新社会人のための行動経済学 第14回 「自信過剰バイアス」の例と投資での注意点


夏の風物詩といえば、甲子園という高校野球ファンも多いと思います。令和最初の夏の大会、今年もどんなドラマが待っているのか、筆者も1ファンとして楽しみにしています。出場選手は一生の思い出になることでしょう。一瞬一瞬をしっかり味わってもらいたいです。

○自信過剰バイアスと甲子園の例

一方、惜しくも地区予選で敗退した高校は新チームとなり、来年の春のセンバツや夏の甲子園出場を目標に始動していることでしょう。そんな新チームに「このチームは来年、甲子園に出場できると思いますか?」とアンケートを採ったならば、多くの球児が「行けます」と回答することでしょう。

ただ、実際は出場できるのはほんの一握り。確率的には出場できない人が多いにも関わらず、「出場できる」と思う人の割合はきっと実際の割合を上回るはずです。筆者自身も「甲子園に出場する」と信じていた元高校球児で、結局それが叶わなかったので、よく分かります。

これは高校球児に限らず私たちに内在している「自信過剰バイアス」が影響しているのかもしれません。
○自信過剰バイアスとは

「今日、家が全焼すると思う人?」
「今日、交通事故に遭うと思う人?」
「今日、何らかの犯罪に加担し逮捕されると思う人?」

おそらく多くの人が「いいえ」と答えたと思いますが、実際は少数ながらも上記に該当する人はいるはずです。甲子園出場といった発生確率が低い幸運に対して「自分は該当する」と考え、事件などの発生確率の低い不幸に対して「自分は該当しない」と考える傾向があります。

また、平均や順位が計測できる事象においては、全体の中間より上位に位置付けられると見なす人が多いことも様々な実験で検証されています。

例えば行動経済学で著名なリチャード・セイラーシカゴ大学教授が、自身が担当するクラスで生徒に対して「自分は全体の何%程度の成績だと思うか?」という質問を行いました。成績を上位から並べていくため、上位と下位は半々となります。ただ、半数以上の生徒が「上位10~20%の範囲内に収まる」と答えたそうです。

このように自分の能力を過信したり、過剰に評価したりすることを行動経済学上、「自信過剰バイアス」といわれていますが、自信過剰になることは悪いことなのでしょうか?

様々な科学者や医療機関の研究結果によると、自信過剰、つまり楽観的に物事を捉えることでストレスや不安が軽減され健康面でプラスになるという指摘されています。確かに日々、悲観的に過ごすよりも心身共に健康な状態を保つことができそうですね。決して悪いことではなさそうです。
○自信過剰バイアスとの向き合い方

神経科学者のターリ・シャーロット氏は、将来を楽観的に考えながらも正しい知識や情報を有し、バランスを保つことが重要であると唱えています。

火事や事故に巻き込まれないという楽観的な考え方を排除する必要はなく、「私は大丈夫」と思いながらも、火災保険や自動車保険の存在を知り、そして内容を精査し、適正な範囲内で保険に加入しておくことがバランスを保つことにつながります。避難訓練などを真剣に行うこともそれに該当するでしょう。

株式投資をする時も、自信過剰になっている可能性があります。「これだ!」という銘柄を見つけた後も、もう少し細かい情報を追加で調べることで冷静になることもあるでしょう。自信を持つ、楽観的に考えることは良いことです。ただし、自分がそういう傾向に陥りやすいことを把握しながら重要な意思決定を行う際は、多少割り引いて考えるといった冷静な対応を取っていきたいですね。

多くの読者が楽しんでくれると信じながらこのコラムを最後までまとめてきましたが、少し冷静になり、自分で読み直してみたいと思います。

○著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所代表取締役ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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