クレームを3つに分類すると…「家が地球防衛軍のミサイルに壊された」場合は?/鴻上尚史

日刊SPA!

2019/10/12 08:30

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆任務を遂行した地球防衛軍への苦情はどう処理すべきか?

しこしこと、11月2日に幕が開く『地球防衛軍 苦情処理係』の稽古を続けています。

今回、「苦情処理係」がテーマなので、いろいろと調べました。

最近は、「苦情処理」ではなく、「苦情対応」、正確には「クレーム対応」という言い方が主流になっていました。適切な苦情は、ビジネスの宝になるので、“処理する”なんてもってのほかで、ちゃんと対応するものなんだ、という考え方です。

いろいろと調べましたが、クレーム対応の専門家の多くは、クレームを3種類に分けていました。

人によって、名付け方は違うのですが、1つ目は、「しごく真っ当なクレーム」です。

相手がどんなに激昂していても、どんなに汚い言葉を使っていても、ちゃんとクレームに真っ当な理由がある、という場合です。

2つ目は、「金品をせしめるためのクレーム」です。要は、ゴネることで、商品かお金をもらおうという、言ってみるとブラックな人達が主にやっているものです。

3つ目は、「孤独でプライドの高いナルシスト」か「精神が壊れている妄想タイプの人」の苦情です。

1番目のクレームは、理由がありますから、対応することができます。

人間は、何時間も怒り続けることは不可能ですし、反省する所は反省し、無理なことは無理だと対話していれば、着地点は見つかるとクレームのプロは言います。もちろん、対話の技術は必要なのですが。

2番目のクレームは、一番、対応が簡単だとプロは言います。

「金をよこせ!」と具体的に要求を語ってしまうと、恐喝など法律に触れる可能性があるので、ブラックな人達は、「誠意を見せろ!」とか「謝罪を形にしろ!」というふうに、遠回しにしか言えません。で、こう言われると、「ははあ。金品目的のプロクレーマーだな」と分かるので、対応は弁護士マターで、場合によっては警察に連絡することになります。

◆まずはクレームのタイプを見極める

一番大変で、世間でモンスタークレーマーと言われているのは、3番目の人達です。

「孤独でプライドの高いナルシスト」というのは、例えば、一流企業に勤めて定年退職したサラリーマンです。

デパート業界で重役だった人が、定年後に時間を持て余して、いろんなデパートを歩き回り、対応の悪い店員に対して、執拗に抗議を繰り返す場合があります。目的は、クレームではなく「俺の話を聞け」「俺を無視するな」ということですから、このクレームには終わりがありません。放っておくと延々と続きます。当然、店員さんは対応に疲れ、退職してしまうこともあります。

もうひとつのタイプ、「精神が壊れている妄想タイプの人」は、「この店員は私をバカにしている」とか「私を無視して笑った」なんてクレームを言う場合です。

完全にクレームが脳内の妄想に基づいているわけで、どんなに説得しても、対話しても、ムダです。本人の都合しかないのですから。

で、この3つのタイプをごっちゃにして、「現代はクレームの時代だ」なんて言ってしまう場合が多いのです。

ですから、まず、クレームが来たら、この3つのうちのどれに分類されるかを見極めることが大切です。

激しく怒っている時は、論理がムチャクチャだったりしますから、まずは、相手の言い分を聞き、相手が落ち着くまで待ちます。その後、その言い分が真っ当なのか、金品を要求している雰囲気なのか、クレームより自己主張なのか、クレームが妄想なのかを判断するのです。

2番目のクレームは警察を含めて厳しく対応するもので、3番目のクレームは誠実に対応しているとこちらが壊れますから、切り上げるタイミングが大切です。

地球防衛軍苦情処理係は、「怪獣に家を壊されたんなら納得できるけど、家は地球防衛軍のミサイルに壊されたんだ。お前達が弁償するのが当然だろう!」というクレームを受けます。

さて、果たしてこれは何番目のクレームでしょうか。イープラスやぴあなどネットでチケット買えます。自分で言うのもなんですが、ムチャクチャ面白いです。鴻上の文章しか知らない人は、一度、鴻上の本業を見に来ませんか? 劇場でお待ちしてます。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ