経営の専門家や士業従事者らが紐解く「新時代の働き方」 第6回 起業するときに資本政策で失敗する典型的なパターンとは


テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、IT企業経営者としての経験も持つ弁護士・中野秀俊氏が「起業で失敗する典型的なケース」について語ります。

私たち(グローウィル国際法律事務所)は、IT企業のスタートアップ・ベンチャー企業を中心に法律相談を受けています。その中で、起業直後に、よくわからない中、会社の制度設計を失敗したせいで後から大変な思いをしている企業をたくさん見てきました。起業をするとき、最初の段階で間違った方向にいってしまうと、後からリカバリーすることが非常に難しくなります。

そこで今回は、スタートアップ・ベンチャー企業が資本政策(株式・ストックオプション)で失敗する典型例を紹介します。
○創業者の持株比率

スタートアップ・ベンチャー企業の場合、友人同士、共同で創業するということがよく行われます。こういったケースにおいて、共同創業者同士で50%:50%(創業者が3人であれば3分の1ずつ)の株を持つというのは、典型的な失敗例の1つです。

一見、平等で良いようにも思えますが、共同創業者同士で意見が割れた場合には意思決定が滞ってしまい、会社が立ち行かなくなってしまう可能性があります。

やはり、少なくとも誰か1人が51%(過半数)の株式を持ち、最終的な意思決定ができるようにしておく必要があるのです。
○起業初期に、創業メンバー以外の第三者に多くの株式を割り当ててしまう

これは、やってしまいがちなことですが、下手をすると致命傷となってしまいます。スタートアップ・ベンチャー企業は経営していく中で、株式を売却して資金を調達したり、重要な人材を採用するためにストックオプションを発行したりといったことが行われます。よって、創業メンバーにとって株式の持株比率というのは、きわめて重要なものなのです。

しかし、起業直後から創業メンバー以外に株式を多く渡してしまうと、その後の資金調達を行いたいときに、売却できる株式が残っていない、重要な経営事項に介入されてしまうなどの弊害が生じます。
○ストックオプション発行での失敗

豊富な資金がないスタートアップ・ベンチャー企業にとって、ストックオプションは優秀な人に参加してもらうための強力な武器となります。ストックオプションは、場合によっては従業員でも億単位の金銭を受け取ることが可能な場合もあり、優秀な人材を採用するための手段の1つとなるのです。

しかし、このストックオプションについては、発行するときにきちっと設計をしないと大変なことになる場合があります。例えば、税金の問題です。

ストックオプションには、税制上有利な「税制適格ストックオプション」という分類があります。詳しくは専門家への相談などが必要ですが、ストックオプションが「税制適格」かどうかで税額が数千万円単位で変わってしまう場合があるため、最優先で確認する必要があります。

また、一般的にIPOをするときには、発行済株式総数の10%以内にストックオプションが収まっていることが望ましいとされています。そのため、上場時から逆算をして誰にいくつのストックオプションを付与するかを慎重に検討しなければいけません。

COO・CTO・CFOなどの幹部を雇う場合、ある程度のストックオプションを求められるケースが多いため、これらのポジションの採用が終わっていない場合はストックオプションの枠をしっかり残しておきましょう。

上記のような資本政策・株式をめぐる問題は、一度株式などを発行してしまうと後戻りできません。後からなかったことに……というわけにはいかないのです。

スタートアップ・ベンチャー企業は、最初からきちんと資本政策・株式を設計するようにしましょう!

○執筆者プロフィール : 中野秀俊

グローウィル国際法律事務所 代表弁護士、グローウィル社会保険労務士事務所 代表社労士、みらいチャレンジ株式会社 代表取締役、SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。
早稲田大学政治経済学部を卒業。大学時代、システム開発・ウェブサービス事業を起業するも、取引先との契約上のトラブルが原因で事業を閉じることに。そこから一念発起し、弁護士を目指して司法試験を受験。司法試験に合格し、自身のIT企業経営者としての経験を活かし、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動。特に、AI・IOT・Fintechなどの最先端法務については、専門的に対応できる日本有数の法律事務所となっている。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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