石原さとみ「Heaven?」最終回。レストランが落雷で全焼…(オイ)やっぱりコメディって難しいね

エキレビ!

2019/9/11 09:45

火曜ドラマ「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」が最終回を迎えた。

名店というわけではないけれど、不思議と居心地が良い店ってのはあるもので、毎回いろいろ文句は言いつつも、店そのものがなくなってしまうのはちょっと寂しい。そんなことを最終回の前には思っていたのだが……。

原作にはないオリジナストーリーで臨んだ「Heaven?」の最終回は、なんとも珍妙なものだった。それもこのドラマらしいといえば、らしいと言える。


まともなストーリーのない最終回
まず、最終回なのにストーリーらしいストーリーがなくて驚いた。これまでにも視聴者が「次、どうなるんだろう?」と気になる(つまり、先が見たくなる)ようなストーリーはほとんどなかったが、最終回もふわふわしたまま先に進んでいき、終盤に「えっ?」となる展開があって、ラストは「いい話感」のムードだけで押し切った。

「ロワン ディシー」を支えるシェフドランの伊賀(福士蒼汰)の自分勝手な母親、勝代(財前直見)が突然現れて、伊賀を夫(鶴見辰吾)の転勤先のジンバブエに連れていこうとするが、連れていかない。結局、伊賀がジンバブエに行くかどうかはストーリーとほとんど関係なかった。

前半は、伊賀と客の指揮者・日比野(井上順)の交流が描かれる。日比野は伊賀をコンサートに招待するが、伊賀は日比野とのやりとりがだんだん重荷になる。

「忠告しておくわ。お客様とは、友達になれないのよ」

「自分の居場所を、自分で居心地悪くしちゃダメ」

「レストランで一番大切なことは何かわかる?」
「え?」
「距離感よ」

仮名子(石原さとみ)の伊賀へのアドバイスはなかなか的確だ。しかし、考えすぎの伊賀は自分の居場所をなくしていき、ついに店を去ってしまう。ボロボロになっていく「ロワン ディシー」。さぁ、どうなる……? と思ったら、怒った仮名子の一声で伊賀は戻ってくることに。伊賀についての問題はあっさり解決してしまった。

落雷で「ロワン ディシー」全焼!
後半では、突然、「ロワン ディシー」の移転問題が持ち上がる。和菓子の老舗、招福堂の社長(正名僕蔵)がここで和風喫茶を開きたいというのだ。不動産屋(矢島健一)が好条件を示して、仮名子たちに立ち退きをやんわり迫る。

移転に拒否反応を示したのは、山縣(岸部一徳)、堤(勝村政信)、小澤(段田安則)、川合(志尊淳)ら従業員たちだった。この場所に愛着があり、あくまでこの場所で働きたいという彼らは、フレンチレストランをやめて和風喫茶を始めてもいいとさえ言う。どうして彼らがこの場所にそこまで愛着があるのかは、よくわからない。

仮名子は移転を決意するが、従業員たちの意を汲んだ伊賀の「オーナーも負けることがあるんですね」というひと言に神経を逆撫でされて移転を撤回する。しかし、撤回しても店は続けられない。じゃ、どうなるのか? 突然、伊賀がこんなことを言う。

「この店の役目は、終わりました」
「私たちが店を去るのではなく、店が私たちを去るのね」

晴れやかな顔で伊賀の言うことを受け入れる仮名子。仮名子はオーナーであり、客であるという矛盾した存在だったが、仮名子が自分の矛盾に気づいた以上、店は続けられないと伊賀は言っているのだ。……何言ってるか、わかります?

整理しよう。仮名子はオーナーであり、客である。「ロワン ディシー」は好きなだけ飲み食いしたい彼女の理想のもとに作られた。客の満足は二の次だ(仮名子が満足した結果、客が満足するのはかまわない)。だから、店の存続のために業態を変えるのは矛盾であり、だったら店など存続しないほうがいい、と伊賀(というか脚本)は言っているのだろう。

だけど、業態を変えようとしたのは仮名子じゃなく従業員たちだったし、移転を撤回したのは伊賀の挑発に乗っただけだ。移転してフレンチレストランを続ければ、仮名子の理想は維持される。この場所で働きたいというのは従業員たちの意思だが、仮名子にとってはどうでもいい(そもそも彼らは後に全国のあちこちで働くことになる)。だから、仮名子が納得する理屈が成り立っていない。伊賀を除く従業員たち(と視聴者)が戸惑う中、

「みんな、今まで本当にありがとう。ロワン ディシー、本日にて解散!」

と仮名子が叫ぶと、レストランに突然、雷が落ちて大火事に! なんだこりゃ。これまでもおかしかったが、最終回でずいぶん珍妙なドラマになってしまった。原作ファンはどう感じているのだろう?

「Heaven?」は今どき珍しく、メッセージもなければ、いい話感もない、純然たるコメディーだった。あえてメッセージを汲み取るとすれば、「ダメなものはダメでいい」「居心地が良いのが一番」ということぐらいだろうか。ダメ従業員たちは成長するわけでもなく、最後までそのままだった。

主人公には華があるし、周囲には芸達者を集めた。チョイ役のゲストも豪華だった。しっくりこない大げさな演出があちこちにあっても、なんとなく居心地の良さを感じたのは出演者たちの力量だろう(視聴者にイヤな感じを極力与えない控えめなストーリーも一役買っていた)。

演出の木村ひさし氏は、「99.9 -刑事専門弁護士-」でリーガルドラマと小ネタの組み合わせで成功を収めたが、今回は小ネタだけでドラマを構成しようとしてうまくいかなかったように感じる。やっぱりコメディーって難しい。そんなことをあらためて感じた「Heaven?」の最終回だった。あー、もったいない。
(大山くまお)
「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳、舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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