<対談インタビュー後編>SUGIZO×アイナ・ジ・エンド、「光の涯」を表現する声は「アイナ・ジ・エンドじゃなければいけなかった」

Billboard JAPAN

2019/8/13 11:00



NHK総合テレビで放送が終了した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のファイナルエンディングテーマである「光の涯」の配信リリースにあわせて、プロデューサーのSUGIZOと歌唱を担当したアイナ・ジ・エンド(BiSH)がガンダムや楽曲への想いを語った。(前編はこちら

――このレコーディングを経験したことで、ご自身の中から湧き上がったものはどんな表現だったんでしょうか。
アイナ:MORRIEさんの歌を聴きながら覚えたので、原曲がすごく頭に残っていて。本当に壮大な歌声、と言ってしまうと陳腐に聞こえてしまうかもしれないんですけど、すごく広がっていく声だと感じて。わたしはそれを持っていないから、どうあがいてもMORRIEさんのように歌えないって思ってしまって。わたしらしさって何だろうっていうことを考えていたんですけど、正解が出ないままレコーディングに行って、いざブースに入ってSUGIZOさんに「好きなように歌ってみて」って言われたら、家で練習したのとは全然違う歌が勝手に出て来たんです。だからわたしも正直“発見”みたいなものはわからなくて。全てが発見の日でした。SUGIZOさんが言葉をくれる状態のレコーディングブースっていう環境が新しいし、わたしにとってはその時点で新しいことの発見ばかりで。
SUGIZO:それで意識が遠のいていたんだね?
アイナ:そうですね。
SUGIZO:レコーディングブースというのは、身体で言えば子宮みたいなモノ。もしくは僕はよくスタジオを「繭」って例えるんだけど、そこでむくむくとあらゆるものを吸収して、自分が新しい生き物になる場所。新しい自分になる場所。そこでは頭は使わなくていい。元々アイナちゃんの持っている資質や歌い方や癖、色んな好きだったものを出して欲しいとお願いしたので、その部分を強制する必要もない。アイナちゃんのままで。ただいつもより一歩、クオリティをあげてみよう、ということは言いました。だからニュアンスがどうこう、歌い方の癖をどうの、ということはほぼなくて。ただ「今、自分がどの音程にいるかわかるかな」と鍵盤を押さえながら伝えたくらいです。アイナちゃんは本当に天才肌です。今までは自分が何をやっているかわかっていなくても、出来ていたんです。それが、自分がどの位置で声を出しているのか、という座標を知ることで天性のものと後天的に認識したものが融合して、すごいことになっている。今はそういう段階なんです。
アイナ:だからこのレコーディングでは新しいものと、自分の中に眠っていたもの、出したことのない感じの声が勝手に出たので、両方がありますね。

――この曲を、コラボレーションのシリーズ最後の曲に持ってきたのはどうしてだったんですか?
SUGIZO:次のフェイズに繋がるブリッジに相応しい気がしたんです。実際にはストーリー的にはサイド7。初めてガンダムが動き出す直前で終わっているので、ストーリー上は『THE ORIGIN』の物語から我々が広く知るファーストガンダム、『機動戦士ガンダム』へとそのままなだれこむんですが、一人の受け手としてはそこに大きな時間の隔たりがある。『機動戦士ガンダム』の誕生から40年。『THE ORIGIN』がアニメとして生まれるまでの、その約40年の隔たりを、時空を歪めるではないけれど、繋げてくれるような楽曲はこれだ! と本能で感じたんです。だからそこにあまり理由はなくて。この曲が最後に来ることによって、『THE ORIGIN』という作品を深淵へと引っぱっていける、という直感。そして同じくもう一つ感じていた直感は、この深淵の、とても哲学的で人生を達観した人が初めて綴るような楽曲を、全く無垢の少女が代弁してくれることで、結果的に僕の中では彼女が映画『2001年宇宙の旅』の最後に出て来るスターチャイルドのような存在だと感じるんです。あのシーンに出て来た胎児が、もしかしたら生まれ変わる以前には全知全能の存在だったかもしれない。その生命体がもう一度胎児となったときには彼女になっていく。そんなイメージを持ったんです。だからこそあのジャケットになった。自分の中では「光の涯」は深淵に物語を引っぱっていく歌。そこをスターチャイルドであるアイナ・ジ・エンドが代弁して歌う。そういうイメージです。

――実際に完成したものをお聴きになっていかがでしたか?
SUGIZO:アイナちゃんの存在感が予想を超えました。想像はしていたんだけど、それ以上に素晴らしくて。本人は至って、「自分は普通の女の子だ」と思っているかもしれないですが、僕にとっては「この子がスターチャイルドだ」というくらい表現が素晴らしい。地上と宇宙を繋げてくれた存在というか。本当に『2001年~』的な深さをこの人が歌ったことによって得ることが出来たと思っています。MORRIEさんが歌っているときは、言うなれば全てを知っている全知全能の人の歌い方なんです。アイナちゃんが歌うとその全てを忘れて、純粋無垢な存在が、それでも本能で全てをわかっていた。そんな感覚なんです。彼女はそんな自覚はないかもしれないけど、そんな歌声なんです。「無限なる何か」をあなたは持っているんですよ。
アイナ:うううう!? すごく有難いお言葉なんですけど、申し訳ないです。
SUGIZO:そういうアイナちゃんがBiSHで「ギャアアア!」と叫ぶのがカッコいいんですよ。美しさと歪んだ醜さ。それは両方ともすごく大事だと僕は思っている。そういう意味で言うとBiSHからはすごくロックのアティテュードを感じるし、幕張のライブ映像を拝見しても、この人たちの叫びがカッコいいなって思ってしまうし、観客もモッシュしているし。いわゆるロックでもダンスでもパンクでも、あらゆるものを吸収して新しい何かがここで生まれて来ているんだな、と感じるし、その中でなぜか僕はアイナちゃんの声にすごく揺さぶられて。本当に親と子くらいの歳の差がある中でもこうしてコラボが出来るというのは、僕的にもミュージシャン冥利に尽きます。
アイナ:SUGIZOさんがレコーディングでディレクションをやってくださっているときの声色やテンポ感が、わたしにとってすごく落ち着く空気感だったんです。いつものレコーディングブースでは、録音する側からディレクションしている方の表情は見えないんです。全てを耳からの情報でキャッチして、歌に昇華しなければいけないんですけど、SUGIZOさんのときはなぜかわからないんですが見えてないのに見えているような感覚で。それは歳の差もあるんでしょうけど、それこそわたしにとっては(SUGIZOさんが)全知全能のような存在で。わかってくれているような感じがして、意識が何回か遠のきそうになっていたときにも、多分、(意識が遠のいていることも)気づかれているんじゃないかなって思って、だったらそのまま歌ってしまってもいいのかも、と思えたんです。いつもだったら意識を保とうと逆に意識しすぎて歌声が硬くなってしまう場面だったんですが、そこも無理をすることなく歌えたので、SUGIZOさんのおかげでわたしの根底にある、ただただ歌が好き、というものを掘り返してもらって、それを表現として昇華できた気がして。そういった感覚で歌えたので、すごく有難いです。
SUGIZO:いやいや。こちらこそ有難いです。それが今後のアイナちゃんの表現に繋がっていくと嬉しいね。今は一番いい時期。一瞬、一瞬が吸収できるチャンスだし、その学んだこと吸収したこと全てがむくむくと育って表現者として強大になっていくアイナちゃんの様を見ている感覚。レコーディングしていても吸収率が早いな、とか。この人は多分、物事を知っている人がちょっと道筋やヒントを与えてあげるだけで、自分でどんどん大きくなっていくって感じる。だから不要なことは教える必要がない。そういう意味で言うと、レコーディングしながら脅威にも感じました。自然とやったことで出て来る声がすごく良くて、普通だったらありえないようなブレスもするんだけど、それはそのままにしようって思ったんです。そこは敢えて全部、良しとしたんです。
アイナ:有難いなぁって思っていました。
SUGIZO:僕にとってもすごくエキサイティングな経験でした。
アイナ:終わったあとにみんなで食事に行ったんですけど、そこで色んな話をしてくださって。音楽の話とかもあって、すごくわくわくしてしまって。おうちに帰って早速鍵盤を叩きました。
SUGIZO:ああ、そうなんだ。
アイナ:「こういうことだったんだ!」と家に帰ってからわかったこともありました。
SUGIZO:自分がどこにいるかっていう話とか?
アイナ:そうです。今、どこの音程にいるか。出した声がどの音程なのかを鍵盤で探していったりしたんです。「こういうことをすればテクニックというのは磨かれるのかな」って思ったり。その食事会での出来事は忘れられないです。

――そんな今回の「光の涯」ですが、「ガンダムシリーズ」のファンのみなさんにどんな風に楽しんでいただきたいですか?
SUGIZO:色んな方がいるので、「こういう風に聴いて欲しい」という想いはないです。それはあくまでも自分自身の美学で作って来ているものなので、本当に僕が最も美しいと思うロマンティシズムの、『THE ORIGIN』に対しての終着地点がこの曲で。この曲を表現する声はアイナ・ジ・エンドじゃなければいけなかったということです。願わくば、アイナ・ジ・エンドの存在とSUGIZOの存在の化学反応が『機動戦士ガンダム』ファンの多くのみなさんに響くことを祈ります。
アイナ:レコーディング中もSUGIZOさんがずっとガンダムの映像を流しながら2日間やってくださっていて、本当にガンダムを愛しているんだな、この曲になにかを吹き込もうとしているんだな、というのを身に沁みてわかったんです。わたし自身はガンダムファンのみなさんにどう思われたい、という具体的なものは今はあまりないんですが、SUGIZOさんのガンダムへの愛情から生まれたこの楽曲を好きなように感じていただけたら嬉しいなと思います。
SUGIZO:だからこそアイナちゃんがガンダムについて何も知らなかったことがよかったんじゃないかと思っているんですよね。知っていたなら今回のようにはならなかったと思う。(ガンダムに対しては)生まれたてなんです、彼女は。だからこそアイナちゃんがガンダムについてなにも知らないことがこの曲についてはよかったと思います。これから色々と知っていくとは思うんですが、ただこの「光の涯」での声は、『THE ORIGIN』が呼んだものだと思っています。

取材・文:えびさわなち
(C)創通・サンライズ

◎リリース情報
SUGIZO feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)「光の涯」
2019/8/13 配信スタート

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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