【漢字トリビア】「素」の成り立ち物語

TOKYO FM+

2019/9/8 11:00

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「素顔」の「素(ス)」、「素材」の「素(ソ)」。「素(もと)」とも読む漢字です。
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年9月7日(土)放送より)



「素(ス)」という字は糸を染めている様子を描いた象形文字。
「土」という字に横線を一本加えた上の部分は、束ねた糸の先が垂れ下がっている状態を表しています。
下半分の「糸」という字は、糸を束ねた形。
染めるときは糸を束状に結び、染め汁の入った鍋に漬けたのですが、結んだ箇所は「もと」の白いままで残ります。

その白く残った部分を「素(ス)」といい、「しろ・もと」という意味を表す漢字になりました。
のちに「本来の性質、何も加えない」という意味も派生して、「素性」「素質」といった使い方をするようになったのです。

茜(あかね)・苅安(かりやす)・橡(つるばみ)・蘇芳(すおう)。
里や野山を彩る豊かな色彩に憧れたいにしえの人たちは、木の幹や草の根、花や実を使って糸を染め、布を織りました。

―あの人の目をひくような、華やかな色が出せないものか。

若い娘たちは、出来上がった糸の束にため息をついています。
そんな彼女たちの様子を微笑ましく眺めながら、年を重ねた女たちは思うのです。
身にまとう染めものではなく、素のままのあなたがもつ美しさを認めてもらえるように。
人を動かすのは、まことの心だけなのです。

今日の漢字は「素顔」の「素(ス)」、「素材」の「素(ソ)」。
結んで束ねた糸を染める作業を描いた象形文字です。
結び目の部分だけ染まらず、「素」のままの色が残ることから、「しろ・もと・本来の性質」といった意味をもつようになりました。

今、職場や学校といった公の場で常に笑顔でいることを自らに課し、過剰なストレスを抱える人が増えているといいます。
明るく感じのよい人で居続けようとするあまり、素のままでいられるはずの家族や友人の前でも笑顔を作ってしまう毎日。
やがて自分の感情をはき出せなくなって、心身のバランスを崩してしまうというのです。

笑顔はもちろん大事。
でも、人は素顔でいる時間も必要としています。
フランスの貴族で人間精神を探求し続けたモラリスト、ラ・ロシュフコーは、こんな言葉を残しています。

―ありのままの自分を出す方が、自分を偽って見せるより得るものは大きいはずだ

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……。
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
      『「スマイル仮面」症候群』(夏目誠/日本放送出版協会)

9月14日(土)の放送では「調」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20~8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/kanji/

当記事はTOKYO FM+の提供記事です。

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