「表現の自由は常に揉める、誰かにとって嫌なもの」山田太郎議員と考える“政治と芸術”の距離感

AbemaTIMES

2019/8/12 15:00



 日本最大級の芸術祭「あいちトリエンナーレ」で開催された「表現の不自由展・その後」。過去に検閲や忖度によって表現の機会を奪われた作品を集めた展示だ。“表現の自由とは何か?”を問うはずが、批判や脅迫などを受け、わずか3日で中止になった。

何を表現してもよいアート作品は、政治的な力や国の助成金が関わると自由がなくなってしまうのか。9日放送のAbemaTV『AbemaPrime』は、“表現の自由を守る”をスローガンに掲げる自民党の山田太郎参院議員と議論した。

■「表現の自由は相手にとって嫌なものを議論する話」

 「表現の不自由展」の中止について、山田議員は「表現の自由の前には、たとえ公権力であったとしても規制するべきではない。法律に違反することは問題だが、今回の展示会が違反しているとは思えない。中止した理由は、必ずしも権力の直接的な実行力ではなく、このままいくと脅迫もあり維持できないと。そこが問題で“公権力との戦い”ということではなかったのかもしれない。ただ続けていくかどうかは主催者の判断。公権力者がああでもない、こうでもないと言うべきものではない」との考えを示す。


 「表現の自由を守っていくべきだ」という人々からは、河村たかし名古屋市長の中止要請を“検閲”とする指摘もある。山田議員は「行政権をもって直接中止を決定できる立場にあったのかどうか。それ以外の公権力者はまた立場が違う。例えば、私がこの展示会を中止・進めることはできないが、国会議員が色々言うのもこれ自身に表現・言論の自由がある。国会議員が何も言わなくなってしまえば、誰が代表して意見を言うのか。今回の議論の本質は、行政権を持って直接止めることができる立場かどうか。その人たちはやっぱり中立な立場でもって判断しなければいけない」と述べた。

また、今回の展示会には表現の自由と言いつつも偏りがあるのではないかという声もある。「展示内容に対して好き嫌いはあると思うので、それはそれで言えばいい。それを言ったことによって、主催者側が意図している“物議を醸したかった”ということになれば、結果大成功したのではないか」と山田議員。


 元経産官僚の宇佐美典也氏は「表現の不自由展に関わる部分に関しては(公的な)お金を出してほしくないと思う。ただ、この部分に関してルールがなかったのが問題だった。今回の昭和天皇の顔を切るとか焼くとか、そういうものは普通なら名誉毀損や精神的苦痛で訴えられると思う。今後、天皇のコラージュが誰にも止められないまま世の中に広がっていく可能性もある。そこを一度議論してほしい」と訴えた。一方、展示会の中止には「抗議の電話や脅迫があったから止めるとか、もともと予測できたのだから、いま危険なら時間をあけて再開するべき。やるという前提で補助金をくださいと言っているので、大村知事と津田大介氏はやりきる責任がある。そこまでやって意図が達成されるのではないか」と語った。

さらに、山田議員は「表現の自由というとすごくきれいな言葉だが、自分もいつも嫌な思いをする」とし、「表現の自由というのは、相手にとって嫌なものを議論する話。皆が良いと思っていることは話題にもならず、表現の自由を守ろうという議論は起こらない。自分の場合は漫画やゲーム、エログロ、暴力シーンをどうするのかという議論が多い。実は表現の自由をめぐる問題というのは、誰しもがOKというような話ではない。常に揉める、しかも表現物は誰かにとって嫌なものだということを前提として、冷静に議論しないといけない」と述べた。

■ブロッキングは「あってはならないやり方」

 表現の自由をめぐりポイントとなるのが、漫画や映画などを著作権者の了解を得ないまま無料で公開する「海賊版サイト」の問題。この対策として「ブロッキング」という措置があり、特定のサイトへのアクセスを遮断して閲覧できなくすることができるが、表現の自由に反するという指摘もある。


 ブロッキングに対し山田議員は「究極の方法、表現の自由ではあってはならないやり方だと思う。ブロッキングに関しては、2014年の児童ポルノ禁止法の時に一部が日本でも認められるようになったが、これは子どもの人権を守る緊急避難措置であって、全て止めてしまうということは失うものが大きい。YouTubeでアカウントが停止されるということをよく聞くが、すると『こういう表現をするとだめかもしれない』という萎縮効果が起きる。民間の規約だけでもそういう状態だ。ブロッキングは例えば、海賊版という害虫がいるなかで完全に強力な農薬を撒くようなもの。たしかに害虫は殺すことができるかもしれないが、下手すると食べる野菜まで汚染されるかもしれない。それくらい副作用が強い」と懸念を示す。

また、「海賊版に関しては悔しい思いを常に感じている」という紗倉まなは、「本来還元されるべきところに還元されないことがエンターテインメントの衰退になることについて、自覚されているようで自覚されていない。ブロッキングが叶えばありがたいが、今の話を聞くとまだ課題点があると感じる」と語った。


 一方で、山田議員は「ブロッキングを最後の手段とは言ったが、迂回する可能性がある」とも指摘する。「サイトをブロックしても、他のサイトに載ってしまえばいたちごっこ。本質的に海賊版をなくすには、サイトを止めるということだけでは難しい。実は、音楽の海賊版は減ってきていて、それは法律ができたからというよりも、便利なインフラができて有料でも簡単にとることができるようになったから。海賊サイトがあるのはインフラとして整備されてないところもある。テレビアニメでも放送局で映らない地域があると、最初から違法だと分かっていて録画している人たちもいる。そういう意味では、違法だというリスクをとるよりも、僅かでもお金を払って見られるような仕組みを整備する方が結果としては早いのではないか」。

さらに、「海賊版は国内ばかりではない。意外にも漫画などはアメリカで一番盗まれていると言われていて、国際的な協調が必要。中国ではブロッキングが合法化されているが、情報統制国家なので、本気を出せばいくらでもやれることがあるという逆説的な発想だ。結局違反する人は海外サイトを見に行くので、国内だけの議論ではだめ」と指摘した。

表現の自由に関して、もうひとつポイントになるのが「ダウンロード違法化」。インターネット上の著作権侵害コンテンツをダウンロードするユーザーへの規制で、現在は音楽・動画が対象となっているが、今後は文章・画像などにも拡大すべきかどうかが議論されている。


 山田議員は「スクリーンショット違法化という議論が今年の3月にあった。これを違法といったら皆犯罪者になる。おかしいのは、アップロードする側の犯人を捕まえる努力をせずに、なぜ見る側を先に捕まえようとするのか。まだ選挙で候補の段階だったが、公認取り消し覚悟で暴れた。出せば大混乱、ありえない」と憤る。

そして、「結局、アップロードしている人を捕まえられないという発想がある。アメリカだと発信者情報開示制度(ディスカバリー)という形で、情報者を発信・開示させる仕組みがある。インターネットの場合、言ったもん勝ち、言われたもん負け。これは絶対におかしいということで、フェアな仕組みにするために民事訴訟に対してのみだが、そういう仕組みが認められている。今回の『漫画村』の問題に関しても、ディスカバリーの仕組みを使って対応して警察も犯人を特定できている。できなくはない。そこをちゃんとやるべきだ」と訴えた。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

当記事はAbemaTIMESの提供記事です。

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