ガラス作家・イイノナホさんの本棚を拝見!「モノとしての本が好き」

日刊Sumai

2019/11/10 17:50


クロゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季
様々なジャンルの本が入り交じるガラス作家の「代謝する書棚」

イイノナホさんはガラス作家だ。書棚のある工房は、芝生の中庭をはさんだ母屋の向かいにある。ここでデザインを考えたり、打ち合わせをする。窓からは明るい陽射しが降り注ぎ、風が通り抜け、とにかく気持ちのいい空間だ。

彫刻科出身なので、仏像や琳派関係の本も多い。マスキングテープはデザインのスケッチにちぎって使う。意外に透明感がある

高校時代、友人からもらった愛読書。『地球の上に生きる』(アリシア・ベイ=ローレル著)。自然の中でシンプルに生きる法を説く

ガラス工芸に関する書物をまとめた棚。海外の工房や美術学校で買い求めた技術書も多い。スタッフも読めるよう取りやすい場所に
棚には、スタッフが休憩をするとき、いつでも手に取れるようにガラス工芸の技術書が並ぶ。だが、それだけではない。ミケランジェロ、琳派、仏像、金子みすゞなど一見ガラスに関係なさそうな画集や詩集があちこちに。

ミケランジェロの画集。大判の函装で、左の箱は中央がくぼんでいて、本体をその上に載せて読める。数年前にネットで購入
「たとえばミケランジェロはデッサンの基本。形をとらえるのは私にとって大事な仕事で、模写をするととても勉強になります。クリムトの作品集も大きくて重いのですが、しまい込むと読まないので、手に取りやすいところに置いています。基本、読まない本はあまり置かない。差し上げたり売ったりして、本が溜まらないように整理しています」

クリムトの作品集。腕で抱えるほどの大判サイズ。しまい込まず、手に取りやすいところに置いてたびたびながめる
この空間のなんともいえない清々しさは、きっと新しいデザインが生まれる場所だからだ。
様々なジャンルの本が滞留せず、新陳代謝をしている。代謝する書棚はおそらく、イイノさんの創造性を活性化する役目も果たしている。
紙質、手触り、重さやデザイン。モノとしての本が好き
「電子書籍は買ったことがないですね。クリックしても読めないというか、どうも頭に入ってこないのです」
イイノさんは笑う。日々の買い物ついでに書店に寄る。海外でも、本やカタログを買いこむ。
「紙質、手触り、造本の美しいものに惹かれる。モノとしての本が好きなんですね。私は物持ちがよくて、小学生の頃読んだひろすけ童話やアンデルセンをいまだに持ってるんです。なぜかって? うーん、なんとなく手放せないんですよねぇ」

いつか読みたいと、いろんな訳の『神曲』にトライしてきたが挫折。本書も未読だが、版画の挿絵が美しくて購入した

子どもの頃から詩集が好き。就寝前にちょこちょこと読む。石垣りんのほか、金子みすゞ、茨木のり子など女性詩人が多い

自宅がある場所にはかつて壺井繁治・栄夫妻の家があった。囲炉裏があり、当時の面影を色濃く映していたそう。縁を感じ書店で探した

著書。中央の『イイノナホ 灯り』は、ギャラリーや個展で販売されている作品集。いずれもイイノさんのHPから購入可能




大切な本はそばに置く。なんでも処分するわけではない。
彼女は3人の娘の母でもある。幼い頃から毎晩読み聞かせをしてきた。本には、そこに流れる時間の愛おしさもしみついている。そういう一切合切を含めて、形ある本が好きなのだな。
イイノさんへのQ&A
Q 1日のうちでいつ本を読みますか?
A 子育てもありますし、仕事もある。なかなか読書の時間が取れないですね。夜寝る前に詩集を読んだり、移動時間でしょうか。
Q どんなタイミングで書店に寄りますか?
A 週に2~3回、吉祥寺に自転車で買い物に行きます。そのときにジュンク堂をのぞきます。本の品揃えが多いので好きです。
Q この部屋は?
A 隣がガラス工芸用の電気炉などがある工房。ここは休憩室兼デスクワークスペースで、スタッフが本を読んだり、お茶を飲んでくつろぎます。デザインを考えるのもここです。

イイノナホさん
ガラス作家。
1967生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒業後、ピルチャックグラススクール(アメリカ・シアトル)で学ぶ。’97年より作家活動を始め、2007年東京・中野にガラス工房「iino naho glass garden」を開く。現在、アートピース、シャンデリアを中心に制作。ペーパーウエイトなどのプロダクトにも力を入れ、ヨーロッパ、アメリカ、韓国など海外にも活動の場を広げている。
※情報は「リライフプラスvol.21」取材時のものです

当記事は日刊Sumaiの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ