「やすらぎの刻~道」腐乱死体に淑女の放屁、シビアすぎる死と老いに震える…わ、CMディスった?第33週

エキレビ!

2019/11/25 09:45

倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第33週。

山から下りてきた老人の死と、淑女の認知症。「死」と「老い」を、とことんシビアに突きつけてきた。


鉄兵兄ちゃんが腐乱死体に
戦時中に徴兵拒否をして山奥に逃げていた鉄兵兄ちゃん。平成になって「恥ずかしながら……」状態で山から下りてきて、なぜか洞窟にこもって洞窟おじさんと化していた。

東京で引きこもっていた翔(菅谷哲也)は、このワイルド過ぎる鉄兵に心惹かれ、冬の間、山で一緒に生活していたようだ。

春が来て、翔が里に下り、農園の手伝いをしたり、女子と出会ったりしている間に、鉄兵は洞窟で死亡。

翔が久しぶりに洞窟を訪れると、そこには腐乱死体が……。

さすがに直接、映像では映していなかったが、ハエの羽音が何よりもリアルに腐乱状態を表現していた。……昼飯時なのに!

「どんな小っこい命でもな、命をうばうってのは心が痛むもんだよ。だから生き物を殺すときには、謝罪でも感謝でもいい。神様に祈るんだよ」

都会っ子の翔に、獣の捕り方、命を奪って生きるということを教えた鉄兵。最後は自らの身をもって「死」を教えたのだ。

ただ、山から下りてきたのも死んだのも、あまりに唐突。

展開が早すぎて、翔を成長させるためだけに出てきた感が強いのが残念。せっかく戦時中から生き抜いてきたのに……。

テレビ業界の本当のタブーに斬り込む!?
バブルの狂乱も知らず、山奥で物欲から解き放たれて生きてきた鉄兵の死後、根来公平(橋爪功)&しの(風吹ジュン)の夫婦は「モッタイナイ」精神がますます燃え上がっているようだ。

不要になった衣類を集めては、縄をなったり、裂き織りにしたり。

「流行遅れに腹が立つ~」
「古くなったら直さんで、新品買えちゅう腹が立つ~」

アンチ・バブルな数え歌を老夫婦が歌いながら衣類を引き裂きいている姿は「いい夫婦になったなぁ~」と微笑ましい。しかし、そんな数え歌の最中に唐突な「ピー」音が。

「見とるテレビのいいとこで、(ピー)腹が立つ!」

歌詞の流れからすると、ズバリ「コマーシャル」じゃないだろうか。そりゃあ「ピー」音も入るわ!

芸能界やテレビ業界のタブーに斬り込んできた倉本聰だが、こればっかりはホントにアウトなやつ!(倉本の執筆段階ではどう書かれていたのか気になる)

本作は、オープニング後に1回CMが入るものの、その後の本編はCMなしで一気に放送される「いいところでコマーシャル」が入らないドラマ。だからって他の番組のコマーシャルをディスっていいわけじゃないぞ!

母の苦い思い出をシナリオに
週の後半は認知症問題。

翔が東京から山梨に行こうと決心した原因のひとつに、「ゲーム機全捨て事件」の際にしのが置いていった10円玉の存在があったようだ。

当時、母親から毎月10万円の小遣いをもらっていた翔は「バカバカしくて、オレ、笑っちゃったよ」というが、その10円玉が入っていたポチ袋にショックを受けたという。古いカレンダーを切り貼りして作られていたのだ。

「北の国から」における泥のついた一万円札のエピソードを思わせるイイ話だが、「道」パートのシナリオを書いている菊村栄(石坂浩二)自身の苦い思い出から生み出されたエピソードだった。

40年前、もういい歳こいた菊村に何度もお年玉を渡そうとする母・あやの(奈良岡朋子)。ポチ袋は古いカレンダーで作ったもの、しかも中身は500円玉だ。

「お年玉をくれたことを忘れていることより、古い、いらなくなったカレンダーの裏紙で一生懸命作ったであろう母のひたむきな壊れた作業が……。息子を喜ばせたいと何度も繰り返す、母の一途な思い込みの行動が、僕の心を重く塞がせた」

「壊れた作業」というあたりに毒があるが、認知症になった親からメチャクチャに迷惑をかけられるよりも、善意全開で無意味な行動を繰り返す親を見せられる方がつらそうだ。

その後、認知症の進んだあやのを施設に預け「自分の責任を放棄したのだ」という。思い出したくない苦い思い出を、シナリオにぶっ込むとは。脚本家の業なのだろうか。

シビアすぎる認知症描写
母親の認知症で苦しめられた菊村は、後に妻・律子(風吹ジュン)も認知症となり、老々介護生活を送ってきた。

「やすらぎの郷」に入居してからも、周囲の老人たちが認知症で壊れていく様を見続けてきた。そして、新たに九重めぐみ(松原智恵子)の認知症が急速に進行しているようだ。

自分の財布から金が抜かれていると主張し、あろうことか、献身的に介護してくれている秀サン(藤竜也)を疑っているという。

その上、必死で守ろうとしている金は例の偽札事件で使われた「名倉紙幣」というぶっ壊れっぷり。人前でおならをぶっ放しまくるし、部屋には汚物をまき散らしているという。とても自我を保っているとは思えない状態だ。

前作「やすらぎの郷」の時から、認知症は繰り返し描かれて来たテーマだった。老人にとってそれだけ身近であり、恐怖の対象でもあるのだろう。

それでも前作では、老人ギャグ的なちょっとした面白エピソードとして認知症が使われることもあった。しかし今作では、相当シビアな描かれ方をしている。特に、今回の九重めぐみのぶっ壊れ方はさすがに笑えないレベルだ。

死んで腐乱死体となった鉄兵。認知症になって屁をぶっ放し、汚物をまき散らす九重めぐみ。

「死」と「老い」を、ここまでオブラートに包まずに描いてしまうドラマ、なかなかないだろう。

ここから、救いのある展開になるのか……? シニア視聴者層が穏やかな気持ちで見ることができているのか心配になってしまう。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
・Tver

『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

当記事はエキレビ!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ