森下洋子&清水哲太郎が大阪で会見~松山バレエ団が「くるみ割り人形」で11年ぶりに大阪公演

SPICE

2019/11/10 18:00



日本バレエのパイオニア森下洋子がプリマ・バレリーナを務める松山バレエ団が、代表作「くるみ割り人形」を携えて11年ぶりに大阪フェスティバルホールに帰って来る。

清水哲太郎の演出・振付による「くるみ割り人形」は、初演から38年目となる松山バレエ団の代表作。

「くるみ割り人形」は言わずと知れたチャイコフスキーの三大バレエの一つで、バレエファンならずとも知名度の高い人気の作品だが、松山バレエ団の「くるみ割り人形」はファンタジーの世界に留まることなく、少女クララが出会いと別れを通して、一人の人間として人生の苦しさや切なさを味わいながら成長して行く様を描いている。
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」

2019年10月の或る日、松山バレエ団のプリマ・バレリーナと団長を兼任し、今回の公演で主人公のクララを演じる森下洋子と、同バレエ団総代表で台本・演出・振付を担当する清水哲太郎が出席し、記者懇談会が行われた。

会見の席に二人が現れると、一瞬にして華やかな雰囲気に包まれた。

渡された資料には、森下洋子1948年生まれ。松山バレエ団プリマ・バレリーナとしてほとんどの公演に主演すると書いてある。3歳ではじめて舞踊歴68年。今もなお現役プリマとして中心で踊っているというのか⁉

会見が始まった。まず、演出・振り付け担当の清水哲太郎がマイクを握る。

清水哲太郎 バレリーナの年齢を言うのは失礼なことですが(笑)、森下の世代で「くるみ割り人形」を全幕通して踊れる人は世界的に見てもいません。

森下は68年のバレエキャリアの中で、天才少女と言われ、様々な賞を受賞して来ましたが、それは日々の稽古をしっかり積み重ねてきたことによるものです。

高く飛んで早く回れる若い人は沢山います。もちろんそれもバレエの醍醐味に違いありませんが、バレエはそれだけではありません。

芸術としての成熟度や奥深さと云ったものを、森下洋子の踊りを通してご覧になって頂きたいと思います。
プリマ・バレリーナ森下洋子と演出・振付の清水哲太郎
プリマ・バレリーナ森下洋子と演出・振付の清水哲太郎

いよいよ森下洋子がマイクを持って話し始めた。

森下洋子 松山バレエ団のようなバレエ団は他にないと思います。例えば今回「くるみ割り人形」をやりますが、出演者全員で プロダクション・ノート をしっかり読み合わせて、「これはどういう意味だろう」「こうした方がいいのではないか」といった事をしっかり共有していきます。

レッスンでも全員が演出家の意図をしっかりと受け止め、お互いにその事を理解して踊っています。こんなことをやっているバレエ団は他にはまずありません。思いを分かち合うために、レッスンに費やす時間も相当長いです。松山バレエ団は練習量も思いも、どこよりも多く、強い。それは、私が少しでも長くレッスンをやっていたいと思っているからだと思います。実は私は本当に不器用なのです。ただ、時間はかかりますが、レッスンをやって行くうちに少しづつ出来るようになります。1か月2か月のペースではなく、10年、20年のペースでやって行くと何とかなると自分で確信しているので、皆にもアドバイスします。やらないと何も見出せません。やってやってやって、少しずつ出来るようになっていく。そうやってここまで来ました。
プリマ・バレリーナ森下洋子 (C)H.isojima
プリマ・バレリーナ森下洋子 (C)H.isojima

続いて、清水哲太郎に今回の演目「くるみ割り人形」について質問が飛んだ。

清水 松山バレエ団の「くるみ割り人形」は時代を反映しています。純粋で心の優しいクララはある時、自宅でパーティを開いてみんなを励まそうと、招待の手紙を書きます。

身近に亡くなった人を、マジパンや棒人形にしてアンティークオルゴールに飾ることで、記憶をよみがえらせたい。舞台はドイツのニュルンベルクと云うことになっていますが、阪神淡路大震災や東日本大震災、昨今の台風などで亡くなった人を偲べればと思います。そして、人に対する思い遣りや、感謝の気持ち、生きている事の喜び、人を愛することの素晴らしさなどを、この作品を通して感じて頂けたら嬉しいです。

チャイコフスキーの作る音楽は、皆さまよくご存知の曲も沢山お有りのはず。親しみやすいメロディに乗せて、賑やかなクリスマスパーティー、ネズミの大群と兵隊人形の息をのむ戦闘、雪のワルツの一糸乱れぬ群舞といった豪華な舞台が繰り広げられます。
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」

そして11年ぶりの大阪公演について清水は語る。

清水 今回11年ぶりの大阪公演ですが、大阪というと忘れられない思い出が有ります。旧フェスティバルホールはとても間口が広かったのですが、ある公演で手違いで見切りの席を販売してしまったことが有りました。

ステージ奥で踊っていたのでは、両サイドのお客さまには見えないので、急きょオーケストラピットぎりぎりまでステージの前に迫り出して踊りました。

お客さまにちゃんと見えたか心配だったのですが、意に反してお客さまは総立ちで、拍手に交じって「メッチャ良かったで!」と大声で感想を投げかけてくれました。本当にストレートな感情表現。こんな事、東京では絶対ありません。この時のことは絶対忘れません。松山バレエ団は大阪のファンと共にある!と、思った瞬間でした(笑)。

「くるみ割り人形」は、お子様からお年寄りまでお楽しみいただけるクリスマスシーズンの幕開けに相応しい心温まる作品です。ぜひ会場のフェスティバルホールにお越しください。
松山バレエ団「くるみ割り人形」
松山バレエ団「くるみ割り人形」

記者懇談会から少々時間は経過したが、久しぶりの大阪公演という事も有ってか、フェスティバルホールのチケットは本当に残り僅かだそうだ。あの大きなフェスティバルホールのチケットが前売段階で完売間近とは、正直驚いている。

松山バレエ団の「くるみ割り人形」、西日本ではこの公演だけだが、関東エリアではいくつかの会場で行われ、チケットはまだ少々余裕があるようだ。

森下洋子が「こんなことをやっているバレエ団は他にはない!」と言い切る、松山バレエ団の「くるみ割り人形」。

気になる方は、劇場に足を運んでみてはいかがか。
皆様のご来場をお待ち致しております!
皆様のご来場をお待ち致しております!

取材・文=磯島浩彰

当記事はSPICEの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ