『牙狼』雨宮慶太監督が語る最新作「牙狼を好きでいてよかったと自信をもって言える映画に」


●大幅に書き直した台本
魔界から現れて人間の邪心に憑りつき、人々を襲う魔獣「ホラー」と、これを殲滅する使命を持つ「魔戒騎士」たちの暗闘を描いた特撮テレビドラマ『牙狼<GARO>』。2005年10月に放送されて以来、テレビシリーズ、劇場版、スペシャル番組、スピンオフドラマとさまざまな後続作品が生み出された『牙狼<GARO>』シリーズは、2008年よりパチンコCR機となったり、アニメーション作品が作られたりと、さらなる世界観の広がりを見せ、現在に至る。

このたび、テレビシリーズとしては第4弾にあたる『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』(2014年)で活躍した魔戒騎士・冴島雷牙(演:中山麻聖)を主人公とした映画『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』が2019年10月4日より全国劇場にて公開されている。監督・脚本を務めるのは、『牙狼<GARO>』シリーズの生みの親として、斬新なビジュアルイメージと魅力的なキャラクターたちを創造してきた映像界のトップクリエイター・雨宮慶太氏。現実世界と幻想世界の狭間を行きかうような、独自の「雨宮ワールド」には熱烈なファンが存在しており、5年ぶりとなる冴島雷牙の凄絶な戦いのドラマに、大いなる期待が込められている。

ここでは、映画公開を記念して雨宮監督にインタビューを敢行。『月虹ノ旅人』製作の経緯や、作品作りに込めた監督自身の思い、そして『牙狼<GARO>』シリーズを愛してくれる大勢のファンに向けたメッセージが語られた。

――2018年の『牙狼<GARO>神ノ牙-KAMINOKIBA-』に続いての劇場版となる『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』ですが、本作が"冴島雷牙"の物語となったのは、どんな理由があったのですか。

『月虹ノ旅人』はもともと、『魔戒ノ花』のテレビシリーズが終わるころ「雷牙の映画を作りたい」と思って企画したものだったんです。『月虹ノ旅人』というタイトルや、雷牙が謎めいた"列車"に乗る、というイメージはそのころからありました。

――それでは2014年の『魔戒ノ花』から数えて、5年ぶりに実現した映画ということになるんですね。製作に至るまでには、どのような経緯がありましたか。

『魔戒ノ花』の直後に作るはずが、諸事情で製作環境がどんどん延び延びになってしまい、その間に別のコンテンツが入ってきて、ふつうだったらそのままお蔵入りになるケースだったんです。でも、昨年にもういちど「雷牙の映画」にチャレンジできそうな環境が整ってきたので、メインキャストのスケジュールを確認し、製作にGOが出たわけです。そして、いま雷牙の映画を撮るんだったら、『魔戒ノ花』の直後ではなく、数年が経過した「現在」の時間軸でやろうと思い、ストーリーをもう一度見直して大幅に書き直しました。かなり直したので、完成した台本で以前の構想が残っているのは「列車が出るところ」だけになりましたね(笑)。

――謎の男・白孔に連れ去られたマユリを追いかける雷牙が、いつの間にか乗り込んでしまった不思議な列車は、車輛自体が小さな「町」であるかのような喧噪に満ちた、幻想的な空間でした。観客にとっては、ここが幻想世界なのか、現実の延長なのかがすぐにわからないような演出になっていましたね。

そういう画面を作っていくのが、作り手としていちばん難しい部分です。「こっち方向にいくな」と思わせて、やっぱり「こっちだった」と思われるのがもっともつまらないですから、ちょっと「あれ?」と思うような部分を見せておいて、それが観ている人たちの想像より少し上のほうに行くと「面白さ」につながります。列車の中で、雷牙を導いてくれる謎の少年が出てきますが、彼の正体が一体"誰"なのかという部分なんて、まさにそういった狙いから来ている要素です。ネタバレになるので、ここでは言えませんけれど……。

●主演・中山麻聖の成長

――キービジュアルには、『牙狼<GARO>』第1シリーズの主人公である冴島鋼牙の姿があり、最初期から『牙狼<GARO>』を応援してきたファンのみなさんが歓喜しましたね。映画の中で鋼牙がどんな"活躍"をするのかは公開されてからのお楽しみということになりそうですが、雨宮監督としては、鋼牙の"復活"についてどのような思いを抱かれていますか?

鋼牙に関しては『魔戒列伝』(2016年)のワンエピソード(第12話)の後、「パチンコ牙狼」シリーズの最新作(2019年7月稼働)映像に登場させていて、その次にこの『月虹ノ旅人』ですから、自分としてはそれほど久しぶりという感覚ではないんです。パチンコの映像もちゃんとストーリーのある台本を作って、ふつうの映画と変わらない熱量で撮っていますしね。

――すでに鋼牙は復活を果たしている、ということでしょうか。

今の段階では「必要なときに来てもらっている」という感覚です。そういう意味では、まだ「冴島鋼牙を中心に据えたドラマ」を作っているわけではないので、"復活"ではないですね。ちゃんと鋼牙が"復活"する作品を作るためには、環境がしっかり整わないといけません。その環境作りがいちばん大事なんです。

――ハリウッド映画の「パート2」「パート3」にしても、1作目を機に大ブレイクした俳優がいたりして、ふたたびオリジナル・キャストを結集させようとしても簡単にいかないケースがありますね。その点『月虹ノ旅人』では主演の中山麻聖さんをはじめ、『魔戒ノ花』のメインキャストがちゃんと結集し、それぞれに見せ場が与えられていました。世界観的には当然のように感じられますが、製作サイドからするとキャストの再結集を実現させるだけでもたいへんなことなんですね。

確かに、スケジュールを合わせる作業もかなりたいへんでした。昨年の6月に撮影したのですが、これが唯一のチャンスだったんです。京本政樹(特別友情出演)さんや渡辺裕之さんといったベテラン勢のスケジュールも含めてね。

――『魔戒ノ花』から年月を経て、ふたたび冴島雷牙を演じられた中山麻聖さんの"成長"ぶりについてはいかがですか?

俳優としても経験を積んで、たくましくなりましたね。アクションも久しぶりだったはずなのに、すぐにカンを取り戻して、かなり難易度の高い動きをこなしていました。『月虹ノ旅人』では、生身同士のアクションをいつも以上に見せようという狙いがありますので、アクションが好きな方は大いに期待していただきたいですね。

――列車のシーンに出てくる、つぶやきシローさん扮する「青ヒゲ」というキャラクターが、雷牙の"いちばん入り込んでほしくない部分"に入ってかき回し、ストレスを与える役割を担います。つぶやきさんの印象はいかがでしたか?

つぶやきさんはよかったですね。あの方がいなかったら、映画が締まらなかったと思います。もっとも触れてほしくない部分を突っつかれた雷牙の「痛み」であるとか「キツさ」を感じさせる表情が撮れたのは、つぶやきさんとのやりとりがあってこそでした。

●四道役・大杉漣さんへの思い

――つぶやきさんとはポジションが異なりますが、雷牙を列車へと案内する不思議な駅員を演じられた下條アトムさんも、短い出番ながら強烈な存在感がありました。

下條さんも映画をご覧になり、喜ばれていました。ああいうたたずまいのキャラクターが出るだけで、映画全体の空気が優しくなりますから、下條さんに出ていただいてありがたかったですね。

――今回、雷牙の前に立ちはだかる強敵・白孔を演じられた松田悟志さんは『仮面ライダー龍騎』(2002年)の仮面ライダーナイト/秋山蓮役で知られています。ミステリアスな仮面と漆黒の衣装が見事に決まり、魅力的な"悪"キャラクターとなっていますね。

松田くんのおかげで、撮影している間でも白孔のイメージがどんどん膨らんでいきました。画面には出てきませんが、白孔はかつて魔戒騎士であり……みたいな、サイドストーリーが想像できるんです。映画には直接関係ないですから、そういうのはなくてもいいんだけれど、あればピリッとスパイスが効きますからね。

――劇中に、昨年2月に急逝された大杉漣さん演じる魔戒法師「四道」の名前が出てくるのも嬉しかったです。

四道法師は『魔戒ノ花』のレギュラーでしたし、今回の『月虹ノ旅人』にも出てくる予定だったんです。台本段階では、四道を出してお話を転がしていこうと思っていたんですけれど、その部分を書いているときに大杉さんが亡くなられたと聞きました。すごいショックを受けて、そこでしばらく筆が止まりましたから……。ちゃんといい台本を仕上げて、もう一度出演をお願いしようと思っていた矢先で、とても悲しく、残念に思いましたね。人間になったマユリをいちばん心配しているのは四道ですから、言葉の上だけでも四道が健在であることを映画で示しました。

――映画の中で、雨宮監督が頭の中で思い描いているとおりのビジョンが、映像としてうまく表現できているな、というカットはどこでしょう?

それは難しい質問ですね……。完全に自分の考える画が表現できたと思えたカットは今まで存在していないですから。みな、どこかしら画面としては不満が残ったりして、すべてが思ったとおりの画になったためしがないんです。でも、ぜんぶ思い通りの画が作れるようになってしまったら、もう映画を撮らなくなるかもしれません。映像作品で自分のイメージをなかなか"埋める"ことができないからこそ、これからも映画を撮り続けようと思うんでしょうね。あと、自分が映画を作るときに重要視しているのは、どういうビジュアルを見せようかということよりも、お客さんが映画を観終わった後の感情がどういう風になっているのかという、目に見えない部分のほうなんです。映画を観て「グッと来た」「怖かった」「ハラハラした」など、お客さんの感情がどういうところに"着地"するのかという部分に強い興味を持っています。ひとつひとつのカットで多少"粗い"ものがあっても、そこは他のカットと重ね、つなげた状態で観てもらえばいいかな、と思っています。

――『魔戒ノ花』の主要キャラクターの"その後"を描くと共に、京本さん、渡辺さんと『牙狼<GARO>』シリーズで活躍された俳優も登場して、本作はシリーズの「集大成」という雰囲気を醸し出しています。その一方で少し心配してしまうのは、『牙狼<GARO>』シリーズの「完結編」という意味も含まれているんじゃないかということですが……。

この映画に限らず、毎回『牙狼<GARO>』を作るときは、いつもこの作品が「完結編」だという思いで作っていますよ。常に、ここで「終わり」にしていいと。作品を作るとき「この映画、次に続きますので」という"含み"は持たせずに、ひとつの映画を1本、しっかり作りとおすという姿勢はずっと変わっていません。今のところは、気軽に「次の作品は~」なんて言えません。また、そう言えない状況にしようという心がまえで取り組んでいます。

――最後に『月虹ノ旅人』の公開を楽しみにしているファンの方々に、雨宮監督から一言メッセージをお願いします。

映画自体が、私から『牙狼<GARO>』ファンのみなさんに向けたメッセージになっています。『月虹ノ旅人』は、2005年の『牙狼<GARO>』からずっとシリーズを好きで観てくださっている人たちの心に、きっと響いてくれると思っています。今まで応援してくれた人たちが『牙狼<GARO>』を好きでいてよかった、と自信をもって言えるような映画にしたかったですし、そう思ってもらうためにはどうしたらいいか、真剣に考えて作りました。『月虹ノ旅人』ぜひお楽しみください。

映画『牙狼<GARO>-月虹の旅人-』は全国劇場にてロードショー公開中。

(C)2019「月虹ノ旅人」雨宮慶太/東北新社

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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