「ドローン戦争の真実」無人攻撃機って操作するダメージキツいんです、配信中毒者激推し軍事ドキュメント

エキレビ!

2019/9/6 09:45



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今回紹介する『ドローン戦争の真実』は、相当重いドキュメンタリーである。主題となっているのは、タイトルの通り無人攻撃機と、実際にその操作に関わっていた人たち。加えて、無人攻撃機に攻撃されたアフガニスタンの人々の証言も混じるという、敵味方双方からの視点を織り交ぜた内容となっている。

無人攻撃機、実際には使うほうもキツいんです
無人機は、21世紀になってから急速に実戦で使われるようになったテクノロジーである。文字通り人間のパイロットを乗せていない飛行機を使い、偵察はもとよりミサイルを用いた対地攻撃までこなすようになっている。最大の特徴は、兵士が戦場から遠く離れた場所で操作できる点。機体はアフガニスタン上空を飛んでいるが、パイロットは遠く離れたアメリカのエアコン付きの部屋で画面を見ながら操作している……という状態を現実にしたのが、これらの兵器のキモである。

この無人攻撃機を使った戦術は兵士の直接的な被害を防ぐことができるが、操作に関わった兵士の深い心理的ダメージや無人機特有のトラブルを生み出すことがわかっている。『ドローン・オブ・ウォー』や『アイ・イン・ザ・スカイ』など、無人機特有の問題点をピックアップした映画も作られているあたり、世間的にも関心は高い。『ドローン戦争の真実』は、ドキュメンタリーという形で無人機による戦争の問題点に切り込む。

主要登場人物は3人。以前空軍に所属し、無人攻撃機のイメージ・アナリスト兼審査官をやっていたヘザー。元ホームレスながら空軍に所属し、信号諜報活動隊員として勤務するダニエル。そして元空軍二等軍曹であり、ドローンの分散型共通地上システムに関与していたリサ。この3人が、無人機での戦争に関わったことでどのような影響を受けたかに密着する。

ヘザーがやっていた仕事は、無人攻撃機の操縦自体ではない。彼女の仕事は無人機から送られてきた映像を見て、攻撃が必要か確認してパイロットに指示を出す仕事である。単純に「攻撃しろ」というだけではなく、ミサイルが着弾して自分が吹き飛ばした人間がちゃんと死んでいるかどうかを確認しなくてはならない。しかし、彼女の立場では自分が誰を殺したのかすら教えてもらえず、バラバラになった人体を眺め続けるうちに精神的ダメージを負った。現在はマッサージ師になるため勉強中である。

ダニエルは前述の通り元ホームレスだ。彼は現在も空軍に勤務しており、無人航空機の技術自体に関しては反対していない。しかし、戦争でこれを使うのは「使うのが簡単すぎて危ない」という立場だ。とにかく殺害する相手が民間人かどうかがわからず、不確実なのが一番危ないと主張するダニエルは、現役の軍人でありながら無人攻撃機への抗議デモに参加したりする。

リサは監視用無人機のシステム担当だった元下士官である。全地球規模の監視システムを構築し、空軍称揚賞を授与された。彼女の関与したシステムにより、米軍は2年間で12万1000人もの反乱兵を認定したという。現在は退役しているリサは、自分が過去にやってきた仕事に対して強い疑問を抱いている。

3人とも、軍に入った動機は単純で、「人を殺してやろう!」という意図はない。揃って口にするのが「軍に入れば色々な国にいって、幅広い経験を積むことができるだろうと思った」という点である。事実、米軍ほど世界のあちこちに展開している軍隊はない。軍はそれを宣伝に使い、より幅広い経験を積むことができるという口実で若者たちをスカウトする。ちょっと意識高い系というか、「世界を見てデカイ人間になろう!」みたいな感じで宣伝しているわけである。そりゃまあ、ちょっと乗っかってしまう若者がいるのもわかる。

告発した元兵士をFBIが捜査! 冗談抜きでおっかない、無人機運用の実態
しかしながら、実際に彼らがやらされたのは無人機を使ってアフガニスタンの人間を吹っ飛ばす作戦である。作戦によってつらい思いをした彼ら3人は、それぞれに行動を起こし始める。

深いトラウマを負ったヘザーは『ガーディアン』紙のウェブサイトに無人機作戦を告発する論説を掲載。それによってネット上で左右から言いたい放題に言われることに。「私は普通に生活しててもいいのに、なんでこんなことをやってるんだろう……!」と悩みまくってしまう。キツい……。

一方リサは、アフガニスタンへの支援に協力し、友人とともに現地へと足を運ぶことに。そこで初めて、無人攻撃機によって実際に攻撃を受けた人々の話を聞く。映画はここから「実際に攻撃された人たちへのインタビュー」が挟まれるのだが、これがまあマジで怖い。普通に車に乗って移動し、道中でお祈りしてたらいきなり空からミサイルが飛んでくるのである。慌てて子供がいることをアピールし、自分たちは民間人だと身振り手振りで伝えても第二射が飛んでくる。家族が何人も死に、生き残った人も手足を失う。また淡々と「あの時はひどかった」と話しているのが悲しい。

しかし、ある意味でもっとおっかないのが、アメリカ政府の対応である。ネットで無人攻撃機による作戦を告発したヘザーの元へは、FBIから連絡がくる。内容としては「テロリストがネットの情報を元にしてあなたの身柄を探しているから、ネットでの告発はやめたほうがいい」というものだ。これ、どう考えても「ネットで告発するのをやめろ」という圧力である。軍を退役している人間に対してあからさまに圧をかけてくるFBI、わかっちゃいるけど怖すぎる。

さらに軍人でありながら抗議デモに参加したりしていたダニエルのところには、いきなりFBIによる強制捜査が突っ込んでくることに。ドキュメンタリーの撮影中にダニエルは空軍を除隊するのだが、除隊したその日のうち、それも空軍のバッジを返却した数時間後にいきなり数十人の捜査班が自宅に押しかけてくるのである。そりゃまあFBIなんで合衆国のために動くのが仕事なんだろうけど、それにしてもあからさますぎる。現役か退役かを問わず、軍人が無人機に反対するとどうなるかを、このドキュメンタリーは克明に映す。

暗澹たる気持ちになるのが、このドキュメンタリーが撮影されたのは2014~2015年ごろにかけてという点だ。今から数年前の出来事なのである。おそらく、米軍は無人機に携わった兵士たちのケアまできっちりとパッケージしているのだろうし、そもそも最近では戦場で無人攻撃機が使われていることに対して、さほど特別な驚きがなくなった。おれも正直、もう「普通の兵器」という感じで捉えていたと思う。

しかしその間にも、無人攻撃機は戦い続けている。今や普通の兵器になってしまった無人機だが、やっぱり運用側にとっても攻撃される側にとっても、相当におっかない兵器なのは間違いない。じんわりと重たくて怖くて、そして良質なドキュメンタリーである。


(文と作図/しげる タイトルデザイン/まつもとりえこ)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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