科学者のうち女性はわずか15%。女性科学者の奨励が、いずれ世界を変えていく

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科学分野におけるジェンダーギャップ


世の中の男女比はおよそ1対1。ですが、顕著に男性比率が高いのが「科学」の分野です。

「世界的に見ても研究者のうち女性の割合は29%、アカデミックな機関で上席の職位に就いている女性は11%。そしてノーベル賞における女性の受賞に至っては、全体のわずか3%。科学者として研究活動に取り組む女性たちは、依然として存在する“ガラスの天井”と戦っています」

そう話してくれたのは、日本の若手女性科学者が国内の教育・研究機関で研究活動を継続できるよう奨励することを目的に、「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を実施している化粧品会社、日本ロレアル株式会社の船津利佐さん。

主要先進国のなかでも男女格差が最も大きいのが日本で、なんと科学の研究者のうち、その割合は15%程度(※)しかありません。

※「研究分野における男女共同参画」(内閣府男女共同参画局)より。

なぜ、女性科学者が求められているのか?

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近年話題のジェンダード・イノベーションズ(男女の性差に関する分析が新たな知見を生み出し研究や技術開発に刺激を与えること)の見地から考えても、女性の科学者は必要不可欠。「女性科学者の視点や発想が、イノベーションにつながる」とも言われています。

日々の生活の中における多様な目線から、真にクリエイティブな発想は生まれると思うんです。 自動車のシートベルトは男性をモデルに考えられており、妊婦を想定していなかったために、妊婦が助かっても胎児が死亡する事例があります。

こうした例からも、多様なニーズに対応できるよう研究開発において女性の視点を取り入れていくことが必要であるとわかります」(船津さん)

女性の研究を続けづらくしている“周囲の目”

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ですが、女性が科学の研究をキャリアとして続けていくことに対しては、まだまだ多くのハードルが立ちはだかっています。これは日本だけのことではないそう。

「例えば、本人にやる気があってもご両親が反対することもある。以前、ロレアルが日本を含む世界14か国を対象に行った意識調査の結果を見ても、“理系の学問は男性の方が向いている”“理系の研究職につくと婚期が遅れる”といった偏見が根強く残っていることがわかりました」(船津さん)

そんな中でも、現在、ロレアルの女性研究者の割合は約7割。ロレアルはもともと化学者が創設した化粧品会社(本社:フランス)で、当時から研究活動を最重要視しており、女性研究者も第一線で活躍してきました。1998年には「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」というコミットメントのもと、ユネスコとともに世界の優れた女性科学者に光をあて地位向上を目指すべく、「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」を設立しています。

また、若手女性科学者の研究を奨励する「ロレアル-ユネスコ女性科学賞−国際新人賞」を通じて、 将来有望な世界の若手女性科学者たちを支援しています。 前述の「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」はここから派生したもので、「日本の若い女性研究者の活躍の場がさらに広がり、研究を続ける助けになることを目的としています 」と、船津さんは話します。

若手女性科学者を応援することが、その次の世代を育てる礎となる

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第14回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式より。

今年で14回目を迎えた「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」。この授賞式が、去る7月4日(木)に開催され、物質科学の分野から藤森詩織さんと渡部花奈子さんの2名、生命科学の分野から岡田萌子さんと岡畑美咲さんの2名にそれぞれ奨学金 100万円が贈られました。
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上列左・藤森詩織さん、右・渡部花奈子さん。下列左・岡田萌子さん、右・岡畑美咲さん。

世界で初めてベンゼンのアニオンの炭素を重い元素に置き換えた「重いフェニルアニオン」の合成と性質を解明した藤森さんをはじめ、いずれもそれぞれの分野で世界的にも革新的な研究を進める方々です。

>>受賞者の研究内容はこちら

「日本奨励賞は、将来有望な女性科学者たちを応援するものですが、その先には“次世代の学生たちに科学の楽しさや多様なキャリアがあることを訴求していく”という狙いもあります」と船津さん。

「小学生の頃までは理科が好きだったり得意な女の子はたくさんいるのに、中学生、高校生と年齢が上がっていくと、理系科目を選択する女の子の数は減っていく傾向にあります。

たとえ大学で理系の学部に入っても、科学者の道を選ぶ人は多くありません。 ロレアルが以前に行った意識調査でも、大学、大学院と進むにつれて、理系の女性の数はさらに減少すると報告しています。 その大きな要因の一つが、ロールモデルとなる女性科学者の圧倒的な不足ではないでしょうか」と話します。

いきいきと研究を続けている女性が身近にいれば、科学者の道を選ぶ人ももっと増えるはず。そのため私たちは理系進学を目指す女子高校生たちが日本奨励賞の受賞者と交流できるイベントなども行っています。

受賞者のみなさんは応募時に“博士後期課程に在籍あるいは博士後期課程に進学予定の女性”ですから、高校生たちにとってはお姉さんくらいの年齢。情報共有がしやすい立場です。

高校時代にどんな勉強をすればいいかなどの質問はもちろん、“朝から晩まで研究室に籠っていなければいけないのですか?”とか、“恋愛できますか?”なんていう素朴な質問もどんどん出てきますよ」
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登壇する女性科学者たちからは、美談ばかりではなく、男性教授から事務的な仕事や秘書的な仕事が回ってくるなどの話もあがるそう。

ただ、応援してくれる男性科学者や教授も少なからずいることや、研究を続ける醍醐味などのプラスの話もたくさんしてもらえるので、高校生たちも理系進学に対して抱いていた不安や疑問を晴らすことができているようです。

女性科学者同士がネットワークを築き、協力する時代へ

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授賞式でスピーチをする渡部さん(右)と、モデレーターの船津さん(左)。

現在55人となった日本奨励賞の受賞者や審査員の女性研究者たちによるコンソーシアム的なものも将来実現できたら、と話す船津さん。

「どのように受賞者同士が情報交換できるネットワークを形成していくかは今後ますます重要になってくると思っています。受賞後にみなさんがどうやってキャリアアップされているのかをフォローすることも必要です。

受賞者の多くは海外での研究を経験したり、現在も海外で研究を続けていますので、帰国した時にその体験を伝えてもらうこともできます。また、男女共同参画プロジェクトに関わっていたり、 国内外で子育てと両立しながら研究を継続している受賞者もいるので、そうした活動や多様なライフスタイルを示すことも次世代の研究者たちのためになると思っています 。

日本奨励賞の審査に臨む女性科学者たちの好奇心と情熱には感心します。今年の受賞者は特に研究分野が多岐にわたっていて、それぞれ独自の視点とイノベーティブな発想で未開拓の分野にも挑戦しています。みなさん苦労もたくさんされていますが、それをもバネにして素晴らしい成果を出されています。

パリ本社が推進する『ロレアル-ユネスコ女性科学賞』からはすでに3名のノーベル賞受賞者がいますが、いつか日本奨励賞の受賞者からもノーベル賞を受賞する人が出てきてくれるのでは、と期待しています」(船津さん)

日本の女性科学者を取り巻く環境が改善され、『ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞』の“女性科学者”という言葉から“女性”が外れる——近い将来、そんな日がくることを期待しています。
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船津利佐さん(日本ロレアル株式会社)
国内大手時計メーカーの海外広報、外資系広報会社を経て、2003年に日本ロレアル株式会社に入社。社内外向けのコミュニケーションをはじめ、若手女性科学者を支援する「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」やシングルマザーキャリア支援プログラム「未来への扉」など、社会の持続的発展のためのプログラムに従事。


取材・文/山下紫陽 写真提供/日本ロレアル株式会社

ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞

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