日本一距離の長い路線バスに乗ってみた。5時間乗って驚きの運賃は?

日刊SPA!

2019/10/6 08:50

 高速道路を通らない路線バスといえば、一般的には市内や近隣市町村など運行ルートは比較的短い。だが、地方によっては100㎞以上の距離を走行する高速バス顔負けの路線も珍しくない。

◆最長距離の路線バスは、北海道の「快速幌延旭川線」

なかでもこれまで走行距離が日本一とされていたのが、大和八木駅(奈良県橿原市)~新宮駅(和歌山県新宮市)を結ぶ、奈良交通の「八木新宮線」の166.9㎞。

メディアでもたびたび取り上げられ、バス会社のホームページでも“日本一距離の長い路線バス!!”と謳っている。

ところが、9月に放映された『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)で、幌延地層研究センター(北海道幌延町)~旭川駅(北海道旭川市)の北海道北部の224.1㎞を走る、沿岸バスの「快速幌延旭川線」が現時点での最長路線バスだと紹介。ネット上でも話題になった。

実は、番組が放映される数日前、筆者も稚内旅行から帰る途中、プライベートでこのバスに乗車。運行距離の長さを知り、「せっかくだからこれに乗って記事にしよう!」と思っていたが、完全にしてやられた形だ。

そのため、ちょっと今さら感はあるが、番組を見ていない人もいるだろうし、筆者の最長路線バス乗車レポートを紹介したいと思う。

この路線は1日1往復で、幌延地層研究センター発が早朝6時20分発。旭川駅発は17時発のため、沿線の景色を眺めながら乗るなら幌延発の一択しかない。

ちなみに始発の次の停留所が幌延駅で、筆者は6時半にここから乗車。前日は稚内市内に泊まったのだが、5時20分発の始発の普通列車に乗って幌延駅まで移動した。余談ではあるがこの鉄道沿線もかなりの絶景だ。

◆沿線には原野に利尻富士、日本海など絶景が!

幌延駅にはバス到着の10分前に着いたが、バス停の前で待っているのは自分ひとり。定刻通りにバスはやって来たが、前方にしか出入り口がない4列シートの座席、後方にはトイレまで完備されている完全に高速バス仕様の車両。なお、車内には誰もおらず、筆者がこの日の初乗客だったようだ。

旭川には鉄道に沿って内陸部をそのまま下る道路もあるが、バスはいったん日本海側に出て、海沿いをしばらく下るルート。幌延駅を出て10分も経たないうちに車窓の景色は畑や牧草地帯、原野などの大自然に変わる。しかも、右手には海を隔てた先にある利尻島の利尻富士まで見える。残念ながらこの日は少し曇っていたが、それを差し引いても絶景であることに疑いの余地はない。

日本海側に出てからは、通称「オロロンライン」と呼ばれる絶景道路をひたすら南下。右側は海、左側は山と雄大な自然に囲まれて、車窓からの景色をぼんやり眺めているだけがなんだか心が癒される。

乗客は出発から約1時間経った遠別から少しずつ乗り込んできたが、通学の高校生や年配客ばかりで通勤客は皆無。半月に一度、病院に行くためにバスを利用している70代の女性とし少し話をしたが、「いつも空いてるから席の心配はないよ」と笑っていた。

ただ、その一方で「もしバスがなくなったら困るねぇ」とも話しており、彼女のような高齢者には欠かせない移動のための足となっているようだ。

◆224.1㎞を5時間で走破

もともと幌延からバスの経由地である留萌までは、「羽幌線」という鉄道が走っていたが1987年3月、国鉄がJRに民営化される直前に廃線。以降、バスがその代替交通手段となっており、現在は運行されるバスの一部が旭川まで乗り入れているというわけだ。

バスは途中、数十基の巨大風力発電機が並ぶ苫前、かつてニシン漁で栄えた時代の名残を今に残す鰊番屋のある小平などを通って留萌に到着。ここから今度は内陸部へと針路を取り、ちょうど収穫期を迎えていた穀倉地帯抜けて旭川へと向かう。

このころになるとバスの乗客もかなり増えてきたが、それでも半分も埋まっていない。バスはアイヌの言葉で「神が棲む場所」を意味する石狩川流域の景勝地、神居古潭(かむいこたん)の通り過ぎると、いよいよ旭川盆地。市街地に入ってから15分ほどで終点、旭川駅に着いた。

到着したのは11時20分過ぎで、始発からちょうど5時間で到着。始発からの運賃は4380円だった。

◆バス会社は“日本一”でアピールせず

もはや路線バスの料金ではないが快速だったこともあり、走行距離の割に途中の停留所の数はわずか43か所(※始発地、終着地を除く)と少なかった。トイレ完備の車両のため、トイレ休憩などで長く停車することは一度もなく、体感的には思っていた以上に早く着いた気がする。

これに対して八木新宮線は停留所が169か所あり、距離が短い割に移動時間は約6時間半とこちらのほうが長い。そのため、乗車時間でいえば同路線が今も日本最長路線であることには変わりない。

ただし、同じ最長路線バスでも留萌~旭川は、バス会社が特にそれをアピールしているわけでもないため、全国的な知名度も低い。それでもバラエティに富んだ景色は見応え十分だし、自分で運転していないので風景を存分に眺めることができる。

たまにはこんな変わった路線バスの旅をするのも悪くないと思う。<取材・文・撮影/高島昌俊>

【高島昌俊】

フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。先日、この旅から帰国したばかりだが、早くも別ルートでの世界3周目に行こうか思案中。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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