野村義男インタビュー 「なんで観ないの?聴かないの?ロックが好きだったら一度聴いてごらん。」KISS最後の来日に思いを馳せる

SPICE

2019/9/6 19:00

『END OF THE ROAD WORLD TOUR』の一貫として、12月に東京や大阪など全国5都市で開催される過去最大規模の公演は、KISSにとって最後の来日公演になるという。世界最高峰のロックスター最後の来日公演へ向けて、日本が誇るギタープレイヤーの一人でありながら日本一のギターコレクター、そして日本一ギターを愛する男・よっちゃんこと野村義男に、彼らの魅力・ライブの楽しみ方を存分に語っていただいた。


ーー野村さんがKISSを知ったのはいつぐらいですか?

NHKの『ヤング・ミュージック・ショー』をジャニーズ事務所で観たんです。あそこに資料として映像があって。僕がヴァン・ヘイレンのファーストを聴いたのも事務所の合宿所だったから。新しい音楽とか必ず棚にあるんですよ。好きなものを自分で選びなさい、いろんなものが取り揃えてあるよっていうすごい環境だったんです。当時、一般的にビデオデッキは市販されていなかったんですよ。それなのにジャニーズ事務所にはあって、録画された『ヤング・ミュージック・ショー』を観たんですね。リアルタイムじゃなくて、多分、放送の1年後ぐらいじゃないですかね。それが初KISSでした。あの番組で放送されたKISSの来日公演は、何年だったんだろう。

ーー1977年4月2日の日本武道館ライブが放送されたんですよね。その1年後ということは、野村さんが中学2年ぐらいですか?

1979年に『3年B組金八先生』が始まったんですよ。だから、その前ですよね。KISSのライブはすごくおもしろかった。
野村義男
野村義男

ーーすごいバンドだと思ったんですか? それとも、また別モノの存在ですか?

小学校のころからギターをやっていたんで、バンドやグループってものに何の偏見もなく。ただ、子供のころの僕は、ちょっと冷めていたんですよ(笑)。だから、ああいうメイクと格好で演奏をしているのがKISSという人たちっていう。もうちょっと経ってから、宇宙からの使者だ!と思うようになるんですよ。子供なんだから、まず、そっちを信じなきゃね(笑)。そしてギターでいろんな音楽を弾くようになっていくと、KISSは上質なロックンロールだと分かるんです。それでもっと好きになっていったという。

ーー第一次遭遇のときに大きなインパクトを感じてゾッコンラブになったわけじゃなく、徐々に好きになっていったんですか?

そうそう。知れば知るほど、KISSの凄さが分かっていくんですよ。なぜメイクをしたのかって裏側のヒストリーも知ったし。もともとジーン・シモンズは学校の先生をやっていて、ポール・スタンレーはタクシードライバーをやっていた、とか。最初からミュージシャンだったわけじゃなくて、ひと花咲かせてやろうぜっていうのが見えたときに、この人たちはカッコいいなって。それで成功したし。すごい憧れた。いろんな気持ちをかき立てられましたね。
野村義男
野村義男

ーー事務所では擦り切れるぐらいビデオを観たんですか?

観てる、観てる! エース・フレーリーが一番美しくて、カッコいいなって。歌わないで弾いているギタリストのカッコよさを、僕はエースで知りました。『ラヴ・ガン』(1977年)のときのエースの衣装がまたカッコよくて。僕が中2のときかな。そして気が付けば、グレコから出ていたエース・フレーリー・モデルも手にしていたし。エース・モデルを買うぐらいハマりましたね。

ーーKISSのアルバムも発売日に買っていたんですか?

買っていたと思う。発売日を待つ熱狂的な“KISSマニア”じゃなかったけど、レコード屋さんに行ったら、新しいアルバムが出てるじゃん。買わなきゃって。擦り切れるぐらいまで聴いたレコードは『アライヴ2』(1977年)です。『ラヴ・ガン』(1977年)は、カセットウォークマンでも聴けるようにカセットも買ったのは覚えてる。その2枚はヘヴィ・ローテーションで聴きましたね。『アライヴ2』はライブ・アルバムだから、メンバー4人がそれぞれすべきことをやっているナマの感じとか凄くて。それに演奏がものすごく上手。そのライブ盤には入ってないんだけど、例えば「ファイヤーハウス」のAメロは、ポール・スタンレーとエース・フレーリーは、わざとリズムをズラして弾いてるの。同じバンドにギターが二人いたら、違うことやるんだって知ったのは、僕はKISSからだから。すごい勉強にもなってる。天下一品なのは『仮面の正体』(1980年)に入っている「シャンディ」でエースが弾くオブリ・フレーズ。1弦と2弦だけで弾くちょっとしたオブリなんだけど、それだけで泣かされちゃう。あと「ラヴィン・ユー・ベイビー」のエースのソロがまた天下一品。中3のとき、「ラヴ・ガン」のギター・ソロが弾けたら、中級脱出だなとか、学校で言ってたし(笑)。でもKISSは半音下げチューニングでレコーディングしているから、レギュラー・チューニングではちゃんとコピーできない。半音下げチューニングしたロック・バンドは、多分、KISSが初だろうから。

ーーKISSの数々のアルバムは、野村さんにとって教科書ですか?

それは絶対に間違いない。それは今でも活かされていますね。昨日もスタジオリハがあって、KISSのリフをちょっと弾くと、ドラムもついてきたりね(笑)。僕ら世代にとって教科書。シルバーのジャケットの『ダブル・プラチナム』(1978年)は、中ジャケがメンバーの顔が型押しになっていて、当時、これで素顔が分かるかもしれないって、本気で思ってたもん(笑)。想像をかき立ててくれる部分や神秘的なところも、相当、魅力的だったよね。あと素顔でご飯屋さんに行っても、KISSはバレちゃうんだよって。だってブーツだけはいつものを履いているからとか(笑)。そういう都市伝説めいた話を、中学生の僕らは友達とよくしてた。あと「リック・イット・アップ」(1983年)のミュージック・ビデオは燃えた。素顔になったときで、映像はメンバーの足元から始まって、最初、素顔は出てこないんだよね。それでサビで素顔が出てきて、「エエッ! でも思ったとおりの顔だ!!」って。なんでエース・フレーリーが脱退しちゃったんだよ、と思ったのも覚えてる。でも衝撃的なミュージック・ビデオでもあったな。
野村義男
野村義男

ーー先ほど、上質のロックンロール・バンドと形容したように、派手な格好と過激なライブのKISSですが、ポップ・センスに優れた曲なんですよね?

最高でしょ。「ハード・ラック・ウーマン」はジャズ・アレンジでカバーもされちゃうぐらいだから。メロディ・センスもすごくいいよね。ただ、アルバムの邦題が“地獄の”とか“地獄からの”とか地獄シリーズだったでしょ? それで過激ってイメージが付いたのかもしれない。でも実際は、本当に上質なロックンロール。初期メンバーは全員が歌えて、歌もうまいから。エースはガラガラ声だけど、ハスキー・ボイスもカッコいいと思わせてくれたからね。KISSの魅力は、聴けば聴くほど、観れば観るほど、いろんな世代の人それぞれに訴えかけてくるんじゃないかな。もともとメイクをしようってときも、イギリスのグラム・ロックからの影響じゃないってのも凄い。ちゃんとニューヨーカーたちのオリジナルなんですよ。まあ、もともと白人じゃないのを隠すためとか、メイクしないとウケないとか、いろいろ理由付けも言われていたけど。でも、そんなものあっという間に吹き飛ばすぐらい、いろんな人たちを惹きつけたからね。そういえば、自分も一度、メイクもやったし(笑)。2時間半ぐらい掛けてエースになったし。

ーーそれはコピー・バンドか、何かで?

いや、仕事で。KISSの新しいTシャツが発売されるから、KISSのメイクでやってくれませんか、と半信半疑で聞かれて。「やります!」って即答(笑)。エースのメイクでKISSのTシャツ着て、嬉しかったもん。KISSのロックTのために2時間のメイクをした男=野村義男。その写真、残ってないかな? 記念にガラケーで何枚も写真撮ったもん。この姿のまま帰りたいと思ったぐらい。帰ったといえば、エースが手放したギターをロスで見つけて、連れて帰ってきました。ヴェレノのトラベラーというギター。エースが売ったときのメモ書きとか証書が付いていてね。世界で現存するのは2~3本ぐらいだろうから、多分、日本に実在するのは1本だと思う。
野村義男
野村義男

ーー今では完全にKISSマニアですね。来日のたびライブも観に行ってたんですか?

タイミングが合わないこともあって、観れないな、また観れないなって。だから絶対に観に行かなきゃなって気持ちでもなかったんです。ところが、たまたまタイミングが合って、チケットを手に入れることができた武道館ライブがあったんですよ。ライブを観るというよりは、動いているKISSを観てみたいって気持ちだったんです。僕は、他のいろんなアーティストのライブを観に行っても、こんなステージセットの仕掛けがあるんだとか、こんな曲を持ってきたんだ、こういう演出も凄いとか、自分も音楽やライブをやっている人間として一歩引いて観ちゃってる。それなのにKISSだけですよ。人生において唯一です、一緒にずっと歌っちゃっていた。ノドが枯れるまで歌ったもん、キーが高いから。今回の『END OF THE ROAD WORLD TOUR』は本当に最後のツアーになりそうだもんな。年齢的にも、衣装の重さ的にも。20数キロの衣装はもう無理って、ジーンが本音を言ってしまっていたし。でもメンバーは、最後のKISSだから観てくれ、とか絶対に言わない(笑)。「最後のKISSになるけど、俺たちは充分に稼いでる」って(笑)。最後の一言は別にいらないけど、そこにロック兄ちゃんたちは憧れるんですよ。ロック・スターでしょ。いろんな噂話も聞いたけど、全てOKって感じですよ、KISSの場合。

ーーネガティブな話題でも臭いセリフでも、KISSだったらカッコいいと?

もう、全部、OK! ジーンがあるお姉ちゃんに「洋服を買ってあげるよ」って高級店に入ったとき、その子が「これにしようかな」とか言いながら値札を見ようとしたら、ジーンが手でパッと隠して、「プライスなんか見るんじゃない。欲しいものを買え」って。クーッ、いやらしい(笑)。そんなセリフ、言ったことないな、みたいな(笑)。僕らだったら「えっ、意外と高いね~」なんて相談始めちゃうでしょ(笑)。あとレーザーディスクの時代に『エクスポーズド』(現在はDVDでも市販)という映像作品があったんです。その中の1コーナーに、KISSの家に行くというのがあって。レポーターがチャイムを押すと、そのベルのメロディが「ロックンロール・オールナイト」なの。最初に家から出てきたのがガウン姿のポール。その直後、水着のお姉さんたちも出てきて(笑)。レポーターが質問すると、「今のは天使たちじゃないか?」って。ジーンの部屋に行くと、スカルの椅子に座ってて、ちょっとスモークたいてあったりして(笑)。あと、どこの部屋に行っても、必ずお姉ちゃんたちがいて。シャレがきいてるというか、全部をエンターテインメントとして楽しませてくれる。最高でしょ。自分もKISSになりたい!と思ったもん(笑)。KISSを好きになるための一歩として、みんなにも見てもらいたい。
野村義男
野村義男

ーー野村さんは、今回の『END OF THE ROAD WORLD TOUR』を観に行くつもりですか?

行けるのかな…、スケジュールとの相談だけど、行きたいよね。(KISSの日本公演スケジュールをチェックしつつ)盛岡で、わんこソバかジャージャー麺を食べて、KISSに向かう。いいコースだね。それか、仙台で観て、勝手に牛タンで打ち上げパーティですよ(笑)。キャパ的にも盛岡か仙台は良さそうですよね。こうして話していて、観る気が盛り上がり始めましたね。KISSの映画で『デトロイト・ロック・シティ』ってあったんですよ。田舎に住んでいる少年が、ラジオ番組でチケットが当たって、KISSのライブを観に行く旅をするというストーリーの映画が。今の僕は、その少年と同じ気持ち。その映画では、最後にKISSが出てくるんだけど、残念なことに、本物はジーン・シモンズだけで、他のメンバーは偽物だったという(笑)。そういうオチを付けちゃうのも可能なのがKISS。

ーー行くときは、2時間半掛けてメイクもして?

いや、意外と汗っかきだから、ライブ中にKISSじゃなくなっちゃうから(笑)。でもライブ会場にはメイクしたファンもいっぱいいるでしょ? それだけ愛されているバンドなんですよ。予備知識とかなくても、冷やかしとか興味本位でもいいから、観れるチャンスがあるなら観たらいいと思う。最高のショーをKISSは観せてくれるから。もしKISSのアルバムや曲を事前に聴いて、それからライブに行ったら、倍楽しめますね。それに僕が言いたいのは、なんでKISSを観ないの、聴かないのってことです。ロックが好きだったら、一度、聴いてごらんって。初期から魅力たっぷりだから。バンドやっているんなら、とくに初期から聴いたほうがいいよね。曲の作り方も、アルバムの作り方も、全てを教えてくれるから。本当に素晴らしいバンドがKISSなんですよ。今回の『END OF THE ROAD WORLD TOUR』のチケットをすでに買えた幸運な方は、是非、ノドが枯れるほどKISSと一体化してきてください。そして僕もまだチケットを諦めたわけではありません。

取材・文=長谷川幸信 撮影=kaochi
野村義男
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