夫が発達障害かも…と悩む妻。すれ違いすぎる会話に涙が止まらない

女子SPA!

2019/11/10 08:47

【わかりあえない夫と暮らして vol.1】

アスペルガー症候群は、現在では自閉症などとともに自閉症スペクトラム(ASD)と総称される発達障害の一種です。社会性(対人関係)の障害、コミュニケーションの障害、こだわりが強い(想像力の障害)などの特性を持ち、言葉と知的発達に遅れがない状態を指します。(参考 梅永雄二監修『よくわかる大人のアスペルガー』)

この記事では、未診断だけれども発達障害が疑われるパートナーとのコミュニケーションに悩んだ女性の例を紹介します。

◆真面目で気の合う彼と結婚、幸せいっぱいのはずが

金融業界で働くイクミさん(30歳)は、夜間大学院で出会った彼(36歳)と結婚しました。

彼は大手電気機器メーカーで働くサラリーマン。とても真面目で派手なことを好まず、休日はひとりで映画を観たり小説を読んだりするのが好きなインドア派。表情が乏しく、感情表現が薄い人という印象はありましたが、イクミさんを楽しませようと一生懸命デートプランを練ってくれることや、ときどき見せてくれる穏やかな笑顔が、イクミさんは好きでした。にぎやかな場所が苦手なため、静かな過ごし方を好む彼はとても居心地がよく、食べ物や映画の趣味も似ていて、楽しみを共有できることも嬉しく感じていました。

気になるところといえば、デートで1円単位の割り勘をすることと、自分の興味のある話を始めると最後まで話し終えないと止まらないこと。自慢話を堂々と話す姿には驚かされましたが、実際に彼はそれだけの努力をしている人。イクミさんは、彼を素直に尊敬していました。

◆新婚生活に戸惑い、苦しみ始めた夫

しかし結婚してからというもの、彼は日に日にふさぎ込むようになっていきました。聞くと、毎日帰る場所、使う電車、一緒に住む人間、自分の立場などが変わったことで、新しい環境に戸惑い、苦しんでいるというのです。

次第にイクミさんは、彼とは、彼から話しかけられたときにだけ話すという姿勢を身につけていきました。そして、どんな些細(ささい)な内容であっても質問することは避けました。イクミさんにとっては気軽な雑談のつもりの質問でも、彼にとっては「今すぐに答えを考えなければならない」と感じて疲れてしまうということがわかったからです。

彼が自分のペースを守ることをとても大切にしているのだと理解したイクミさんは、彼のペースを乱しかねない行動はとにかく避ける必要があると考えました。光に敏感な彼に合わせて、家の中の照明はいつも薄明るい程度に抑え、常にカーテンは締め切り。音にも敏感なので、テレビの音量や、ドアの開け締めをする音なども抑え、極力物音を立てないように。これらも、彼のペースを乱さないために必要なことでした。

夫婦とはいえ元は他人なのだから、一緒に暮らしていくにはお互いのすり合わせが必要なのだ。私が彼のペースを守る習慣を身に着ければ、彼が気持ちよく暮らすことができる。そうするうちにきっと彼は新しい環境にも慣れて、またお互い居心地良くいられるはず――そう思うと、今している我慢や、彼に合わせる生活は、イクミさんにとって乗り越えるべき試練のように感じられたのです。

◆「泣いていたら抱きしめて」が通じない苦しさ

とはいえ、彼の顔色を伺いながら暮らす生活は、イクミさんにとって容易なものではありませんでした。

彼が新しい環境に慣れるまで、私は私で好きなことをして過ごそう。そう前向きに解釈できる日もあれば、何のために結婚したんだろう? この生活はなんなんだろう? という疑問が頭を離れず、涙が止まらない日もありました。

泣いているときは悲しいときだから、優しく抱きしめてほしい。そう伝えると、「なぜ抱きしめる必要が?」と彼は眉を寄せます。

――抱きしめてもらったら、安心できるから。

「僕はそう思ったことがないのでわからない」

――私は、悲しいときに抱きしめてもらったら安心できるから、抱きしめてほしいと思ったんだよ。

「抱きしめることと安心できることがどう関係するのかわからない」

こんなふうに、説明しなくても共有できるものと思っていた感情について、イクミさんは、それを感じる経緯や理由について細かく説明する場面が増えました。感情の言語化はうまくできるときとそうでないときがあり、なかなか伝わらないときには、言い方を変えたり、たとえ話をしたりして、長い時間を要することがありました。そしてそれを彼も理解しようと、時間をかけて話を聞いたり、イクミさんの言うことを書き留めたりしてくれることもありました。それでも、お互いが心から納得しあえることはほとんどありませんでした。

「今度からでいいから、泣いてるときは、どうしたのって声をかけてくれたら嬉しいな」

イクミさんが言うと、彼は困ったようにこう言います。

「理由を聞いても僕には解決できないと思うから、声をかける意味がない」

ただ、イクミさんは解決を求めて泣いているわけではありませんでした。声をかけてもらって、気持ちに寄り添ってほしいだけなのですが、彼はそういった感情を抱いたことがないからわからない。わからないことはできない。だから何もしないだけで、決して意地悪で、泣いている私を放置しているわけではない。そう頭ではわかっていても、イクミさんは悲しくて寂しくてたまらなくなってしまうことがありました。

◆二人でいるのに孤独――妻を家族だと思えない夫

「私達は家族なのに、なんでこうなんだろう。一緒にいても一人みたいで寂しいよ」

イクミさんが泣きながらつぶやくと、彼は怪訝(けげん)そうに言いました。

「家族?」

イクミさんは愕然(がくぜん)とします。「私とあなたは結婚したんだから、家族じゃないの?」

「家族は実家の人たちだから、イクミを家族と思ったことない」

平然と話す彼の態度は、どこか他人事のようにイクミさんには思えました。

お互いのことを話しているのに、なぜか他人事のような彼の態度に怒りを覚えたり、どこまでも話が平行線をたどる絶望感に涙が溢(あふ)れてきたり、最初は冷静に話しているつもりでも、だんだん感情的になってしまう自分には、失望もするのでした。

彼と話せば話すほど、気持ちがすれ違っているということを思い知らされます。二人でいるのに、なぜずっと寂しいのだろう? お互いに望んで一緒にいるはずなのに、どうしてこうなってしまうのだろう? その原因をなかなか突き止めずにいることを、イクミさんは薄気味悪く感じていました。

そして、あるきっかけで「発達障害の可能性」を指摘されることに――(続く。後日公開予定)。

<自閉症スぺクトラム(ASD)について>

人によってどの特徴や特性がどれくらい出るかに差があることから、「スペクトラム(連続性)」とされています。色のグラデーションのように連続したものという意味で、自閉症スペクトラムである人とそうでない人のあいだには、明確な境界線がありません。

今、自閉症スペクトラムをもつ人の割合は、約100人に1人といわれています。自閉症スペクトラムかどうかということは、専門機関で丁寧な検査を受けなければわかりません。つまり、検査を受けていない未診断の人は、この数字に含まれていないということになるため、100人に1人という数は実態とかけ離れたものかもしれません。

<文/佐藤 由実>

【参考文献】

梅永雄二監修『よくわかる大人のアスペルガー』(主婦の友社)

【参考サイト】

「ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き」国立精神・神経センター精神保健研究所

「アスペルガー症候群について」厚生労働省 e-ヘルスネット

当記事は女子SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ