22年間で18cmもチビになったメルセデス・ベンツAクラス。時代に逆行するその理由は?

日刊SPA!

2019/8/11 08:51

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

世界の自動車の平均身長(全高)が、どんどん高くなっている! グローバルで進行中のSUVブームが、その最大の要因だ。

たとえば、昨年世界で一番売れたSUV・トヨタRAV4の全高は168.5cm。つまり、現在の日本人成人男性の平均身長くらいです。

一方、昨年日本で一番売れた普通車(軽以外のクルマ)だった日産ノートは、身長152cm。これは江戸時代末期のソレって感じでしょうか? 勝海舟の身長は150cmくらいだったらしいですし。

現在、世界で売れているクルマの半分近くがSUVになっている。日本じゃSUVブームが来る前に、軽ハイトワゴンブームやミニバンブームが来て、すでに平均身長がドカンと伸びていたけれど、その後を追うようにして、世界中のクルマの平均身長がぐんぐん伸びているわけです。

◆時代に逆行してどんどん背が低くなっているAクラス

そんななか、身長が逆に大きく縮んだ稀有なクルマがある。メルセデス・ベンツAクラスだ。

初代Aクラスの身長は160cm。最近のSUVよりは低いけれど、当時は他のベンツとまるで違う、ちっちゃくて背の高い体格で、プロポーションとしてはワゴンRあたりに近かった。

ただ、その背の高さゆえに、発売直後にスウェーデンで行われたエルクテスト(道路に飛び出してきたへら鹿を避けるテスト)で横転してしまった。22年前の出来事です。

それでも初代Aクラスは、ベンツ初のFFコンパクトハッチバックとしてそれなりの地位を築き、それなりにヒットした。さすがベンツ様の威光。2004年に登場した2代目Aクラスは、159.5cmと、初代より少し身長が縮んでいたが、基本的なプロポーションはそんなに変わっていなかった。

ところが、2014年に発表された3代目は、一気に平べったくなっていた! 身長はたったの142cm。日産ノートより10cmも低い。

実は、初代と2代目のAクラスは、燃料電池車や電気自動車にも転用できるように、燃料電池ユニットやバッテリーを収められる二重床になっていた(サンドイッチ構造と言います)。ところが結局それらが市販化されることはなく、その空間はムダに終わりました。

3代目はそのムダを省いて床を低くし、同時に全長を40cmも延長。幅も広くして、室内の広さを稼いだのでした。

でもって、昨年登場した4代目は、身長は据え置きのまま幅を2センチ広げることで、さらに若干平べったくなった。日本で進んだハイトワゴン化の真逆ですな。

いったいナゼAクラスは、こんなに背を低くしたのか?

◆中高年のオッサンは背が低いクルマが大好き!

主な目的は空気抵抗の低減だ。背を低くすれば、ものすごく簡単に空気抵抗を抑えることができる。なにしろアウトバーンの国ですから、空気抵抗を減らすことは、最高速や燃費アップのためにとっても重要なのですよ。

背が低いほうが重心が低くなるから、曲がる性能も高くなる。もちろんへら鹿やサルやイノシシや高齢者の暴走車両が飛び出してきても引っ繰り返りずらい。走りの性能を優先すると、自然とクルマの背は低くなる。

我々中高年のオッサンは、クルマは背が低いほうがカッコよく感じるが、それは、そのほうが性能がいいことを、本能で感じているからなのである(断言)。

そんな新型Aクラスに、2リッタークリーンディーゼルターボを積んだA200dが追加された。

これまでのA180は、1.3リッターのガソリンターボを積んでいて、いかにも必要にして十分というものでしかなかったけど、それが2リッターディーゼルになれば加速は段違い。とっても速くて気持ちいい。それでいてカタログ燃費も、リッター15.0kmから18.8kmにアップ。高速巡行ならマジでリッター20kmはいく。お値段も369万円から399万円にアップだけど、それ以上の価値がある。いいなあ、コレ。ちなみに自動ブレーキなどの安全装備も当然最新です。

日本でも徐々にSUVブームが浸透して、ますますクルマの平均身長は上がっているけれど、ホント言えばクルマの背が高くなってもムダが増えるばっかりで、性能的にはなにひとついいことはない。そりゃ背が高けりゃ室内は広々して見晴らしもよくなるけど、それで喜ぶのは女子供だけ。22年間で18cmも背を低くしたAクラスはスバラシイ! オッサンカーマニアの希望の星だ。涙が出ます。

取材・文/清水草一

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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