夏休み前に急増。退職代行をリピートする若者たちの本音

日刊SPA!

2019/8/11 15:54

―[“退職請負人”嵩原弁護士の「労働問題駆け込み寺」]―

昨今、その需要が急増している退職代行サービス。パワハラや長時間労働で心身共に限界まで追い詰められた者、「直接、辞めると言うのが面倒だから」という決して褒められぬ理由を口にする者──依頼者たちが抱える背景は実にさまざまだ。

◆8月18日は要注意。夏休み明けの予約が殺到!

「すでに現時点で、『お盆明けの8月19日に会社に退職の連絡をしてくれ』という予約が殺到しています」

そう語るのは、これまで1000件以上の退職代行案件に携わってきた弁護士・嵩原安三郎氏だ。

「今年の8月18日の日曜日は、小学生の『8月31日』みたいなもの。夕方になって『ちびまるこちゃん』がテレビから流れてくると、否応なしに次の日からの仕事が頭をよぎる。もっとも憂鬱になるタイミングなんです」

そんな嵩原弁護士だが、最近「とあること」に気づいたという。

「特に最近、顕著なのはリピーターが目立ってきていること。1度ならずとも、2度、3度……と退職代行の交渉を依頼してくる『常連さん』が増えてきているんです」

企業側が退職の意思に難色を示すケースが増えているのか、それとも退職代行業者に依頼する労働者たちのハードルが極めて低くなっているのか。

「卵が先か、鶏が先か。考察する余地はおおいにあると思います」

今回は、はからずしも退職代行を「リピート」してしまった男性のエピソードを紹介しよう。

◆「上司のため息、舌打ちで心が萎えた」

都内IT企業でSEとして働く柴田貴之さん(32歳、仮名)はこれまで2度、退職代行を依頼した経験の持ち主だ。

「最初に働いた会社は長時間労働は当たり前、残業代も出ない。典型的なブラックな労働環境でした。このままではヤバイと思って退職を申し出たのですが、脅しに近い強引な引き止めに3ヶ月ほど遭ったんです」

ネットニュースで退職代行サービスの存在を知った柴田さんは即、弁護士に依頼。代金として3万円を払った。

「依頼したら、その日から会社に行かなくて済みました。必要最低限の引き継ぎも弁護士さん経由で伝達してもらったので、気まずさやストレスはほとんどなく退職できました。あっけなかったです」

その後、期間を置かずに転職したという柴田さん。だが、次に勤務した会社でも受難は続いた。前職と同様、長時間勤務を強いられ、パワハラ上司の下についてしまったのだ。

「上司から無茶な案件を振られて、期限に間に合わせても直前でひっくり返される……の繰り返し。露骨な脅し文句こそなかったですが、上司のため息や舌打ちを聞く度に心が削られていきました。そのくせ、仕事終わりに飲みに連れたがるんです。酒の席でも延々と武勇伝と説教……プロジェクトに関わってるメンバーが入ってるslackも常時見てないと怒るし、24時間監視されてる気持ちになって、辞めたくなってしまった」

◆「合わない会社はさっさと辞める、が最適解」

柴田さんは不本意ながら退職の申し出をした。だが、『人が足りない』の一点張り。話し合いの席すら設けてもらえない。仕方なく以前依頼した弁護士に連絡をしたのだった。

「自分に合わない会社はさっさと辞めて、次に行く。我慢してうつ病になってしまった同僚もみてきたので、僕は切り替えを早くするよう割り切ることにしました。幸い、プログラマーは慢性的な人手不足なので、就職先に困ることはありません。会社からは毎回のように『お願いだから、ここはもう少し会社のために頑張ってくれ』みたいな義理人情を引き合いに出されるけど、それなら職場の環境を良くすればいい、としか思えない。僕は自分勝手な行動だとは思っていません」

経営者側からすれば、「根性がない」「気合が足りない」なんて意見もでそうではあるが、これが現代の労働者の肌感覚でもある。労働環境の改善なくして良い人材の確保なし、だ。

【フォーゲル綜合法律事務所】

嵩原安三郎氏 ’70年沖縄県生まれ。京都大学卒業後、’99年に弁護士登録。情報商材や副業詐欺など悪徳商法案件を数多く手がけるスペシャリスト

取材・文/アケミン

―[“退職請負人”嵩原弁護士の「労働問題駆け込み寺」]―

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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