BAROQUE 4年ぶりアルバム『PUER ET PUELLA』に宿るリアルな生命力、その理由を探る

SPICE

2019/9/5 00:00

7月30日にニューアルバム『PUER ET PUELLA(読み:ピュエル エ ピュエラ/ラテン語で“少年少女”という意味)をリリースしたBAROQUE。現体制になって発売した初アルバム『PLANETERY SECRET』から約4年。その間、ライブ活動を通して、実はそのツアータイトル/アートワーク/新曲から毎回アルバムの欠片となるものをライブ先行でオーディエンスに届けていった彼ら。前作では、夜空を見つめながら哲学的な空想を巡らせ、BAROQUEの純度の高い音楽性・芸術性をどこまでも追求した。だが、あのモノトーンづくめだった景色は今作で一転、ポップな色彩に変化した。そのなかに、空想ではない瑞々しいまでのキラキラとした人間のリアルな生命力が宿っているのが今作の特徴だろう。人が生命を授かり誕生する瞬間、生まれた少年少女たちの希望に満ちた息吹が注ぎ込まれた楽曲たちもあれば、そんな彼らが思春期に初めて生死と向き合ったときの葛藤を描いた楽曲、そこから大人になった現在、様々な軋轢と戦いながらそれでも子供の頃の気持ちを忘れず夢を追いかけ、そうしていつか人生の最後がやってきたとき、大切なものだけをもって天国へと旅立だちたいと願う想い――。まるで人間の一生を凝縮したようなエレメンツで構成された新作について、怜(Vo)と圭(Gt)に話を聞いていく。


――アルバム完成まで、今回も時間がかかりましたね。

怜(Vo):もう4年も経ったの? っていうのが正直な感想。その間でシングルも出したし、ツアーもずっとやっきたから。そこまで時間がかかった気はしないんだよね。

圭(Gt):こういうアルバムはもう二度と作れないだろうから、作るために必要なことを得たりするのにそれぐらい時間が必要だったってことだと思います。

――今作の構想は前作を作った頃からあったんですよね?

:そうですね。聴いた人を、男性だったら少年に、女性だったら少女に戻して、その人の核となるものを引き出す作品を作りたいと思って取り掛かったんですけど。作り終えて思うのは、自分の人生観がすごく出た、主観的なアルバムになったなと思いますね。自分の人生そのもののようなアルバムです。

――つまり、アルバムの元ネタは自分自身であると。

:ええ。現実世界で自分が感じてきたことを形にするというのが今作はデカかったので。だから、他人事じゃなかったんですよ。人生って、自分もそうですけど、いろいろあるじゃないですか? いいときも悪いときも、輝かしいときも挫折もあって。それを自分たちの経験を通して音楽でアウトプットしたアルバムですね。まだ死んだことはないんで、死ぬとこは想像でしかないんですけど、そこまで描きました。

:「AN ETERNITY」とか圭ちゃんの知り合いの方の死(青木裕/downy)があっての曲だったし。死ぬってどういうことだろう?っていうことは、まだ死んだことがないから、どんな感じだろう?ってすごく考えました。このアルバムを作りながら。

:でも、そういうことを描いてても、すごくポップなアルバムではあるんですよ。

――たしかにそうなんですよ。

:メロディ感はポップだよね。

:全曲メロディアスで、歌メロがすごいはっきりしてるよね?

:うん。

:サビが明確だし。

――意識的にそうしていったんですか?

:どうなんだろう。でも“ポップにしよう”とは思ってました。『PLANETERY SECRET』はアルバム一枚を通して映画のような作品だったから、曲のサビがどうとかじゃなかったけど、今回は1曲1曲を切り取ってもポップソングとしてのクオリティーがあるものにしたくて。“ポップ性”と“芸術性”、その両方が同居したものにしたいと思ってたんです。


――ポップという色合いではシングルにもなった「GIRL」、「STARRY BOY」もまさにそうで。

: 「YOU」や「LAST SCENE」も手触りはポップだと思います。

――「LAST SCENE」は圭さんが楽曲提供した、バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの大桃子サンライズさんと怜さんがデュエットされてますけど。こういうのは初の試みですよね?

:そう。この曲は圭が最初に彼女に楽曲提供しようとしてた曲なんですよ。で、作ってるときに聴かせてもらったときから“すげーいい曲じゃん”って思って。

:元々、彼女が僕が作る音楽が好きだってことでオファーを受けて。バンド以外に曲提供をしたことはないんで、まず1回会って話を聞かせてもらったんですね。提供するといっても、自分とつながる部分がないといいものにならないなと思ったので。それで話したら共通するところが見つかって、しゃべってるときからイントロが頭の中に流れ出したんです。

――その重なった部分というのは?

:これは僕の勝手な主観なんですけど大事なものを失って感じる思春期特有の“悲しすぎてこの世から消えてなくなりたい”という厭世観みたいなものですね。だから、自分としては暗い扉を開けなきゃいけなかったから、作るのにすごい時間がかかったんです。でも、実際に採用されたのは急遽作った別の曲だった。で、怜はこれを気に入ってくれてて“やろう”といってくれたんでやったんですけど。元々女性用に作ってたからキーが高いんですよ。それで、今回は少年少女がテーマのアルバムだし、デュエットでやってみてもいいかなと思っていろんな人を考えて。最終的に、この曲は元々彼女からインスピレーションを受けて生まれたものだから、彼女とやるのがこの曲の運命だと思ったんです。

:そこで、この曲の“少女”というピースは彼女だと分かった時点で、僕も彼女と会って会話をしてリアルな言葉を聞いたんですね。そうしたら、2年ぐらい書けなかったこの曲の歌詞が書けて。最終的には僕が歌詞を書いたけど、気持ち的にはどっぷりソウルメイトまで入り込まないと書けなかった歌詞だったから、そこはすごく彼女に感謝してる。

――そんなリアルな背景があって生まれたデュエットソングだったんですね。それで、歌詞のなかではお互い“死んでしまいたい”という気持ちを<踊り明かそう>と明るく2人で歌っているところがちょっとコワいですよね。

:そう。お互い孤独なラストダンスだよね。

: その気持ちをどれだけポップでドリーミーで可愛くコーティングして表現するかというのがこの曲だったんです。

――「RINGING THE LIBERTY」~「PERFECT WORLD」は死んでいくシーンを描いている気がしました。

:まさに。ストーリーとしては「THE BIRTH OF VICTORY」が誕生で。この曲は、このアルバムを作ろうかなと思ったときに自分が美術館にいる夢を見たんですね。その美術館には自分のいろんな人生のワンシーンを切り取ったものが展示されていて、自分の心の美術館だったんですよ。そこで流れていたと思う曲が「THE BIRTH OF VICTORY」。「RINGING THE LIBERTY」は最後の部分が「THE BIRTH OF VICTORY」と同じで、こっちは歌詞と歌があるんですね。この2曲で人生の始まりと終わりを表現しています。「RINGING THE LIBERTY」は死の瞬間ですよね。「PERFECT WORLD」は死んだ後の世界です。死んだ後は何が残るんだろう? 何を自分は残したいんだろう? と。完璧な人生なんてないけど、それでも死んでも残したいもの、忘れたくないものが一つでも見つかったら、それはそれで完璧な人生なんじゃないかと思うんですね。なので、死んでも残しておきたい自分の人生の宝箱。それを開けたのがこの曲です。

――だから犬の鳴き声を始め、いろんな音がサンプリングされている。

:そうですね。これを作った頃に怜の愛犬が亡くなって。僕も子供の頃に犬を飼ってたので犬の声を入れたり。いろんな宝物の音が飛び出してくるイメージです。

――それが、アルバムのなかでもとびきり美しい聖なるサウンドとなっていった。

:そこはある意味、僕の理想ですよね。ここには汚いものはなに一つないんですよ。“嫌だな、こんな世の中”と思う部分がない。美しくて楽しいものしかないんです。

:だから、俺は自分が死を迎えたときはこの曲を流したいと思った。この曲の世界に入って歌ってるときはすごくいろんな思い出がグルグル回って、ある意味ホッとするんだ。だから、自分のエンディングにこの曲を流してくれたら“俺の人生、なにも後悔はなかった”っていえるだろうなと思う。自分が死ぬとき、死んだときに流れてる音楽なんていままで想像したことはなかったけど、これを聴いてるとお世辞抜きでそれを感じるからね。曲のなかにいると、死んでいくことは怖いイメージじゃなくてホッとするイメージなんだ。自分のエンディングもこうであって欲しいなって思いますね。
BAROQUE/怜(VO)
BAROQUE/怜(VO)

自分が死ぬときに流れてる音楽なんて想像したことなかったけど、自分のエンディングもこうであって欲しいなって思いますね。


――自分もそう思いました。怖くないですもんね。このなかにいると。

:これはいわない予定だったんだけど、「PERFECT WORLD」は本当に子供に戻って作ったんですよ。ちっちゃいときの自分に。最後、アコギをレコーディングしてたんですけど。あれ、本当は5分以上ずっと弾き続けてて。弾いてたら、本当に子供の頃に戻っちゃって、子供の頃に家に帰ったときのようにおばあちゃんが出てきて“今日は学校でなにがあったの?”とかいってきて。ずっと涙が出て止まんなかったんですよ。結局そこまで曲には使ってはいないんですけど、そういうところまで自分も入っちゃった曲ですね。今回は主観的なアルバムだからこそ、そこまでいって、自分の本当の真実を映したものを作りたかった。少年少女の頃の気持ちに還すというのをテーマでやってるから、まずは自分がそこに戻らないと人には伝えられないですから。もう二度とこういう作品は作れないと思います。作り終えて、自分がずっと創作したいと思っていたアルバムはコレなんだと思ったので。

――このアルバムこそが音楽家としての圭さんのPERFECT WORLDだと。

:これから先、自分が一番愛おしくて自分らしくもあって美しいなと思う作品はコレなんだと思います。だから、このアルバムを自分じゃない誰かが作ったとしても、僕はこの作品に魅了されるだろうし。それを作ったのが自分でよかったと思います。

――そこまで主観であっても、今作はポップにコーティングされているので。

:聴きやすいと思うんですね。なので、アルバムを通して、聴いた人それぞれの心の美術館に案内できるような作品になったらいいなと思ってます。

――圭さんが夢で見た美術館のような?

:そうそう。その人の人生に照らし合わせて、曲ごとに自分の心を旅してもらって。アルバムのなかには闇があったり死がありますけど、その在り方はすごく健全だと思うんですね。闇があってもこう生きたい、こうありたい、生きててよかったと思いたいっていうのが自分の人生観だから。いま生きててすごくこういうことがツライとか、いろいろ思えば僕もいえますけど、果たして本当にそうなのかというのを、これを聴いて考えてもらえたらと思いますね。
BAROQU/圭(Gt)
BAROQU/圭(Gt)

『PLANETERY SECRET』を出す前に僕はいろいろあって。そのときに音楽を辞めてもよかったんですけど。二人になってしまったBAROQUEを諦めなくてよかったと思います。


――そんな主観を軸に制作したアルバムのなかで、「FLOWER OF ROMANCE」は爆発的なリアリティーを放って届いてくるんですね。この曲は他の曲と違って、主観の部分にBAROQUEというバンド人生が色濃く重なった曲だと思うんです。これまで封印していた「ila.」のフレーズを思い出すように曲にインサートして、あの頃夢を追いかけていた気持ちを再び取り戻していく現在のBAROQUEの姿がこの曲にはオーバーラップしていくんですよね。

:たぶんですけど、この曲をそう感じる理由は、アルバムを人が生まれて死ぬまでの人生だと考えたとすると、僕らはまだ死ぬような年齢じゃない。そのなかで、この曲は僕らのいまの年齢に一番近いんですよ。人生のストーリーでいったら青年期にある曲だから。なので、爆発的なリアリティーを感じてもらえたんだと思います。

:そうだね。それをBAROQUEという目線で見たらバンドの物語かもしれない。ある意味、自分たちのことを書いてる訳だから。その裏で、俺としてはこの曲が気づかせてくれたことを(歌詞という)言葉で、圭ちゃんに返そうというのがあった。

――そこを聞いてもいいですか?

:俺の心には永遠に枯れないメロディがあって。

――ああ。歌詞のなかにも<永遠に途切れないメロディ>というのがありましたね。それが「ila.」だったということですか?

:いや。曲を限定してはいなくて。人生いろいろいいこと悪いこともあったけど、圭ちゃんの書く曲は枯れないという俺からのメッセージです。それぐらい自分の“本気”を書かないとダメな曲だった。最初っからタイトルが「FLOWER OF ROMANCE」と付いてたから、始めは綺麗なことを書いてたんですよ。でも、そうじゃないんだよと圭もいってて。そこから自分を吐きす作業をして書いた曲ですね。

:「FLOWER OF ROMANCE」というタイトルは、この曲のシングルのジャケットを担当してもらった相壁琢人さんというフラワーアーティストの人と会って話したことがきっかけで生まれたんですよ。人は咲いた花を見たときは綺麗だ綺麗だというけど、花が枯れたら見向きもしない。だけど、本当は花が枯れていくときも枯れた後も美しさを見いだせるんだという話をしてたんですね。綺麗に咲いた花も、死んでいく花も、リアルな姿だと。そこが、この曲のテーマと一致していたから、こういうタイトルにしたんです。


――では、そんな二人が、形は変わっても十代の思春期から現在の青年期まで人生とともにずっとたずさわってきたBAROQUEですが。紆余曲折ありながらも、続けてきてよかったですか?

:そこは変な話、自分に与えられたものなんだなと思ってますね。ただ30歳になって『PLANETERY SECRET』を出す前に僕はいろいろあって。そのときに音楽を辞めてもよかったんですよ。でもなんか、そのときにパッとビジョンが見えて。それに従っていまはやっていますが、二人になってしまったBAROQUEを諦めなくてよかったと思います。

――怜さんはどうですか?

:なにをしてても、いいことも悪いこともみんな経験する訳だから、僕はやってきてよかったと思います。圭と出会って、圭の曲を歌いたいというところから僕は始まってて。メンバーが2人になってからは、『PLANETERY SECRET』を作ってるときから、ここから3枚アルバムを作ってみようという構想は聞かされてて。そのときから、1枚目はまだ“星と光”だから理解してもらえないかもしれないけど、次の2枚目は“人間性”を書くんだというのを示してくれてたからね。俺が愛する曲を生む人が。だから、俺はその曲にどっぷり浸かって、(曲を表現するにあたって)足らないと思ったところは自分が成長して表現するだけなんだ。そういう意味では、俺はずっと圭が書く曲を信じてる。そこは変わらない。ひん曲がってるからすぐ挫けるし、分かんなくなることもあるんだけど、それでも曲が気づかせてくれるから。俺にとっては(圭が書く曲が)人生そのものなんだよね。うまくいえたかな?

――ええ。伝わりましたよ。だから、圭さんがどんなに主観的な曲を作ろうが、怜さんはそれを自分の人生のように曲を通して共有して、言葉にできてしまうんでしょうね。

:それが思いついてできる限りは、それが怜と僕の使命で運命だと思うんですよね。いま3作目を作ってるんですけど。3枚作っちゃった後はどうなるんだろう?とも思うし。作ったらまたにか見えるのかもしれないし。

:そう。

:そこで(ビジョンが)なにか見えるってことはやるしかないんです。

――ジャケットのことも聞かせて下さい。この天使は怜さんと圭さんがモチーフですか?

:えー、そういう風に見られるんだ(笑)。

:少年と少女のイメージです。俺らはどっちも少年ですから。

:ここでは少年っていわせてもらおう。

:この天使はいろいろイメージを伝えて、撮影しました。


――全国ツアー『THE BIRTH OF LIBERTY』がすでにスタートしています。どんなツアーになりそうですか?

:2人体制で作ったアルバム2作が中心になります。

:このアルバムを引っさげてのツアーなので、オープニングは「PUER ET PUELA」で、エンディングは「PERFECT WORLD」に必然的になるんですけど。それぐらいアルバムのなかでは絶対的なオープニングとエンディングを飾る曲なので、今後たくさん曲ができたら、このツアー以外、これらをその位置で演奏することはないかもしれない。なので、このツアーはこのツアーでしかない特別なものになります。

:バンドとしてもいま、すごくいい状況なので観に来て欲しいですね。

――そうして、ツアーファイナルは2020年1月10日、神奈川県・ハーモニーホール座間(大ホール)で開催。座間は圭さんの出身地なんですよね?

:地元だというのもあるんですけど、元々ツアーファイナルはホールでやりたいといってて。都内のホールが取れないときに地元のここを思い出して。キャパも内装の雰囲気もよかったのでここに決めました。都心からはちょっと遠いんですけど、来てもらいたいですね。ファイナルはホールならではの表現でこのツアーを届けます。

取材・文=東條祥恵


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