西武信用金庫がNTT東日本と「キャッシュレス化」を進める深い意味


消費増税から1カ月が経ち、軽減税率を目当てとしたキャッシュレス決済の利用は順調に広がりをみせている。日本ではインバウンドも年々増加し、キャッシュレス決済の需要はますます高まっていくばかりだ。

来年には東京五輪・パラリンピックも控え、もはや小売店のキャッシュレス化は待ったなしの状況だが、この流れに乗り遅れている経営者も少なくない。特に高齢者になるほどその傾向は顕著である。

そんななかで2019年1月、西武信用金庫がNTT東日本と連携し、取引先企業へ向けてキャッシュレス化のサポートを開始。今回この取り組みについて西武信用金庫本店を訪ね、事業支援部の推進役、落合和司さんと事業支援部の小暮剛さんに話を聞いた。

○「機会の損失」がもたらす深刻なダメージ

「キャッシュレス決済に対応したいけど、やり方がわからない。誰かに聞きたいけど、相談先もわからない……地域の中小零細企業には、こんな悩みを抱えている人がたくさんいます」

そう語るのは、西武信用金庫の事業支援部の推進役、落合和司さんだ。なかには軽減税率制度をちゃんと認識できていない事業者や、制度が複雑だからとキャッシュレス決済の導入を諦める事業者も多いという。

軽減税率の適用は2020年6月末日までの期間限定だ。

今はもどかしいが、それまでやり過ごせばキャッシュレス決済にこだわる必要もない。だから今後も、これまで通りのやり方でいいだろう――そう考える人も多いだろうが、話はそう簡単ではない。

「今、キャッシュレス決済の対応を意味する赤いシールやポスターが、街のあちこちで張られていますよね。消費者は、これがあるかどうかで店を選ぶようになっています。キャッシュレス決済に対応しなければ、店は『機会の損失』に見舞われるでしょう」(落合さん)

「機会の損失」は軽視できない問題である。軽減税率制度の終了後に客足が戻ってくるとも限らず、むしろ、キャッシュレス決済の普及に比例して、キャッシュレス決済未対応の店からは足が遠のいていくに違いないからだ。
○インバウンドのキャッシュレスに対応する強み

では、相談先さえわからない小売店はどうすればいいのか。落合さんは言う。

「取引先の中小企業の経営課題を解決する。それが地域の金融機関の使命だと考えています」

地域の課題解決に乗り出すため、西武信用金庫が頼ったのがNTT東日本である。

NTT東日本が提供するマルチ決済サービス「StarPay」(スターペイ)は、ひとつの端末でPayPayや楽天ペイ、LINEPayといったメジャーな決済サービスに対応。特に中国のWeChatPay(ウィーチャットペイ)やAlipay(アリペイ)など、国外のサービスが利用できるのはスターペイの強みだ。

キャッシュレス決済を国家規模で推進してきた中国は、国民の60%以上がキャッシュレス決済を利用する「キャッシュレス大国」で、小さな屋台でもQR決済できる。インバウンドの4分の1は中国人というなかで、スターペイの持つアドバンテージは大きい。

「我々の取引先は、観光地になっているあきる野市などにもいらっしゃいますが、スターペイならインバウンドのニーズにも応えられる。しかもICTに強いNTT東日本だからこそ、決済端末のネット環境も同時に整備してくれます。キャッシュレス化に手間取る事業者さんのなかにはICTに疎い方もいますが、これをキッカケにNTTのロボット技術を店に組み入れたお客さんもいますよ」(落合さん)
○西武信用金庫とNTT東日本の役割分担

西武信用金庫は信金であるが故に、制度上、大企業や、営業地域外の企業や個人には融資ができない。あくまで地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元し、地域社会の発展に寄与するのがミッションだ。今回の取り組みでは、NTT東日本とうまく役割を分担してミッションにあたっている。

「うちはお金まわりの相談をお客様から受けて、そのなかで課題を見つけて相談に乗る役割です。それに対してNTT東日本は、パートナーとしてお客様のニーズに応え、サービスを提供する役割ですね。現状はうまく連携しつつ、地域に還元できていると思います」(小暮さん)

NTT東日本のサービスは実際に好評で、落合さんによると、西武信用金庫がタッグを組んでいる大きな理由のひとつは、「NTT東日本の2,600人もの営業マンが直接、顧客のところへ出向き、フェイス・トゥ・フェイスの付き合いをしてくれること」だという。

日本でも中国のように、爆発的にキャッシュレス決済が普及するとは限らない。もともとクレジットカードやSuicaなどの電子マネーが普及していたぶん、QR決済の伸びしろがどこまで残されているかは意見が分かれるところだ。

しかし、「キャッシュレス化に限らず、取引先のICT化は進めてあげたい」と落合さんは話す。

「中小企業は、大企業に生産性で負けますが、ICTにもっと注力すれば大企業にひけをとらない生産性を持つことができます。ICTに積極的な顧客はどんどん応援したい。地域が元気にならないと、我々の取引も小さくなっていってしまいます。地域とともに我々は成長していくので、ICTがその推進力になればと思っています」(落合さん)
○今後のキーワードは「高齢化」と「事業継承」

依然として、当面の課題はやはり「高齢化」だ。スマホに慣れ親しんだ世代ならレジと決済端末をWi-FiやBluetoothで接続できる人が大半かもしれないが、50~60歳を過ぎると急激にその割合も減ってくる。

「少子化、人口減少で日本国内のパイが少なくなってきてますし、そういう事情も踏まえ、次世代に事業承継していかないといけないのかな、と思っています」(落合さん)

地域の経営者たちの事業継承を支えるのも西武信用金庫の役割のひとつだ。

「地域の中小企業が抱える課題には積極的に絡んでいって、魅力的で持続可能な地域づくりを応援したいですね。課題が出てきたらすぐに対応できるよう、今後もさまざまなメニューを拡充していきたいと考えています」(小暮さん)

西武信用金庫が取り組むキャッシュレス化の支援。その背景には「持続可能な地域づくり」というテーマがあった。続編では、実際に地域でどのような活動を行っているのか、東村山支店を訪問して話をうかがう。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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