バービーは「ブス自虐」をしない! いじり・いじられなくても面白くカッコいい笑いは出来る

wezzy

2019/9/8 12:05


 お笑い芸人・バービー(フォーリンラブ)が語る「コンプレックス」への意識の向け方が各所で共感の声を呼んでいる。

バービーは8月30日放送『ACTION』(TBSラジオ)に出演。たとえ自分のコンプレックスをネタにした「自虐」であろうとも、その表現が人を傷つける可能性があると語り、芸人として笑いを追求しながらも、多様性が重んじられる時代の価値観と歩調を合わせていくと述べた。
バービーが語る「自虐」ネタの問題点
 『ACTION』は月曜から金曜まで放送されている帯番組で、金曜パーソナリティーはライターの武田砂鉄が務めている。

武田は『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)の自宅紹介コーナーで一瞬映ったバービーの本棚に、ジェンダー研究を専門とする社会学者の牧野雅子氏による著書『刑事司法とジェンダー』(インパクト出版会)があったことからバービーのことが気になっていたという。『刑事司法とジェンダー』は、警察、検察、裁判所といった機関がジェンダーバイアスをもとに事件に向き合うことで、結果として性暴力加害者の責任追及をないがしろにしていることを問題としたジェンダー研究の本である。

『ACTION』では、多方面への好奇心を持ち、ジェンダーバイアスにも意識を向けているバービーが、「いじる」「いじられる」といったコミュニケーションのあり方が基調になっている日本のお笑い文化のなか、どのような心持ちで仕事に向き合っているのかに話がおよんだ。

芸人社会は一般社会以上に「男社会」の色合いが強く、そのなかに女性芸人が入ると、身体的なコンプレックスにも容赦なく土足で踏み込んでいく苛烈な「いじり」が入る。

バービー自身は「郷に入れば郷に従え」といった気持ちで向き合うことができたため、そういった男社会の人間関係のあり方は自分の考え方とは相容れないものではあるけれど、それなりにうまく適応していたという。

しかし、そうした「いじり」を受け入れ、また、ときには笑いのために自分から「いじり」を求めることは、誰かを傷つけることにもつながることにつながると思い至ったという。バービーは番組のなかでこのように語っている。

<一回コメントをもらったことがあるんですよ。私がテレビでギャンギャン“ブス”とか“デブ”とかいじられているのを見て、女の子からのコメントで『私はバービーちゃんのことそんなにブスだと思ってないし、私と同じぐらいだと思っているから、私が“ブス”“デブ”言われているように感じてすごくショックだった』っていうコメントをもらって。
そのときに、自虐はいけないなと思ったのと、やっぱ自虐してるっていうことは、(価値観の)物差しをもっているわけじゃないですか、ここからはいじっていいとかダメだとか。だから、『すべての人は平等ですよ』とか言っているわりに、その自虐の物差しは許されるっておかしいなっていうのは気持ち的にはあって>

テレビを通して不特定多数に届けられるお笑い芸人たちのコミュニケーションのあり方は、画面の向こうにある広い社会で人々の人間関係のあり方に強い影響をおよぼす。バービーはその責任を強く痛感していると、番組のなかで証言。だからこそ日々、感覚をアップデートし続けているようだ。そのひとつがコントの「ネタ」である。

フォーリンラブがブレイクした際に定番としていたコントネタの形式は「バービーが会話の流れのなかで相方のハジメを強引に口説きにかかり、戸惑いながら告白を受け入れたハジメとともに『イエス、フォーリンラブ』のキメゼリフを合わせてオチにする」といったものだった。

バービーはこういったネタが曲解されて世間に広がっていく可能性を案じ、社会を後退させるようなかたちで消費されないように留意して笑いをつくるようにしていると語っている。

<私から一番最初にやっていたセクハラ芸が、それは私のなかでは、ひとつの発信だったり、主張だったりしてたんですよ、私のなかでは。でも、それがひとり歩きしていって、男性に消費されるだけの芸になってしまったときってすごく女性を傷つけてしまうし、意に反しているなと思うから、それはやらないようにしたいなと思っています。その境目を自分のなかでジャッジして、やれたらなって>
コンプレックスが逆に“武器”になる時代も終わるべき
 バービーとほぼ同世代の女性芸人である渡辺直美も、同じく先進的な価値観をもっていることはよく知られている。武田砂鉄が、コンプレックスを自ら「武器」にして笑いを生み出し、いまでは世界的な人気すら獲得している例として渡辺の名を挙げると、バービーは、渡辺の功績を認めつつも、こうした一言を添えた。

<言ってしまえば、それが武器にさえならなくなるぐらいが一番ベストなのかなと思いますけど。それさえも、言ってみれば自虐と同じ構造なのかなって思うので。(それが武器に使えるということは)差別の目線が根底にあるからそれが武器になっているだけであって>

これには武田も「一本取られた」といった反応だったように見受けられた。

そして何よりバービーは、ポジティブに今のお笑い芸人界隈を捉えている。価値観をアップデートさせているのは若手芸人だけではないのだという。

<私よりも年上の、芸歴の長い方たちとかが、なんでこの新しい感覚にフィットできるんだろうっていうぐらい変わっていっています。難しいなって思うようなこの価値観をすごい敏感に察知して合わせていっているのを見ると、うわあ、すごいなと思いますよね>
バービー「私は違う価値観で生きてるから、別にいいや」
 バービーは、女性向けコミュニティサイト「She is」が掲載した、ガールズバンドのCHAIと黒沢かずこ(森三中)との鼎談記事(2017年11月10日付)で、故郷に言及。北海道夕張郡という、のどかな、言い換えれば、なにもない街で育ったことが、いまのような価値観を育む要因になったのではないかと自己分析している

<私はすごく田舎で育ったから、人も少なくて、誰かと比べるっていう概念自体がそもそもなかった。そんな風に、外見がコンプレックスになり得る環境じゃなかったから、東京に来て初めて、男の人の『ブスは黙ってろ』的な雰囲気とかを感じて、『そっか! ブスなんだ!』ってなったの(笑)。外見ひとつで、しゃしゃり出ちゃいけないと思われる社会なんだなって。だけど、それはこの場所での価値観であって、私は違う価値観で生きてるから、別にいいやって>

また、ハイファッション誌「Numero TOKYO」2019年1・2月合併号(扶桑社)における峰なゆかとの対談でもやはり、バービーは自虐に一切走らない。<恋愛対象以外からの支持はいらないって思ってる><感性でわかってくれる人だけでいいって思ってる。混沌としたモテ市場では戦ってないし、一本釣り~>と、“空気”に左右されない恋愛観や高い美意識を披露。

同時にバービーは、女性“ならでは”とされるマウンティングや熾烈なバトルにも俯瞰的だ。ヒエラルキーが気になってしまうという峰なゆかに、<(女性間の)ヒエラルキーは基本的に無視してる(笑)><私たち年も重ねてきたし独身で好きに生きてるし、ヒエラルキーから抜けていいんだよー!って叫びたくなる(笑)>とエールを送っていた。

『ACTION』でバービーが語っていたような、「外見ひとつで、しゃしゃり出ちゃいけないと思われる社会」に対して「私は違う価値観で生きてるから、別にいいや」と宣言する流れは、生まれ育ちや世代に関係なく多くの人々で共有され始めている。空気やヒエラルキーを気にして萎縮したり、優位を誇示したりする行動は、端的に「ダサい」のだ。

バービーはテレビという影響力の強いメディアで活躍する芸能人だ。もちろん彼女はそこにおいて演者であり、作家や演出家、他の演者と共に番組を制作するよりほかない。けれど彼女はこれまでも、メディアを通じて自分の価値観を発信してきた。いじり・いじられなくても、人を無闇に傷つけないように注意深くネタづくりをしても、面白くカッコいい笑いは出来ることを、彼女自身が証明している。

テレビが届ける笑いのスタンダードが「相手のもつ差異をいじって嘲笑うことは楽しい」というものから、「お互いの違いを尊重し合い、嘲笑しない」という方向に変化することは、そこまで難しいことではないのかもしれない。

当記事はwezzyの提供記事です。

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