったりと、2019年現在の音楽シーンと呼応する箇所もある。と思ったのも束の間、その後のアコースティック・セクションでカバーした、浅川マキの「ジン ハウス ブルース」は、吐き捨てるようなやさぐれたボーカルがなんとも渋い。この日はほぼ全編にわたり、OverLightShowによる生のリキッドライトショーで60年代後半のサイケな香りを漂わせながら、同時にVJによる映像の投射も行うという、異なる時代をミックスさせた演出が施されていたが、GLIM SPANKYのライブや生み出すロックミュージックそのものもまた、時代のクロスオーバーと呼べるものだ。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

歌の強さと優れたメロディを堪能できる「美しい棘」を、エレキギターとアコギ、アップライトベース、カホン、キーボードという半アコースティックのような編成で届けたあとは、通常のエレクトリック編成に戻ってライブは最終局面に。ゆったりとしたテンポながら、静かに青く焔をあげるような「ストーリーの先に」、胴鳴りの深いバスドラのビートと乾いたサイケなリフで攻める「Circle Of Time」と、本編の最後には今年リリースした新曲を連投。アンコールに応えてステージへ戻ると、上京したての頃に生まれたという初期曲「夜風の街」と、オーセンティックなフォークロック・ナンバー「Tiny Bird」で『Velvet theater 2019』を締めくくった。普段はなかなか聴くことのできないものも含まれた選曲やエレクトリックとアコースティックの2段構え、随所に音源とは異なるアレンジを加えたりと、終始こちらを楽しませながら、アートやファッション、カルチャー面に到るまで全方位で自らのロック観を表しきった2時間。ステージを去る2人の表情はとても晴れやかだった。

GLIM SPANKY  撮影=上飯坂一
GLIM SPANKY 撮影=上飯坂一

「良い音楽仲間が付いてくれてるなって、心から思います」(松尾)

表現者である以上、その嗜好や美学が作品には詰まっているもの。とはいえ、それが誰とも通じ合わないものであれば、単なる自己満足で終わってしまうこともある。彼らが、ぎっしりと埋まった満員の会場で、自分たちのやりたい表現を限りなく高純度で実現させているのは、自らの信念に忠実にブレることなく歩みを進めてきたからこそ。そして、そんな姿にロマンや憧れやシンパシーを抱いた同志達の存在があってこそ。どこを切り取っても愛に溢れた夜だった。

取材・文=風間大洋 撮影=上飯坂一

当記事はSPICEの提供記事です。

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