円谷プロダクション塚越会長×タカハシヒョウリ1万字ロング対談 動き続けた円谷の1年間 そして「ヒーローとは?」

SPICE

2019/11/19 12:00


ちょうど1年前の2018年10月、SPICEは円谷プロダクションの塚越社長(当時)へのインタビューを実施した。

ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンから円谷にやってきた新社長の初メディア露出、ということで大きな反響があったこの対談の中で、塚越社長は未来への展望と理念を語ってくれた。そして、実際にそこから1年の間に驚くほど数多くの円谷ブランドのプロジェクトが立ち上がっている。

そして12月には”円谷プロ史上最大の祭典”『TSUBURAYA CONVENTION』が控える中、1年越しのインタビューが実現した。

今回も聞き手は、特撮への造詣が深く、『TSUBURAYA・GALAXY』『大人のウルフェス』など公式の舞台にも参加しているミュージシャンのタカハシヒョウリ氏。今回の対談では、円谷プロダクションの1年間、そしてさらなる未来への展望をディープに語ってもらった。

来年1年かけて、円谷がヒーローというものをどこまでみんなのものにできるか、チャレンジをしようと思ってるんです。

――昨年、ちょうど一年前にインタビューさせていただいたのですが、改めて会長になられたということで、お話をお聞きできればと思っています。

タカハシ:あの対談から、もう一年も経ってるんですね。あの記事が、塚越さんの”ファースト・インタビュー”でしたね。

塚越:円谷に来て、1年間はとにかく表に出ないと言っていて。1年経ったから、そろそろ何かインタビューを受けようとなったときに、うちの広報チームが選んでくれたのがSPICEさんとタカハシヒョウリさんでした。

――ありがとうございます。

タカハシ:早速なんですけど、前回対談させてもらったときは社長だったじゃないですか。

塚越:気づいたら会長になっちゃった(笑)。

タカハシ:円谷ファンは、気になっていると思うんですよね。2年に満たずに突然、会長になられたので。「何があったの?」みたいな感じはあると思うんです。

塚越:ほんと? じゃあ話そうかな。 僕はCEO、経営全体の責任者としていわゆる会社の方向性や、IPをどうするかという担当を。永竹はCOO、業務執行の責任者として、日々の業務推進全般をみています。
撮影:安西美樹
撮影:安西美樹

僕と永竹は、ぜんぜんタイプが違うんですよ。どっちかというと、僕は風呂敷広げるタイプで、永竹はマネジメントタイプなんです。永竹は、そもそものバックグラウンドから、財務やマーケティングなどの経験が豊富で会社運営などに強い人なんですよ。僕はスタジオ経営のほうだったので、真反対なバックグラウンドを持っている。だから、会長と社長が同じようなことを担当しているんじゃなくて、まったく違うことを担当していると思ってもらえたら。良い形で役割分担ができるようになったと思っています。

タカハシ:永竹さんは、元々タカラトミーなんですよね?

塚越:タカラトミーの前はユニクロ(ファーストリテイリング)、その前はゴールドマンサックス、野村アセットですね。

タカハシ:すごい経歴ですね。塚越さんとは長い関係があったんですか?

塚越:いやいや、永竹は親会社であるフィールズのコンサルティングとしてで去年の11月に入ってきて、円谷の事を見てもらう中で、僕とまったく違う、こういう人が必要だよねっていうのがあって。山本(英俊前会長)に話して、ぜひ円谷に社長としてどうだろうかって言ったら、「そりゃあいい」と。だから、結構とんとん拍子で話が進んだんです。

タカハシ:そういう意味では、適した人材が近場にちゃんといらっしゃったっていうことですか。

塚越:いた、っていうことですね。役割分担して、二人三脚でいけるなっていう体制が組めた。

タカハシ:ある種、謎の人物だったんです、永竹社長は(笑)。やっぱりインタビューとなると、塚越さんが出ていらっしゃるじゃないですか。あれ?社長はどこに?となっていたので今のお話を聞いて納得する人も多いと思います。

塚越:僕がますます「ウルトラマンだ! 怪獣だ!」と、この後の展開を推し進めていく。それで、塚越が会社運営すると危ないけど、永竹に任せておけば大丈夫だな、っていう(笑)。

タカハシ:なるほど!……と言ったらあれですね(笑)。

塚越:あはははは(笑)。

タカハシ:すごくわかりやすいです、ありがとうございます。1年前の対談記事を読み返したんですけど、あの時にハッキリと、「過去への取り組み」と「未来への取り組み」を同時にやっていくんだってことをおっしゃっていました。

この1年で、「ULTRAMAN ARCHIVES」「TSUBURAYA CONVENTION」「TSUBURAYA・GALAXY」が動いて、『かいじゅうステップ』がキッズ向けにあり、『DARKNESS HEELS』、Netflixで配信されているアニメ『ULTRAMAN』がヤング向けにと、新しいコンテンツが充実しましたよね。あのとき塚越さんがおっしゃっていたビジョンを、有言実行で実現していってると思うんですが、実際にこの1年間の感想って、いかがですか?



塚越:実はね、このあと、さらにもう1個の風呂敷を広げてるんですよ。それはまだ実行されてないんですが、でも「この1年間でここまでやったぞ」と。だから「この後の1年間も信用してね」という風に思っています。「仕掛ける」と言っても、一番最初に言った「コアのファンを大事にします」「そして、ファン層を広げます」という、この基本のところは何も変わらない。そこは何もブレていない。

後は、過去の僕らが円谷でやってきたことを大事にしながら、未来をどう作っていくかっていう、この2つ。この2つを、僕が来てからブレていないつもりで頑張っています。

タカハシ:僕は、「ウルトラマンフェスティバル2019」の『DARKNESS HEELS~THE LIVE~』のイベントに参加したんですけど、あの時に、「ウルフェスに、来たことありますか?」ってMCさんが訊いたんですよ。そしたら、大部分の人が手を挙げなかったんです。要は、『DARKNESS HEELS~THE LIVE~』目当てで初めてウルフェスのイベントに来たっていう方がすごく多かった。今までの僕の印象では、『ウルフェス』のイベントって、みんなお馴染みで「いつも来てます!」っていう人たちの方が多いのに、これはかなり新しい局面だなって思ったんです。新しい可能性を感じたんですよね。

塚越:それが、やりたいことなんです。コアのお客さんを大事にしていく話と、広げる話があるとすると、これは広げる方の話ですね。ダークサイドのウルトラマンを使いながら、ウルトラマンの良さとか、話の面白さとか、それを広げていく。

――なるほど。

塚越:このあとの1年間でやりたいことというのは、ブランデットスタジオへの第一歩のチャレンジなんです。うちはプロダクションとして、オールジャンルでやってきているので、これは、やってはいけないこととわかっていながら、それでもあえてやろうとしてるんですけれども。それは、「ヒーロー」というテーマを深掘りしようということなんです。ヒーローって言ったときに、今まで作ってきたヒーローも大事にするけれども、もっと広げたいんです。例えば、ヒョウリさんにとって、ヒーローって何ですか?

タカハシ:ヒーローですか? うーん、僕だったら例えば、高校生の頃に好きだったミュージシャンは、ヒーローですね。

塚越:そういうこと! 人によって、自分の思い描くヒーローっていうのがいて、個々にそれが違うわけですよ。例えば「女性にとってヒーローって何なの?」とかね。女性にとっても一様で良いと思う。今、円谷が作っている番組でいくと、ウルトラマンが出てきて、怪獣と戦う。地球を守る、家族や友達を守る。例えば「それがヒーローだ」っていうことなんだけれども、それだけであることを変えたい。もちろん、それはその通りなんだけど、来年1年かけて、円谷がヒーローというものをどこまでみんなのものにできるか、チャレンジをしようと思っているんです。

――ヒーローの新たな定義付けをするということですか?

塚越:定義付けでもあり、否定でもあり、新しい解釈を打ち立てることでもあり、その全部でもあるし、その全部でもないかもしれない。模索ですかね。「ヒーローってなに?」という。僕は、男の子、女の子関係なく、年齢も関係なく、そういうメッセージ性のあるコンテンツを作っていきたいと思ってるんです。それが円谷ができること。それが1つの、僕らからするとテストであり訓練であると思っているんです。「円谷は何でもできる」って会社にしていくためにね。

タカハシ:面白いですね。
撮影:安西美樹
撮影:安西美樹

塚越:例えばだけど、円谷は作ってきたヒーローを、もっと広げるっていう責任を持っていると思っているんですよ。ステレオタイプのヒーローを押し付けちゃいけない。今の時代のヒーローっていうのは何なんだ?っていうのを、押し付けるんじゃなくて、みんなが考える機会になるような、ストーリーであり、作品っていうのを、円谷が作っていけるかどうか、っていう新しいチャレンジなんですよ。

――換骨奪胎している部分があるというか、ヒーロー、概念を広げていくような部分ですよね。

塚越:うん、これはこれからの話です。だからさっき言ったみたいに、この1年、こういう風にしようと思っています、と。

タカハシ:これ、すごい宣言ですよ。かなり根本的なところですから。

塚越:今までやってきたことっていうのは、要するに、テレビシリーズを作って、「ウルフェス」や「ウルトラヒーローズEXPO」をやって、新しいコンテンツを作って、いろいろな幅を広げることでした。会社の幅、ファンの幅、作品の幅を広げようということでこの1年やってきました。

これは、女性も含めたブランディングであるとか、それからファミリーに対してのイベントを増やしたりだとか、その他に怪獣を軸としての発信ということへの取り組みでもありました。次は、もっと深掘りして「みんなにとってのヒーローって?」というところを、円谷だからこそできる投げかけを、やっていきたいなと思っています。

タカハシ:これは来年の円谷の軸になる理念かもしれないですね。

塚越:もう1つが、表現。うちが得意にしているアナログの特撮、これはお家芸だから大事にしていきます。一方で新しい表現っていうのをどうやって作っていくのか、っていうのが「TSUBURAYA IMAGINEERING」。技術であり、デザインっていうのを、僕らは大事にしていきます。

それから、もう1つのポイントが、デジタル=新しい未来を作っていきます。それは、円谷の伝統を守りながらも、エンターテイメントとして新しい作品であり、商品であり、イベントを作るということです。温故知新。新しい技術を入れて、円谷の遺伝子を守りながら、伝えるべきものをエンターテイメントとしてのせて、ちゃんとやっていきますよっていう宣言ですね。

タカハシ:じゃあ、また1年後に、この理念がそういう形になったのかという答え合わせができそうですね(笑)。

塚越:そうそう(笑)。楽しみにしておいてください。

DARKNESS HEELS』『SSSS.GRIDMAN』『ULTRAMAN、新しい円谷作品の胎動

タカハシ:僕は、「TSUBURAYA・GALAXY」に参加させていただいているというのもあって、現場レベルで新しいプロジェクト、いろんなものが始まっている所を見てきたんですけど、実際に新たなプロジェクトに対する反響っていうのは会長にはどういう風に届いているのでしょうか? 例えばこの作品に関してはすごくうまくいった、この作品に関しては反省点があるとかっていうような部分はあるのでしょうか?

塚越:まだ僕のところには届いてないものも多いですね。『かいじゅうステップ』も9月27日スタートでしょ。視聴率、レーティングは悪くないと思っているんだけど、お客さんがどうとらえてるか?というところまでまだわかってない。『DARKNESS HEELS』も悪くないと思っています。ただ、まだ最初のステージなんでね。そして、11月から『かいじゅうのすみか』が始まったじゃないですか。だから、まだそういう意味では、スタートさせたことがどう受け止められてるかっていうのは、これからかな、という気はしてます。

タカハシ:Netflixの『ULTRAMAN』がアジア圏での成績が良くて、セカンドシーズンが始まるのにも、それがすごく寄与したっていう部分があると思うんですけど、海外に対してのウルトラマンのアプローチって、ここ1年ぐらいはどんな感触ですか。『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』も全世界配信でスタートしましたが。



塚越:『ULTRAMAN』と『SSSS.GRIDMAN』は今年、大ヒットしたと思っています。『ULTRAMAN』に関して言うと、良かったと思うのは、色々なウルトラマンの設定の可能性があるということ。だから新しい設定でもウルトラマンになり得るし、欧米で受け入れられるウルトラマンも成立させていると思うんですよ。

タカハシ:『ULTRAMAN』がアジアで受け入れられたように、また違った捉えられ方ができるウルトラマンの可能性がありますよね。

塚越:うんうん、だから、おさえはできている感じですよね。一方で僕らは、これからもウルトラマンを海外で作っていきます。

タカハシ:それは、ある種の王道から外れた?

塚越:『ULTRAMAN』は、王道じゃないって言いました、今?

タカハシ:ま、まあ、いわゆるウルトラマンの王道ではないです(笑)。僕の中では。

塚越:流石だ(笑)。逆に知りたいのは、コアなお客さんたちが、例えば『ULTRAMAN』をどういう風に評価しているか?なんですよ。

タカハシ:『ULTRAMAN』は、まったく違うものだって言う風には頭では理解しているけど、まだ感情は追いついてないっていう状態だと思います。

塚越:なるほど。

タカハシ:だから、これは違うもので、また新しいものとして認識し楽しむべきだと思いつつも、ずっとウルトラマンを好きだった人にしてみると、違うじゃないですか、ニュアンスが。そこで、感情と頭が混乱しているような状態なのかなって思いますね。

塚越:なるほどね(笑)。ある種、『DARKNESS HEELS』もそうなんですよ。

――そう思いますね、それは。

塚越:繰り返しになりますが、僕達は王道のウルトラマンも大事にするし、一方で新しいウルトラマンもつくっていきます。だから、結果、僕がやろうとしていることに、『ULTRAMAN』は合致したんです。要は、新しいお客さんにウルトラマンの魅力を伝えるために、あの手があったか!っていう話でしょ。でも、昔からのファンからすると、あれは僕のウルトラマンじゃない、と。でも理解はできるし、新しいお話として展開されたね、っていう感覚。広げるための作品群っていう意味では、『ULTRAMAN』は、ひとつの方法だっただったって思うんですよ。



タカハシ:『SSSS.GRIDMAN』はどうですか? かなりの反響を呼びましたが。

塚越:『SSSS.GRIDMAN』っていうのは、僕からすると、もう少し後にあるべき作品だったんだけれども、大成功して良かったと思っています。僕は今、うちの会社の人や時間をウルトラマンに集中させているんです。そしてウルトラマンのブランド自体を広げようとしている。でもそれがうまくいけば、次は円谷ブランドのものを作りたいと思っていました。そのタイミングで、『SSSS.GRIDMAN』とか、『怪奇大作戦』とか、いろんなものが出せると思っていたんですよ。

――今お話を伺っていて、ヒョウリ君のリアクションって、ものすごくリアリティのある、ウルトラマンファンのリアクションだなと思ったんです(笑)。理解はしているけど感情が追い付かない部分があるっていう。僕はメディアの人間なので、俯瞰して見るようなクセが付いているんで、ああ、でもこれはなるほど、こういう展開でウルトラマンという枠組みが広がっていくものだな、と思えたので。

タカハシ:もちろん僕も楽しんでいるんですが、ファンの感覚としては、そういう風にとらえていますね。

塚越:僕が来てから作っている作品というのは、軸がありながら少し広げるっていう作り方になっていると思います。舞台『DARKNESS HEEL~THE LIVE~』も、あれはただの舞台として作っているんじゃないんですよ。設定から何から、物凄く考えて、その先もぜんぶ作っていますから。最終的にどういうエンディングにするか、どういう終わり方をさせるとか。

タカハシ:『ゴルゴ13』みたいですね……最終回は決まっている。



塚越:これを世界観としてお客さんにどう展開していくか。『DAKRNESS HEELS』 の最初のステージが舞台なんですよ。このあといろんなステージが出てくるけど、全体の設定が決まっているから、これに合わせてどういう風にお客さんに期待感を持ってもらえるかを考えています。

タカハシ:つまり、舞台っていうのは序章にすぎないと?

塚越:そうです。うちはプロダクションですから、映像作りはしていくけれども。ブランド、ストーリーをどうエンターテイメントとして、お客さんに受け入れてもらって面白いと思ってもらうかを作り出すのが円谷だと思っています。そういう意味からすると、いろんなことがあっていいんですよ。それを積み重ねてみたときに、「ウルトラマンってすごいな」っていう印象が残ってくれるようになるってことが僕のブランディングの考え方です。

――メディアミックスって、最後の終結点にだいたい2.5次元舞台がくることが多いですよね。

塚越:なるほど。

――アニメとかコミックとかあって、ゲーム化だったりいろんな展開していって、最後に2.5次元舞台…みたいなのがよくある形なんですけど。2.5次元舞台スタートで、ぐっと広がっていく作品って、なかなかまだ無いんですよ。でも舞台『DARKNESS HEELS~THE LIVE~』はお客さんの食いつきが非常にいいですね。

タカハシ:さっきも言いましたが、可能性を感じましたね。

塚越:最初に『DARKNESS HEELS』というプロジェクトを作ったときに、お客さんがまず反応したんですよ。「これ、どうなっていくの?」っていう。これは最初は、商品寄りのプロジェクトだったんです。でもこれは次の展開を絶対考えるべきだって考えるようになった。これはひょっとしたら新しい層をつかんでいける、何かを持っているものだなっていうのがあったんで、2.5次元舞台をキャラを立たせるっていう意味付けも含めて、まず最初のステージにしました。でも、ちょっとセリフが多すぎるんですよ(笑)。それは、設定をいろいろ説明するためにちょっと多くなっちゃってるんですけどね。

――SPICEとしては『大人のウルフェス』でヒョウリ君とトークショーやらせていただいたりして、そこで気づいたのが、俳優さんのファンと同じように、「推しマン」がいるんですよね。変身した後のウルトラマンさんが好き、っていう女子ファンもすごく多い。

タカハシ:そうですね。『大人のウルフェス』にも女性客の方が多かったっていうのは、かなり興味深かったですね。だから、記事とかにアクセスする人も、女性の方が意外にも多くて。ウルトラマンに実際会いたいって心を抱いている女性の数っていうのは、想像以上に多いです。

塚越:最初に円谷に来たころっていうのは、「女性層はどうだろう?」っていう意見が多かったですよ。ウルトラマンが怪獣に接した時点で、「自分たちのものじゃない」って思ってしまう。でも、うちの社員でも「そうじゃないんです、ウルトラマンのファンはいるんです」って言うわけです。そこがすごく嬉しいし、可能性もありますよね。

タカハシ:そうですね。

塚越:じゃあ、なぜ女性が、ウルトラマンのことをそんなに好きなの?と。それはキャラクターなの? それとも、そうじゃない何かの要素があるの? その辺りが多分、円谷が次に考えていかなきゃいけないところなんですよ。

――先ほどおっしゃった、ヒーローとは何か?につながりますね。

塚越:そう。

『シン・ウルトラマン』、そして新たなウルトラマン

タカハシ:この1年だと、大きな動きとして『シン・ウルトラマン』が発表されたということがあるんですけど、先ほどの過去への取り組みとか、未来の取り組みとかっていう、塚越さんのマップの中で、『シン・ウルトラマン』ってどういう位置に……?

塚越:過去の方です。

タカハシ:過去なんですね。じゃあある種、過去の遺産を現代にリブートするっていう意図ですか?

塚越:やっぱり、庵野さんが関わってくれていますから。ウルトラマンのことをものすごく知っていて企画・脚本をしてくれました。だから、かつてウルトラマンを見ていた人も本当に喜んでくれるものを作るんだ、っていう。

タカハシ:そういった意見交換を、庵野さんと樋口さんとしてきた、ってことでしょうか?

塚越:そう。だから、あの昭和のウルトラマンを観た人も、「これだよ!」と言うものになります。

タカハシ:なるほど……!

塚越:これは僕にとっては、ウルトラマンの”王道”なんですよ。そして、もう一つが、”新しいウルトラマン”。新しいウルトラマンって何かって言ったら、僕らがまだ見たことないウルトラマン。それを今、模索しています。だから、この『シン・ウルトラマン』はどっち?って言われたら、”王道”の方です。

タカハシ:新しいウルトラマンって話も出てきたので、テレビシリーズのお話もちょっと聞きたくて。やっぱりテレビシリーズのウルトラマン作品っていうのは、軸だと思うんですね。玩具とかも含めてそこがベースだと思うんですけど、『R/B』から『タイガ』の流れっていうのを楽しみつつも、どこかに違和感をぬぐえない部分もあるんです。

塚越:どういうところで?

タカハシ:一つ一つのパーツは面白いんです、例えばタイタスがすごく人気が出たり、タロウの息子という設定に期待が集まったり、ゴロサンダーみたいな魅力的な怪獣もいるし。ただ、個人的には全体で見ると大きなうねりになっていない、っていう印象もあるんです。

ある種、『X』~『ジード』までの3作で結実したあとの、試行錯誤の時期なのか?とも思うんです。違和感を取り入れていかなくちゃ、トライじゃないわけですし。そういったところで、今後のテレビシリーズはどういったビジョンを持っているのか、というのをお聞きしたいんです。

――それ、ヒョウリ君しか訊けない質問ですね……(笑)。

タカハシ:いや、作品を批判したいわけじゃないんですよ。

塚越:わかっています(笑)。 でも、それ(ビジョン)が、新しいウルトラマンです。
撮影:安西美樹
撮影:安西美樹

タカハシ:なるほど。

塚越:僕らも当然考えているし、ある種、次はこうかな?っていうのは見えてきています。ただ、すぐに簡単には変えられない。多分、これを読んでいる方は皆さん大人な方なので、いろんな想像をされる方がいると思いますけど、まず、「円谷がわかってる」というのが、1つのポイントなんです。未来に向かって、進む方向は見えてきている、って言ったらいいのかな。これから作るものが、もっといいものにできるはずだって、常に考えている。そういった意味での、過渡期であることは認識しています。

――今のやりとりを聞いていて、感じたのがミュージシャン的な視線だな、と思いましたね。自信作のニューアルバム出します、もちろん意欲的なことに取り込むと、前の盤が好きだった人って、「あれ、何かちょっと違う?」とか。「前の方が良かった」とかって、絶対出るんですよ。でもそれはアーティストからすると、常に最新作が最高傑作だと思っている。

塚越:そりゃそうですよね。

――「これを求められているからずっとこれをやろう」ってアーティストさんももちろんいるし、それもすごいことだと思うんですけど、変わり続ける、進み続けることも僕はすごいと思うんですよね。

塚越:そこですよね。僕らも制作チームが全力で作っているし、もちろん何も手を抜いていない。僕が来てから「円谷って、ウルトラマンってなんだったんだっけ?」っていう検証を始めているでしょ。

タカハシ:そうですね、「過去への取り組み」ですね。

塚越:ここが大事なんですよ。そこから今、僕らが学んでいることが実は大きくて、それが、さっき言った”新しいウルトラマン”に続いていくと思っているんです。ウルトラマンっていろんな設定が混在してるんですよ。『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』だけでも違うし。その中で、本当に遺伝子として僕らが受け止めて、未来に向かって繋げていかなきゃいけないポイントは何なの?っていうのが、やっと見えてきたんですよ。これを作ったら多分、未来の日本、未来の世界の皆さんが、「これぞウルトラマンだ」って喜んでくれるところに繋がっていくんじゃないか、ってところが見えてきた。昔から円谷がやってきたことの中に答えがあったという実感があるんです。

タカハシ:その核心、コアみたいなものが、やっぱり過去を見ることで、今改めてわかってきた、っていうことですね。

塚越:特にレジェンドと呼んでいる、当時作品を作ってた方々。今、そういう方々の証言を映像に録っているんですけど、「当時はこうだったんですよ!」という証言の中に、いろんなヒントや遺伝子が残っていた。今『ULTRAMAN ARCHIVES』のPremium Talkの映像やPremium Theaterといったイベントとかを見てもらうと、このあと新しいウルトラマンっていうのが出てきたときに、あー、そう言う風に思って作ってきたんだな……って芯みたいなものがありますよ。それが、今の僕らにもっともっとエネルギーをくれているなと思います。

『かいじゅうのすみか』、「円谷怪獣」が持つ可能性

タカハシ:『TSUBURAYA CONVENTION(以下ツブコン)』開催の前に、『空想科学「かいじゅうのすみか」体感エンターテイメント』も始まりましたね。

塚越:ウルトラマンが、うちの屋台骨だし、一番大きいスターなんだけれども、一方で最近弱くなっちゃっているのが、怪獣の存在なんですよ。でも怪獣が頑張ってくれれば頑張ってくれるほど、ウルトラマンの存在意義が際立つ。見ている人には、怪獣好きも沢山いるんですよ。

そもそもウルトラマンの初期のものって、怪獣っていうのは現代社会の問題点のメタファーだったりする。それって、僕ら人間が作り出しているものなんです。それをウルトラマンが退治しなきゃいけない、そこで心に残るものっていうのは、僕らにとって非常に大きな財産なんですよ。そこら辺をどういう風に僕らが作っていけるか。

怪獣が何で出てきたか。怪獣っていうのはどんな存在なのかっていうのを円谷がもっともっと磨きをかけることによって、さらにウルトラマンは面白いものになるんですよ。

タカハシ:『かいじゅうのすみか』のお話の中で、要は怪獣っていうのは、ある種の多様性の象徴だっていうお話をされていたと思うんですけど、あれがすごくいいなと思って。やっぱりウルトラマンというのは、そういう意味では調停者ですよね。多様性をある種、一つにまとめようとする……。

塚越:バランスを取ろうとする。

タカハシ:そう、バランスを取ろうとする存在なんで、突出しすぎた多様性は倒さなきゃいけない、っていう悲哀を持っているわけですけど。ただ、今の時代では個性というものが、より多様になっていってるわけじゃないですか。ジェンダーも超えて、時代が変化していく中で、怪獣っていうものの持っている多様性っていうのは、より際立ってくるし、より伝わっていくのかな、と思ったんです。

塚越:そうそう。それを際立たせれば立たせるほど、両方が際立つわけです。ウルトラマンはウルトラマンなんですよ。でも一方で、違う存在としての怪獣、もっともっと怪獣がイキイキとしてくれて、そこで初めて、ウルトラマンが出てくる、戦わなくてはいけない意味っていうのが出てくると、さらに作品として深いものになり、面白いものになってくるんですよ。

――そうですね、戦う意味っていうのが見えると、非常に深みが出る気はしますね。

タカハシ:僕は、塚越会長とこの話がしたいなと思ったんですけど、『ポケットモンスター』があるじゃないですか。『ポケモン』の根底には、田尻聡さんが子どものころ『ウルトラセブン』を見ていたという原体験があるわけです。そのウルトラ怪獣、カプセル怪獣に対する憧れがやっぱり、いま現代でゲームと結びついてああいう形になって、ものすごく多くの世代に受け入れられているじゃないですか。『ポケモン』っていうのはどういう風に見えますか?

塚越:やっぱり、うちの円谷怪獣の遺伝子があると思うんですよね、『ポケモン』は。

タカハシ:そうですよね。

塚越:それが大成功していて、世界にも行ってくれている。すごいですし、そういう意味では、可能性を感じていますよ。うちの怪獣も世界的に受け入れてもらえる可能性をね。

タカハシ:ポテンシャルを持っていると。

塚越:百鬼夜行みたいな文化っていうのは、日本のオリジナルのものだけれども、でもそれを世界に知らしめたのが、ポケモンだっていう話を誰かとしたんです。でも「怪獣」っていうのは、前から存在としてあったわけで、可能性を持っていると思います。あの絵巻を見たときに、何とも言えない、不気味だけど面白いっていう。それを紹介できるところにいるわけですから。怪獣を際立たせて、その面白さっていうのを出せば出すほど、世界のお客さんに、伝えられる。その時には、ウルトラマンも出せる。

――そうですね、あちらが立てば、こちらも立つ。

塚越:だから、お互いライバルなのかなあ……ウルトラマンと怪獣は。

――僕の印象からすると、どっちかがいなくなったら成り立たなくなっちゃうって印象ありますね。

タカハシ:そうですね、ライバルというより、表裏一体のものって感じですね。

塚越:これは良い悪いじゃなくて、それぞれに言いたいこともあって、それぞれに役割があって、それぞれが僕らにメッセージをくれていると思うんです。だから、ウルトラマンに対してさっき言ったみたいに、ファンがいて大好きだという人がいるように、怪獣たちにもたくさんのファンがいて面白いと思ってくれるわけだから、その場もちゃんと円谷は作るべきでしょうっていう。このあと、怪獣のネタ、怪獣のストーリー、新しいお話、どんどん作っていきますから。そして、それでこそウルトラマンが生きるんですよ。

タカハシ:それは、1怪獣ファンとしてすごく楽しみですね。

TSUBURAYA CONVENTION』、ファンの方はオープニングセレモニーにいなきゃならないんです。

タカハシ:では、改めて『ツブコン』についてです。まずは、開催の概要を、あらためてギュッと、お話しいただけたら。初めて読む方もいると思うので。



塚越:中身的に言うと、4つの要素があります。「新しいお話」、これがオープニングです。それと、キャラクターとか俳優さんの「グリーティング」。それと「グッズ」。そして最後に、「検証」。この4軸で構成されています。

――軸が4つ。

塚越:で、円谷の過去、現代、未来をこの4つの中で見せています。東京ドームシティホールでオープニングがあって、ウルトラヒーローが全員集合するイベントがあって、コンサートがあって、キャラクターグリーティングがあって、セミナー的な検証もあります。「日本人とウルトラマン」とか、要するに「ウルトラマンとは何だったのか?」というセミナーですね。それからアーカイブスのスペシャルイベント。更に海洋堂さんと組んでグッズ周りなどのワンフェスもあり……。本当に祭典という感じで、みんながお祭り騒ぎで、いろんな楽しみ方で喜んでもらえる場を作りたかったんです。

タカハシ:オープニングセレモニーが一番気になるところなんですけど、実際そこは、何かしら新しい展開とか、『シン・ウルトラマン』の新しい情報とか出るよ、っていう予定ですか?

塚越:いいこと言ってくれるね(笑)。

タカハシ:おおお!?

塚越:だからファンの方はいなきゃいけないんです(笑)。あのね、本当に損はさせないオープニングセレモニーだと思っています。歴史に立ち会っていただくというか。こんな言い方、大丈夫かな(笑)。

――コンベンションって、大きな発表があるって印象があるので楽しみですね。

タカハシ:そうですね、そこが一番みんなが気になるところではあると思うんですよ。

塚越:僕もオープニングセレモニーっていうのが、新しい円谷のことを、コアファンの方々に最初にお知らせする場だと思っているので。(ファンが)ここにいてほしいっていう気持ちはありますね。損はさせない。損はさせないどころか、いて良かった、って思ってもらえるんじゃないかと。次回以降はもう真っ先にチケット買わなきゃ!っていうのが、オープニングセレモニーになるはずなんですよ。

タカハシ:なるほど。それは是非とも伝えておきたいですね。

塚越:あのね、ヒョウリさんはね、泣くと思う(笑)。

タカハシ:うわー! マジっすか!

塚越:1年前から始めて、それが形になってきていて、煮詰まってきた感じだね。

――改めて、改めてこの1年間を振り返って、どんな1年間でしたか?

塚越:難しいですね。そういう意味からすると、やっと言っていることをお伝えできるようになった。1年前の取材のときは「こういうことやろうと思ってるんです」という話だけだったんです。多分1年後も去年言っていたことを、こういう風に実現されてきたんですね、って言ってもらえるようになると思うんです。

――そうですね。

塚越:たぶん、舞台『DARKNESS HEELS~THE LIVE~』も、『かいじゅうステップ』も、「TSUBURAYA・GALAXY」も、何もできてなかったら「まだ考えているところです」っていう話になったと思うんですよ。でも、それが形になってくれた。だからスタートラインに立てた1年ですよね。でも来年もまだスタートラインだと思っているんですよ。ずーっとスタート。円谷は止まらないですから。常に未来に向かって、遺伝子を持ちながらも、新しいものを作り続けていく、作品を作り続けてくって会社だから。でもそうやってやれるのは、その先に光が見えているからだと思うんですよね。その光を見失わないように、うっすらと、ぼんやりと形が見えてきているので、それを確かなものにしていく。来年もっと光が見えてきてるんじゃないかっていう、そういう位置に立てた1年でしたね。

――なんかいいですね。光の国に近づいて行っている感じがしますね(笑)。この大きい企業で、1年間でこんなにプロジェクトってすぐできるの?ってぐらい動いてらっしゃる印象はあります。

塚越:みんな死に物狂い……じゃなくて、死んでますね(全員爆笑)。

タカハシ:それぐらい新しいプロジェクトの立ち上げに真剣に取り組んで、次々と実現されているからこそ、来年に向けての言葉にも期待感があります。来年は、今回お聞きしたことが形になっているんだろうなって思えるというか。

塚越:ありがとうございます。やります。うちの社員は大変だと思うんだけれど、大変でもお客さんがそれを喜んでくれたのを見たとき、イベントで子供たちの「がんばれー!」っていう声を聞いた時に、うちの社員で良かったと思えるって言ってくれて。やっぱり僕らって、そういった子供たちやファンの応援こそが一番のエネルギー源だと思うんです。来年の今頃も、喜んでもらえるようなものが作れて、いろいろなことが実現できていったら、社員のみんなにも「やってよかった」と思ってもらえるんじゃないかなと思います。
撮影:安西美樹
撮影:安西美樹

タカハシヒョウリ
音楽家(Musician)/文筆家(Writer)/オタク(Geek)
ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギターであり、楽曲提供でも活動する音楽家。また、自身の「特撮愛」をバンドサウンドで表現する「科楽特奏隊」を仲間たちと結成。その様々なカルチャーへの深い愛から、カルチャー系媒体への連載やコラム寄稿、番組出演なども多数。
tiwtterアカウント @TakahashiHyouri

取材・インタビュー:加東岳史 撮影:安西美樹

当記事はSPICEの提供記事です。

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