堂本剛(ENDRECHERI)の音楽的ルーツを、日本の音楽評論界で最もファンクにうるさい男が徹底解説

wezzy

2019/8/28 07:05


 わたしが初めて堂本剛に会ったのは、2011年8月、川崎CLUB CITTA'にて。より詳しく書くと、ブーツィ・コリンズ公演時の楽屋だった。その事実は、堂本剛の音楽性を知らない人に、彼に関する多くのことを教えてくれるのではないか。

そのとき、彼の横には背が高い女性が……と思ったが、よく見たらKenKenだった。RIZEとDragon Ashを掛け持ちする多忙ベーシストであり、日本版Roberto Agustin Miguel Santiago Samuel Trujillo Veracruzのような存在だ。堂本剛を支えるバンドメンバーだったKenKenは、外側からファンクにアプローチしてきた堂本剛にとって「同志」と呼べる存在なのではないか。……最近はある種の植物のせいで有名になってしまったが。
音楽業界でも意外と知られていない堂本剛(ENDRECHERI)の本格的Pファンク志向
 いつぞや、わたしが堂本剛(ENDRECHERI)のファンク志向/嗜好/思考を語ったら、クリス・ペプラーも驚いていた。つまり、音楽業界でもまだまだ知られていないということだ。

なので、ここ2作のアルバムから適当に曲を見繕って紹介してみよう。

●アルバム『HYBRID FUNK』(2018年)

「MusiClimber」
 多用されるロックギターや、ファンクらしいタメがあまりないせっかちなドラミングが、とってもファンカデリック!

「YOUR MOTHER SHIP」
 タイトルこそ「マザーシップ」だが、むしろリック・ジェイムズ──1982年の「Dance Wit' Me」以降の──に通じる、直線的なビートが際立つ。まあ、だんだんPファンクっぽくなっていくのだが。

「SANKAFUNK」
 堂本剛史上でも、たぶん最高にパーラメントな曲。ブーツィっぽく歪むベースも、ピアノとストリングス系シンセサイザーが際立つアレンジも、パーラメントが1975年に出した絶対名盤『Mothership Connection』に収められた何曲か──「P. Funk (Wants to Get Funked Up)」や「Mothership Connection (Star Child)」、そしてもちろん「Give Up the Funk (Tear the Roof off the Sucker)」──を連想させる。
 わたしが気に入ったのは歌詞の少なさ。歌詞カード上は6行だが、実質的にはほぼ3行で、これはむしろパーラメント同作の「Supergroovalisticprosifunkstication」に通じる。なんにしても『Mothership Connection』な曲だということだ。

「セパレイトしたブレイン」
 前奏からトークボックス全開! 絶妙な爽やかさも含めて、「西海岸ヒップホップを経由したザップ/ロジャー」という趣きがある。

「舌 VENOM」
 ファンクの伝統に「変な声」というものがある。「ロボ声」と言い換えてもいいかもしれない。なぜかは知らねど、このジャンルでは加工して人間外のものと化した声が愛されるのだ。
 この曲の主役であるキャラクター「Sankaku」は、まさにその系譜に位置する存在。プリンスの別人格キャラクター「Camille」にも近いが、発想源はやはりパーラメントの曲に登場する悪役、Sir Nose D'Voidoffunkなのだろう。

●アルバム『NARALIEN』(2019年)

「FUNK TRON」
 ゴーゴーやん! 16ビートを3連に細分化したパーカッションたちがチャカポコチャカポコとビートを埋め尽くすことで知られる、ワシントンDCのご当地ファンクである。80年代半ばに全米ブレイクの兆しを迎えるも不発だったゴーゴー。「もはや黒人街ではない」と言われるワシントンDCで、どのように生き残っているのか……そう想いを馳せながら聴くと、さらに味わい深い。

「4 10 cake」
 ホットケーキに捧げる歌らしいのだが、この既聴感はなんだろう……と、考えていたが、わかった! 90年代にPヴァインが出していた「Pファンク未発表曲集」っぽいのだ! 歌詞の少なさも相まって、堂本剛のファンクの多くにその傾向がある。この曲に限らず。
 「Pファンク未発表曲集」の音源はもともと80年前後に録音されたものが多かったが、この曲にもその時代の残り香が。普通に発表された曲で近いものを探すなら、1979年のパーラメントのインスト曲「The Big Bang Theory」だろうか。

「I'm gonna show U how 2 FUNK」
 滑り出しは80年代前半、まるでジョージ・クリントンのソロ。ドラムスの音などはもう少し後、80年代半ばに近いか。

「愛 の 祝 詞」
 前奏からは予想もつかない、サビのクインシー・ジョーンズ風味に驚く! というか、これ「愛のコリーダ」やろ! わははは。

「音楽を終わらせよう HEIAN ver.」
 前奏はネオ・ソウル流儀! ディアンジェロの「Lady」みたいなフレーズが印象的で「ヨーマィレィディ~」と歌い出しそうになる。実は、先に挙げた「FUNK TRON」も時おりそうなるのだが。

日本では誤解されがちなので、ここでひとこと書いておく。

どんなクリエイターも、先達から影響を受け、それを咀嚼して自分の作品を組み立てていくもの。つまり、全ての創作は二次創作なのだ! 特にファンクやソウル、R&Bやヒップホップはその傾向が顕著なジャンルであり、先駆者に倣い学び、芸を継承し共有していくのは常識にして礼儀でもある。

先輩たちからの影響があらわな作品を、何でもかんでも「パクリ」と呼ぶな、ということ。

ジョージ・クリントン道を歩む堂本剛のステージ
 2018年6月7日、NHKホールで堂本剛(ENDRECHERI)のライブを見た。

もちろんPファンク・オールスターズ感が満載だが、ギターの竹内朋康がマイクを握った時に歌うフレーズがE.U.の「Ooh La La La」だったり、スティーヴ エトウのパーカッション乱れ打ちもあってゴーゴー色も強いものだった。

バンドメンバーにとって不幸(?)だったのは、堂本剛が──恐らくはPファンク入門の初期に──ジョージ・クリントン道に入ってしまったことだ。これがブーツィ・コリンズ道であれば、コンサートはキッチリと構成され、2時間ほどでまとまっていただろう。

ジョージ・クリントン道を歩む堂本剛のステージは長い。腕利きのミュージシャンやシンガーが集まっているがゆえに彼らの見せ場もあり、さらに長い。終わりが定められていないジャムセッションという恐るべき行為を好むこともあり、ますます長い。おまけに宇宙には「関西人はしゃべりが長い」という普遍的な真理もあるから、ダメ押し的に長い。

噂によれば、堂本剛のステージの最長記録は5時間ほどである。つまり、伝説に残る90年代のPファンク公演 in 川崎CLUB CITTA'に対抗できる長さだ。しかもPファンクのほうはブーツィ・コリンズ組とジョージ・クリントン組の2バンドだったが、堂本剛は1組でそれをやってのけているのだから恐れ入る(ただし、そのうちしゃべくりが1時間半強とか)。

また別のコンサートでは、会場側が通告する音出し限界時刻を過ぎても演奏していたため、アンプ類の電源を落とされたことまであるという……。

ステージを見た直後のわたしは書いた。「堂本剛は“パーラメント/ファンカデリックを率いるプリンス”になりたいのだと思う」と。

彼の音楽の根本がPファンク(パーラメント/ファンカデリック)なのは一目瞭然である。一方、「プリンス」の部分は、彼自身が弦楽器も鍵盤も打楽器も操るマルチ・インストゥルメンタリストだから(ギター、ベース、キーボード、ドラムス……と、「I Wanna Be Your Lover」状態である)。

しかし! そんなわたしの見立ては早計に過ぎたようだ。というのも、堂本剛は「将来的には、ステージには立つものの、何もしない」存在を志しているのだとか。

それは、まるっきりジョージ・クリントンだ! 最近のクリントン師匠は、立つことすらやめて、座ったりしているが。

奈良異星人による“ファンク啓蒙”の努力は報われるのか!?
 では、堂本剛の活動はファンクの普及に寄与しているのか? ブラック・ミュージックには縁遠いKinki Kidsファンに、ファンクというものの魅力を伝えているのか?

……残念ながら……功績を否定はしないが、啓蒙活動に大成功しているとも思わない。堂本自身のせいではなく、ファンとはそういうものだからだ。

例えば前作『HYBRID FUNK』のリリース直後。わたしがその収録曲をパーラメントの曲と比較するツイートを発信したら、彼のファンが「過去曲もぜひお聞きください」と返してきた。

だがわたしが「そういうからには、こちらが挙げた堂本剛のルーツ、Pファンク作品は聴いたんでしょうな?」と書いたところ、ナシのツブテ。つまり、答えはノーなのだろう。

「評論家が勧めてるんだから聴け」というつもりは毛頭ないが、「本人が勧めてるんだから聴け」と思う……しかし、ファンと呼ばれる人たちの意識はたいてい「私たちが好きな●●さんの魅力を他の人にも伝えたい」という方向に働くものであって、「●●さんが好きな他のアーティストの魅力も理解しよう」となるケースはレアなように思われる。

そもそも、自分の活動を通じてのルーツ啓蒙がそんなに簡単だったら、THE BAWDIESだって、G-DRAGON*だって苦労しない。熱狂(=fanaticism。ファンの語源)の前に、理性的なレコメンデーションはほとんど無力なのだ。

それでも、堂本剛の努力は気高いものだと思う。願わくば、彼の音楽がファンク側(like me)を感心させるだけではなく——彼の思惑通り——そちら側の人たちがファンクを知る契機になりますように。

..............................................................
*G-DRAGON=ソロ公演は、BIGBANGとしてのライブよりヒップホップ色が相当に強いもの。だが、ゲストとして登場したテヤンを「My motherfuckin' homie!」と紹介したところ、西武ドームを埋め尽くした観客の99%は「motherfuckin'」も「homie」も知らない様子だった。

当記事はwezzyの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ