「千人の交響曲」など2020-2021シーズンラインアップを発表~神奈川フィル創立50周年は全10会場を巡演

SPICE

2019/10/15 20:24



2020年10月に創立50周年を迎える神奈川フィルハーモニー管弦楽団が2019年10月15日(火)、横浜貿易協会(横浜市中区)で、9月末に公表していた2020-21年シーズンに行うコンサートについての概要を説明した。来年度は恒例の『みなとみらいシリーズ』を2020年4月11日(土)から、横浜や相模原などで全9回行うほか、楽団創立50周年記念公演として、メンバーを一般公募する「千人の交響曲」と、毎年1度開いていた『ベートーヴェン/第9交響曲』を全3回開催する。理事長の上野孝は「来年度は50周年の大きな節目を迎える。これまで作り上げてきた神奈川フィルの音楽をしっかりみなさまに聴いていただきたい。そしてこれからの50年、100年に向けてのスタートとして、初心を忘れずに演奏活動に注力していきたい」と述べた。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、1970年10月7日神奈川県立音楽堂(横浜市西区)で『第一回定期演奏会』を開いてからこれまで、定期演奏会はもちろん、子どもたちの音楽芸術体験事業など、地域に密着した活動を展開してきた。東日本大震災後には、復興支援のため被災地でコンサートを開くなど、さまざまな場所に音楽を届け続けている。

東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年。日本が祝祭ムードに包まれる中で、楽団創立50年の節目を迎えられることは、「大きな感謝」と上野。神奈川フィルの“いまを聴く”『みなとみらいシリーズ』で主にコンサート会場として使用している横浜みなとみらいホール(横浜市西区)が2021年1月から改修に入ることもあり、鎌倉、川崎、藤沢など全10会場を巡演するのも2020-21シーズンの大きな特徴だ。
『記念すべきシーズンに常任指揮を務めることができて光栄』と川瀬
『記念すべきシーズンに常任指揮を務めることができて光栄』と川瀬

『みなとみらいシリーズ〈全9回〉』 9月には上野耕平が初登場


2020ー21のラインアップについて就任7年目を迎える常任指揮者・川瀬賢太郎は、「新しく出向くホールでは、集客を考えてザ・名曲といえる曲を選ぶことも考えましたが、僕自身と神奈川フィルがレベルアップしていくために攻めた」と斬新なプログラムについて解説。

2020年4月11日(土)から始まる『みなとみらいシリーズ』の初回は「祈り」をテーマに、隠れキリシタンを1つのテーマにした、伊藤康英の管弦楽のための交響詩「ぐるりよざ」と、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」などをセレクト。「さまざまな“祈り”を、聴いて欲しい」と思いを込めた。

5月16日(土)には、神奈川県と友好交流がある韓国・京畿道(キョンギド)のオーケストラの音楽監督を務めた指揮者、シーヨン・ソンを招く。女性指揮者が同シリーズに立つのは初めてで、川瀬は「新しい時代の幕開け」と期待。木嶋真優のヴァイオリンでブルッフ「スコットランド幻想曲 Op.46」、ドヴォルザーク「交響曲 第8番 ト長調 Op.88」などが披露される。

6~8月は、2020年に生誕250年を迎えるベートーヴェンの楽曲を主軸に展開。6月27日(土)に特別客演指揮の小泉和裕を迎え「交響曲 第2番 二長調 Op.36」を演奏。川瀬は「小泉さんは8月の定期で、5番(「運命」)と6番(「田園」)を連続して指揮されている。さらに進化したベートーヴェンを感じてもらえるはず」と熱く語った。

7月11日(土)には定期演奏会初登場の大植英次が、ベートーヴェンの交響曲 第5番 ハ短調 Op.67「運命」、チャイコフスキー「交響曲 第5番 ホ短調 Op.64」を指揮。川瀬は「僕だったら、怖くてこんなプログラムは組めない。前菜もメーンもステーキみたいな」と驚きの表情を見せたが、「(小泉が振った5番との)違いや個性を楽しんで欲しい」と話していた。

8月22日(土)には、ドイツ・ベルリン生まれのガブリエル・フェルツが客演。大植に続いて定期演奏会に初登場する。40歳代半ばながら“鬼才”とたたえられ、川瀬は「作り上げる音楽が魅力的」と絶賛。ベートーヴェンがヴァイオリン協奏曲として書いた曲を組曲にした「ピアノ協奏曲 ニ長調 Op.61a」を神奈川フィルがどう表現するかも聴きどころだ。川瀬は「めずらしい曲を選曲したと思っていたら、名フィル(名古屋フィルハーモニー交響楽団)も演奏する(2021年1月に予定)と知って・・・。こちらもいろいろなオーケストラと聴き比べてもらえたら」と語った。

9月5日(土)には、2017年に紫綬褒章受章を贈られた沼尻竜典の指揮で、サクソフォン奏者の上野耕平を招く。上野が同企画に出演するのは初めてだが、プライベートで親交があるという川瀬は「とても勉強熱心な音楽家」と称賛。今年1月に東京都交響楽団と行ったニューイヤー・コンサートを上野が訪れていたことを振り返り、「(上野が師事していた)須川展也さんの演奏を聴いて勉強されていた。サクソフォンを超えて、音楽に対して愛が深い音楽家。彼なら素晴らしい演奏をしてくれると思う」と期待していた。

みなとみらいシリーズは2020年10月31日(土)まで、横浜みなとみらい大ホールで午後2時から開演。2021年2月からは会場を巡演していく。会場を変えての初回は、2021年2月6日(土)に相模女子大学グリーンホール(模原市南区)。「初めての会場で、お客さんが入るか心配」としながらも、「ド名曲は選ばなかった」とアメリカのトランペット奏者、ウィントン・マルサリスが、スコットランド出身のヴァイオリニスト、二コラ・ベネデッティのために書き下ろした「ヴァイオリン協奏曲」、コリアーノの「ハーメルンの笛吹き」幻想曲をラインアップ。1983年にジャズとクラシックの両方でグラミー賞を手にしたマルサリスの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いた際、「最初の出だしで、石田さんに合うと思った」と神奈川フィルで首席ソロ・コンサートマスターを務める石田泰尚のことが浮かんだことを回想し、「4楽章から成る曲は、ブルース、ジャジー、マーラーのような響きや、オーケストラ全員でクラップする場面もある。日本初演も、神奈川フィルと、石田さんとならできると思った」と意気込んだ。2021年3月6日(土)には鎌倉芸術館(神奈川県鎌倉市)に、オーボエの吉井瑞穂を初めて招き、モーツアルトの「魔笛」などを演奏する。
就任7年目。『オーケストラとは悪い関係の時もあった。ぶつかった時、話し合うことで成長を続けてきた』と川瀬
就任7年目。『オーケストラとは悪い関係の時もあった。ぶつかった時、話し合うことで成長を続けてきた』と川瀬

『オーケストラ・超名曲集〈全3回〉』


神奈川県民ホール(横浜市中区)で開かれる『名曲シリーズ』はオーケストラとの融合を楽しんで欲しいと全3回開催。2020年4月25日(土)は「ダンス」をテーマに、ラヴェル「ボレロ」やサラサーテ「カルメン」などを選曲。同12月20日はアメリカンジャズを中心にガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」、チャイコフスキー「くるみ割り人形」などを聴かせる。2021年3月20日(土)の第10回公演では、川瀬も大ファンという『レ・ミゼラブル』を、オペラのアリアのほか、ミュージカルのナンバーなども混ぜ「この演奏会だけの『レ・ミゼラブル』を聴かせたい」と気炎。オーケストラ、ミュージカル、オペラとの融合は聴き逃せない。

『音楽堂シリーズ〈全3回〉』


2019年に開館65年目を迎えた神奈川音楽堂(横浜市西区)で開催する全3回のシリーズ。「天才モーツアルトの楽曲を中心に、音楽のフルコースを味わって欲しい」と、開演前にシェフ(指揮者)自らが聴きどころを説明していく。「舞台と客席の隔たりがないところが、最大の魅力。客席にいても、自分が舞台に上がっているかのような一体感があるこの場所で、オペラをやってみたかった」と話す川瀬は、2021年1月23日(土)に、宮本益光の構成でモーツアルトの歌劇『魔笛』を披露。川瀬は「神奈川フィルは古典が上手なオーケストラ。神奈川フィルの魔笛は日本一なので、ぜひ聴きに来て欲しい」とPRした。

楽団創立50年を記念した2つの特別演奏会


2020年10月に迎える創立50周年。2020年11月21日(土)には主催公演として初めて、「千人の交響曲」を演奏することが決まった。川瀬は「マーラーの千人の交響曲は幼稚園の頃から指揮したかった曲。(就任してから)しつこく『8番』と言い続けて、やっと50年の節目、アニバーサリーーヤーにかなえることができました。この公演は、神奈川フィルと僕の集大成として、位置づけています。責任感を持って頑張りたい」と決意。半田美和子(ソプラノ)、福井敬(テノール)らソリストと共に、慶應義塾ワグネル・ソサエティー男声合唱団などと感謝の歌声を響かせる予定だ。

2020年を締めくくる演目は、ベートーヴェン「第9交響曲」。毎年年末に一度行ってきたが、祝祭の年は3度公演を行うことが決定した。2020年12月24日(木)は横浜みなとみらいホール、同26日(土)はミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区)、同27日(日)に2020年を締めくくるステージを藤沢市民会館(神奈川県藤沢市)で開催する。

指揮を務める鈴木秀美は2017年に同企画でタクトを振る予定だったが、健康の上の理由により、公演をキャンセル。「あの時、果たせなかった歓喜を」と思いを込めて舞台に臨むという。

音楽主幹の榊原徹は「巡回公演は50周年を記念するというだけではなく、新しい道へ進むためのものでもある。ぜひ近くで神奈川フィルを聴いてもらいたい」と呼びかけた。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の応援マスコット『ブルーダル』の50周年バージョン(中央)もお披露目された
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の応援マスコット『ブルーダル』の50周年バージョン(中央)もお披露目された

取材・文・撮影=Ayano Nishimura

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