髙嶋政宏が金属恵比須の演奏で「スターレス」を熱唱!~『スターレス髙嶋presents 金属恵比須 LIVE&TALK』レポート

SPICE

2019/9/6 14:15



日本のプログレッシヴロック・バンドの新旗手とも言うべき存在である金属恵比須が、2019年8月12日(月・祝)にスターレス髙嶋(髙嶋政宏)が主催するライブイベント『スターレス髙嶋presents 金属恵比須 LIVE&TALK』に登場した。会場は、通常はジャズ系を中心に着席型で飲食をしながら演奏を楽しめるライブハウス、中目黒楽屋。プログレバンドは恐らく初登場というこの会場で、スターレス髙嶋と金属恵比須がどのようなライブとトークを繰り広げたのか。その様子をお伝えしよう。


満席御礼となった会場で、まずはスターレス髙嶋と金属恵比須メンバー(高木大地、稲益宏美、栗谷秀貴、後藤マスヒロ、宮嶋健一)によるトークが始まった。

髙嶋政宏の別名が「スターレス髙嶋」であることは、ファンの間ではよく認知されている。では、そもそもなぜスターレスなのか?……という説明が本人の口からなされた。「中学生の頃、僕はパンクやニューウェイヴ系が好きだったが、友達のお兄さんから、パンクばかりじゃなくてこういうのも聴け、と渡されたのがキング・クリムゾンの『レッド』だった。このアルバムを聴いて最後に「スターレス」が流れたとき、なんて素晴らしい曲なんだろうと思い、そこからハマった」と、とにかく「スターレス」という曲への熱い思いを語る髙嶋だったが、高木が「クリムゾンのライナーノーツを初めて書いたときの話が印象的で……」と振ると、「これは最悪でした」と表情を曇らせた。「クリムゾンのライナーノーツを書くことになり、そのときにクレジットを【スターレス髙嶋(髙嶋政宏)】にして欲しいとお願いして、CD発売の日にワクワクしながら開けて中を見たら、クレジットが【スターレス髙嶋(高橋政宏)】と、完全な別人になっていた。このことを僕は未だに恨んでいる。こういう凡ミスが、人の夢を全部壊すことになる」と本人は切々と訴えたが、会場は大爆笑に包まれた。

トークはたびたび“SM好き”を公言する髙嶋によるSM話へ脱線してしまい、稲益が「今日、ムチが必要だったんじゃないですか?」と言うと、髙嶋は「金属恵比須とイベントが出来て、積年の夢がかなったんですが、本当のことを言うと曲の間奏でSMショーをやりたかった」と自身の願望をノリノリで語り出した。そして、金属恵比須「罪つくりなひと」のPVに登場するムチは、実は髙嶋の私物であるというエピソードも明かされた。

髙嶋が「これから始まるライブの意気込みを」とメンバーに尋ねると、高木が「今回は編成こそ変わらないものの、グランドピアノを使うのはライブでは初めて」であることを明かし、髙嶋は「今日はすごいライブになるんじゃないでしょうか」と更なる期待感を示した。SMの話の流れで、今日のライブのテーマは「緊張と弛緩」「音のSMショー」に決まったところでトークは終了。15分の休憩を挟んだ後、ライブがスタートした。


1曲目はディープパープルやラッシュなどのハードロックを感じさせる「ハリガネムシ」。演奏楽器がいつもよりシンプルなセッティングなこともあり、稲益のボーカルによる歌詞がより際立って聴こえ、歌モノとしても優れた楽曲であることが改めてわかる。




2曲目は哀切漂うメロディが美しい「真珠郎」。そしてHR/HMのさらなる様式美が詰まった「ルシファー・ストーン」へとなだれ込む。ところどころレインボーへのリスペクトというか、リッチー・ブラックモア的ギターソロなど、楽しいアレンジに客席のボルテージも上がる。


髙嶋のリクエストだという「紅葉狩」は、メロトロンと伸びやかな高音域のボーカルが雄大さを感じさせる。


続いてはアルバム『武田家滅亡』から「桂』。その叙情的なアコースティックギターから一転、タイトル曲の「武田家滅亡」では容易ではないはずの講談調のメロディを軽やかに歌い上げる稲益に扇動され、すっかりお決まりとなったサビのコール&レスポンスが沸き起こり、ここが中目黒楽屋であることを忘れてしまうくらい、いつもの金属恵比須の猛々しさで会場が一体となった。どのような演奏環境でも金属恵比須らしさを出すことができるのは各々の高い技術力と、バンドとしての総合力がなければ成し得ないことだ。






「大澤侯爵家の崩壊」でどこかジェネシスを思わせるグランドピアノの旋律を堪能し、その流れで始まった「月澹荘綺譚」はピンク・フロイド的な世界観がドラマティックに展開し、本編最後を飾った。




アンコールのMCで高木から金属恵比須の次のライブの告知がされた。2019年12月22日(日)に渋谷ラ・ママで、この日の客席に来ていたPANTA率いる頭脳警察との対バンであることが告げられると、どよめきと拍手が起こった。頭脳警察の元メンバーである後藤は「まさか対バンするとは思わなかった」、高木も「頭脳警察は雲の上の存在だと思っていたので本当にびっくりしました」とそれぞれ心情を語った。

そしてアンコール曲として演奏されたのは、ブリティッシュロックの香り漂うハードなイントロで始まる「彼岸過迄」。ジミー・ペイジを想起させるような高木のギターソロと、リック・ウェイクマンのような宮嶋のキーボードの旋律が印象的だ。栗谷の太いベースラインがうねりながらしっかりと楽曲の枠組みを支え、後藤のシンプルでありながら随所に光るテクニックが今日のライブテーマに掲げられた「緊張と弛緩」を表現し、曲のダイナミックさを演出する。ライブを重ねるたびに、金属恵比須はどんどん進化して行っている、と思わせるに十分な演奏だった。






曲が終わり、これでライブも終了かと思いきや、聴こえてきたのはなんとクリムゾンの「スターレス」のイントロ。そして、客席後方からステージへゆっくりと歩みを進める男が一人。そう、今回の主催者、スターレス髙嶋だ。客席から沸き起こった驚きと喜びの歓声の中、マイクの前に立ち歌い出す。この曲は、「神がかっている」とも言うべきジョン・ウェットンのボーカルのインパクトがあまりにも強く、歌いこなすことは容易ではないはずだが、ミュージカル俳優でもある髙嶋は情感豊かで伸びやかな歌声を響かせ、見事に歌い切った。さすがスターレス髙嶋を名乗るだけある、と会場中の誰もが納得した瞬間だった。金属恵比須による演奏も筋金入りの素晴らしさで、まさに「スターレス」が甦った奇跡の夜となった。




ライブ終了後、髙嶋がメインMCを務めるBS朝日の音楽番組「My Anniversary SONG~HEISEI SOUND ARCHIVE~」の収録で出演者インタビューがステージ上で行われたのだが、観客もそのまま会場に残り「公開記者会見」という形となった。

そもそも、髙嶋が金属恵比須と出会ったのはNHK FMの番組「今日は一日プログレ三昧」に出演した際に「紅葉狩」を聴いたことがきっかけで、「その時の感動は忘れられない。何が感動したって、恥ずかしげもなくロバート・フリップをパクッてる」と言い放った。しかし、それは批判ではなく「こうじゃなきゃいけないと思った」と続ける髙嶋。「エッセンスだけ真似たりするのは潔くないと思っていた。金属恵比須は初めて聴いた曲のはずなのに、なんだか(自分がロックにハマり出した)中学生の頃に聴いたことがあるぞ、と感じられるところが最高だった。その後ライブに行って、これはパクリじゃない、オマージュなんだ、と確信した。金属恵比須との出会いは、ロック少年として出会ったような感覚。今日のライブを見ていても「この音はレインボーかな」「これツェッペリンじゃない?」と思わせる絶妙な感じが好き」と熱く語った。

金属恵比須というバンド名の由来を聞かれた高木は「メタリカが好きで、それを和訳して金属、でもそれだけじゃバンド名としてちょっと物足りないな、と思っていたところ、新聞広告に漫画家の蛭子さんが「えびす顔」というキャッチコピーと一緒に出ているのを見つけた」と、由来がまさかの蛭子能収であることを明かした。


影響を受けたアーティストは誰か、という質問では、宮嶋は「僕の中の三大バンドは、クイーンとイエスとレッド・ツェッペリン。さらにプログレ方面だと、ELPとピンク・フロイド」、稲益は「私の名前の“宏美”は岩崎宏美さんから来ているので、歌謡曲も好き」、後藤は「一番はキッス。プログレだとフランク・ザッパ」、高木は「小5のときに父がディープ・パープルのCDを買ってきて、そこから入った」とそれぞれ答えると、髙嶋は「キング・クリムゾンが全然出てこないじゃないですか」と不満顔。栗谷が「最初に聞いたのはクリムゾン」と言うと、髙嶋は待ってましたとばかりに「クリムゾンのアルバムでは何が一番好きなんですか?」と尋ね、栗谷は「やっぱり『レッド』ですかね」と若干髙嶋に言わされている感じもありつつ答えた。それを聞いて髙嶋は「『レッド』は人類が神に最も近づいた瞬間ですね!」とご満悦だった。

髙嶋が「客席からも何か質問あれば」との投げかけに、SPICE編集部から「中目黒楽屋での初ライブだったが、バンドメンバーは演奏してみてどうだったか、髙嶋さんは客席から聴いてみてどうだったか」と質問すると、高木は「ステージが狭くて、すぐ後ろにドラムがいたので直にビートが来て、一体感があった」、宮嶋は「せっかくピアノもあるし、今回はちょっと大人ぶってみようかなと思った。いつもと演奏の感じも違って、新鮮で楽しかった」、栗谷は「ジャズ系の演奏が多い会場と聞いていたので、僕たちで大丈夫かな、と心配していたが、思っていた以上に大丈夫で驚いた」、髙嶋は「楽器それぞれの本当の音が聴こえた感じがして、こういう金属恵比須もいいなと思った」とそれぞれ感想を述べた。

もう一つSPICE編集部から「金属恵比須feat.スターレス髙嶋の「スターレス」が圧巻だったので、ぜひ他のプログレの名曲もカバーして欲しいが、どんな曲をやりたいと思うか」と質問すると、既に髙嶋とメンバー間でそうした話題も挙がっていたようで、髙嶋が「ジェネシスの「サパーズ・レディ」をやろうという話が出たけれど、あれは(23分と長い曲なので)練習に何か月もかかってしまう」と答えた。また、髙嶋はこの日客席に来ていたキーボード奏者の難波弘之の40周年ライブにゲストボーカルとして参加したときのエピソードを披露し、そこで歌ったキング・クリムゾンの「I Talk To The Wind」や、「キャット・フード」を日本語に意訳した「猫飯」もまたやりたい、と語った。

「この勢いならば海外進出も行けるのではないか」という客席からの問いかけには、高木は「アジアツアーとかやってみたい」、宮嶋は「メロトロンを使ったレコードのレビューをしているイギリスのサイトがあって、そこで金属恵比須の「紅葉狩」が高く評価されていた。イギリスに行けるんじゃないかな、と僕は思っている。プログレの本場だし」と今後の展望に目を輝かせた。

スターレス髙嶋と金属恵比須の熱い思いが詰まったイベントは大盛況の内に幕を閉じた。双方ともに、これからもこうしたイベントなどのコラボレーションは行いたい、という気持ちを持っている様子なので、今後のスターレス髙嶋と金属恵比須の展開に期待したい。そして日本のプログレ界の活性化のためにも、どんどん新たな革命を起こしていって欲しい。


取材・文=久田絢子  写真撮影=飯盛大
上記ライブの一部が下記番組で放映決定!
■番組名:「My Anniversary SONG」
■放送局:BS朝日
■放映日:2019年9月6日(金) 22:24-23:24(当日野球による遅れの可能性あり)

当記事はSPICEの提供記事です。

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