不動産の売買契約書で見落としがちなポイントと読み解くコツ

日刊Sumai

2019/9/10 21:30

不動産は、高価で重要な財産です。
そのため、不動産の売買は民法上は口頭でも契約が成立しますが、口約束だと争いが解決しにくくなるために、書面で契約するのが通常です。
今回は、不動産売買契約書の内容を読むときに、どのような点に留意したらよいかを考えましょう。
1.不動産の売買契約書における、宅建業法上の主なポイント
建設現場
YNS / PIXTA(ピクスタ)
マンションや土地、戸建など不動産の売買契約書の記載事項は、宅地建物取引業法により、下記のように決められています。

1-1 契約の当事者の特定

売主、買主の記載が正しいか確認しましょう。売主が複数の場合は、対象の不動産が共有名義になっています。

1-2 売買の目的物の表示

不動産の所在地などが正しく記載されているか確認します。

1-3 売買の対象面積と売買代金の決定方法

登記簿面積と実測面積が違う場合には、売買価格を算出するのはどちらとなっているか確認しましょう。
登記簿面積の場合、後日、実測面積が確定した時点で差額精算するのかどうかも聞いておくべきです。
土地
ABC / PIXTA(ピクスタ)

1-4 境界の明示

境界隣地や道路との境界が確定してない場合には、境界確認書等で明らかにしてもらう必要があります。
境界の確定時期、方法、地積更正について確認してください。

1-5 代金の支払い方法

代金の支払時期は争いの種になりやすいので明記しましょう。
残代金は引渡しと同時に支払うのが一般的です。また、手付契約の場合、契約を解除できる期限と手付金の取り決めを確認してください。

1-6 手付金・手付解除

手付の解除は、「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」が期限となります。
「物件の引き渡し」や「所有権移転登記」などがこれにあたります。
それ以降は、手付放棄や不動産業者から手付金を倍にして返してもらうことはできなくなるために注意が必要です。

1-7 所有権の移転・引き渡し・登記

所有権移転登記に関する費用について、売主か買主のどちらが負担するか確認しましょう。
買い主負担部分、売り主負担部分を明確にしておくべきです。

1-8 設備・備品等

どんな設備があるのか確認するとともに、使えない設備がないかも確認しましょう。

1-9 抵当権などの抹消

抵当権等の登記抹消抵当権等の第三者の権利が存在するときは、所有権移転時までに、これらの権利が抹消されることの記載を確認しましょう。

1-10 公租公課などの精算

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の登記名義人に課税されるため、年の途中で物件を取得した場合に負担をどうするのかを確認してください。
一般的に、1月1日、4月1日を起算日とします。
当該年度の固定資産税額が確定するまでの間の契約の場合は、精算方法についても明確にする必要があります。
台風
インディ / PIXTA(ピクスタ)

1-11 危険負担

売買契約締結後、引渡しの前までに、台風で建物が倒壊した、あるいは隣家の失火によって建物が類焼した等、売主に原因がないのに引渡義務ができなかったとき、買主の代金支払債務が消滅するのか、しないのかを確認します。
民法上は不動産のような特定物の売買における危険負担について、契約を締結した後は買主がこれを負担することになっています。
ただし、特約で変更することも可能です。

1-12 契約違反による解除

契約書には「契約違反による解除」という項目があります。どんなときに契約が解除になるかを確認しましょう。
また、「違約金」の金額も契約書に記載されています。

1-13 反社会的勢力排除条項

反社会的勢力による被害を防止するために平成19年ころから国が法的に取り締まりを強化したのを受けて、契約書にも条文が盛り込まれるようになりました。

1-14 ローン特約

ローン特約とは、買主が不動産の売買代金を金融機関などからの融資を利用することを前提に売買契約を結ぶ際に記載される特約です。
融資の全部または一部について承認が得られなかった場合、その売買契約を無条件で白紙解除します。この場合、手付解除や契約違反などの解除の適用はされず、支払済の手付金は買主に返還されます。

1-15 瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)は、不動産を売った後で見つかった欠陥を修理するための費用を支払わなければならない責任のことです。
売主が欠陥があることを知っていたかどうかによって、責任の所在が変わります。
2.売買契約書を読み解く際の注意点
家
インディ / PIXTA(ピクスタ)
特約は自分たちのための「特別なルール」です。面倒でも必ず読んでおきましょう。
また、署名捺印するということは、契約書の内容に同意したということを法的に示すことになるので、慎重に行いましょう。

2-1 口約束よりも契約書の内容が優先される

トラブルが起こったとき、「あの営業の人がこう言ったから」などという人がいます。
話し合いで解決すればよいのですが、もし、裁判になった時は契約書に記載されていることが優先され、内容を覆すことは難しくなります。納得ゆくまで確かめましょう。

2-2 仮契約の場合は絶対にサインしない

「申込書」にサインしてしまっても、撤回できる可能性がありますが、「売買契約書」にサインすると、売買契約は成立とみなされ、撤回は難しいです。
契約書に「仮契約なのでサインしてください」と言われても、絶対にしないでください。
法律上、売買契約が成立すると、撤回したときに手付金が返金されなくなります。

2-3 特約はとくに念入りに内容をチェックする

売買契約書の書式に関しては、絶対にこの書式でないといけないというルールはありません。
そのために、「特約事項」として、契約条項を追加したり変更したりすることができます。
ただし、「公序良俗」や「強制法規」と呼ばれるルールは、特約に変更事項を記載したとしても認められない場合があります。
測量
haku / PIXTA(ピクスタ)

2-4 登記面積と実測面積が合っているか確認を

登記簿上の面積から売買代金を算出している場合、登記面積と実測面積が異なっている場合、買主または売主が損をする場合があり、トラブルの元となります。
買った後で、測量によって、実際の土地の面積が登記簿上の面積と異なっていたら
・買主が得をする結果となっても、買主は売主に対し追加代金は支払わない
・実際の土地の面積が登記簿上の面積より小さく買主が損をしても、買主は売主に代金の減額を請求しない
という取り決めを契約書に追記してもらいましょう。
3.まとめ
土地
D&M.CLIPs / PIXTA(ピクスタ)
このように、不動産の売買契約書にはチェックすべきことがたくさんあります。
自分の立場から見て、それぞれの条項にどんなメリット・デメリットがあるかを考えながら、契約書を読み解くと論点が分かりやすくなるでしょう。
また、契約前に内容を予め見せてもらい、分からないとこは自分で調べたり、不動産業者に聞いたりしておくことも大切です。
しっかり準備して見落としがないようにしたいものです。
ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員  吉井 希宥美

当記事は日刊Sumaiの提供記事です。

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