【世間知らずは命に関わる】香港までiPhoneを買いに行ったら大混乱でそれどころじゃなかった Byクーロン黒沢



先日、発売と同時にiPhone11を購入した。

カメラの性能は期待以上。お世辞抜きで「買って良かった」と満足した私にも、ひとつだけ不満があった。写真を撮るたびに鳴り響く、あのばかでかいシャッター音である。

お気に入りだった「シャッター音のしないカメラアプリ」は、なぜか新しいiOS13では動かず、やむなくカシャカシャ音を出しながら撮影していたところ、結構な確率でカメラを向けてない通行人に睨まれたり、冷たい目で二度見されたり……。今まで感じなかったストレスに戸惑い、しばらくは我慢していたが、いよいよ返品期限日(アップルストアで買った商品が気に入らない場合、2週間以内ならペナルティなしで返品できる)まで残り5日を切った9月末。ついに我慢の糸が切れた。

決めた! こいつを返品して、香港バージョンのiPhone11を買い直すぞ!

香港版って、なにが違うの?
「香港バージョン」とは、文字通り香港・マカオ・中国で売られているiPhoneのこと。新しいiPhone11シリーズは「ナノSIM」「eSIM」のデュアルSIM仕様だが、この「eSIM」という規格は現実的にあまり普及しておらず、一般人にとってはシングルSIMと大差ない。ところがなぜか「香港バージョン」のiPhone11シリーズに限っては、ナノSIMが2枚刺さる特別仕様。さらには静音モードにすることで、あのやかましいシャッター音を消せるオマケつき、それでいて値段は日本版と変わらないのだ。

思わず「欲しい!」と叫んだ読者の皆さん。残念ながら売っているのは香港・マカオ・中国のみで、日本への配送はしてくれない。

海外の通販業者やメルカリ等で買う手もあるが、これら「転売品」の在庫は少なく、かなり割高。もうひとつ根本的な問題として、香港バージョンのiPhoneは日本の技適マーク(端末の裏にプリントされた総務省の認証マーク)を取得しておらず、要するに日本国内で使用すると、それだけで電波法違反に問われてしまう可能性があるのだ……。

だが実際のところ、日本を訪れる外国人の多くが日本の技適マークのないスマホを持ち込み、使っているわけで、彼らが電波法違反で摘発されているかといえば、そんな事例は一度も聞いたことがない。ただ「日本の技適マークがない無線端末を国内で使用すると、電波法違反に問われてしまう恐れがある」ということだけは、予めお伝えしておきたい。

話を戻そう。アップルの返品期限が迫っていたため、私は大急ぎでLCC(格安航空会社)のチケットを予約した。日を選ばなければ片道数千円という激安価格もあるのだろうが、大慌てで買った翌日のチケットはなんと往復4万円! この時点で転売品を買うのと大差ない気がしたが、乗りかかった船だ。やるしかない!

必要経費を抑えるため、羽田空港を真夜中に出発。機内で仮眠をとりつつ明け方に到着。香港でひと晩過ごし、翌日の午後には帰国という強行軍で予定を組んだ。そこまでしてシャッター音を消したいかと問われれば、すでに意地でしかない。で、翌日夜に予定通り日本を出た私は、香港で驚天動地の事実を知ることになる。

・いちばん行っちゃダメな日だった!
結論から言うと、私が香港に入った10月1日は中国の大連休、国慶節(建国記念日)のど真ん中だった。しかも今年は建国70周年という大きな節目。近頃、度重なる反中デモで荒れている香港の民主派は、この日に町中で大規模なデモを計画していた。

空港から中心部に入ると、デモ隊の集結するであろう地域の駅が続々と閉鎖され、高級ホテルや商店は軒並みシャッターをおろしていた。地下道は民主派の挑戦的なポスターで埋め尽くされ、町は警察だらけだ。私は狭い狭い、一泊2千円の安宿(丸一日コインロッカーを使うのと大差ない)に荷物を置いて、目抜き通りのアップルストアに出撃した。すいてるといいな……と思いながらたどり着くと、やった! ガラガラだ! 一人もいないぞ! んっ? 一人もいない?

そう、この日、香港のアップルストアは臨時休業していた! すでにサイトで支払いを済ませていた私は、明日の午前中までに商品をピックアップできないと、なんと手ぶらで帰国することになる……。冗談抜きで血の気が引いたが、泣き叫んでもガラス張りの店内には警備員すらおらず、することもなくなった私は、その日、ただひたすら町をさまよった。

午後になると、町のあちこちでデモ隊が暴れだし、警察と衝突。地下鉄の入り口は破壊され、鉄道網は麻痺、中国系の銀行や中国系のメーカー直営ショップなども破壊された。

ときおり感じる催涙ガスの刺激臭に鼻をすすり、雄叫びを上げるマスク姿の男たちを眺めながら、知らなかったとはいえ、こんな日にこんなところで、俺は一体何をしているのか……。そう思わずにはいられなかった。

ただ、デモ隊が荒れ狂う表通りから一本奥に入ってみれば、裏路地の路上カラオケ店で我を忘れ熱唱するおっさんがいるのも、また香港。

一夜明けてみると、ゴミや瓦礫だらけだった通りはキレイに片付けられ、内乱さながらだったデモの痕跡は、うそのようにかき消されていた。そつのない行政の仕事っぷりに不気味さを感じつつ、昨日はもぬけの殻だったアップルストアで香港版のiPhone11をゲットした私。

高揚感がないといえばうそになる。ただ、ここまでせずとも、もうちょっと待ってシャッター音のしないカメラアプリを入れれば、それで済むことだったのかも……しれない。

Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.

画像をもっと見る
Related Stories

当記事はロケットニュース24の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ