『パッチギ!』沢尻エリカを再検証! あの“清純”は何かの間違いだったのか…

まいじつ


パッチギ! 

作品目『パッチギ!』
シネカノン 2005年 DVD発売中
監督/井筒和幸
出演/塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、真木よう子、余貴美子ほか

女優の沢尻エリカが合成麻薬所持で逮捕された事件は、各方面に衝撃を与えている。ワイドショーではテリー伊藤氏が、「彼女は唯一無二の女優、吉永小百合や夏目雅子に匹敵する」とも言ってのけた。個人の感想だから勝手だが、冷静に見てちょっと褒め過ぎ、という気もする。現在公開中の出演作でタイトルも皮肉な『人間失格 太宰治と3人の女たち』でも、二階堂ふみの方が女優としてはスゴいしね。沢尻はまだ〝発展途上〟の女優だと思う。それゆえに今回の逮捕劇は残念でならない。

沢尻といえば、オールヌードになった『ヘルタースケルター』(12年)がすぐ話題になるが、そもそもの初めの一歩となったこの井筒和幸監督の文句なしの傑作(ボクもこの年の邦画ベストワン)から、彼女の軌跡をひも解こう。

沢尻エリカ栄光と転落の歴史の始点


1968年、京都。高校2年の康介(塩谷瞬)は、朝鮮高校との争いが絶えない中、相手高校の女子高校生キョンジャ(沢尻エリカ)に一目ぼれし、在日の人々と交流を深めてゆく。だが、学校対立は深まる一方で、在日の人々との壁も思い知ることとなるが…。

主人公が憧れる、ケンカ相手の妹でフルートを吹く美少女という役に抜擢された沢尻は、透明感もあり、毅然とした正統派ヒロインを、この年の新人賞をほぼ独占したように、ここでは適役として見事に演じている。だが、その後この〝清純派〟のイメージが強く、同型のオファーが続く中、ストレスが重なり、あの「別に…」発言になったのでは、とボクは分析している。女優にとって、清純派の呪縛がいかに罪作りなものか、の見本だろう。ちなみに朝鮮高校3人組の仲間の女子として、やはり当時全く無名だった真木よう子が出ているが、こちらはイメージ通りハナから〝非清純派〟だった。

井筒監督とは旧知なので、「別に…」発言のころ、「彼女の地を生かしたワイルドな役で再起用してよ。〝製造責任〟があるんだから」と提言したことがあるが、「なかなかうまくいかへんのや」と言っていたっけ。沢尻は井筒監督を信頼しているだけに、井筒組の常連女優であり続けていたら、こういう〝間違い〟には至らなかったかもしれない、と思うと口惜しい。井筒監督は今回「十分反省して、また戻って来い」と愛あるアドバイスを夕刊紙で語っていた。

恋とケンカに明け暮れる日韓青春像。その分断と融和を象徴する楽曲『イムジン河』が何度も用いられる。沢尻の栄光と転落の歴史はここから始まったことを胸に刻みながら、ぜひ見てほしい。

(映画評論家・秋本鉄次)

当記事はまいじつの提供記事です。

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