元よしもとの謝罪マンが総括する吉本騒動 カラテカ入江と吉本興業の「業務提携」に残る疑問

wezzy

2019/8/15 18:05


 私が35年近くお世話になった古巣、吉本興業がてんやわんやの大騒ぎだ。

騒動の流れは皆さんもご存じだろう。問題の始まりは、雨上がり決死隊宮迫博之やロンブー田村亮らが会社を通さないパーティに出演したことである。イベント出演の声をかけたのは芸人仲間のカラテカ入江慎也だ。その時のギャラはオレオレ詐欺の犯人の懐から出ていたのだから、この行動はすべてがアウトだ。
カラテカ入江は加害者なのか、被害者なのか
 聞くところによると、入江の会社「イリエコネクション」と吉本興業は業務提携を交わしていたという。入江は即刻クビになったが、この会社と吉本興業の関係は気になって仕方ない。もうホームページは削除されているが、イリエコネクションの業務内容は広告宣伝の代理業務、SNSを中心としたプロモーション、コンサルティング業、映像全般における企画制作・演出・プロデュース、商品開発企画立案、イベント/講演会などの企画立案・制作・運営などとあった。

芸人のサイドビジネスが焼肉屋やお好み焼き屋ならいざ知らず、吉本興業の本業とダブる部分が多いだけに、業務提携契約していたとはこれ如何に?

騒動から時間も経った今、よく考えてみると、入江は加害者なのか、被害者なのかわからない。そうなると宮迫らとともに処分された11人の芸人も加害者なのか、被害者なのかわからない?

もしも、入江が記者会見を開き、私がそこで記者として質問するなら、聞きたいことはいくつもある。

「反社とのつき合いはあったか?」
「反社チェックはどのように行っていたか?」
「反社と認識したら仕事は前日であっても断っていたか?」
「宮迫さんら吉本の芸人には過去、どのぐらいの数の直の営業をしてもらっていたか?」
「その時にはいくらギャラを支払ったか?」
「同様に他事務所の芸人さんにはどれぐらいの数の仕事を出していたか? また幾らぐらいのギャラを払っていたか?」
「3万円から100万円ぐらいの差があるのはなぜか? それはどうやって決めていたのか?」
「宮迫さんや吉本興業には何か言いたいことは!?」

こんなところだろうか。しかしこの先、彼のメディア登場はないものだろうか。
誰が、誰に、何を謝罪するのかが見えなかった謝罪会見
 入江は雲隠れし、この件で2つの大きな「謝罪記者会見」が開かれることとなった。

「謝罪」とは「誰が、誰に、何を謝罪するのか」というのが鉄則である。しかし、宮迫、亮の謝罪会見の中で、最重要であった詐欺被害に遭われた方々への「謝罪」がなされたという印象はほとんどない。

同様に2日後に行われた吉本興業岡本社長の会見も、被害者への「謝罪」とは映らなかった。私はテレビのディレクターから「あの謝罪会見は何点でしたか?」という質問をよく受ける。その際は「私は審査員ではないので、あまり点数はつけません。良いか悪いかしかなく、その時のどこが良かったのか、どこが良くなかったのかを指し示す仕事なんです」と答えている。

そういう視点から見ると、この2つの会見はどちらも「ゼロ点」である。肝心な相手への「謝罪」があったとは言えないからだ。彼らは「心はあった」と言いたいだろうが、誰の目にもそう映らなかった。

よく見直してみよう。オレオレ詐欺に遭った被害者、その家族や友人は間違いなく被害者である。

その被害者らに謝罪しなければならない者は、明らかに吉本興業のトップであり、現実そこでパーティに参加した所属芸人である。加害者だからだ。

「謝罪」は「ゴール」ではない
 私は「謝罪」のことを「ゴール」とは呼ばず、「謝罪」は「ゴール」に向かうための「道具」であると呼んでいる。

吉本騒動でいうと、ゴールは二度と芸人が反社と付き合わないようにすること。芸人を管理している会社は、二度と同じことが起こらないようにコンプライアンス教育を徹底する。またその方法の見直しなどを具体的にすることである。

そのゴールを見出すために重要なことは、理念を共有することだ。共有する理念のことを私は「上位概念」の理解と呼んでいる。この「上位概念」とは、より抽象的、総称的なものといい、一方「下位概念」ではそれをより特定し、具体的に表現するものであるといえる。

たとえば、「明日はどんな日になればいいか?」の質問に対して、「上位概念」で捉えると、私の場合「事件や事故も何も起こらない穏やかな日であってほしい」と言い、「下位概念」でいうと、「大好きな、うまい親子丼を食べたい!」となるのである。下位に落ちるほど具体的で属人的になる。人それぞれ違ってきて当たり前。

吉本興業は「お笑い総合笑社」だ。理念の共有を再確認すればいい。そして、それは「多くの人を笑わせる」「多くの人を楽しませる」だったはずだ。今一度、その理念を企業のトップからすべての芸人、すべての社員が確認せねばならない時が来たと思う。
「吉本騒動」は最優先されるニュースだったのか?
 それにしてもこの2カ月、吉本騒動はどれだけのテレビの放送時間と新聞雑誌の紙面を賑わせたことだろうか? 私が広報マンだった頃なら、毎日、東京と大阪の一般紙からスポーツ新聞や夕刊紙、すべてを読んで関連記事をスクラップにしていたのでよくわかるが、ものすごい切り抜きの量でスクラップブックが何冊も溜まっていったことだろうと思う。

6月初旬、宮迫らが反社と呼ばれる人たちのパーティに出席したとのフライデー砲からこの間、吉本芸人の山里亮太と蒼井優の結婚、G20サミット、「仁徳陵」世界遺産認定。京都アニメーション放火殺人事件なども起こったが、吉本騒動にほとんど消された。

参院選翌日、気になる「自公改選過半数、れいわ・N国が議席獲得」に関してのニュースを見てみようとチャンネルを探すと、朝の8時台の民放、トップ・ニュースは4局中のうち3局が宮迫会見から始まった。民放局は視聴率獲得が第一のミッションといえばそうかもしれないが、内容の重要さからいえば果たして「吉本騒動」が放送の優先順位一番だったのだろうか。「反社の活動撲滅」を謳う時、芸能人のスキャンダルを放り込んでくるとインパクトがあるのはわかるが、ニュースの取り上げ方には疑問が残った。本当に残念なことだ。

ニュースはいつの間にか、吉本が入江をクビにしたところから始まり、宮迫を含め11人を処分。その後、芸人の単独記者会見。続いて社長のグダグダ会見。契約書がないのに契約解除とは? ベテラン芸人が経営者と会談。退社予告する芸人と、それに追随する芸人問題。芸人へのギャラの配分問題。口頭で伝えていたという吉本流契約関係。そんなことは口頭でも聞いたことがないと生放送で言う芸人。

「ギャラが安いから闇営業をするのだから、固定給にすればいい」などと部外者まで参戦しネタは広がり、終わりが見えなくなった。これはもう笑えない。喜劇ではなく「吉本新悲劇」だ。話を大事なところに戻してほしい。

しばらく同じ映像ばかり見せられて視聴者が飽きてきたのを察したのか、あるテレビ番組ではあれこれと編集した中で岡本社長が涙ぐんでいるところに、「50%の減俸!」というテロップを入れていた。思わず、「アレっ、社長は50%減俸になったことで涙を流していたのだったか!?」と思ったほどだ。すごい編集だ。

「芸人ファースト」ではなく、「お客様ファースト」である
 元々、関西芸能界では会社を通さないイベント出演を「直(ちょく)営業」と呼び、友達や親戚、イベントのチケットを買ってくれた人たちの声掛けに応えるという程度は許されていた。しかし曖昧なルールゆえ、今回は相手が反社であるにもかかわらず、調子に乗って小遣いをもらっていたということだ。恥ずかしい。

私が現役社員だった頃に担当していたコンプライアンス研修には「5大テーマ」があった。「酒・金・男女関係・薬・反社」だ。そんな中でも「直営業には反社が潜んでいる。何でも会社に相談するように」と口うるさく言っていたのに、こんな体たらくだ。コンプライアンス研修の訴えていることを理解できない人が増えてきたということなら、今一度、コンプライアンスの研修の数を増やす必要もあるだろう。

「そんなのを受けるのが面倒だ」なんて言う芸人が出てきたなら、今後交わすことになるだろう契約書において、「契約違反」ということで契約延長をせねばいいのだ。自動車の運転免許の有効期限と一緒だ。再交付をしたければ「研修」はマスト。もちろん違反を犯したら、免停や免許取り消し、罰金も払わせればいい。今回の騒動の中でも、物理的な損害を与えた関係各社には賠償もしているはずだ。それは当事者である芸人から取ればいい。

岡本社長の会見では「芸人ファースト」という言葉も出てきたが、元従業員であった私にすれば、社長は「社員ファースト」も忘れてはならない。今回の騒動で、オモロイことを考えるほうにエネルギーが回せなくなるほど忙しくなっていると察するからだ。吉本は「観客」「芸人」「社員」の三者と向かい合う際、優先順位を問うのではなく、どれも最も重要なことであると認識してほしい。

ここで、2018年に発表された「吉本興業 消費者志向宣言」を見てみよう。

まず「理念」には、このようにある。

私たちはいつもお客さまとともにあります。1912年に一軒の寄席小屋から始まった吉本興業。その笑いは庶民の生活の中から生まれ、人びととの触れ合いの中で育てられてきました。

吉本興業の笑いは、庶民のソフトパワーの表出に他なりません。私たちにとって、お客さまは、劇場に足を運んでくださったり、テレビやコンテンツを楽しんでくださったりする存在を超えて、一緒にこの世界を笑顔があふれる場所にしていく仲間なのです。

吉本興業は、笑いを通してお客さま一人ひとりと同じ目線を持ち、人々が自分らしく生きていける社会をつくっていきたいと考えているのです。

以下、「取り組み方針」では、このようにある。見出しだけを並べてみた。現在の吉本と重ねてみてほしい。

『すべての人が自分らしく生きていけるように。笑いを「心のインフラ」に。』

『お客さまの期待を超える、質の高いエンタテインメントの創造。』

『お客さまを想いつづけること。』

最後にここで、「吉本興業グループ行動憲章」も見てみよう。

吉本興業グループは「笑い」を中心としたエンタテインメントによる社会貢献と、「誰もが、いつでも笑顔や笑い声をもてる社会」の実現を目指しています。

吉本興業グループのすべての役員・社員(以下、総称して「私たち」といいます)は、このような理念を実現し、文化・芸能の担い手として求められる社会的責任を果たすために、ここに、本行動憲章の制定と遵守を宣言します。

当社は、1912年の創業以来、常に当社所属のタレントたち(以下、「タレント」といいます)と共に歩み、共に発展してまいりました。

本行動憲章の理念についても、全てタレントと共有し、私たちとタレントが一丸となって実現を目指すものであります。

1. 最良のエンタテインメントの提供

2. 法令等の遵守

3. 反社会的勢力の排除

4. 社会への貢献

5. 人権の尊重

6. 知的財産の取り扱い

7. 取引先との関係

8. 企業活動の透明性

9. 情報の保全

10. 本行動憲章の周知・徹底

ということで、会社も芸人もクールダウンして、もうそろそろクビだ、復帰だ、クビだ、謹慎だなどと言わないで、失敗してもみな吉本興業の芸人だということで、行動を以て反省を表現するのはどうだろうか!

宮迫ら11人総出演の劇団でも作って「大笑い、オレオレ詐欺撃滅作戦!」という喜劇仕立ての芝居かコントでも作って全国を回ればいい。お年寄りには絶対に役に立つし、オモロイはずだ。当然ノーギャラでいい! こういうのがあれば、「吉本新悲劇」は、改めて100年企業の「吉本新喜劇」と呼べるのではないだろうか。

ここまで書いたら……。「死亡しても責任は一切負いません、賠償請求もできません」という芸人養成所の合宿の誓約書が出てきたそうだ。元々、交わす内容がひどかったことに気づき、作り直して配布していたらしいが、「担当者が変わってこの3年間、配り間違えてました!」ってことだったようだ。宮迫の騒動とはまったく関係のないほころびがまた出た。クワバラクワバラ。

一方でこの数カ月、お笑いの吉本興業の所属芸人として、ボケ倒すゆりやんレトリィヴァやケンコバには拍手だ! またベテラン役者、池乃めだかの記者とのやり取り。これは元吉本人として誇りと思える一言だった。

「吉本に言いたいことは!?」
「早く背が伸びる薬を発明してください!」

早く発明してあげてください。そして、変わらなくていいところと変わらなくてはならないところ。ここをスピーディに感じ取って決断して前進して欲しいものだ。

当記事はwezzyの提供記事です。

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