劇団SET創立40周年記念・第57回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『ピースフルタウンへようこそ』通し稽古レポート

SPICE

2019/10/10 13:26


2019年10月11日(金)に開幕する劇団スーパー・エキセントリック・シアター創立の40周年記念・第57回本公演『ピースフルタウンへようこそ』。初日を間近に控えた10月某日に行われた通し稽古の様子をお届けしよう。

あらすじ


東京都巷区(ちまたく)にある高級住宅街・青金台(あおがねだい)。治安が良く、オシャレな店が建ち並ぶ人気エリア。ある日、この町に志賀内吹京(しがないふきょう/演・小倉久寛)が、妻や子供達を連れて引っ越してくる。彼らは青金台を参考にして、寂れた故郷・素裸無町(すらむちょう)を再興しようと目論んでいた。
超富裕層(ことみゆうぞう/演・三宅裕司)は巷区の区長で、青金台の住民でもある。彼をはじめとするセレブな住民たちは、志賀内一家を快く受け入れる。平和で幸福な毎日ゆえ、青金台の住民たちは常に笑みをたたえ、自然と歌を口ずさみ、身体はウキウキと踊り出す。町のあちらこちらでミュージカルのような光景が繰り広げられる様子に、最初は戸惑う吹京たちではあったが、次第にその不思議な魅力の虜となっていく。
しかし、ある夜、不気味な現場を目撃してしまったことから、青金台が信じがたい秘密を隠しているのではと疑念を抱くことになる。 数日後、彼らの動揺を掻き消すかのごとく、あるニュースが飛び込んでくる。 東京都知事の号令で、歌とダンスで町の幸福度を競い合い、優勝した町は好きな町を吸収合併できる「幸福度コンテスト」なる破天荒な企画が開催されるようだ。 果たして、町の存続をかけたバトルの結末は!? そして、本当の平和とは、幸福とは、人間とは……!


物語は、超富と志賀内の会話からスタート。「あなた今人間ですか?間違えた。あなた今幸せですか?」と大真面目に尋ねる三宅と、怪訝な顔をする小倉の軽妙なやりとりに、これから何が始まるのかと一気に引き込まれる。

場面が変わると、高齢化を解決すべく町おこしに打ち込む素裸無町の住人たちの姿が。参加者の少ないミスコン、なんとも言えない見た目のゆるキャラといった微妙な町おこしと、問題を感じつつ流れに身を任せる住人たちの様子は、誇張されてはいるが実にリアルで親近感が湧く。

そして、そんな町を変えるために立ち上がったのが、吹京の息子・紐次(ひもじ/演・おおたけこういち)と娘の彩華(さいか/山城屋理紗)。さらに、妻・陽久美(ひくみ/南波有沙)の提案により、一家は青金台に引っ越すことになるが、セレブだらけの町で浮かないようにと練習を始める様子がユーモラスで微笑ましい。どこか憎めないセレブたちと、庶民生活が骨の髄まで染み込んでいる一家の噛み合わないやりとりも、思わず笑ってしまうこと請け合いだ。




また、“ミュージカル・アクション・コメディー”を銘打っているだけあって、芝居はもちろん歌もダンスもアクションも見応えたっぷり。

作中で「ミュージカルってなんで急に歌ったり踊ったりするの?」と、よく耳にする疑問が呈されるが、それに対してもっともらしい理由が語られるのも楽しい。青金台の住人たちが総出で町の魅力を歌い踊る様子はブロードウェイミュージカルのようだ。ミュージカル要素が青金台と素裸無町の対比の一つになっているのに加え、後に行われる「幸福度コンテスト」へと繋がっていく流れの鮮やかさも見事だった。

華やかな歌とダンスを満喫し、ユーモラスなセレブたちの会話に笑って、こんな町があったらきっと楽しいだろうなと思ったところで、不意に物語に影が差す。笑いがたっぷり詰まったコメディに漂いはじめる不穏な空気に、この先はどうなるのかと、ますます物語にのめり込んでしまう。青金台の自治会長・羽振良雄(はぶりよしお/演・野添義弘)や青金台の青年団団長・律知豊(りっちゆたか/演・栗原巧平)ら、町の秘密を守るリーダーたちの緩急のついた芝居も素晴らしい。






また、絶妙な間の取り方と構えたところのないやり取りのせいで、段々と彼らが発するセリフが台本かアドリブかわからなくなってくる。キャスト全員が今思い浮かんだセリフを口に出しているような自然な空気によって、心地良い没入感が得られた。

そして、「幸福度コンテスト」での青金台と素裸無町による歌・ダンスバトル、その後のアクションは、どこに目を向けていいか迷うほどの華やかさがあり、見どころ満載。団員たちが所狭しと舞台上を駆け回り、あちこちで繰り広げるバトルは圧巻だ。ここから一体どう収集をつけるのかと思ったところで、物語はさらなる展開を見せる。








様々な謎や秘密が解き明かされた後のダンスシーンは、コメディのラストを飾るにふさわしい明るく楽しいものでありながら、胸に迫る切なさや希望もあり、見終えた後、満足感で思わず溜息を吐いてしまった。


ネタバレになるため詳しくは伏せるが、ラストまで見ると、作中のちょっとしたセリフや掛け合い、設定の中に隠された意味が見えてくる。何回か足を運ぶ方であれば、一回目と二回目では、見えるものや感じることがまったく違ってくるのではないだろうか。

思い切り笑って、しんみりした後に、「そういえばあのシーンって……」「あのセリフ、こんな意味もあったのかな?」「この設定はここに繋がるのか!」という驚きを得て、より深く考えられるのも本作の大きな魅力だと感じた。あなたにとっての「幸せ」、そして人間にとっての「幸せ」とはなんなのかを考えるきっかけと答えに繋がるヒントを、きっとこの作品から得られるはず。

本作は2019年10月11日(金)よりサンシャイン劇場にて開幕する。サンシャイン劇場での東京公演は10月27日(日)まで。以降、11月8日(金)~9日(土)穂の国とよはし芸術劇場PLAT(愛知公演)、11月13日(水)~14日(木)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫公演)にて上演される。40周年記念公演という一つの節目に向け、気合十分なカンパニーのさらなる進化が楽しみだ。

取材・文・撮影=吉田沙奈

当記事はSPICEの提供記事です。

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