ガンと闘ってきた愛犬に迫る最期。寝ているだけで不安になる

女子SPA!

2019/8/10 08:45

<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.27>

心理カウンセラーの木附千晶さんは、16年一緒に暮らしたゴールデン・レトリーバー「ケフィ」を2017年1月に亡くしました。

ケフィはメニエール病などと闘い、最後は肝臓がんのために息を引き取ったのです。前後して3匹の猫も亡くし、木附さんは深刻なペットロスに陥ってしまいます。自分の体験を、心理カウンセラーとして見つめ、ペットロスについて考えます(以下、木附さんの寄稿)。

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さらなるガン治療を選択したとしても延ばせた期間はごくわずかだったはずです。その短い時間のために、苦しい副作用と闘ってほしいとは思えませんでした。人間なら100歳を超えたケフィに、もうこれ以上の負担はかけたくはありませんでした。

苦しんでわずかな延命を図るより、なるべく穏やかに、最後まで美味しい物をいっぱい食べて、笑いながら人生を終えてほしいと思いました。できる限り楽しい思い出だけを持って、相棒だった愛猫・でんすけ(2015年没)のもとへと旅立ってほしかったのです。

◆生命力と天命に任せるしかない

「だからもう、これ以上のガン治療はしない」

その「決断」は今も間違っていなかったと思っています。与えられた選択肢のなかから最善の「判断」をし、「決断」したと信じてはいます。しかし、それでも愛しいケフィの命が消えて行くさまを見ているのは身を切られるようでした。ケフィの体から少しずつ命が流れ出て行こうしているのに、なす術を持たない自分……。それはとても耐え難いことでした。

「ある一線を越えると命は人の手を離れる」

たくさんの動物たちを見送ってきて、経験として分かっていたことです。それまでは「どうにかして」「あと少し」と回復を願って手を尽くすけれど、なぜか「ああ、もうこれで最期だ」と思う瞬間が、必ず訪れます。その子が持つ生命力と天命に任せるしかないときがやってきます。

「これ以上のガン治療はしない」と決めた私がケフィにやってあげられること。それはただそばにいて、声をかけたり、抱きしめたりして、死への恐怖を少しだけでも和らげてあげること。体を拭いたり、寝床を清潔に保ったりして、なるべく快適に過ごさせてあげること。ご飯やお水を飲めるようにしてできる限り楽な状態をつくってあげること。そのくらいしかもう、何もできることはありませんでした。

◆ジェットコースターに乗ってるよう

ケフィと過ごした最後の2か月は、ジェットコースターに乗っているような日々でした。11月あたまに呼吸困難になっての夜間救急。一度回復するも、その10日後には激しい下痢と食欲不振が起きました。体力を消耗し、起き上がれなくなったケフィにあわてて後足ハーネスを注文しました。

下痢が止まってしばし食欲が回復し、介護ベストと後足ハーネスを装着して外に出たり、胸水を抜くと元気にそうになったのもつかの間。12月半ばには立ち上がれなくなり、おむつ生活になりました。胸水の溜まりも早くなって、1日起きに病院へ行く生活になりました。

ケフィの荒い息づかいを聞くと「もう胸水が溜まったのでは」とはらはらし、静かに寝入っていると「永遠の眠りについたのではないか」と不安になりました。

私は、ケフィの横に布団を敷いて眠りました。仕事は極力減らし、できるだけケフィのそばにいるようにしました。ケフィとの時間が惜しかったし、「戻ってきたらケフィが冷たくなっているのではないか」と思うと、おちおち外出などしていられませんでした。

◆ケフィの人生だけが先へと進んでしまっていた

年が変わる頃には、ケフィは1日のほとんどを眠って過ごすようになりました。ぐっすりと眠っている姿は「泳ぎすぎて疲れちゃった!」と爆睡していたときと同じようなのに、ケフィにはさまざまな変化が起きていました。

もう自分で寝返りが打てないし、水も飲めません。飲み込みも難しくなって、口へと運んだ水で「あわや溺れるか!」となったこともありました。水分補給がままならず、12月29日にはおしっこが出なくなって再び夜間救急へ。検査で膀胱炎と分かりました。

ついこの前まではうんちが出るかでないか、下痢をしてるかどうかに一喜一憂していましたが、今度はおしっこがちゃんと出るかどうか、すぐにおむつを替えて拭いてあげられるかどうかに神経をとがらせました。

食べ物はほとんど受けつけないので、ペースト状の栄養補助剤を口のなかに塗ったり、流動食を注入器で流し込みました。それも飲み込むより口の端から流れ出るほうが多いくらいです。

かつてのケフィなら“ひと舐め”で空になっただろう小さな流動食の缶に書かれた「1日に与える量の目安」を見て、私は何度も泣きたくなりました。ケフィの体重では1日に20缶も飲ませなければなりません。それは果てしない作業でした。

「先週はこうじゃなかった」「昨日はもっと違ったのに」ということが次々と起きて、私はまったくついて行けずにいました。

私よりうんと後に生まれて、ずっと子どものように思ってきたケフィが、老いて、私を置いて逝こうとしている……。その現実を目の前に、私の気持ちの整理が着かないままケフィの人生だけが先へ先へと進んでしまっていました。

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<文/木附千晶>

【木附千晶】

臨床心理士。子どもと家族カウンセリングルーム市ヶ谷共同代表。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など。

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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