ミレニアルズにこそ読んでほしい、40代のカレー(後編)

TABILABO

2019/9/19 19:01


材料と手順を極限まで減らした40代のミニマルカレーを調理。試食した水野仁輔さんとTABI LABOの平井。

40代のコンビでミニマルカレーにまつわる水野さんにとっての夢や使命感、そして生きる意味などをお聞きしたところで、後編ではテクニックを駆使したカレーを作っていきます。そして40代ってどう生きるのがいいのかのヒントを探っていきます。

【前編】40代のカレー:不惑のミニマル編はコチラ

テクニックを入れつつ、余計なことはしない
ちょうど美味しいカレー




後編のカレーも、丁寧に作ったとはいえ40分弱で完成しましたね。水野さんと一緒に作ってると簡単に思えてしまいます。テクニックを駆使したこのカレーは、どういった位置づけなんですか?

こっちのカレーは「チキンカレーが美味しくなるポイント」を詰め込みつつ、余計なことはしない、ちょうど美味しいカレー。

スパイスの配分もAIR SPICE(水野さん運営のスパイスの通販サービス)の「基本のチキンカレー」と近いので、いままでの知識と経験の結果だと思う。だからこれも自分にとっては「40代のカレー」なんですよ。

ちなみに、鶏肉が基本なのはなんにでも合うし調理も簡単だから。豚や牛はちょうどいい硬さとか味つけに仕上げるのが難しいから、チキンカレーこそが日本のスタンダードだと思ってます。

ところで水野さんさんが出版された本の中で僕が一番印象に残ってるのが『カレーの教科書』なんですけど、もう玉ねぎの炒め方から、あらゆるスパイスの性格までが網羅されていてその執念に驚いたんですが、そういう集大成的な感じですか?

これがみんなにとってのベストというわけじゃないかもしれないけど、ゴールデンルールなどのカレーの要素を網羅した、という意味ではそうなのかもしれない。

カレーの全容解明は20年で5%
95%知らないのに他に構っている余裕ない




それではいただきます。おお! 断然スパイスが複雑になりましたね。コクもあるし、ヨーグルトや生クリームのしっかりとした味もあって、みんなが美味しいって感じそうですね。

完成された感じが出ていていいと思う。スパイスカレーの面白さを体験してもらうにはこれがいいね。

前編では「夢とか目標とかが持てないのが悩みだった」とおっしゃっていて、その結果、カレーの全容を突き止めることこそが自分の生きる意味だと気づいた、という話になりましたが、40代とその前ではカレーの全容を突き止めたいと思う気持ちに違いはありましたか?

30代までは、誰もやったことのないことに取り組みたかったんで、例えば出版されるカレーの本を全部チェックした上で新しいアイデアを考えたりしていたんですよ

でも、40歳ぐらいになって喜びの種類が変わってきた。「誰もやってないことを確認して新しいことをやればいい」っていう単純なことではないな、と思いはじめてきた。

今は、もしも過去に誰かがしたことのあるアプローチでも、僕がやったら僕の色になるのでそれでいいかなと。それからカレーの世界で他の誰かが発信していることは気にしなくなった。

そこまでの追求があったから「やりたいことをやる」ということに自信が持てたということですか?

確かにそういう部分はあるかもしれないけど、根本は20代と変わってないとも思う。実は知識も経験も全然足りてないと思ってて、たぶん20年やってるけど、カレーの全容解明ということでは5%ぐらいかなって感じる。

95%をまだ知らないのに、カレーで世の中を良くしたいとかそういうおこがましいことは言えないし、そんな状況で他のことに首を突っ込んでいる余裕はないんだよね。

たぶん死ぬまでに到達できるのは7%ぐらいかな。100%になったら誰かのためにカレーを作るかもしれないね。でも、そこに行くまでに飽きるかもしれないなというのは怖い。実は飽きっぽいから。

カレーはコミュニケーションツール
ファッションでもあり、アートでもある




カレーは普通の人からは1つのテーマに見えるかもしれないけど、僕にとっては無数に細かく分かれてて、1テーマを追求するんだけどすぐ飽きて、次のテーマを追ってたりする。でもカレーにそこまで興味ない他の人からはずっとカレーを追ってるように見えるんでしょうね。

水野さんから見るカレーの世界はどんな細かさで分かれてるんですか?

カレーは料理以上の存在だと思っていて、コミュニケーションツールだといつも言ってる。なかなか理解されないけど、カレーで色々な場所に行ける、色々な人に会えるから。

とすると、コミュニケーションツールとしてのカレーはまだ全然見えてない。ファッションとしてのカレーもあるかもしれない。アートにも広がりそうだし。

インドとかスリランカとかはカレーを料理として突き詰めた先にあるもので、これはこれで果てしないけど、アートとかファッションとか考えたら他の側面もいっぱいあって、どうしていいかわかんなくなるよね。そういう細かさでカレーを追っている。

今度ベトナムに行って、その次はジャマイカに行くんだけど、カレーのイメージがないところに行って「カレーとは何か」を追求するのは、そういう “料理を超えたもの” を追求したいからかもしれない。

なるほど。社会学的なアプローチですね。カレーでそれを追求するのは面白い。

あと最近、カレー店のシェフを集めて「スパイスサーカス」っていうキャンプイベントをやってるんだけど、これもシェフたちがお客さんのことを完全に忘れて自分のためだけにカレーを作ったらどうなるのか、を見たいからやってるんだよね。

「自己中?」と思う人もいるかもしれないけど、それが僕のカレー道なんだろうね。世の中のためになってない自覚はあるけれど、多くの人のために生きられるのは立派な人。その素養がないなら身の程を自覚してね、水野という人間がひとり存在することで、どこかにいる誰かひとりが楽しんでくれれば十分じゃない? と。

ミニマル、テクニック、どちらも
今までの積み上げでできた40代のカレー




今回の「40代のカレー」は、水野さんの追求に少しは役立ちましたか

今日の企画は面白かったね。ゴールデンルールのもとに7セット3分づつでやってみたけど、7セットをもっと縮めて5セットにしても大丈夫そう。カレーがどこまでミニマルに追及できるかは面白いテーマだな、と思った。

ちなみに、どっちのカレーが美味しかったですか? また「40代のカレー」にふさわしいのはどっちだと思います?

自分としては信じたくないけど、最初のミニマルカレーが美味しいね。やっぱり “美味しすぎない” っていうのが自分には合ってるのかもしれない。とはいえ、どちらも「40代のカレー」を表現するにはふさわしいと思う。いままでの自分の積み上げが活かせたと思うんだよね。

僕もミニマルカレーが美味しかったです。“美味しすぎない” という意味がよく伝わってきました。比較したことで、より明確になったような気がします。

ちょっと最後にまとめさせていただくと、確かに40代って全てに全力疾走できる体力的はなくなってきたなとは思います。でも30代までの失敗と成功の向こうにあるゴールイメージに進められる、という考え方にはとても共感を感じました。

広告を考えたり、作ったりする自分はそれを「着地感」と感じてるんですが、共通項があるなと思います。だから、そういうのを言ったりして、周りを安心できるように整えたり、励ましたりするのが自分にできることなんだろうなと思いました。

なかなか面白い機会をもらって楽しかった。また挑戦してみたいね。

【レシピ
40代のカレー:不惑のテクニック編


Step0
下ごしらえ



玉ねぎは繊維にそって薄切り。ショウガとニンニク、パクチーの根はみじん切りで合わせておく。パクチーの葉もみじん切りで別にしておく。鶏肉は切らずに塩コショウ。

スパイスは10種類。ホールスパイスはクローブ、シナモン、フェンネルシード、メース(ナツメグの皮)。パウダースパイスは、ターメリック、クミン、コリアンダー、レッドチリ、カルダモン、フェヌグリーク。

<水野メモ:玉ねぎはミニマルより繊細な感じに薄く切る。パクチーは根が美味しいので捨てないように。後で投入する無糖ヨーグルトは、よく振っておくと入れやすい>

Step1
はじめの香り!



オイルでホールスパイスを中火で熱して、香りを出す。

<水野メモ:火加減が調節できるっていいですね。(※前編のミニマルカレーは強火縛りだった)>

Step2
ショウガ、ニンニクと玉ねぎを炒める



飴色玉ねぎってよく言うけど、3分だととてもそこまでいかないのと、必ずしも必要ないので、今日はタヌキ色。キツネ色よりちょっと濃いみたいな。

ちなみに飴色のことはヒグマ色って言います(笑)。

<水野メモ:この時点で塩も振っておくと良い。>

Step3
ホールトマトとヨーグルトを合わせる



<水野メモ:前編のミニマル編とは違ってこのタイミングでホールトマト。そしてよく振ったヨーグルトも投入。ヨーグルトは乳製品の旨みが出すため。>

Step4
中心の香り!



パウダースパイスを投入して炒める。

<水野メモ:水分があるのでここでぐっとカレーぽくなる。>

Step5
水を入れて煮る



<水野メモ:水を300cc入れて煮る工程。カレーは「炒める」と「煮る」が連続する料理なので、どこまでが炒めるか、煮るか、を考えるのは重要かも。>

Step6
鶏肉を焼く



フライパンで、塊のままの鶏肉を皮目から焼く。
香ばしく焼きあがったら食べやすい大きさに切って、鍋に入れて煮込む。

<水野メモ:鶏肉を焼くのは焼き目がついて香ばしさが入るから。この茶色く焼けたところがメイラード反応で、旨みになる。>

Step7
仕上げの香り!



最後に生クリーム、隠し味の「はちみつ」「醤油」と「パクチーのみじん切り」を入れて煮てから、味を調えて完成。


【レシピ】
鶏もも肉:400g
玉ねぎ中:1個
ニンニク:1片
ショウガ:1片
ホールトマト:200g
パクチー:1/4カップ
塩:小さじ1
水:300cc

<ホールスパイス>
クローブ:6粒
シナモン:1/2本
フェンネルシード:小さじ1/4
メース(ナツメグの皮):ひとつまみ

<パウダースパイス>
ターメリック:小さじ1/2
クミン:小さじ2
コリアンダー:小さじ2
レッドチリ:小さじ1/2
カルダモン:小さじ1
フェヌグリーク:小さじ1/2


【前編】40代のカレー:不惑のミニマル編はコチラ


水野仁輔(みずのじんすけ)

毎月届くレシピ付きスパイスセットを販売する「AIR SPICE」代表。カレーに特化した出張料理集団「東京カリ~番長」を立ち上げて以降、全国各地を訪れてライブクッキングを実施している。最新刊は『スパイスカレーを作る』(パイインターナショナル)。ほかに『カレーの教科書』(NHK出版)など著書は50冊以上。現在は、世界のカレーを探求するフィールドワークをする傍ら、カレーの世界にプレーヤーを増やすプロジェクト「カレーの学校」を運営している。
http://www.airspice.jp/

当記事はTABILABOの提供記事です。

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