"特撮界のキーマン"坂本浩一監督が手がける特撮アクション時代劇『BLACKFOX』- 厳選キャストの異種格闘技戦に注目


●山本千尋主演×アクション時代劇で即OK
近未来を舞台にしたSFアクションアニメ映画として注目を集めている『BLACKFOX』と連動する形で、実写映画『BLACKFOX: Age of the Ninja』がWEB配信という形で発表された。10月5日より各動画配信サービスで配信がスタートしている。

実写版の演出を手がけるのは、「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」という特撮人気シリーズに参加し、数々の傑作を生みだした特撮界のキーマンと呼ばれる坂本浩一監督。今回は、坂本監督にとって初の「時代劇」作品となる。東映京都撮影所のベテランスタッフたちが生み出す伝統的な映像美と、数々の特撮アクション作品で鍛えた坂本監督の柔軟な発想力が合致したとき、かつてない「特撮アクション時代劇」が誕生した。

ここでは『BLACKFOX: Age of the Ninja』の配信開始を記念して、坂本監督に単独インタビューを行い、監督の時代劇にかける熱い思いや、『BLACKFOX: Age of the Ninja』の撮影秘話、そして主演を務める山本千尋の魅力について語ってもらった。

――坂本監督にとって、本格的な「時代劇」作品は今回の『BLACKFOX Age of the Ninja』が初めてになりますね。

僕も子どものころ時代劇が大好きで、テレビや映画でたくさん観て育ちましたから、以前からすごく撮りたかったジャンルでした。ですから今回の『BLACKFOX: Age of the Ninja』では、自分が以前から"こんなことをやりたい"と思っていたものを全部ぶつけた感じです(笑)。撮影中はとても楽しかったですし、完成した作品も満足がいくものに仕上がったと思います。先日、キャストのみなさんに試写を観てもらったのですが、とても反応がよくて嬉しかったですね。

――そもそも、こちらの企画はどのようにして立ち上げられたのでしょうか。

もともと『BLACKFOX』はアニメ映画の企画があり、今回の実写版はそのスピンオフ作品として企画されました。アニメ映画の上映と連動して、実写で短編映画を撮れないか、という意見が製作委員会から持ち上がって、時代劇専門チャンネルさんが加わったかたちです。最初は30分くらいの短編作品にしようか、という話が進んでいて、主演候補に山本千尋ちゃんの名前が挙がった段階で、監督を僕に……というオファーをいただきました。

――本作の監督を依頼されたときの監督のお気持ちはいかがでしたか?

千尋ちゃん主演でアクション映画を撮るというのと、時代劇作品だということで、ぜひやりたい! と即OKしました(笑)。

――『BLACKFOX:Age of the Ninja』のストーリーはどのようにして作られていったのでしょう。

アニメ版の脚本を書かれているハヤシナオキさんに実写版も書いていただけたら、アニメと世界観が共有できますし、スピンオフ企画としてうまく連動するんじゃないかということで、最初に実写版用の短いプロットを出していただきました。そこに僕のほうからアイデアを出して、全体のストーリーを固めていきました。

●主演・山本千尋の魅力

――キャスティングはかつて坂本作品で活躍されたアクション志向の俳優さんで固められている印象ですね。

時代劇専門チャンネルの方たちから『影の軍団』(1980年)シリーズみたいな往年の東映アクション時代劇をもう一度復活させたい、という思いを強く感じました。それなら、演技はもちろん、激しいアクションを自分でこなせる俳優をキャスティングしないと成立しません。刀を構えただけで"この人は強い!"と観ている方に感じさせないといけない……と意見が一致しまして、役に合ったキャストを厳選していった感じです。

――シナリオ作りの段階から、この役者さんを想定している"アテ書き"のような印象を受けるほど、役柄のイメージどおりの俳優さんがキャスティングされていると思いました。

そういった部分は大きくありますね。今回の映画に出てくる「根来衆(ねごろしゅう)」や「戸田重次(とだ・しげつぐ)」という人物は、アニメ版とのつながりを持たない実写版オリジナルのキャラクターなんです。これらはハヤシさんが作られたストーリーに、僕のほうから「こういうキャラを出したい」と提案した部分です。もうこの時点で、このキャラはこの人に演じてもらいたいと想定し、オファーをかけていきました。

――当初は短編映像作品だった企画が、どんどん構想を膨らませることによって、90分越えの「単体作品」へと発展していったわけですね。

そうですね。30分じゃもったいないから「30分×3話」のミニシリーズにしましょうか、というところまで話が広がっていて、3話ぶんの構成にしたんですけど、1本にまとめて編集したバージョンを観ていただいたら「これは分割ではなくて、1本の映画として観たほうが作品の醍醐味がより伝わる」とプロデューサーが判断され、単体作品として世に出ることになりました。

――アニメ作品『BLACKFOX』とこちらの実写版『BLACKFOX: Age of the Ninja』は、時代設定がまるで異なっているとうかがいましたが、いくつかのキャラクターの名前や性格設定などが連動しているそうですね。

主人公はアニメも実写も「石動律花(いするぎ・りっか)」ですし、アニメの「ミア」にあたるのが、矢島舞美ちゃんの演じる「宮(みや)」なんです。ミアはチェスが得意という設定ですが、宮は将棋が上手いという風に、アニメと実写がリンクしているようなキャラ設定が考えられています。アニメ映画を観た後に、こちらの実写版を観ると、そういった関係性がわかって面白いと思います。

――坂本監督から見た、主演・山本千尋さんの魅力とは何か、聞かせていただけますか。

千尋ちゃんは子どものころから中国武術をやっていて、日本人でありながら本場中国の選手を抜いて世界チャンピオンになった人。「世界」で頂点をつかみとるには、よほどの特性や努力がないとたどりつけません。それを成し遂げた時点で、背負っているものが違うと思うんですよ。ですから、彼女がアクションをしていると、体の中からオーラというか、目に見えない気迫のようなものが出ているんです。そういうところがとても稀有な存在だと思います。これまで僕が一緒に組んだ作品では、千尋ちゃんの得意とする中国武術を前面に押し出したキャラクターとして描いてきましたけど、今回は中国武術をあえて"封印"してもらって、彼女の違った魅力を引き出したいと思って取り組みました。

●矢島舞美にはずっとオファーしていた

――坂本監督が単身乗り込まれたことになる、東映京都撮影所スタッフの方々のお仕事についてお聞かせください。

京都には僕だけでなく、カメラマンも一緒に行っていますから、たった1人ではないんです(笑)。ただ確かに、僕が京都撮影所で作品を撮るのは初めてで、事前にいろいろウワサを聞いてはいましたね。京都の人たちは厳しいぞ!……とか。だから最初は少し不安があったのですが、実際に行ってみたらぜんぜんウワサと違って、みなさん本当に僕をあたたかく迎えてくださって、嬉しかったですね。伝統的な時代劇の撮り方を心得ている方たちなんですが、ふだんはあまりやらないようなアイデアを僕が提案しても、面白がってノッてくださいました。

――東京での撮影スタッフと、京都のスタッフとの大きな"違い"とはどこにあるでしょう。

どちらも映画作りのプロフェッショナルに違いないですが、京都の方たちはみな、何十年もこの道一筋でやっていらっしゃるベテランの方が多く活躍されているところが大きな特徴ですね。僕が少年時代に観て大好きだった『伊賀忍法帖』(1982年)や『魔界転生』(1981年)『里見八犬伝』(1983年)に関わられていたスタッフの方たちが、今でも現役で仕事をされているのには感激しました。合間にみなさんとお話をしていて、当時の現場のようすなどを聞くとテンションが上がりました。当時、撮影で使った衣装なども残っていて、現場のスナップ写真とかも見せていただいて、あれは興奮しましたね(笑)。

――物語の鍵を握る重要な役どころである「宮」には、アイドルグループ「℃-ute」出身の矢島舞美さんが起用されました。矢島さんの印象をお聞かせください。

以前、僕の後輩が舞美ちゃんと一緒に仕事をしていて、アクションができると聞いていましたし、本人もアクションに意欲的だというので、過去にも何度かお名前を出させていただいたり、オファーをかけていたんです。スケジュールの都合もあってなかなか実現しなかったのですが、今回やっと念願が叶い、出演していただくことができました。この作品では激しいアクションこそありませんが、彼女のお芝居に対する姿勢がすばらしく、すごくいい出会いができたなと感じています。

――アニメ版の「メリッサ」にあたるキャラクター「明里咲(めりさ)」は、『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』(2018年)でご一緒された大久保桜子さんが演じられました。

桜子ちゃんは「癒し」担当ですね。彼女が出てくると周りがパッと明るくなって、雰囲気が和らぐというのが狙いです。アニメのメリッサと同じく、明里咲にも今回の映画では明かされない"秘密"をかかえている設定がありますので、今後の展開次第ではそういう部分も明かしていくことができるかもしれません。

――重次の命により宮の命を狙う忍者集団「根来衆」の4人の手練れの存在感もすばらしく、みなそれぞれ特徴的なアクションを繰り広げていました。中国武術を使うリーダー「白(はく)」を演じる藤岡麻美さん、琉球拳法の「ウト」を演じる宮原華音さん、朝鮮武術の「ジン」を演じる出合正幸さん、力士くずれで怪力の持ち主「黒竜(こくりゅう)」を演じる中村浩二さん、それぞれのキャラクターと技についてお話を聞かせてください。

藤岡さんは台湾で"剣舞"のほうをやられていて、形がすごく美しく決まるんです。今回は相手を倒すための剣、アクション用の動きをつけさせていただいたんですが、現場でもうまく対応してくださって、やりやすかったですね。白はすごい姉御肌の性格ですけど、藤岡さん本人はホワ~ンとした印象で、会話をしていてもテンポがどんどんズレていったりして、そこがとてもチャーミングなんです。映画の印象のまま本人に会うと、すごくギャップがあってびっくりするんです(笑)。

華音ちゃんはこれまで舞台『NINJA ZONE』シリーズ(2018年&2019年)で一緒にやっていましたが、それ以前にも映画『ハイキックエンジェルス』(2014年)のプロモーションを僕が手伝っていたりして、面識があったんです。そのころから、彼女のアクションにかける情熱と、常に努力する姿勢がすばらしいと思って見ていましたが、今回ついに映像作品で組むことができてよかったです。根来衆がそれぞれ異なる技で律花と戦っていくのは、僕なりに"異種格闘技"戦をやりたかったためなんです。出合くん演じるジンの朝鮮武術は"テッキョン"という韓国に伝わる伝統格闘技で、踊りながら蹴りを出す、みたいな舞踊と格闘を合わせたようなスタイルです。作品の舞台が江戸時代なので、近代風の格闘技ではなく、その当時に存在していたであろう伝統的な格闘技を意識しました。華音ちゃんが「手技」を中心にした戦い方なのも、空手の「蹴り技」はずっと後になってから発達してきたものだったから。必ずしも史実に忠実というわけではないですが、それっぽい雰囲気には寄せています。中村さんは体格の良さを活かして、パワーファイターの相撲取りになっていただきました。少しアタマが弱く、チームのムードメーカー的存在ですね。根来衆の4人は衣装にも凝っていて、みな「僧兵」上がりという設定から僧侶が身に着けているもので統一しているのですが、あちこちから集まった外人部隊というところを強調するため、衣装部さんとも相談して4人それぞれの個性を作っていきました。

――根来衆を操る公儀見回り組の頭・戸田重次役にキャスティングされた久保田悠来さんもまた、クールな二枚目でありながら激しいアクションもこなせる俳優さんですね。

久保田くんとは『KIRI-「職業・殺し屋。」外伝-』(2015年)で初めてご一緒したとき、顔も声もいいし、芝居も上手。しかもアクションもこなして、この人すごいなと思いました。重次は律花と1対1で立ち回りをすることになる役ですから、よほどの人でないと千尋ちゃんの動きについていけません。その点久保田くんは、千尋ちゃんと互角に渡り合うくらいハードなアクションを見事にこなしてくれました。決戦シーンはワンカット長回しで、うまくいくまで何テイクも重ねて撮っていたんですが、久保田くんは千尋ちゃんの動きにしっかりついてきてくれました。これはほんとうにすごいことだと思います。

――坂本監督の師匠である倉田保昭さんが、律花の祖父・兵衛(ひょうえ)を演じられたことも注目を集めています。倉田さんに演出をつけられたときのご感想を聞かせてください。

いや~、すごく緊張しましたよ。先生に出演していただいたのは『KIRI』に続いて2作目なんですが、今回は特に兵衛という役を先生に演じていただきたくて、出演依頼をしました。先生も快く引き受けてくださって、ありがたかったですね。僕が16歳のころより弟子入りした先生に「こうしてください」と注文をつけるのは緊張しましたが(笑)、先生も楽しんで演技してくださり、撮影中もいろいろなお話ができて、とても充実した現場になりました。そもそも今回は、倉田先生の門下生が結集しているんですよ。僕もアクションコーディネーターの高橋伸稔さん、出合くんや中村さんもそうですし、隣の現場でアクション監督をやっている谷垣健治くんも、待ち時間の長いときなんかでこちらに遊びに来てくれたり(笑)、「ファミリー」の雰囲気に包まれていました。

――時代劇の立ち回りを専門にされている「東映剣会」のみなさんの印象はいかがでしたか。

剣会のみなさんは、『太秦ライムライト』(2014年)のころから千尋ちゃんを娘か、孫娘のような存在として可愛がっていまして、今回は彼女が主演だということで、とても熱心に協力してくださいました。寒い中での撮影が続いたんですけど、千尋ちゃんのためにみなさんが一丸となって立ち回りシーンなどもこなしてくださって、ほんとうにありがたかったです。

――後半、律花が「黒い狐」と称される仮面と装甲を身に着けて戦うという、特撮ヒーロー作品にも通じるシーンが出てきますが、仮面のデザインなどもあまり突飛になりすぎず、時代劇であることを強く意識したかのような落ち着いたイメージになりましたね。

アニメ版『BLACKFOX』と同じデザイナーさんだったのですが、僕のほうから「時代劇なのであまり"未来的"になりすぎず、この時代にありそうなイメージでお願いします」とリクエストさせていただき、"時代劇的説得力"を持たせた外見に落とし込んでいきました。

●リアルと荒唐無稽のバランス

――狐をイメージした仮面を着けると、山本さんのチャームポイントである"輝く瞳"がいっそう強調され、魅力的な女戦士という印象が強まりましたね。

僕もプロデューサーさんたちも『仮面の忍者 赤影』(1967年)を本放送や再放送で観ていた世代なので、「仮面を着けた忍者が大活躍する」というシチュエーションには強い思い入れがありますからね(笑)。仮面のデザインについても、千尋ちゃんの顔がちゃんとわかるほうがいいという話にまとまって、彼女の目力や表情の変化がちゃんと見えるものになりました。

――特撮を駆使した超能力描写があったり、カラクリ仕掛けの鷹「カスミ」が登場したりと「特撮アクション時代劇」と銘打つにふさわしいシチュエーションがありながらも、全体のムードはことさら荒唐無稽になりすぎず、時代劇としてのリアリティを重視しているところがいいですね。

それぞれの要素にリアリティを持たせようというのは、作品を作る際のテーマではありました。「リアルな作品世界の中に、荒唐無稽な設定が入っている」というバランス感覚は、『魔界転生』や『里見八犬伝』に代表される80年代の角川や東映のアクション時代劇を意識したところがあります。あのころを知っている人が今回の映画をご覧になると、少し懐かしい感覚になってくれたらいいな、という思いもありますね。

――リアルな肉弾戦、刀での斬り合いがある一方で、律花の必殺技「九尾烈風の舞」などは特撮ヒーロー的なアクションとしてひときわ目を惹く派手なビジュアルになりました。

忍者ものの醍醐味として「必殺技」がほしいね、ということになりましたが、ここでも荒唐無稽になりすぎない技を考えました。「狐」がモチーフの忍者なので、「九尾の狐」という妖怪にちなんで、九つの太刀で相手を倒すという動きをアクションチームみんなで考えました。カンフーや空手だと、「型」がそのまま相手を攻撃する「技」につながります。それと同じで、1人の動きだと演武や素振りに見えるけれども、その動きがそのまま攻撃と防御になる……というコンセプトが定まり、完成したのが「九尾烈風の舞」の動きなんです。劇中では2度、律花がこの技を決めるときがあるのですが、1回目と2回目で変化を持たせてありますので、ぜひ画面をご覧になって確かめてほしいですね。

――映画のラストでは、何やら「続編」を匂わせる不穏なカットがあったりして、今後の展開に期待を持たせていますね。時代劇の"斬られ役日本一"と呼ばれる大ベテラン・福本清三さんの姿も見られたりして……。

今回の作品を作っているときから「続編もやれたらいいね」と思って、次回作につながるような雰囲気を出しています。これを実現するためにも、ぜひとも『BLACKFOX: Age of the Ninja』をたくさんの人たちに観ていただきたいと思います!

(C)PROJECT BLACKFOX Age of the Ninja

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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