エジプトのミイラが包帯を巻く理由とは? ミイラ43体から読み取る神秘性

日刊SPA!

2019/11/10 08:30

 11月2日から国立科学博物館(上野公園内)にて開催中の「ミイラー『永遠の命』を求めて」。全世界から43体ものミイラが集結する特別展だ。

「ミイラときくと『こわい』『気持ち悪い』と思われる方もいるかもしれないし、もちろん展示の中にはショッキングなものも含まれるので、気分が悪くなる方もいるかもしれない。しかし、全体を通して展示を見ていると、ミイラになった人の人物像や、それを守ってきた人たちの思いが見えてきて、この展覧会の意味が見えてくる」と、主催者は話す。

◆スペシャルサポーターに任命された超大物

同展のスペシャルサポーターに任命されたのは、ビートたけし。このブッキングからも展覧会への力の入れようが伝わってくる。ビートたけしは次のように語る。

「ミイラを目の前にしてみると何とも言えない何かが語り掛けてくるんだよね。ミイラとなった人が生きていた当時の歴史や価値観、死生観など知れば知るほど面白くなるんだよね」

◆筆者おすすめ…日本のミイラ

世界中からミイラが集まる同展だが、筆者がオススメするのが日本のミイラたちだ。展示では殿(しんがり)をつとめるのが、即身仏の「弘智法印 宥貞」。

ミイラといえば、偉大な権威を構成に残すために「周囲の者たち」が「死後」に作るものという認識が広い。しかし、即身仏は「自分で」「生前から」ミイラになっていくのだ。宥貞は、村に疫病が流行ったことから自らが薬師如来となって村を救うべくミイラになることを決意。

まず、生きているうちから体の水分を減らすために普通の食事をやめて木喰(木の皮などを食べること)をする。そして最後は、断食をしながら生きたまま石棺に入って土中に埋められ、入定(死=永遠の瞑想に入る)となる。村を想って即身仏となった宥貞の表情は、死んでいくという苦行の姿なのに、微笑んでいるように見え、今でも村の人々に敬愛され大切に守られている。

そのほか、江戸時代に亡くなって土葬されたが、改装のために掘り出して見ると偶然の条件が重なってミイラになっていた兄弟が並んで展示されている。リアルさに恐怖を感じもするが、どこか神秘的な姿に目が離せない。

また、宗教的な理由以外で自らミイラになった者がいる。こちらも、生前の顔までわかるほどに生々しい姿をしている。

1832年に亡くなった江戸時代の薬学者で、自身の研究の成果を確認するため、自らの遺体を保存する方法を考案し「後世に機会があれば掘り出してみよ」と言い残し死んでいった。第二次世界大戦後、墓地の移転のために子孫立ち会いのもとで掘り返してみると、本当にミイラになっており、長い時を超えて自らの研究の成果を知らしめたのだった。

◆世界のミイラ。子供が生贄にされたケースも

そうした日本のミイラはクライマックスで見られる、展示前半はまず、最古級のミイラからだ。世界最古のミイラ(推定約1万年前)はアメリカのスピリット洞窟で発見されている。このころは、微生物の活動が抑制される条件が偶然に重なり、遺体が腐敗しなかったために自然にミイラ化したものだ。

その後、人工のミイラが約7千年前から見られるようになった。人工のミイラは、遺体の皮を剥ぎ、腹を裂いて臓器を引きずり出し、鼻から棒を入れて脳みそを掻き出すなどして、腐敗を抑止するものだ。

インカ帝国では、皇帝が死んでも代替わりせず、皇帝をミイラにして保存し権威をそのまま保持した。領地も明け渡されなかったために、次に皇帝となるものは新たな領地を開拓しなくてはいけなかったことが、インカ帝国が急速に拡大した要因の一つとなった。また、子供が生贄としてミイラにされた例も多く、今回の展示にもいくつもの子供のミイラが出品されている。

◆エジプトのミイラが包帯を巻く理由は?

ミイラと聞いて日本人の多くがイメージするのが古代エジプトだろう。砂漠地帯であるエジプトは急速に乾燥するためにミイラ化する条件が整いやすい。またミイラといえば全身に包帯がグルグル巻きにされた姿を思い浮かべる人も多いはずだ。これは、樹脂を含ませたリネン製の包帯を巻くことで腐敗を防いでいるのだ。

ミイラは、権威を永遠に残すためのものでもあるが、生前の姿を偲ばせる姿を留めることで弔意を表した地域もある。オセアニアでは死んだ者の頭蓋骨に、生前の風貌を再現して保管する風習があり、今回はそうした頭蓋骨も見ることができる。また、死者の弔いのために作られた祖霊の像も展示されている。

◆油断は禁物

展示室を抜けてグッズ売り場が見えてくる。歴史的意味合いが深いとはいえ、インパクトの強すぎる見た目からやはり緊張状態にあったのだろうか、ここで少しホッとする感覚になる。しかし油断は禁物だ。グッズ売り場の手前にある展示もまた、強烈な姿をしている。ペルーのとある部族がつくった頭部のミイラだ。

人間の頭部なのに直径20センチほどと、やけに小さい。彼らは敵の首を切り落とした後、皮膚を剥ぎ取りそれを袋状にして頭部を入れる。そこに熱した石を投入。するとこのように頭部が小さくなるのだ。これはその風習の遺物だ。最後に緊張をぶり返させる展示の配置も素晴らしい。

確かに、直感的な感想は「こわい」「気持ち悪い」ではあった。しかし、これらを見て知っていく中で、ミイラが持つ「永遠」という神秘性が立ちのぼってくるのを感じた。<取材・文/Mr.tsubaking 撮影/平川タケシ>

【Mr.tsubaking】

Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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