井上芳雄「今の時代に僕が演じる多喜二にしなければ」 井上ひさし氏最後の戯曲『組曲虐殺』が開幕

SPICE

2019/10/7 06:00


10月6日(日)、東京・天王洲 銀河劇場にて、こまつ座&ホリプロ製作の舞台『組曲虐殺』が開幕。主演の井上芳雄、演出の栗山民也氏らからのコメントが到着した。

『組曲虐殺』は、2010年4月に死去した井上ひさし氏最後の戯曲。プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生涯を、彼を取り巻く愛すべき登場人物たちとの日々を中心に描いた戯曲。一人の内気な青年が、29歳4ヶ月で死に至るまでを描いた音楽劇だ。

『組曲虐殺』2009年の初演は、第17回読売演劇大賞・芸術栄誉賞(井上ひさし)、最優秀スタッフ賞(小曽根真)、優秀演出家賞(栗山民也)、優秀作品賞を受賞。2012年の再演も、第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞<演劇部門>、第20回読売演劇大賞優秀男優賞(井上芳雄)、同賞最優秀女優賞(高畑淳子)、第47回紀伊國屋演劇賞個人賞(神野三鈴)に輝いている。井上氏の没後10年目のメモリアルイヤー=2019年に再々上演される『組曲虐殺』では、2009年、2012年に続いて、井上芳雄が小林多喜二を演じ、多喜二の恋人・瀧子役で上白石萌音が出演。高畑淳子、山本龍二、神野三鈴ら初演から本作を支えてきた俳優陣と、ピアニスト小曽根真、土屋佑壱も出演する。
舞台『組曲虐殺』井上芳雄 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』井上芳雄 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、井上芳雄、上白石萌音 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、井上芳雄、上白石萌音 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、上白石萌音、高畑淳子、井上芳雄、神野三鈴 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、上白石萌音、高畑淳子、井上芳雄、神野三鈴 撮影=宮川舞子

主演の井上は、開幕にあたり、「この10年で、結婚し子供もできて自分自身の環境も大きく変化しました。井上さんや多喜二から『綱を渡された者』の1人として、未来に希望があることを信じ、今の時代に僕が演じる多喜二にしなければと決意を新たにしています」などとコメント。上白石は、「タイトルが怖いので身構えていらっしゃる方もいるかもしれません。決して多幸感に満ちた時代ではないけれど、幸せになりたいと思って必死に生きていた人たちのお話です。一緒になって一喜一憂してもらえたら嬉しいです」と語っている。
舞台『組曲虐殺』小曽根真 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』小曽根真 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、山本龍二、井上芳雄、上白石萌音、高畑淳子、神野三鈴、土屋佑壱 撮影=宮川舞子
舞台『組曲虐殺』左より、山本龍二、井上芳雄、上白石萌音、高畑淳子、神野三鈴、土屋佑壱 撮影=宮川舞子

演出の栗山民也氏、音楽・演奏の小曽根真、井上、上白石のコメント全文は以下のとおり。

栗山民也(演出)


今、ゲネプロを終え、自宅に戻った。早速、ビールを開ける。ものすごい熱がまだ体全体に残っている。舞台の時間は、これだからやめられない。

今回の舞台は7年ぶりの再々演だが、今までと随分と違った世界に見えた。2人の新しい俳優が参加してくれたこともあるが、皆7つ歳をとって、多喜二のあの暗黒の時代を通し、この歪んだ今の時代へと皆が正直真っ直ぐ向き合っているように思えた。勿論、井上ひさしの言葉が目の前にあってのこと、その一つひとつの言葉が、今の時代にとても強く痛く響くのだ。初演の時の台本の裏表紙に書き留めていた多喜二の言葉を、また思い出す。「革命とは、この田口タキという人を幸せにすることだ。」

とにかくゲネプロの今夜、6人の俳優と1人のピアニストによるセッションは、一つの熱い塊になった。足し算ではなく掛け算で、舞台の温度はぐんぐんと上る。あとは観客の皆さんとのぶつかり合いで、この作品がもっと新しく大きく成長していくことを心から望む。

小曽根真(音楽・演奏)


今回は上白石さん、土屋さんという新しいファミリーメンバーを迎えての再々演になりますが、栗山さんも、僕も、役者さん全員も、新たなインスピレーションをいただいたことで、今までよりも重心が低く、もう一歩も二歩も深い所まで届いたことを感じます。きっと井上先生が描きたかった世界、観客の皆さんにお伝えしたかったメッセージをよりクリアに伝えることのできる作品に仕上がったのではないかと思います。まさしく今の時代に生きている皆さんの心に、先生が鳴らし続けた警鐘が共振するのではないでしょうか。大切なことは、これは生でしか経験できないということです。おそらく、映像で観てもこの作品の良さは100%伝わらないでしょう。皆さんも、井上先生の仰る「運命共同体」として、生でこそ得られるものを感じるため、ぜひ劇場に足をお運びください。

井上芳雄


初演のとき僕は30歳で、多喜二と同年代でした。

それからずっと僕の中には多喜二と井上ひさしさんがずっといて、2人に恥ずかしくない自分でありたいと思って生きてきた気がします。今振り返ってみると「組曲虐殺」は自分が演劇をやる意味に気づかせてくれた、大きな転機となった作品です。すべての舞台は現代社会と繋がっていて、僕たちがお芝居をする意味を明確にしなければ、未来に繋がらないことを学びました。この10年で、結婚し子供もできて自分自身の環境も大きく変化しました。井上さんや多喜二から「綱を渡された者」の1人として、未来に希望があることを信じ、今の時代に僕が演じる多喜二にしなければと決意を新たにしています。

上白石萌音


井上ひさしさんの台詞は、口に出してみて改めて言葉の強さがわかりました。

今はこの作品の一部になれることが嬉しく、演じているとき、本当に幸せです。

全部の瞬間と言葉が本当に尊いと感じます。

私の演じる瀧子はあまり言葉を持っていない子なので、一言一言にシンプルで強い思いが込められています。それが難しい部分でもあるのですが、瀧ちゃんの信念を大切にしていきたいと思っています。自分で飾らず、台本に書かれてあることを全部そのまま受け取って、そのまま発すれば良いんだと稽古中に気付きました。全部井上先生の本に書いてあるんだなと。

タイトルが怖いので身構えていらっしゃる方もいるかもしれません。決して多幸感に満ちた時代ではないけれど、幸せになりたいと思って必死に生きていた人たちのお話です。

一緒になって一喜一憂してもらえたら嬉しいです。

そして言葉のもつ力と、音楽素晴らしさを存分に体感していただきたいです

舞台『組曲虐殺』は、2019年10月27日(日)まで天王洲 銀河劇場にて上演。その後12月まで、福岡、大阪、松本、富山、名古屋の5都市を巡り上演される。

当記事はSPICEの提供記事です。

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