矢崎広×若月佑美インタビュー「これが自分たちのエンタメ、どん!」っていう気持ちです 舞台『GOZEN -狂乱の剣-』

SPICE

2019/9/7 12:00



ひとつの作品世界を映画と舞台で連動させつつ、それぞれ独立した物語を描いていく「東映ムビ×ステ」プロジェクト。その第一弾のSTAGE SIDE、舞台『GOZEN -狂乱の剣-』主演の矢崎広とヒロインの若月佑美の対談が実現した。活気に湧く稽古場にて語り合う、本番へ向けたそれぞれの思いとは──。

ーーお稽古が始まって約一週間。今の感触はいかがですか?

矢崎:顔合わせから今までっていうのが僕的にはもうホントに怒涛で、今日このあと1幕のミザンス(※舞台での役者の立ち位置のこと)もつけ終わっちゃうんですよね。いつの間に? って感じ(笑)。順調……なのかな? でもこの作品、ダンスもあって殺陣もあってもちろん芝居もあって、いわゆるいつもの大変システムなので(笑)、まあこのスピードでやっていかないとダメなんだろうなとは思っています。キャスト同士はまだ顔合わせのときの印象が強いかも。日々の稽古を通じて「あ、この方はこういう人なんだ」ってわかっていっている、その新鮮さも楽しんでいます。
矢崎広
矢崎広

若月:私は自分が出ているシーンはもちろんなんですけど、それ以外のシーン、今やっている1幕で私が出ていないシーンを自分で見ながら「1幕全部が繋がったとき、どういう風に形になっているのかなぁ」っていうのが、今一番気になっているところですね。全体からいろいろちゃんと感じ取り、そこからまた自分のお芝居も変えていけたらなと思っている段階。あと、八弥斗との距離ももうちょっと詰めないとなって(笑)。

矢崎:うん(笑)。

ーーおふたりは初共演ですね。

矢崎:はい。若月さんはすごい真面目な方だなっていう印象。僕はアイドル時代のことをあまり知らないので、初めから女優さんとして向き合っています。で、多分すごいお芝居が好きだし、ずっとしっかりお芝居をやっていきたいって思ってるのも伝わってきますし……凛として、でも悩みながら戦ってるんだなって姿が頼もしいですね。稽古場にも全然スッピンで来るし。

若月:やっぱりメイクはしてた方がいいのかなぁ……?

矢崎:あ、しなくても、僕はいいと思うよ。女優さんってみなさん稽古場ではラフというか……。

ーーいらないモノは一旦置いて、準備万端のノーメイク。

矢崎:そうそうそう。もう稽古モード、芝居で勝負するぞっていう本気を若月さんからも感じてます……って、なんかすいません。メイクの話とかまでしちゃって。でもそういうの、僕は「かっこいいなぁ」って思っちゃうんですよ。

若月:あー、やー、ありがとうございます。嬉しいです。ちょっと恥ずかしいですけど(笑)。

若月佑美
若月佑美

ーー矢崎さんの印象は?

若月:正直、一番最初の顔合わせでお会いしたときは「怖い人なのかなぁ」と思って。

矢崎:そう、僕、よく「怖い」って思われるんだよなぁ……なんでだろうなぁ。まぁ、いいんですけどね。

若月:(笑)。矢崎さんのことは俳優さんの先輩として以前から知っていましたし、舞台も拝見してたんです。

矢崎:わ、嬉しい。

若月:その印象もあって、お芝居が上手で、多分、お芝居に関して真面目な方なんだと感じたので、これはきっと寡黙な方で……。

ーー稽古場でもピリッとしてるのかな、と。

若月:そう思いました。でもお稽古場にいると意外と八弥斗っぽいところもたくさんあるなって。オンの時間はとても男らしくて、さすが座長って感じてます。でも休憩中になると動きが……可愛い感じで(笑)。

矢崎:ハハッ(笑)。

矢崎広
矢崎広

若月:私はそれをこっそり眺めながら、今自分の中に矢崎さんの“八弥斗感”を貯めてるんです。

ーー矢崎さん演じる望月八弥斗は府月藩・藩主の嫡男。若月さん演じる八弥斗の恋人、小松原奈奈は家老・小松原烈山の娘。幸せだったはずの二人は八弥斗の父の急死から状況が一変。八弥斗は父親を陥れた叔父・甲斐正への復讐の機会を狙い、狂気を装ってしまう。そして周囲の反対を押し切りただひとり八弥斗を信じ寄り添い続けるのが奈奈。物語は『ハムレット』をモチーフとした世界で展開していきます。

矢崎:奈奈との関係はこのお話しの重要な要素です。むしろいくつかお話の軸がある中でも一番の主軸になっていると思っているので、やはりそこは大事にしていきたいですね。八弥斗ってけっこう女性に頼りがちな男なので、僕自身はそこは全力で甘えていきたいな、と思ってます。『ハムレット』もそうですけど、自分のせいで運命を狂わせることになってしまう恋人に対して、その裏側の……言っていることと目的の違い、そうしなければならない辛さ……真逆の行動ばかりをすることで結果、周囲には狂っているように見えるんですけど……。

ーー誰にも言えない“正気”の部分にある変わらぬ愛。それが二人を繋いでいく。

矢崎:そうです。今回は割と崩しちゃってますけど、でも僕は『ハムレット』をベースにやるとなったら絶対そういうところを大事にしていきたいと思っていて。みんなが知っている題材、みんなが知ってる状況、よくありがちな状況だからこそ役者のやりがいも大きいですし、平凡な表現にならないよう頑張りたいなと思います。

若月:戯曲に年齢は明確に書かれていないんですけど、多分奈奈はまだとても若くて、おそらく八弥斗が初めての恋人なんじゃないかと私は思っていて。なので恋というモノに対してとてもピュアに向き合っていて、全てが嬉しくて、全てが楽しくて、八弥斗と過ごす時間が一番尊くて。和歌を詠むとか当時の女性のたしなみは恋にまつわることが多いので、そういうところでも奈奈にとって恋の存在、八弥斗という男性の存在はとても大きいモノなんだろうなって感じています。だからこそ、八弥斗に裏切られたときにも周りの人の支えや励ましは奈奈には届かない。そして、その思いが突き抜けなければいけないので……。

若月佑美
若月佑美

ーーなににも止められない強烈な「恋心」が。

若月:そこはもう自分の中でも奈奈として八弥斗のことを大好きになって、八弥斗以外はいらないし、奈奈には八弥斗が必要で八弥斗には奈奈が必要だって強く信じる心を持つ女性として奈奈を生きていきたいです。

ーー悲恋ですね。そこから、さらに壮大な展開が待ち受けているとか……。

矢崎:はい。だからあとのことはなにも話せないんですよー(笑)。

若月:フフッ(笑)。

矢崎:もう「これぞ演劇!」って思ってもらえる「ええっ!?」っという見どころがたくさんあります。こういうファンタジーをドン、とやっていきたいなっていう僕自身の思いも叶えてくれる跳躍です。毛利さんがやりたかった『ハムレット』ってこういう作品なんだ……と感じながらやっています。

若月:私も脚本を読んでびっくりしましたし、『ハムレット』に重ねて考えると「あ、そこまで描いてもらえるんだ」っていう奈奈としての喜びがあったりもします。後半の怒涛の展開があるからこそ、序盤や中盤の展開に関しても後々「なるほど」と思い返せるところがたくさんあるんです。タイトルもそうですしビジュアルイメージからも『GOZEN』は戦いの物語という印象が強いと思いますが、戦いとしてのかっこよさはもちろん、物語として泣けるし、グッとくるしで。人間ドラマもしっかり楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。私がお客さんだったら、もう一度観たくなると思います。
(左から)若月佑美、矢崎広
(左から)若月佑美、矢崎広

ーー脚本・演出は毛利亘宏さん。矢崎さんと毛利さんのタッグで和モノというと、殺陣と歌と芝居との融合にいち早くチャンレンジしてジャンルに先鞭をつけたミュージカル『薄桜鬼』が思い起こされます。

矢崎:そうですね。ある意味そこにまた立ち返る……ではないですけど、改めてまた毛利さんと和モノをやるってなったときに、あの頃の自分、今までの自分は超えたいなぁと思いました。ただね、数年前にバリバリにやってた自分ってすごかったんだなぁってことも痛感しつつ(笑)。ほんと、あんなことよくやってたなぁって。

若月:(笑)。

矢崎:正直「もうできない」って思うことも多々あります。それをまた……昨日も新しい殺陣がついて「ああこれやんなきゃいけないんだ。結局やるんだ」って思って……やってますけどね。台本の2、3ページ後には多分もうゼイゼイ言ってると思うよ(笑)。でも楽しいです。まずは、すごく楽しい。

ーー目標としているところはありますか?

矢崎:うーん……今は「チームで勝ちたい」という気持ちが強くなってますね。前もそういう思いは持ってましたけど、でもどちらかというと個人の技術を上げていかないといけないタイミングでもあったので、当時はそっちをすごく意識してた。今はそうではなく、チーム感とか、八弥斗と奈奈の関係性とかを重視していきたいなって気持ちにスイッチしています。そこに殺陣がある、ダンスがくっついてくる、全て意味があってやってるんだっていうところへの意識が僕の中で大きく変わってきている部分。もちろん殺陣もダンスもキレイに見せたいですけど、技術を磨くだけではなく、そこに向かう気持ち自体をより大切にしたいなって。

若月:殺陣に関しては、ただの若月としてはもう「あ~、心配」、「怪我とかしないで頑張れ~!」っていう気持ちでしかないんですけど(笑)、例えば力強く戦国時代のように戦う男性たちの中にある女性としては、やっぱりメンタルのケアだったり、精神面で支えるってところも大きいのかな。稽古場での自分自身もですし、きっと奈奈もそう思ってるはず。『GOZEN』では戦いに向かう八弥斗を奈奈が見送ったり、見守るシーンは正直ないんですけど、そういうことがある時代、そういう時にきっと心の中で「行ってきます」って言って戦いに行く八弥斗に対して、「頑張ってきて」って背中を押してあげるだろうと思うし、無事に戻ってきてくれたときにはちゃんと側にいて一番に支えてあげられるようには居たいなって思っています。特に八弥斗は女性に頼りがちなダメ男要素があるので(笑)。
若月佑美
若月佑美

矢崎:フッフッフッ(笑)。

若月:で、私はどちらかというと「守られるより守りたい」という自分が普段からいるんですよ。なので、それが上手く奈奈とリンクできたらいいなって思うんですけど……。

矢崎:素敵。安心。

若月:私は毛利さんとご一緒するのは今回が初めてなんですが、やっぱり物語のあちこちに「このタイミングでこの女性にはこうあって欲しい」という毛利さんの思いが少なからず込められているように思うので……ここで描かれている“毛利さんの理想の女性像”を体現したいなと思っています。毛利さんともたくさんお話ししながら奈奈としてよい見せどころをたくさん作っていきたい。顔合わせのときに「役に近づいていくよりも役を近づけて、自分の本当の姿も活かせるようなキャラクターづくりをしてもらいたい」という、とてもありがたいお言葉を毛利さんにいただきました。私はいつもそこが不安になっちゃって……特に原作があるモノはどれだけそこに近づけるか、そのキャラクターのファンの方の気持ちに応えられているかってところばかり気にしてしまうんです。

矢崎:わかるよ。すごくわかる。

矢崎広
矢崎広

若月:なので今回はファンタジーではあるけれど「私」っていう存在がここにあっていいんだなっていうことに、とてもホッとしています。お芝居の面ではお稽古まだまだこれからなんですが、すでに矢崎さんからたくさんもらうものがありますし。

矢崎:ホント?

若月:ホントです!

矢崎:そう? できてる? 僕。

若月:はいっ(笑)。なんかもう相手からこんなにももらえるものがあると、自分から出てくるものもこんなに変わるんだなぁって。セリフの言い回しひとつでもどんどん変わってきますし。

ーーそこに「お芝居なんだなぁ」という実感が……。

若月:そうなんです! 普通に文字で追うと八弥斗って「誰が守りたいんだ、こんな男!」って思っちゃうんですけど(笑)、矢崎さんのお芝居で「この人を守りたい」って思わされてしまう。

矢崎:確かに八弥斗はそのまんまやるとただのダメ男なので、お客様にも「こういうダメな人っているよね。でもほっとけないよね」って思ってもらえる愛らしさだったり、「頑張れ八弥斗!」ってどこか共感してもらえる隙がなくちゃいけないなって思ってやっています。

若月:そういう一面が矢崎さんの中にもあるのがいいんですよね。

若月佑美
若月佑美

ーー稽古はこれから佳境へ。観る側としては原作モノも多い今、こうしてみなさんがオリジナルの活劇を生み出していく意義は大きいな、と感じています。

矢崎:そこへの思いは僕自身、すごくあります。僕は、あまり2.5次元舞台とそれ以外とを分けようとは思わないんですけど、世間的に見ると2.5次元舞台からキャリアをスタートさせて、今はそれ以外のジャンルの舞台も多くやらせてもらっている。一方、このカンパニーには、今2.5次元舞台でバリバリやっている役者もいて、波岡さんみたいに映像中心に活躍されている方もいて、とても面白いパズルの座組になっています。そういう人たちが集まったオリジナルの舞台って、例えば劇団☆新感線とか、なにかそういう諸先輩の皆さんが創ってきた領域に近づけるようなモノができるんじゃないかなって……志として。僕は『薄桜鬼』をやっているときにまさにそこを目指していたので、やっぱり「若い僕らでもこういう作品を作り上げることができました」って言えるモノを、という意気込みはすっごくあります。僕らもやっていくべきなんですよね、「自分たちのエンタメ、どん!」ってことを。そうじゃないといつまでも世代交代もできないですし。で、上の人から「まだまだだな」って笑われて、さらに「なにくそ!」ってなるくらいでちょうどいいんです。

若月:私的にはオリジナルの舞台をやる上でとても大きな課題だなって思うのは、原作モノ……2.5次元作品とかだと元々の世界観があるので、ファンタジーとしての説得力はもちろん、お客様も「このシーン、ちょっと不思議だけどアニメでそうだったからな」って納得してくださるところも多いのですが……。

矢崎:(大きく頷く)。

矢崎広
矢崎広

ーー事前の共通認識が多い。

若月:はい。そこである種“空いている隙間”をお客様に埋めてもらえていたところもあると思うんですけど、やっぱりオリジナルの物語で、ファンタジー要素があって、キャラクターも現実にはいないような存在もいて、それをどれだけ信じてもらえるか、信じさせられるかってところはすごく重要。そこを埋める力をここで身に付けたいです。やっぱり舞台を観ていてその世界に入った瞬間ってお客様も一番楽しい瞬間だと思うので、そこをしっかり提供したいですし、私もその世界の一人として……勉強させていただく身ではあるんですけど……たくさんみなさんから吸収して、なにかちょっとでも作品をよりよくできる力になれたらなって思っています。

ーーどんな世界を立ちあげてくれるのか。本番が楽しみです。

若月:まずは私自身、こういう和物の舞台、時代物をやるのは初めてなので、この新たな挑戦を身に付け、今まで応援してくださった方たちにも素敵な驚きを渡せたらと思っています。時代も環境も世界も今までとは全然違う『GOZEN』。でも、そこにも今につながるものがあったりするんだよって伝えていきたいですし、あと、自分なりの好きな言葉を見つけてもらいたいなって。私たちのセリフとかで「これを糧に頑張って行こう」って思ってもらえたら嬉しいですよね。ぜひみなさん、自分だけの『GOZEN』を見つけに劇場に来ていただけたら嬉しいな、と思います。

矢崎:今作は僕にとって令和になって初めての舞台。そのタイミングでのこの作品、気合も入っていますし、世の中これからどうなっていくんだろう、どう変わっていくんだろうみたいなところでの毛利さんからのメッセージも、いろいろ詰まってるんじゃないかな。八弥斗自身も時代の流れの中で「僕はどうしたらいんだろう」「なにをしなければいけないんだろう」と思いながら生きている。自分だけじゃなく恋愛についてもこの世界の中で本当に悩んでいて、しかもどんどん予期せぬことが起きるんですよ。それにどう立ち向かってどういう終わりを迎えるのか。僕の八弥斗と一緒にそんな物語の世界に潜り込みましょう。
(左から)若月佑美、矢崎広
(左から)若月佑美、矢崎広

取材・文=横澤 由香 撮影=池上夢貢

当記事はSPICEの提供記事です。

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