新・国宝になった日本最古の小学校、行ってみたら“違和感だらけ”だった

日刊SPA!

2019/10/5 08:54

 長野県松本市の顔として、威風堂々とそびえる国宝・松本城。そのすぐそばに2019年9月30日、「もうひとつの国宝」が誕生した。

日本最古の小学校「旧開智学校」だ。

◆違和感だらけの建築が見どころ?

現在の小学校という制度ができたのは明治5年(1872年)に発布された「学制」からで、開智学校はこの時に開校したいくつかの小学校のひとつなので、最古の小学校ということになる。

しかしそれは単純に「歴史深い」や「ありがたい」というだけでなく「違和感だらけ」の建築であるところが面白い。

二階建てで両翼の長い造り、白と青が松本の空にもよく映えている。直感的にも美しい建物であることはわかるが、じっと見ていると気がつくことがある。窓の数を数えると、左右の長さがアシンメトリーになっているのだ。

中央の入り口に配されたモニュメントもまた、違和感が多い。はじめの印象は明治や大正らしい「モダン」な雰囲気だが、よく見るとおかしさが見えてくる。

立体的に掘られた龍の彫刻は中国を思わせるが、象徴的な天使のモチーフは明らかに西洋の文化が感じられる。それをまとめているのが中央部分が丸く膨らんだ唐破風の屋根で、これは日本の城郭建築に用いられるものだ。洋風とも和風とも中華風ともいえないこの建築は、地元の大工の棟梁であった立石清重による設計で「擬洋風建築」と言われている。

◆日本文化と外国文化が同時に存在するワケ

これは明治時代のモダンとは一体どんなものなのかを探れば合点がいく。250年以上にわたる江戸幕府の治世が終わり、文明開化の名の下に海外から様々な文化が流入して来た。鎖国の中で発酵するように蓄えられた日本文化と、新しく入って来た外国の文化が、混ざるとも混ざらないともいえない形で同時に存在しているという、この時代のこの場所でしか生まれ得なかったものだ。

そうしたことから、国宝指定の理由として「重要文化財のうちで極めて優秀で、かつ文化的意義の特に深いもの」とされているのだ。

校舎内に入ると、ここでも日本の伝統的な建築法で作られていながら、扉に施された彫刻が龍をモチーフにしていたり中国を思わせる文様が描かれていたりする。さらには、窓にはめられたステンドグラスが西洋の風を感じさせる。

どれもインスタントなものではなく、ステンドグラス用のガラスもヨーロッパから輸入して作られたものなのだ。日本らしさと中国らしさと西洋らしさ。誰が居てもアウェーであるということは、誰がいてもホームであることと同じ。奇妙な空間は不思議と落ち着くバランスが保たれている。

◆戦時中の子供たちの作文や絵画も展示

全体的な雰囲気もさることながら、細かい部分や展示も見どころだ。

扉の木目が、やけにはっきりしているのがお分かりいただけるだろうか。これは、本当の木目ではない。木の扉を一度ペンキで塗りつぶしてから、その上に木目調の模様を「描いている」のである。

教室の中には当時使われていた机や椅子がそのまま展示されており、実際に触ったり座ったりすることもできる。

また、各時代に生徒たちが書いた作文や絵画が展示されており、中でも思わず足を止めてしまうのが、戦時中の子供たちの作品。饒舌でも達筆でもないが、その時代の空気をしっかりと私たちに伝えてくる。

これまで歴史的な建築物には興味がなかった人でも、謎解きのように違和感を楽しめる「国宝ルーキー」の旧開智学校に出かけて見てはいかがだろうか。<取材・文・撮影/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】

Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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