MONO NO AWARE 新作『かけがえのないもの』を貫くテーマと視点に迫る

SPICE

2019/10/16 19:00

1stアルバム『人生。山おり谷おり』では、トリッキーでユーモアを含んだインディバンドならではのファンクネスなどを表現。昨年の2ndアルバム『AHA』では、リード曲「東京」に象徴されるように、東京で生きる今の20代半ばの青年像を特定のシーンを超えて響かせたMONO NO AWARE。バンドミュージックが主題とメロディ、アンサンブルや言葉で成立する豊かな有機体であることにマイペースで没頭している稀有な存在だ。そんな彼らの3rdアルバム『かけがえのないもの』はフロントマンでソングライターの玉置周啓(Vo/Gt)の個人的なビジョンがテーマの作品。子供時代に見えていた未来の輝きや怖さ、ものに対する愛おしさや、大人へのとば口に立った少し足がすくむような思い――もちろんもう子供じゃない彼が描くからこそ響くもの、それこそが本作のキモだと思う。映画『沈没家族』主題歌や10月~11月放送の『みんなのうた』のための書き下ろし曲など、この味わい深いバンドをまだ未聴のリスナーにその世界観が広がることを願って、メンバーに話を訊いた。


――MONO NO AWAREの場合、毎回アルバムらしいテーマがあると思うんですが、このアルバムに向かうときのバンドのベクトルはどんなものでしたか?

柳澤豊(Dr):元々(玉置)周啓がアルバム作りたい、音源を作りたいってところからでしたね。

玉置:『AHA』をリリースした後だったので、EPでもいいんじゃないか、みたいな話をマネージャーとしていたときに、その時点でやりたいことがある程度決まっていたんです。

――と言うと?

玉置:例えば、なんで子供って夏休みの宿題、8月の最終週までやらないんだろう?とか、それに代表されるような感覚が子供にあるんじゃないかと。大人である今なら、もし夏休みの宿題をやらないでいたらどうなるかわかってるから、どうにか毎日ちょっとずつやると思うんですけど、なんか見通しを立てて、みたいな感覚がない。そういうような感覚を書きたいし、書こうとしたときにEPだとちょっと曲数が足りないなっていうので、アルバムで10何曲使ってそれを書きたいなと思ったから、最初から「アルバムを作りましょう」って始まったプロジェクトではあったんですね。

――それはその時点ではまだ玉置さんの頭の中にしか存在しなかった?

玉置:そうです。曲も何もできてないし。ただ、きっかけとして『沈没家族』っていう映画の主題歌を依頼されたところだったんです。監督の加納土が同郷の八丈島出身の一つ下の後輩なんですけど、僕が高校時代に見てた彼のイメージと、彼が監督として僕に語る映画のこととか主題歌のイメージにすごいギャップがあって。「ああ、こんな人生送ってきたんだ」って、そこで初めて知って。土自身が昔、共同保育されてたことを「楽しかった」ってことぐらいしか何も覚えてなくて。だからやっぱり子供の頃のことっていつか忘れていくし、そのときに持ってた感覚が大人になると失われてしまうっていうことが、もうほぼ人に共通なものとしてあるんじゃないかと実感をして、そこで「A・I・A・O・U」って曲を最初に作ったんですけど。その1曲で人生の流れを書いて、やっぱ1曲じゃ足りないなってことになって、どんどんアルバム単位で子供の成長を描けたらいいなっていうので始めました。

――去年のMONO NO AWAREは「東京」という曲を出したり、八丈島出身の二人がいて、その上で東京で活動しているバンドというイメージがだいぶついたと思うんです。

玉置:確かに1stアルバム(『人生、山おり谷おり』)はただただ楽しくてやってたバンドのログというか、溜まってた曲をまとめたって感じで、2枚目(『AHA』)はそういう遊び心は忘れないでおきつつも、インディーの狭いところに受ければいいぐらいの気持ちで楽しくやるよりは、もうちょっとマスに広がるようにっていうイメージで作って、そこに「東京」とか入ってきて。今回の3枚目は過去に出した2枚のバランスを見ながら、もっと楽しんで、遊べるはずだし、かつテーマ性を持った内容のものができるって感覚のもと作った感じですね。

――このアルバムの中には年齢のグラデーションがあると思うんですが、どれぐらいの幅で作ろうと思いました?

玉置:最初は『みんなのうた』の話(「かむかもしかもにどかも!」)も同時期ぐらいにあったんで、幼児向けみたいなイメージももちろんあったんです。だから全曲『みんなのうた』っぽいのも考えたんですけど、もう僕は大人になってるし、あんまり子供目線すぎるというか、例えば子供言葉とかでやるのは違うなと思って、どうしよう?と思ってたら、豊が、1~12曲目までを、小6まで、中3まで、高3まで、学年と曲順をリンクさせて作るっていうアイデアを出してくれて。だいたい、その歳に僕が思ってたこととかをメモに書き出して、それをテーマにして曲にしました。

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

――具体的に曲のことを聞いていきたいんですが「新人類」ってちょっと懐かしい言葉ですね。

玉置:ああ、そうなんですか? 誰が使い始めたんですか。

――80年代に経済人類学から始まって、当時の若者を指していたんですけど、玉置さんはどういうつもりでつけたんですか?

玉置:面白いですね。そこは知らなかったですけど、漫画ですね。特に中高読んでた漫画で新しい人類が生まれて、今の人類が駆逐されるとか、追い出されるストーリーが多かったんですよ。例えば『テラフォーマーズ』でゴキブリが人間をとか、『東京喰種(グール)』も、ゾンビものの『アイアムアヒーロー』とかもそうですし、なんか暗い時代だったかもしんないですけど、SFが流行るじゃないですか、そういう時代って。そう考えると子供っていつでも新人類というか、発想も豊かだし、大人になるにつれてそういうものをどんどん子供は捨てていっちゃうっていう流れがあるような気がしていて、「新人類」って言葉になったと思うんですけど。

――確かに最初のヴァースの大人になったら小鳥と恋人になって、空を飛べる子供が生まれたらいいなとは大人は思わないですもんね。

玉置:そのひとヴァースは高一の頃に書いてた歌詞をたまたま見返して、「こんなこと書いてたんだ」って使ったぐらいで。多分、今、僕そんなん思いつかないんで。だからその時点でもう年齢差があるのかもしれないと思いながら使ってみました。

――高校生のときにそう思ってるって、めちゃくちゃ達観してるかもしくはすごく純粋なのか。

玉置:確かに(笑)。どっちだと思う?

加藤成順(Gt):純粋なんじゃない?

玉置:俺の高1を知る男が言うんだから間違いない(笑)。

――じゃあ続きは現在の自分で書いていったんですね。

玉置:そうですね。だからほんと真似っこで、自分でも葛藤しました。そんな心から思ってないのに、文体というかこういうアイデアがあるんだったらこういうアイデアもあるんだよって感じで付け加えていく感じで。すごい、そんなんで出していいのか?っていう葛藤があったんですが、曲がすげえ可愛く仕上がったんで(笑)、これは絶対に使った方がいいと思って。

――曲調はジャンルとして何って言えない感じ。ビートもちょっとラテンなのかな?とか、サイケデリックなんだけどシラフな感じとか。

柳澤:サイケほどじゃないんだけど、でも奇抜な感じというか。酔ってないサイケ(笑)。

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

――そういう印象って加藤さんのギターの音色からくるものも多いと思うんですが、今回いかがでした?ギターの音色については。

加藤:でもやっぱり曲のイメージがちゃんとできてたんで、そこを超えすぎないようにバランス感は大事にしました。ほんとにサイケみたいにもできますけど、そこはワクワクするけど不穏な感じとか。例えば「新人類」で言ったら間奏をやりすぎないように意識して作りました。

――子供の感覚からだんだんアルバムが進むにつれて青春感が出てきます。

玉置:そうですね。そこがプロジェクトを始めたときから変遷したポイントで、最初は少年性のみで語りたかったんです、これまで青春みたいなのはほとんどテーマにせずにやってきたので。でも今回、いいタイミングだなということで。

竹田綾子(Ba):今回のアルバムは前よりも、そういう曲のテーマをすごい共有することが多くて。結構1曲1曲のテーマに対する理解は前よりも高かったような気がします。

――その中でも竹田さんが「これはわかる!」と思ってアレンジがしやすかった曲はありますか?

竹田:何だろうな? 「時間泥棒がやってくる」って曲があるんですけど、最初、ゆっくりな曲だったんですけど、早くした方が曲のテーマにもあってるし、なんか可愛らしいというか。曲も歌詞も最後、切り上げなきゃと思っている、慌ただしい感じがあってるなと。なんかいそいそとしてますね(笑)。

――ちなみに「時間泥棒がやってくる」って、現代にも置き換えられるテーマですけど、そもそもの着想は?

玉置:着想はミヒャエル・エンデの『モモ』っていう作品を読む機会があり、そのテーマがほぼこの曲のテーマです。『モモ』で描かれている、時間を節約するという感覚をもうその時代(1973年刊)書いていた人がいたんだという驚きもあったし、歴史は繰り返すというか、常に都会化した街にはつきものなんだなっていうのを確認して。僕も思い当たる節がたくさんあったし。

――なるほど。「普通のひと」のフュージョン手前のウエストコーストロックみたいなサウンドも新鮮です。加藤さんのギターが今までにない感じの音色ですね。

加藤:確かにそうかもしれないです。大きく変わったのはクリーンをあんまり使ってないかもしれないですね。結構Aメロからガンガン歪んでっていうのは初めてだったかもしれない。録りもそのまま流しで弾いて、エンジニアの奥田さんが「これでしょ」って最初のテイクのギターに決まりました。これまでは結構細かく切ったりしてたんですけど、この曲はライブ感ある感じで、熱量はすごい意識しましたね、ソロとか、他の曲でも全部、カチカチになりすぎないようにその時の空気感や曲にとってベストな方法で進めていきました。

――これまでクリーントーンで単音で、丁寧なリフのイメージだったので。

加藤:うん。エンジニアも面白いことガンガンやろうって言ってくれる人だったので。レコーディング時間も今までよりあったし、合宿も初めてしましたし。だからドラムもベースもギターもみんなうまく作れたと思います。

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

――柳澤さんのドラムはジャズ的だけど、他の楽器は違うことやってたり。

柳澤:前まで一発録りで。今回は僕とベースを先に録って、そこからギターとか上物を構築していくやり方でした。

竹田:そういう意味で、結構時間はかけました。

加藤:今回は周啓がちゃんと伝えてくれたんで、時間をかけられたっていうのもありますね。前回は歌録りでメロも変わってたりとか、歌詞もできてなくて。でも今回は「あ、こんなこと歌ってたんだ」っていうのがなかったんで、困ることはそんなになくて。でもわかってるから逆に苦戦した曲もあります。例えば「女子高生」は難しかったですね。なんか恥ずかしさもあったり(笑)とか、青春感、今出せるのか?みたいな。

――ボーカルじゃないのに恥ずかしい?(笑)

加藤:恥ずかしいって言い方はあれですけど、なんていうか、ギターロックみたいのをもう出せないなっていうか。

玉置:バンドとしても思うよね。バンドとして26になる歳の子らが、「女子高生」って歌を歌う難しさが。

――この曲はなかなかにエッジの立った女子高生を歌ってますね。

玉置:妄想の中の女子高生(笑)。

――(笑)。主人公の妄想が映像として見えるし、リアルです。

玉置:長い一文の曲を作りたくて作ったって感じですね。AメロBメロの構成上で言葉の意味が消えるのがやだなと思って。他の曲は明確にA、Bがパートごとで言葉が切れてる曲がほとんどなんですけど、この曲は文字数もかなり多いので、むしろ全部繋がってるぐらいです。妄想のスピード感がそういうイメージだったんですね。妄想の中なんで情景がどんどん変わっていくみたいなイメージがあって、それを表現してみました。

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

――大元はギターロックだったんですか?

玉置:そうなんですよ。

――それを今やることが難しかったと言うこと?

玉置:やっぱり今の解釈を入れながら、駆け抜けるだけじゃなくて、その青春感をそのまま僕がやると嘘になるんで。でもそうしなくても、もしかしたら曲が持ってる質感はちゃんと保てるのかもしれないなという希望をかけてやってみたという曲ですね。

――奇抜な曲より挑戦なのかもしれないですね。そして自分の感想を言うと、「ゴミ」は聴いてたら自然に泣けてしまいました。

玉置:ああ、ありがとうございます。

――「ゴミ」はいくつぐらいの設定で?

玉置:小6ぐらい……ま、全部“ぐらい”なんですけど。当たり前ですけど例えばポイ捨てとか、ものに感謝をしていない行為にめちゃめちゃ厳しい家だったので。その体験談ですね。

――体の延長も切り離せばゴミだし、「僕たちもいずれはなくなるんだよ」というところにたどり着きます。

玉置:そうですね。最後のヴァース以外は子供のときから思っていたことなので。最後のヴァースで一気にダークというか、大人っぽいジョークというか、ま、そういう感じなんですけど。なんか……不思議だなぁと思って。抜ける髪とか歯がゴミなんだったら、もう死体もゴミなんだなって。祀りはしますけど、死体見ると怖いって感覚はそういうことだと思うし。自分のものじゃない何かっていうのは受け入れられないって感覚なんだろうなとは、今、思うんで。それを最後に付け加えたくて、黒い言葉が入るんですけど。でもちっちゃい頃から親の教育もあって思っていた部分ですね、はい。

――これ良い曲ですね。全然押し付けがましくなくて、自然に思えるというのが。

竹田:私も同じことを思ってた。小さい頃、お菓子の袋とか捨てられなくて、洗ってとってたりとか、捨てたらかわいそうみたいな感情を抱くことがあって。

玉置:言ってたね。動物がプリントされてるお菓子の袋とか。

竹田:命が宿ってるじゃないですけど、そこまで考えてしまって、とっておいたりとか、そういう感情は結構あったので、共感できます。

玉置:そういうのありますよね。汚いぬいぐるみをずっと抱えてるとか、大人からするとほぼゴミじゃないですか、冷たく言えば。でもその子にとっては命が宿ってたりするから持ってるんだろうなっていうのをすごく思って。じゃあぬいぐるみじゃなかったらゴミなのか?とか、無機質っぽくても命が宿ってるとも思うし。このあいだ見た『トイストーリー4』でも、ゴミで子供がおもちゃを作ったら、命が宿ったっていうシーンがあって。「そうだよな」っていうのを思いましたね。

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

――そして「かむかもしかもにどもかも!」ですよ。これが「みんなのうた」で流れると思うとすごく楽しみなんですけど(一同笑)。

玉置:やー、楽しかったです。2~3時間でデモを作って。

――書くのは書けるかもしれないけど、なんで歌えるのか?という。

玉置:それ、ちょくちょく言われるんですけど、結構びっくりしました。結構言えるのかな?と思ってたんですけど、そういう意味ですよね?

――そうそう。

玉置:やってみました? ちなみに。

――やってません(笑)。一行ぐらいはできるかな?と思ったけど。

玉置:ちょっとやってみたら意外といけるかもしれないんで、今度やってみてほしいんですけど。……そうなんですよ。これ、誰もやらないと『みんなのうた』じゃなくて『俺だけのうた』になっちゃうんで(一同笑)。

――これ子供の方が、できる/できないとか考えずに音で真似できそうですね。

玉置:それもギミックの一つとして意識はしました。大人がこれ歌おうと思うのかな?とか、噛むの恥ずかしくて歌えないんじゃないかとか、馬鹿らしすぎて歌えないんじゃないか?とか。子供はもっとコミットしてくれるかな?と思って作ったのもあります。

――サウンド的にはすごくかっこいいのがギャップになっていて。

竹田:音数も少ないし、結構ソリッドな曲になったので楽しかったです。

玉置:歌詞には意味ないですからね(笑)。

――そしてこのアートワークは手塚作品のパロディをオフィシャルでやってる人なんですか?

玉置:つのがいさんは元々ツイッターでこのちょっとギャグっぽいというか、ブラックジャックのパロディ作品を載せてた人で、今の手塚治虫さんの娘さんがやられてる手塚プロに声をかけられて、「よかったらオフィシャルでやってくれ」みたいな話で手塚プロの仕事も請け負うようになった方で。

――インパクトありますねぇ。

玉置:僕は最高に可愛いと思いました。漫画は今回テーマにしなかったですけど、僕の個人の成長には漫画がかなり影響を与えてただろうなと思ったので、じゃあジャケットでお願いしようと思って。手塚治虫さんと藤子AさんFさんは愛読していたから、で、この人の存在を知ったから、ジャケットをお願いすることにしました。

――このアルバムが出ることによってMONO NO AWAREの活動がどういうところに広がっていくと嬉しいですか?

玉置:保育園から老人ホームまで、もっと広い人に聴いてもらえたら嬉しいなと思います。

竹田:それこそジャケットから知ってくれる人もいるのかなと思って。音楽に敏感な人だけじゃなくて、全然違う方面からも聴いてくれる人が広がったらいいなと思いますね。

取材・文=石角友香 撮影=大橋祐希

MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希
MONO NO AWARE 撮影=大橋祐希

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