金儲け全肯定、アッパードキュメンタリー「ゴージャス・ショッピング:ロサンゼルス」配信中毒者がマジ推し

エキレビ!

2019/9/13 09:45



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今回紹介するのは、ネットフリックスで配信されている『ゴージャス・ショッピング:ロサンゼルス』。めちゃくちゃ成功して巨万の富を得たセレブたちの「買い物」をテーマにしたドキュメンタリーだ。

セレブたちのめちゃくちゃな金の使い方、やっぱり見たいですよね?
もうずっと前の話になるが、2003年に『マイケル・ジャクソンの真実』というドキュメンタリーが放送されたことがあった。当時学生だったおれも日本でテレビ放送された時にこの番組を見たのだが、その中で強烈だったのがマイケルの買い物シーンである。ラスベガスの店(高級な家具屋だった記憶がある)に入っていったマイケルは、「This……and this and……this……」とロクに値段も見ずに商品を指差すだけでバンバン買っていき、こともなげにサラッと買い物をすます。"マイケル買い"である。

思えば、あれはおれが初めて見た「ものすごい金持ちの買い物」だった。『ゴージャス・ショッピング:ロサンゼルス』は、このマイケル買いの部分だけをピックアップしたような内容である。登場するセレブたちの職業は多種多様だ。トリッピー・レッドやソウルジャ・ボーイ、チーフ・キーフのようなラッパーや、ドレ・ロンドンのような音楽関係者。はたまたボクシングのヘビー級チャンピオンであるデオンデイ・ワイルダーやNBAのプレイヤーであるジャベール・マギー、写真家のアルフレド・フローレスなど、職業はバラバラである。ラッパーが一番多いのは、彼らが自分たちの成功を自慢することに躊躇がないから、という理由もあるだろう。

セレブたちの金の使い方はめちゃくちゃである。トリッピー・レッドは猛烈に辛いチキンを食って「辛い!!」とわかりやすすぎる感想を言ったあと、友達たちと一緒にバールやハンマーで中古車をぶっ叩いて破壊するという、スト2のボーナスステージのような遊びに繰り出す。ラッパーのワカ・フロッカ・フレイムは大麻料理の専門家のところに遊びに行ってパルメザンと胡椒とトリュフを使った大麻スパゲッティに舌鼓を打ち、高純度のカンナビノイドを抽出するためのマシン(めちゃくちゃ大袈裟な機械なのが笑える)を18万ドルで即購入。金額も買い物の内容も、普通に生活していたらちょっとお目にかかれないものばかりだ。

かと思えば、妙に納得のいく買い物をするセレブもいる。NBA選手のsジャベール・マギーは、自分の体が収まるような特大のベッドを買いに行く。なんせNBAのプレイヤーなので、身長がでかすぎて普通のベッドでは収まらないのだ。そりゃ高くてデカいベッドも必要だよな。まあ、彼が買ったのは電飾が付いててスマホのマイクや音楽に合わせてビカビカ光る、4万5000ドルの巨大ベッドなんだけど……。ベッドが光る必要、あります? 寝づらくない?

金儲けを全肯定する、アッパーなムードのドキュメンタリー
番組の中では、買い物へと移動する車内で収録されたインタビューも挟まる。なんせ、出てくるのは様々な方法で成り上がった若いセレブたちだ。現代的な成金である彼らはなぜ成功し、自分たちの成功をどう捉えているのか、彼ら自身が自分の言葉で語る。

例えば、トリッピー・レッドは「この世の幸福はママに家を買ってやってから来るんだ」と断言する。金は自分の音楽にとってプラスだ、と言い切る彼の言葉は、はっきりとした説得力がある。また、ドリフト車を試乗し即買い上げたソウルジャ・ボーイは、「度胸試しは好きだ」「苦手なことを自分からやれ。十中八九楽しい」と語る。単に意識だけが高い人が言ってるんだったらお笑い種だが、相手はソウルジャ・ボーイ・テレムである。ぐうの音も出ないとはこのことだ。

彼らは、金を儲けまくり、儲けた金を湯水のようにドバドバ使うことに対してなんの抵抗も感じていない。それどころか、自分の金をめちゃくちゃに使うことに対して、ポジティブな意味を強く感じているように見える。金を儲けまくって使いまくるところに自分の存在意義があると信じ、そこに強烈な自負とプライドと誇りを感じている。だからこそ、カメラの前で堂々と大金をバラまくことに躊躇がない。資本主義国の中の資本主義国であり、個人が何をしていても責任を自分でとる限りは放っておいてくれる……アメリカという国で成功した人たちの、考えの芯の部分を見せられた気分だ。

もうひとつ書くと、「セレブたちに物を売る側」がものすごく堂々としているのが印象的である。車のディーラーであれば次々に高級車を紹介して「どうよコレ! お前買えんの!?」くらいの態度だし、服や時計を売るにしても、セレブを驚かせてやろうという気構えで自分の商品を見せる。そしてそれに対してセレブたちは、ちょっと大げさなんじゃないのというくらい大きなリアクションを取る。「ウソだろ!」「最高だな!」「もう売ってくれ!」となっているのがセレブたちであり、「まあ待て、まあ待て」「まだあんたに見せてない隠し球があるんだ」と焦らすのが売る側なのである。

この、売る方も相手が金持ちの有名人だからと言って変にへりくだったりせず、堂々と自分の商品を売るというのがとても新鮮だ。なにも宝飾品や高級車のような、高額な商品を売っている人だけが堂々としているのではない。そのへんでフライドチキンを売ってる、普通の店のおじさんっぽい人も「うちのは辛いよ」とか言いながら普通にセレブに接しているのだ。これはかっこいい。物を売る以上は、買う側とも基本的に対等なのである。相手がセレブだろうとそれは同じだ。

というわけで、『ゴージャス・ショッピング』は、いけすかない金持ちが予算に物を言わせて無駄遣いをする……という番組ではない。彼らが金を使う裏には、どのような彼らなりの理屈があるのか、という点にもフォーカスした内容だ。見た後は意外にも「よ~し、おれもバリバリ稼ぐぞ!」という気分になってしまった。どう見てもバカな金の使い方だろ……という人もいるけれど、思ったよりポジティブな気持ちになれるドキュメンタリーである。なんか、うまく乗せられてるだけな気もするけど……。


(文と作図/しげる タイトルデザイン/まつもとりえこ)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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