石原さとみ「Heaven?」名作「王様のレストラン」とのイデオロギー対立?今夜最終回

エキレビ!

2019/9/10 09:45

石原さとみ主演の火曜ドラマ火曜ドラマ「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」もいよいよ今夜最終回。特にメッセージのないコメディーらしく、大きなストーリーの盛り上がりがないまま、最終回に突入しようとしているが、それも「Heaven?」らしさだろう。

先週放送された9話の視聴率は8.5%。成功とはいえないが、大失敗ともいえない視聴率は、なんだかそのまま「ロワン ディシー」という店を表しているような気がする。ものすごい名店じゃないんだけど、なくなってしまうと寂しい店というか……。


おいしいものは人を救う
暴君オーナー・黒須仮名子(石原さとみ)の本職は小説家だ。めったに小説を書かない仮名子だが、珍しく小説が書き上がったようで、原稿を編集部に持っていくから今日は店に寄らないという。

オーナーが来ないと知って、あからさまに喜ぶ店長の堤(勝村政信)、ソムリエの山縣(岸部一徳)、シェフの小澤(段田安則)、コミドランの川合(志尊淳)。控えめなシェフドランの伊賀(福士蒼汰)も幸せを噛み締めているようだ。

「ああ、オーナーがいないって、幸せだなぁ」

考えてみれば、暴君オーナーが石原さとみだから耐えられるが、これがおっさん(たとえば竹中直人を代入してみればいい)だったら、本当にイヤな職場だろう。「獣になれない私たち」で新垣結衣が働いていた会社のようなレストランのようなものだ。

店にはたて続けにラッキーなことが起きる。花だらけ牧場の田中義剛(本人)はチーズをおまけしてくれるし、常連客の小枝(矢柴俊博)は幹(上田遥)に店でプロポーズして成功、指揮者の日比野(井上順)は弦楽四重奏をプレゼントする。それにしてもゲストの井上順が一切ストーリーに絡まなくて驚いた。

一方、仮名子は打ち合わせの日を間違えていて、打ち上げはパー。そのほかにもアクシデントが続き、空腹と苛立ちで怪獣状態に。雨でずぶ濡れになりながら店に帰ってくるも、ディナーは終わっていて、満員で自分の席はなく、嫌っていた音楽のプレゼントでみんな楽しそう。「何これ……」と心の底からうんざりした様子の仮名子。

普通のドラマならここでひと悶着あってもおかしくないのだが、それがないのが「Heaven?」のいいところ(?)。不貞腐れながら小澤が出してくれた心づくしの「特製プレート」を頬張っているうちに、だんだんと心が満ちていく仮名子。少し涙ぐみながら「幸せ……」とつぶやく姿がなんとも愛おしい。おいしいものは人を救ってくれる。さりげないが、いいシーンだった。

「王様のレストラン」白井晃登場! 
しかし、幸せな時間は長くは続かない。「ロワン ディシー」の経営は急速に悪化。そんなところへ、飲食店経営コンサルタントを名乗る中聖人(白井晃)がやってくる。

白井晃といえば、三谷幸喜作品の常連俳優で、ダメ店員たちがレストランを再興する名作ドラマ「王様のレストラン」では、気位は高いが心優しいソムリエ・大庭金四郎役を演じていた(鱸役の田口浩正もレギュラー出演していた)。また、白井の代表作の一つである舞台「ア・ラ・カルト 役者と音楽家のいるレストラン」は、フレンチレストランを舞台にした音楽劇だった。なんだかフレンチレストランと縁が深い俳優である。

「ダメな店ほど立て直すとき燃える」と公言してはばからないコンサルタント・中が、オーナー・仮名子と対峙する。従業員たちも「見たい! オーナーが言い負かされるところを!」と集まってきた。ひどい。

中が次々と繰り出す合理的なアドバイスを、仮名子は「おいしい」「おいしくない」と非合理な反応で却下し続ける。中による最後の提案は「人件費」のカット。この席数なら、ホールはソムリエともう一人で十分なのだという。クビ宣告におびえる堤と川合だが、仮名子は提案を突っぱねる。

「論外ね。辞めせない。誰一人ね」

カッコいいが、実は伊賀が指摘するように、中に負けたくない一心で出た言葉だった。

成長VS心地よさのイデオロギー対立
さらに「レストランは夢と感動の舞台! すべてのお客様に対して、完璧でなければいけません!」と正論をぶつ中を一笑に付す。

「私はね、お客様のためなんかじゃない。自分のために働いているの」

「お客様にとって不完全でも、私にとって完璧ならそれでいいの」(堤たちの「ヨッ!」という合いの手が入る)

「レストランは、夢と感動の舞台? ははっ。それも結構。でもね、夢を見るのも、感動するのも、この私じゃなきゃ! だって、ここは私の店なんだから! あ、もちろん、結果としてお客様に喜んでいただけたのであれば、それも良しよ」

めちゃくちゃなことを言っているのに、なんだか正論のような気がする仮名子の主張は中をパニックに陥れる。

思えば「王様のレストラン」は、ダラダラした店員たちばかりで潰れかけていたレストランを情熱あふれる厳格なギャルソンが立て直すというストーリーだった。一方、「Heaven?」のダラダラしている店員たちは最後までダラダラしていて、オーナーはそれに満足している。つまり、中と仮名子の対立は、「王様のレストラン」と「Heaven?」のイデオロギー対立でもあるのだ。

まだ成長の夢が見られたアフターバブルの1990年代半ば(「王様のレストラン」が放送されたのは1995年)と、成長よりも心地よさのほうを大事にする(会社が成長しても働く人たちは報われず、心が壊れてしまうだけ)2010年代の終わりとの対立なのかもしれない。

経営コンサルタントを退散させた仮名子だが、ピンチは突然やってくる。小説を出版していた鐘公論が潰れてしまった! さらに伊賀の母親・勝代(財前直見)が登場、伊賀をジンバブエに連れていくという。

最終回は今夜10時から。
(大山くまお)

「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳、舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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