現代版ロビン・フッドは「弓矢キャラ地味になりがち問題」をどう解決したのか「フッド:ザ・ビギニング」

エキレビ!

2019/10/20 09:45

ロビン・フッドの物語を現代的に翻案した『フッド:ザ・ビギニング』。その翻案ぶりはすこぶるわかりやすく、それと同時に「弓兵キャラ地味になりがち問題」にも正面から取り組んだ一作である。


義賊=富の再分配! モダンに生まれ変わったロビン・フッドの物語
ロビン・フッドといえば、世界トップクラスに有名な義賊だろう。イギリスはノッティンガムのシャーウッドの森に仲間たちと住むアウトローで、悪い金持ちから財産を奪っては貧しい者たちに分け与える、みたいなイメージが一般的である。弓の名手で頭巾をかぶっており、なんか緑色の服を着ている……という姿で描写されることが多い。

『フッド:ザ・ビギニング』は、このロビン・フッドを現代的に翻案した映画である。舞台となるのは第三回十字軍の時代、ということは1190年ごろ、日本で言えば鎌倉時代の最初の方くらいの話ということになる。イギリスのノッティンガムに住む荘園領主ロビン・ロクスリーが主人公だ。地元の領主であるロビンは馬泥棒に来た娘マリアンと恋に落ち、何不自由のない暮らしを楽しんでいた。

しかし、領主であるロビンの元に、十字軍への参加を求める召集令状が届く。中東の地で数年にわたって激戦に巻き込まれたロビンは、捕虜を虐殺する十字軍に反抗し、弓の使い手である敵兵ヤキヤの子供を助けようとするが失敗。軍規違反を理由に地元へと送り返されることになる。しかしその船には、ロビンの反抗も虚しく息子を殺されたヤキヤも乗っていた。

ノッティンガムに帰ってきたロビンが目にしたのは、当地の代官によって差し押さえられ荒廃した自分の所領、そして他の男の元に嫁いだマリアンの姿だった。領民は皆鉱山で働かされ、十字軍遠征のための戦費として集められる税に苦しんでいる。絶望したロビンの前に、かつての敵ヤキヤが現れる。自分の領地と領民を取り戻すため、表向きは戦争帰りの領主として振舞いつつ、裏ではノッティンガムの代官への妨害工作をすることを提案するヤキヤ。かくして表裏の顔を使い分けつつ、ノッティンガムの代官の陰謀を打ち破るためのロビンの戦いが始まる。

最初に書いたように、『フッド』はロビン・フッドの物語を現代的に翻案した作品である。なので義賊としてのロビンの活動を「実力行使によって富の再分配を行う者」と定義づけ、重税と格差に苦しむ庶民にとっての希望の象徴というふうに扱っている。もともと不満が溜まっていたところに民衆にとってのヒーローが現れ、彼の存在そのものが富裕な悪代官や枢機卿に対する戦いの象徴になっていくという筋立ては、ちょっと『ジョーカー』に似ているような気もする。

その象徴となるのが、ロビンの被っている頭巾である。頭巾といっても『ゼルダの伝説』のリンクが被っているようなアレではなく、どっちかというとパーカーのフードみたいなデザインだ。フードをかぶり、バンダナのような布で顔を隠したロビンの姿がいつしか反体制運動の象徴となり、真似をしてフードを被った一般市民が、火炎瓶片手に機動隊みたいな悪代官の軍勢とぶつかり合う……という映画なので、現代に作られたロビン・フッドの翻案としては非常にわかりやすい。直球すぎて「ちょっとそのまんますぎません……?」とモジモジしてしまうくらいである。

また、翻案ということで言えば十字軍を「イラク戦争みたいなもんじゃ~ん」と捉えた場面もある。ロビンら十字軍に参加した騎士の格好は砂色の長衣の上に現代のボディアーマーのようなブリガンディンをつけた姿であり、そんな格好で長弓をライフルのように構えた兵士が中東の建物の中を歩き回る。対するアラブ側の兵士はターバンを巻いた姿であり、そんな彼らが市街地で連射できる巨大な弩とかを使ってキリスト教徒を迎え撃つのである。翻案としてはコテコテかもしれない。しかし、現代的な中東での紛争を下敷きにした第三回十字軍、そして弓矢を用いた市街地でのCQB(近接戦闘)という絵面には、たとえベタだろうがなんだろうが血が騒ぐ。オタクはチョロいのである。

速射にジャンプ射、ド派手なアクロバット弓術で弓矢を「主人公の武器」に
『フッド』の特徴といえばもうひとつ、弓矢を使った戦闘の奇抜さがある。そもそも、弓矢は歴史ものやファンタジーものの中でも比較的地味というか、あんまり「主人公の武器」という扱いではなかったように思う。『ロード・オブ・ザ・リング』でも弓矢を使うのはフロドやアラゴルンではなく、レゴラスだった。アベンジャーズのホークアイは今の所は単独で映画になってないし、だいたい『エンドゲーム』では刀を振り回していた。弓矢を使うキャラクターというのは、「主人公じゃないけれど、パーティに一人はいると絵面が締まる」みたいな扱いなことが多い。言ってしまえば刺身のつまだが、さりとてつまがなければ刺身を皿に盛っても味気ない……みたいな感じである。

しかし、ロビン・フッドといえば弓矢がメインアームである。ということで、『フッド』では「主人公らしい弓矢の扱い方」とはどういうものかを全力で追求している。現代のアーチェリーでは止まった状態で矢を放つが、そもそも狩猟や戦争では射手は常に動き回りながらできるだけ早く正確に弓を射る必要があった。近年ではその動きの研究が進み、トリッキーでアクロバティックながら実用的な弓術が発展している。デンマーク人の射手であるラーズ・アンダーソンやスタントマンのスティーブン・イッチらがとんでもない動きで弓を射る動画をyoutubeなどにあげているので、興味のある人は見てみてほしい。

で、ロビン役のタロン・エガートンもそれらの動きに習い、右手に何本も矢を持って高速で連射する。アラブ人弓兵であるヤキヤから弓の手ほどきを受けるというストーリーなので、大型の単弓ではなく小型の複合弓に装備も変更。弓が小さくなったので、飛び跳ねたり身をよじったり高速で走る馬車に乗ったりしつつバンバン弓を射ることができる。セミオートライフルくらいの速度でバリバリ矢を放ち、ぶっ飛びながら瞬時に敵を撃ち殺すロビンの姿は、「地味な長距離攻撃専門要員」になりがちな弓術キャラのイメージからはかけ離れている。

さらに、どうしても弓矢が地味な印象になる原因だった「爆発したりしないから、当たった時のリアクションが地味」という問題点も力技で克服。矢が当たった壁や柱はバンバン砕け、練習用の的にしていた板は縦にバリバリ裂け、当たった人間はド派手にぶっ飛ぶ。矢が当たった後のエクストリームなリアクションで、「弓矢って派手でヤバい武器なんですよ!」「当たったら即死なんですよ!」という点を全力でプレゼンしているのだ。わかりやすい!

どうしても地味になりがちな弓矢という武器を、トンチと力技でピストルやライフルに勝るとも劣らないリーサル・ウェポンとして再定義するのは、現代的なロビン・フッドを作る上で必須の作業だったと思う。『フッド』はその試みに本気で取り組んでいるという時点で、おれとしては「いいじゃないですか!」「ご苦労様でした!」と言ってあげたくなる映画だ。タイトルにも『ザ・ビギニング』って書いてあるし、できればちゃんと続編も作って、今作以上のエクストリーム弓矢アクションを見せてほしいと思う。
(しげる)

【作品データ】
「フッド:ザ・ビギニング」公式サイト
監督 オットー・バサースト
出演 タロン・エガートン ジェイミー・フォックス ジェイミー・ドーナン イヴ・ヒューソン ベン・メンデルソーン ほか
10月18日より全国ロードショー

STORY
中世のイギリスで、荘園領主として過ごしていたロビン。しかし十字軍から帰った時、領地は差し押さえられ妻は別の男と暮らしていた。かつての敵であるヤキヤによって弓の手ほどきを受けたロビンは、ノッティンガムの代官による悪行を暴くべく活動を始める

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