今夜スタート「時効警察はじめました」先日のSPにはややギャップを感じたと言っても過言ではないのだ

エキレビ!

2019/10/11 09:45

今夜、ドラマ「時効警察」12年ぶりの新シリーズ「時効警察はじめました」がテレビ朝日系の金曜ナイトドラマ枠(金曜よる11時15分。ただし一部地域を除く)でスタートする。新シリーズのスタートを前に、9月29日には「時効警察・復活スペシャル」も放送された。それについてはまたあとで触れるとして、この記事では2007年に放送された第2シリーズ「帰ってきた時効警察」(以下、「帰ってきた」と略)について振り返ってみたい。


主演のオダギリジョーも監督で参加した第2シリーズ
「帰ってきた」は2007年、前年放送の「時効警察」の続編として放送された。総武警察署の時効管理課に勤務しながら趣味で時効事件を捜査する主人公の霧山修一朗(オダギリジョー)と、いつも捜査につき合わされる同署交通課の三日月しずか(麻生久美子)を中心に、時効管理課の面々──熊本課長(岩松了)・又来(またらい/ふせえり)・サネイエ(江口のりこ)、刑事課の十文字(豊浦功補)と蜂須賀(緋田康人)、鑑識課の諸沢(光石研)らアクの強い面々が二人にちょっかいをかけたり、ときに協力するのは前シリーズより変わらず。「帰ってきた」では、ここへ時効管理課の新人として真加出(小出早織=現・早織)が新たに加わった。

各話も、三木聡をはじめ、園子温やケラリーノ・サンドロヴィッチら映画・演劇界の鬼才が前シリーズに引き続き競作し、遊びに遊んでいる。とくにケラリーノ・サンドロヴィッチが脚本・監督を担当した第4話(ゲストはともさかりえ)は、「そんなことあるかい!」と思わずツッコミを入れたくなる超強引なトリックに加え、前シリーズ第8話に出てきた食堂「多め亭」のおばさん(犬山イヌコ)が今度は「早め亭」のおばさんとして再登場して暴走するわ(おばさんは店だけでなく意外なところでも霧山と遭遇する)、三日月がいきなり自分は歌手だと言って歌い出すわ、それでいて「これぞ『時効警察』!」と思わせてしまう怪作である。

これに先立つ園子温脚本・監督の第3話も、冒頭からいきなりTSP(トップシークレットポリス)本部なる謎の組織が登場し、本部長(演じるのはかつて「ウルトラマン」で科学特捜隊のハヤタ隊員として主演した黒部進)の命令により、6と9と番号で呼ばれる部員(深水元基・長谷川朝晴)が霧山の行動を内偵するという意表を突く展開となった。ちなみにこの回では、女優に転身してまもない満島ひかりが殺人被害者として出演しているほか、疑惑をかけられる彼女の元相方役の杉本彩の演技がまるで“モノマネされる杉本彩”のようで楽しい。この回ではまた、時効をまだ迎えていない事件がシリーズでは初めて発覚するが、その処理の仕方も見事だった。

このほか、あいかわらず小ネタもてんこ盛りだわ、各話でチョイ役として登場する俳優がやたらクセがあったり豪華だったり、随所につくり手の遊びが見られる。チョイ役で出ている俳優としては、第1話(ゲストは麻木久仁子)の蛭子能収に始まり、第7話(ゲストは国生さゆり)では毎回オープニングのあいさつを担当する由紀さおりがスナックのママとして登場、また事件の起こった村の駐在の役(男)で、劇団「遊◎機械/全自動シアター」の看板女優・高泉淳子が好演しているのも演劇ファンにはうれしい。第8話(ゲストは松田美由紀・加藤治子)では、三日月が勝手に動物園のゾウに餌をやって飼育員に怒られる場面で、大森南朋が飼育員役としてほんの一瞬登場するのが、何ともぜいたくだ。さらに最終回の第9話(ゲストは室井滋)では、劇作家でもある松尾スズキがヒッピー風のいでたちで、三日月に向かってやたらと「ブス!」と連発する(ひどい)奇妙な人物の役で出演している。

大森南朋が出演した第8話は、主演のオダギリジョー自ら脚本・監督を手がけた。この回では、霧山がけがで入院したため、代わりに三日月が捜査することになる基本設定を覆す展開に加え、ときにシュールな描写、いつにも増してうっとうしい三日月のキャラなどが印象に残る。オダギリといえば今年、初監督した長編映画「ある船頭の話」がベネチア国際映画祭に出品されて話題を呼んだ。「帰ってきた」のこの回が映画監督としての彼の原点と思うと感慨深い。

続編を匂わせながら12年の月日が流れる
このように前シリーズ以上に遊び心たっぷりの「帰ってきた」だが、一方では、霧山が結構、深いセリフを口にする場面もある。たとえば第3話に続き園子温が手がけた第6話(ゲストは西田尚美)では、「ぼくはきょう、やっと時効事件を趣味で捜査している理由が少しわかったような気がします。時効になった事件って、死んだ人間のその後だと思うんです。死んだ人間って死んだあと、知人の思い出のなかに生きるっていうじゃないですか。時効になった事件も人の思いのなかにあるかぎり忘れられることはないんです」と、時効事件の捜査の意義を見出す。いつまでも若々しい旅館の女将にまつわる事件が描かれたこの回では、霧山が、老いたくないという周囲の人たちに対し、年齢を重ねることのすばらしさを説く場面もあった。

霧山は最終回の第9話で、事件を解いたのち、時効事件の捜査という趣味にいったん区切りをつけた。三日月は三日月で、一時帰国した元カレのインターポール捜査官・九門竜(神保悟志)から復縁を持ちかけられるも、結局断って霧山のもとへと走る。彼女はあらためて霧山と二人きりになると、自分をどう思っているのか訊き出そうとするのだが、会話が地震で中断されてしまい、霧山の気持ちは結局わからずじまい。きっと続編へと持ち越すのだろうと思っていたら、じつにシリーズ再開まで12年もの空白が生じたのである。

スペシャル版の元ネタはあの名作映画!?
というわけで、12年ぶりの新作「時効警察・復活スペシャル」について。本作のファンとしては初のスペシャル版はたしかに歓迎すべきものではあったが、やや違和感を抱く部分もあった。その理由はまず映像が、おそらくプログレッシブカメラで撮られているからだろう、映画のように深みのあるリアルなトーンになっていたのが大きい。そこに私は、旧シリーズの軽妙さとのギャップを感じてしまったのだ。

霧山の捜査のやり方も12年を経てかなり変わっていた。旧シリーズでは結構お気軽に事件関係者に話を聞きに回っていたのに対し、スペシャル版では、FBIで色々と学んだためか、かなり慎重かつ戦略的な捜査になっていた。また、旧シリーズと同様、全編を通して小ネタもたしかに盛り込まれていたが、正直、あまり弾けていない印象を受けたし、全体的にシリアスな雰囲気を感じずにはいられなかった。ただ、考えてみれば、旧シリーズは全編コメディタッチで貫かれていたものの、ときに霧山が時効事件の捜査を趣味でやることに疑問を抱くなど、部分部分ではシリアスなところもあった。今回のスペシャルは、そんなこのシリーズのシリアスな部分をあえて前面に押し出してみたということなのだろう。

スペシャル版で霧山の捜査対象となったのは、武田真治演じる“老けない男”だった。捜査しても、なかなか男の過去が見えてこないことに、私はふと野村芳太郎監督の映画「砂の器」(松本清張原作、1974年)を思い出した。男や事件にまつわる書類が、事件の起きた町を焼き尽くした「2・14バレンタイン大火」でほとんど失われたという展開も、「砂の器」において犯人となる男の戸籍が戦災によって失われたことを彷彿とさせたし、霧山がある老婆(余貴美子)と会って男の写真を見せたのは、まんま「砂の器」での丹波哲郎演じる刑事が加藤嘉演じる老人に会いに行く有名な場面のパロディというかオマージュだろう。さらに終盤の回想シーンで流れる曲も、「砂の器」のクライマックスで作曲家である犯人が初演する「宿命」を思い起こさせた。

最初のうちは違和感を抱いていた私も、ここまで「砂の器」を換骨奪胎して現代のドラマとして見せられると感心してしまった。また、劇中で男の過去を消し去った「バレンタイン大火」とは、「砂の器」における戦災の位置づけであるとともに、東日本大震災を多分に意識したものであったはずだ。思えば、「時効警察」の旧シリーズと今回のスペシャル版のあいだに起こったもっとも大きなできごとは、やはり震災に尽きよう。コメディを旨としたドラマも、再開するにあたっては、やはり震災の影響から逃れがたいものがあったに違いない。

とはいえ、今夜から始まる新シリーズもこの調子で行かれると、旧シリーズのファンとしてはどうもとっつきにくい。もちろんシリアスなのもときどきはいいのだが、ここはやはり、つくり手や演じ手のみなさんには今回も思い切り遊んでほしいと願わずにはいられないと言っても過言ではないのだ。よろしくお願いします!(近藤正高)

※「時効警察・復活スペシャル」は10月13日(日)18時までテレ朝動画で無料配信中。旧シリーズである「時効警察」「帰ってきた時効警察」も、Amazonプライムビデオやhuluなどで配信中

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