<コラム>スタイリスティックス来日記念 ~ファルセット・ヴォイス、その美しき系譜

Billboard JAPAN

2019/11/8 16:00



今年もクリスマス・シーズンにスタイリスティックスがやってくる。結成50年の節目となった昨年の公演では、ハロルド“イーバン”ブラウンに代わるリード・シンガーとして元レイクサイド~テンプテーションズのバーリントン“ボー”ヘンダーソンを迎えたことが話題となった。バーリントンが担当するのは、かつてラッセル・トンプキンスJr. が務めていたパート。スタイリスティックスは「Can't Give You Anything(But My Love)」に代表される、天を突き抜けるようなラッセルのファルセット・ヴォイスをグループの美点とし、それを新しいリードが引き継いできた。

スタイリスティックスの貢献度

 日本語で“裏声”とも言われるファルセット・ヴォイスは、捉え方は様々だが、クラシックにおける男声のカウンター・テナーに相当する。ソウル・ミュージックでは、中性的な雰囲気や女々しさ、妖しくセクシーな気分を伝える声として、ファンクなどでの男臭い歌声と好対照な魅力を放ってきた。エディ・ケンドリックスやエル・デバージのように地声に近い感じで高く歌うハイ・テナーもファルセットとして括られる(実際に裏声も用いている)ので線引きは難しいが、ソウルのファルセットといって真っ先に思い浮かぶのは、アース・ウィンド&ファイアのフィリップ・ベイリーとスタイリスティックスのラッセル・トンプキンスJr. の声だろう。

エディ・ケンドリックスを意識したというラッセルの声は、トム・ベルのスウィートな音色やヴァン・マッコイが作る華麗なサウンドと相性が良かった。スモーキー・ロビンソン& ザ・ミラクルズの「Ooo Baby Baby」やエディ・ホールマンの「Hey There Lonely Girl」などはその先駆けとも言えるが、ファルセット主体のヴォーカル・グループとして70年前後にその様式美を広くアピールして定着させたのは、スタイリスティックス、デルフォニックス、ブルー・マジックといったフィラデルフィアのヴォーカル・グループだ。2007年にはこの3組の初代ファルセット・リードが“3大テノール”よろしく集った『Three Tenors of Soul: All The Way From Philadelphia』という企画盤が出されたほど。そこには地元の後輩にあたるビラルが客演していたが、彼がお手本にしているカーティス・メイフィールドもまたソウルの文脈では外せないファルセット・シンガー。インプレッションズ時代のカーティスの歌にはラッセルも少なからず影響を受けていたはずだ。

最新の高音&低音の掛け合いを堪能

 ビラルやディアンジェロ、マックスウェルといったネオ・ソウル系シンガーの歌声にはカーティスやマーヴィン・ゲイからの影響に加えて、その狂おしく官能的なファルセットにプリンスへの憧れが滲んでもいる。が、プリンスもスタイリスティックスの「Betcha By Golly, Wow」をカヴァーしていたように、ラッセルを意識していた。スタイリスティックスの「Break Up To Make Up」を模したような換骨奪胎ソングを出しているエリック・ベネイがプリンスとラッセルをアイドルとし、ファルセットをトレードマークにしていることも忘れたくない。また、ウイークエンドやファレル・ウィリアムスはマイケル・ジャクソンの唱法(裏声)を採り入れているが、マイケルもジャクソン5時代にスタイリスティックスの曲をカヴァー。かように、裏声を使うシンガーたちはひと繋ぎの輪の中にいるのだ。

近年のR&B では、例えばBJ・ザ・シカゴ・キッドのように地声と裏声をスムーズに行き来するシンガーの活躍が目立つ。一方で、スタイリスティックスのような往年のグループはファルセットと低音(バリトンあるいはベース・ヴォイス)を専門とするシンガーが掛け合い、せめぎ合うスタイルを様式美としてきた。「You Make Me Feel Brand New」で低音のエアリオン・ラヴと裏声のラッセルが掛け合い、双方の歌声を際立たせる。現在はそれが古参のエアリオンと新参のバーリントンによって演じられる。グループ加入から1年近く経ったバーリントンのファルセットは、きっと磨きがかかっているはず。そんな視点から今のスタイリスティックスを鑑賞するのも一興だろう。

Text:林 剛
Photo:Masanori Naruse

◎公演情報
【スタイリスティックス】
ビルボードライブ大阪(4日間)
2019年12月11日(水)、12月13日(金)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30
2019年12月14日(土)、12月15日(日)
1stステージ開場15:30/開演16:30
2ndステージ開場18:30/開演19:30

サンポートホール高松 大ホール
2019年12月12日(木)
開場18:00 / 開演18:30

ビルボードライブ東京(6日間)
2019年12月18日(水)~ 12月20日(金)、
2019年12月23日(月)~ 12月25日(水)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30

詳細:http://www.billboard-live.com/

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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