「クリエイティブの力」で子どもの可能性を伸ばす新たな試み

TABILABO

2019/10/6 19:00


さまざまな企業や団体、企画の動画制作などをおこなうクリエイティブエージェンシー「NINJAWORKS」が手がける“教育”に関するプロジェクトが話題となっている。そのプロジェクトの名は「GIFT」。クラウドファンディングで公開早々に目標額を達成し、次なるフェーズへと移行した注目のプロジェクトについて「NINJAWORKS」のクリエイティブディレクターであり「GIFT」プロジェクトの代表を務める富田直樹さんに話を聞いた。

プロジェクトの最初のアクション
それは「学べる場所」の創造



──まず最初に、現在クラウドファンディングに公開しているプロジェクト「GIFT」について簡単に説明してもらえますか?

富田直樹さん(以下 富田):「GIFT」自体はかなり大きなプロジェクトで、“子どもの可能性を広げるための新しい教育”というコンセプトを軸にしたものです。

これからいろいろなことを仕掛けていくなかで、第一弾のプロジェクトとしてスタートさせたのが、クラウドファンディングで公開している「GIFT School」になります。

──「GIFT School」とは?


富田:3歳~15歳の子どもが30人ほど通う、異年齢混在のマイクロスクールです。9月にアフタースクール(学童保育所)としてオープンし、レギュラースクールとしては2020年4月の開校を予定しています。

──なるほど。それでは「GIFT」を立ち上げ、「GIFT School」を開くに至ったきっかけを教えてください。

富田:このプロジェクトの運営元である「NINJAWORKS」は、コミュニケーションや映像制作を中心としたクリエイティブワークをおこなう会社です。

最近の国内の事例としては、“人工のクモの糸”で有名な、構造タンパク質素材の開発をおこなっている「Spiber」社などのコミュニケーションに携わっています。

「NINJAWORKS」の中心メンバーは、僕(クリエイティブディレクター)と服部亮(マネージメント)、八尾良太郎(戦略/コミュニケーションディレクター)の3人なんですが、全員が割と熱苦しいタイプでして......(笑) 普段から仕事についてだけでなく、政治や環境問題なども話し合ったりしていたのですが、メンバーそれぞれに子どもが産まれたのをきっかけに、子育てや教育、学校の話をするようになりました。

仕事柄“リサーチ癖”がついているのでいろいろ調べてみると、世の中はものすごい勢いで変化しているのに、学校や教育に関しては、自分たちが子どものころどころか、100年以上も根本的な部分が一切変わっていないということを知ったんです。

──時代に則していない、と。

富田:今の子どもたちが社会に出る20年後、30年後の世界って、もしかしたら今の大人が想像できる変化の範囲を超えているかもしれない。

そんな時代を生きていくには、さすがに100年もまえから変わっていない教育システムでは対応できないだろうという思いが、このプロジェクトを立ち上げる大きなきっかけです。

問い直す「評価」のあり方
未来の教育に必要なものとは......



──少し意地悪な表現ですが、富田さんをはじめ、今の大人のなかにも、100年以上にわたって変わっていない教育環境やシステムのなかで育ちながら立派に成功している人は少なくないとも思うのですが……。

富田:はははっ(笑) でもそれは、少し意地悪な答え方をするなら“立派”や“成功”をどう捉えるかにもよると思います。

──“立派”や“成功”の定義ということでしょうか?

富田:文句を言わずに現状を受け入れ、「何かおかしいな?」と感じながらも周りに合わせて波風を立てずにいるのが立派なのか。または、いい学校に入ったり有名な企業に就職してお金を稼いでいれば立派なのか、成功なのか……。

本来、立派のカタチに答えなんかはなくて、人それぞれで違うのだと思います。そういった考え方や捉え方は、間違いなく、これからますます加速していきます。

「この世界は多様な人々で成り立っている」ということをそろそろ認め合うべきで、その考え方の芽を育てるのはやっぱり学校や教育だと思ったんです。

──なるほど。

富田:たとえば、私の娘は今3歳半なんですが、どんな子どももそうだと思いますが、彼女は好奇心の塊で、とても自由な発想で少しずつ広がっていく世界と接しながら、スポンジのようにいろいろんなことを吸収して学んでいます。

しかし、一旦、公教育的なシステムに入ってしまうと、みんなと同じように“言われたことを言われた通りにやる”ことで評価されるようになる。

大人が“あらかじめ決めた答え”に向かっていかなければならなくなる……。

これから人としての土台が作られるとても大事な時期を、そんな価値観のなかで過ごさなければならないのは、本当にもったいないことをしているなと感じるんです。

──そのためには学校や教育のシステムを変える必要がある、と。

富田:もちろん、学校や教育がすべてではありません。ですが、幼児教育からはじまり、社会に出るまでの10年、20年というとても長い時間が人生に与える影響が小さいはずはありません。

ちなみに、僕の個人的な話をすると、小・中学校はスペインのマドリードの日本人学校に通っていたんですが、生徒数はとても少なく、結果的に個別の学習や異年齢の関わりも多かった。両親もいろいろなことに「とりあえずやってみたら?」とチャレンジさせてくれたり、幸運なことにのびのびと育つことができたように思います。

子どもの可能性を最大化するのは
「クリエイティブの力」



──既存の学校や教育システムとプロジェクト「GIFT」「GIFT school」の違いは?

富田:違いは……たくさんあります(笑) ちょっと語弊があるかもしれませんが、今感じているもっとも大きな点は“目のまえにいる子どもたちのことを、本当に見ているかどうか”というところ。

すごく当たり前のことですが、子どもは一人ひとり違います。興味の対象も違うし、得意・不得意も違う。学びやすい環境や集中しやすい姿勢だって違います。鉛筆なのかタブレットなのか、座っていたほうがいいのか、動いていたほうが集中できるのか……。

──たしかに、今の学校の多くは、子どもたちが同じ姿勢で同じ方向を向いて、同じ教材を使い、同じタイミングで同じことを学んでいますね。

富田:でも、それって本当に子どものことを考えてのことなんでしょうか? 「学年」の問題もそうです。


──学年……ですか?

富田:はい。たとえば、うちの娘は12月生まれなので、学年で分けられてしまうと4月生まれの子と同じ学年になるのですが、生まれたタイミングは8ヵ月も違うんです。子どもにとっての8ヵ月の違いは、すごく大きいものなんですが、現代の学年という枠でくくられ比較されてしまうと「できない子」になってしまう可能性が高くなってしまいます。

そこで「GIFT school」では、まずは学年や学び方といった、本質的ではない“同じ”はすべて取り払って「みんなが違って当たり前だよね」からスタートしています。

個別の学びや異年齢混在というシステムにはそういった背景があります。

──なるほど。ほかには?

富田:既存の教育との違いというか、大事にしたいと考えているのは「バランス」です。

公教育を含めたさまざまなオルタナティブな教育システムに触れていくなかで感じたんですが、形や型、方法、思想に囚われてしまっているのか、どこかに“偏って”しまうことがあるんです。

たとえば、テストでいい点数を取ることが目的になっていたり、逆に“知識”を必要以上にわるいものとしていたり、テクノロジーを排除しようとしたり、または“自由”でありすぎたり……。

もちろん、それぞれのスタイルは尊重しつつも、「GIFT」ではなるべく偏らないようにしたいと考えています。

自然とテクノロジー、知識と経験、自由と規律など、つねに揺れながらバランスをとっていくのが理想的かなと思っています。


富田:「GIFT」というプロジェクトのコアにある価値観は、子どもの可能性をできる限り広げてあげることであり、子ども可能性を潰さないことなのですが、学校として「こういうことをやりたい」よりも「こういうことはやりたくない」からはじまっていることが多いかもしれません。

また「GIFT」には、その価値観を体現する、ふたつの軸があります。

──ふたつの軸……?

富田:まずひとつは「誰もが安心して学べる環境であること」、そしてもうひとつが「未来を切り開くクリエイティブな力を育む」ということです。

「安心して学べる環境」というのは、先ほどご説明した「子どもは一人ひとり違う」ということに対する答えです。

そして「クリエイティブな力」とは、絵を描いたり楽器を弾いたりといった技術的な力ではなく、簡単にいうと「課題や問題を発見し、それらの答えを見出して実践していく力」です。

子どもたちがこの先どんな生き方を選ぶとしても、幸せに生きようと思えば、その想いを実現する力が必要になります。

そして、もう少し広い視野で考えた場合、これから人類は非常に困難な、そして答えのない問題に立ち向かわなくてはならない時代が、きっとやってきます。そんな時代を力強く、そしてしなやかに生きるには「クリエイティブな力」は欠かせないと、僕たちと「GIFT」は考えているんです。

未来を生きる子どもたちに
今を生きる大人たちができること



──「GIFT school」が実現することで、日本の教育はどのように変わり、子どもたちの未来はどうなると考えていますか?

富田:子どもたちの未来は……読めないですよね。経済や環境問題など、未来に関しては明るい気持ちになるニュースは少ないのが現状です。でも、だからこそ、子どもたちにはもっとホリスティックな力や感覚、センスを身につけてもらいたいと思っています。

そして「GIFT school」ができただけでは、日本の教育は変わりません。これは、あくまでもひとつの表現であり、今後はもっと広く教育に働きかけていくようなプロジェクトも考えています。

──それでは、最後に「TABI LABO」の読者、プロジェクトに支援を考えている方、子どもをもつお父さんやお母さんにメッセージをお願いします。

富田:公教育のすべてがわるいわけではなく、素晴らしい学校や先生方もたくさんいます。ただ、残念ながら、子どもたちは教室を選ぶことはできません。いい先生に巡り会えればいいけれど、そうはいかないかもしれない……。そんな宝くじのような運任せが嫌で、僕たちは「GIFT school」を立ち上げることにしました。

未来を生きるのは、今の大人たちではなく、子どもたちです。

その子どもたちが未来に備えるために、どんなバトンをわたすのか……それこそが今できる“もっともクリエイティブな仕事”だと思って、このプロジェクトをはじめました。

現在、2020年4月のレギュラースクールのオープンを目指して、クラウドファンディングで支援を募りながら、いろいろと準備を進めています。

今の教育システムに不安や疑問のある方、子どもたちの可能性を広げたいという方、ぜひ一度見学にいらしてください。スタッフや先生としての参加に興味ある方も、お待ちしています。


「GIFT」プロジェクト
https://readyfor.jp/projects/gift
【OFFICIAL WEB】www.gift-ed.org

Top image: (C) 「GIFT」PROJECT

当記事はTABILABOの提供記事です。

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