「いだてん」が「配慮」した次の日にNHK「コントの日」が編集で人を消した! そんなミラクルをご報告

エキレビ!

2019/11/9 08:30



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不祥事を起こした芸能人を画面に出すのか、出さないのか。

2019年はまだ2ヶ月弱のこっているが、今年はその判断が特に注目された年ではないかと思う。新井浩文、ピエール瀧、宮迫博之と、出演作品や人気番組を多く持つ芸能人たちが休止や編集によって画面から消えた。

10月23日、東京国税局から多額の申告漏れを指摘されたとして、チュートリアル・徳井義実が記者会見を行った。多くのレギュラー番組を持ち、俳優としてドラマにも出演する徳井。テレビ局はその対応に追われた。休止するのか、編集するのか、そのままいくのか。

そして11月2日から4日までの3連休、3つの番組でその葛藤と答えを見た。2日放送の『人生最高レストラン』(TBS系列)、3日放送の『いだてん』(NHK総合)、そして4日放送の『コントの日』(NHK総合)だ。

メインMCを編集でオールカット
『人生最高レストラン』は、2017年の番組開始当初から徳井がメインMCとしてレギュラー出演してきた番組。2019年10月から「2号店」としてリニューアルし、女将役に島崎和歌子が加わった。番組では大衆居酒屋風のテーブルを囲んでゲストとトークを繰り広げる。

11月2日放送は松尾スズキがゲストテーブルの中央に松尾が座り、左側にTBS宇賀神メグアナと徳井、右側に島崎と準レギュラーのサバンナ・高橋茂雄が座る。正面からゲストを映すと、両側に徳井と島崎が入る……はずなのだ。

この日の『人生最高レストラン』は、徳井を1秒も映さず、声も入らないように編集されていた。松尾スズキのアップ、テーブルの右サイド(島崎と高橋)のみのショット、宇賀神アナのワンショットを中心に構成され、画面を縦に2分割してゲストと出演者を収める策もあった。この「2分割画面」は、今年6月の『アメトーーク』でも駆使されていた手法だ(※参考:「アメトーーク!」編集に仕掛けられたトリック。居ないけど居た宮迫博之)。

徳井のレギュラー降板を発表し、「オールカット」という選択肢をとった『人生最高レストラン』。『しゃべくり007』や『深イイ話』など他のバラエティ番組も、オールカットとまでも徳井を映さないように再編集されていた。

そんな中、対応が注目されたのが11月3日放送の『いだてん』。ちょうどこの日から、徳井は日本女子バレーボール・大松博文監督の役で出演することが決まっていた。あの「東洋の魔女」を率いた人物である。1964年の東京オリンピックから「オールカット」というわけにはいくまい。どうするのか。

「できるだけ配慮」のその中身
3日放送の『いだてん』は、黒バックに白いテロップから始まった。

「大河ドラマ『いだてん』は 10月1日にすべての収録を終了しています。徳井義実さん演じる日本女子バレーボールの大松博文監督を描くシーンについては 編集などでできるだけ配慮をして放送いたします」

今年3月にピエール瀧が降板した際は、代役を立て、過去の出演シーンも撮り直した。しかし今回は「10月1日にすべての収録を終了」し、撮り直しはできない。公式HPでは事前に編集によって43分の放送時間が42分になると発表されていた。どうするんだろう……と見ていると、番組開始わずか7分で徳井の出演シーンが流れた。しかも、超ガッツリ。


東京大会の新競技を検討する田畑政治(阿部サダヲ)が、大阪の日紡貝塚女子バレーボールチームを視察するシーン。大松監督は女子部員にあだ名を付け、猛烈にしごく。さすがにそれはどうなの、と田畑が大松を柔道場に連れて行き、彼らはこんなに静かにやってるじゃないと諭すと、全然話を聞いていない大松は「これや!」と受け身の動作から回転レシーブを思いつく……。

そのあと流れたオープニング映像でも、堂々と「大松博文 徳井義実」のクレジットが出る。その後も、田畑が再び大松の元を訪れ、完成した回転レシーブを目の当たりにする場面など、約4分30秒の堂々たる出演。「配慮はするって言ったよ!でもカットするとは言ってないよね!」と、まーちゃんが叫ぶ声が聞こえるよう。

その叫びを偶然受け止めた形になったのが、4日放送の『コントの日』。同じNHKで「不祥事でカットされる芸能人」をネタにしたコントが演じられていたのだ。

「編集の殺し屋」がターゲットを消す
『コントの日』は、ビートたけし、劇団ひとり、東京03らが「日本コント協会」を結成し、ユニットコントを披露する。昨年の文化の日に第1弾が放送され、今回が2回目だ。

昨年は「平成」をテーマに、プリキュアやハズキルーペのCMなどのパロディを繰り広げ、少々不安な滑り出しであった『コントの日』だが、今年は「テレビ」をテーマにたっぷりコントを繰り広げていた。面白さもさることながら、番組予算が潤沢なのか、今どきありえないロケ映像まで飛び出していた(「世界ウルルン滞在記」のパロディを撮るためだけに、新川優愛が2泊3日のフィジーロケに出る!)

さて、そのなかで披露されたのがコント「編集の殺し屋」。冒頭、東京03・角田が演じる中堅俳優「都倉和夫」による旅番組が始まる。芦ノ湖をバックに「箱根~!」と絶叫し、寄木細工の工房を訪ね、蕎麦屋に入るも「そばアレルギーなんで」と天丼を頼む都倉(角田は本当にそばアレルギー)。最後は露天風呂につかって締め。わずか2分半。でも本当にオール箱根ロケのVTRである。

ここで場面は会議室に。VTRが流れるノートPCを前に、番組スタッフ(東京03・角田、ジャングルポケット・齊藤)が頭を抱えている。都倉は泥酔状態で街を全裸で走り回り、その姿をSNSで拡散されてしまったのだ。放送まで3時間しかない。

そこに現れたのが、どんな存在でも消し去ってしまう“編集の殺し屋”・ゴルゴ321(劇団ひとり)。旅番組は都倉一人がレポートしており、景色やインサート映像(料理のアップなど)はほとんどない。難しい仕事だが、1000ドル(約10万円)という意外と安値で請け負うゴルゴ。キーボードをハチャメチャに叩き、無駄にライフルを構え、あっという間に映像が完成する。

映像を確認してみると、芦ノ湖でのオープニングは巨大な提供テロップでおおわれ、都倉の姿を隠していた。寄木細工の工房を訪ねるシーンは、左上のサイドテロップを下までビヨーンと伸ばすことで都倉を隠蔽。蕎麦屋では隣の客と店員の「2分割画面」でしのぎ、露天風呂はライフルのスコープで風呂や庭園をアップにする……。

都倉の存在はあとかたもなく消えた。気がつくとゴルゴの姿もない。スタッフたちは目を合わせ「これイケると思うか?」「無理でしょ」「だよね」とお蔵入りを決めて、コントは終了する。

『コントの日』の放送日は以前より決まっていたし、「編集の殺し屋」と現実がリンクしたのも偶然だ。だが一連の「編集で人を消す」という行為を皮肉り、バカバカしく笑い飛ばすには、あまりにもできすぎたタイミングだった。

これから先、テレビで編集で消えている人をみたら、あの殺し屋が出たんだな……と頭をよぎると思う。白いスーツに身を包み、パンチパーマのヅラをかぶった劇団ひとりの姿を。

『コントの日』(NHKオンデマンド)
(井上マサキ タイトルデザイン/まつもとりえこ)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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