ビジネス書に訊け! 第57回 仕事と子育ての両立が難しいと感じているパパへ


悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事と子育ての両立が難しいと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「仕事と子育ての両立が難しく、家に帰ってもヘトヘトで妻に任せっきりになってしまいます」(53歳男性/事務・企画・経営関連)

僕には2人の子どもがいます。上が息子で下が娘。わけあって11歳も離れているので(たまに聞かれるのですが離婚歴はなく、母親は同じです。たんに時間が空いただけの話)、娘はまだ中学生。思春期まっただなかなので悩みは尽きませんが、それでもここまで子育てができたのは、妻のおかげだと思っています。

家で仕事をしているので、サラリーマンの方よりは子どもと接する時間は多いのですが、それでも妻の尽力なくしてはここまで来られなかっただろうなと感じるわけです。

しかし、そんな環境下にあるからこそ、ご夫婦で仕事と子育てを両立されている方のご苦労はもっと大きいのだろうなと容易に想像がつきます。帰宅後は疲れ切ってしまい、なにもできないというご主人も少なくないでしょうし。

そういえば、上の子が小さかったころは僕も勤め人でしたから、思えば同じような感じだったかもしれないなぁ。とにかく毎日疲れ切っていたので、家に帰ってから妻の子育てを手助けしたことなど、あまりなかった気がします。

ところで、今回のご相談に見合った書籍を探してみた結果、気づいたことがあります。子育て本の大半が、お母さんを対象に書かれたものであるということ。

いまや“イクメン”が増えているのですから、もっと男性向けの本が増えてもいいのにとも感じるのですが、まだまだそうはいかないようです。

だからというわけではないのですが、今回はあえて、お母さんに向けた3冊を選んでみました。これらをお父さんも読んでみれば、お母さんの気持ちがわかり、ひいては「どうサポートすべきか」も見えてくるのではないかと感じたからです。
○親がストレスをためない生き方をしよう

最初にご紹介したいのは、『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(高祖常子 著、かんき出版)。著者は、育児情報誌「miku」の編集長でもある子育てアドバイザーです。自身の3人の子を育てるなかで、世のお母さんと同様の悩みを抱えてきたのだとか。

しかし、そんな経験があるからこそ、「みんな初めて親になるのだから、悩んだり戸惑ったりして当たり前」だと言い切っています。そこで本書では、イライラして怒鳴ってしまいそうなとき、叩いてしまいそうなときに、どうしたら感情的にならずにいられるのか、その方法を明かしているのです。

もし、今まで感情的になってどなったり、たたいたりしていても、それはもう過去のこと。今日から変わっていきましょう。子どもが言うことを聞かない、言うとおりにしないときに、イライラしてしまう、どなってしまう、たたいてしまうのは親自身が困っているから。そんな現状を変えたいと思っているママ・パパは、すでにたたかない、どならない子育てのスタートラインに立っていると言えます。(第2章「部下を動かすためにリーダーがやるべき7原則より抜粋」)

著者はここで、ひとつの重要な指摘をしています。親がストレスフルな生活をしていると、そのストレスが子どもに向かってしまうことも少なくないということ。

子どもに直接向かわなかったとしても、家族で過ごす時間が極端に少なかったり、家族といる時間に疲れ切っていたり、家でイライラしていたりしたのでは、せっかく家族になったのにもったいないというのです。

とくにお母さんは、子どものために、子育てのためにと、自分の行き方を犠牲にしている可能性があります。家族がいるから働き続けられない、これまでのような働き方はできないなど、取捨選択してきたこともあるはずだということ。

もちろん現実的にできないのかもしれませんが、その発想を「できるようにするためには」と転換してみることも大切だというわけです。

もし、働きたい場合は、子どもがいるから働けないのではなく、子どもがいても働けるところを見つける、働き方を会社に交渉するなど、自分から見つけ、勝ち取ることができるものも少なくありません。パパも「仕事が忙しいから早く帰るのは無理」ではなく、「家族と過ごしたいから働き方を工夫する」という考え方に転換してみましょう。(161ページより抜粋)

こうした考え方は、自分本位だとか身勝手だとかいうこととは別だと著者は主張しています。それどころか、そんな働き方が周囲にも影響を与え、会社にとっても新たな業務改革につながることもありえるとも。

そして重要なポイントは、両親がともにストレスをためないことが、子どもにとってもよい影響を与えるということ。そればかりか夫婦ともども、家族のことだけを心配しすぎることなく、さまざまな活動に打ち込めるようになるわけです。

そんなわけで、本書を参考にしながら、お互いにとってよりよい生き方について考えなおしてみるのもいいかもしれません。
○「ピグマリオン効果」を利用する

『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』(佐藤めぐみ 著、あさ出版)の著者は、フランス・パリで子育てをしながら生活しているという育児コンサルタント。

専門である「子育て心理学」を活かし、育児中のお母さんから相談を受けたり、楽しく充実した育児ライフをサポートしたりしているのだそうです。心理学というとなにやら難しそうですが、決してそんなことはないのだといいます。

むしろママ業ほど、心理学が生きる場はないのではないかと、私は考えています。実際、心理学の先進国・欧米では、その知識を子どものしつけや教育、大人のストレス対策に活用することは、ごく当たり前のこと。私自身、そんな子育て心理学の日常使いに、精神的に助けられ、育児生活を楽しく乗り越えることができています。(「はじめに」より抜粋)

そこで本書では子育て心理学の考え方に基づき、フランス・パリのママたちが実践している習慣や行動などを紹介しているわけです。

ところでお父さんがうまく育児に関わるようになると、子どもの心の成長にも、お母さんの心身の安定にもよい影響があると著者は記しています。

しかし、逆に仕事の関係などでお父さんが一緒にいる時間が少ないと、子どもがお父さんに対して冷たい態度をとってしまうことも考えられます。

そんなときには、相手に期待を込めると、そのとおりに変わっていくという心理現象である「ピグマリオン効果」を利用するといいのだそうです。端的にいえば、お母さんがお父さんのことを「イクメンパパ」だと信じて接していると、いつの間にかイクメンパパになっている可能性が大きいから。

信頼は人間にとって、究極の動機づけ。ママに期待されて嬉しくないパパはいません。パパを信じ、一緒に育児をする仲間として、タッグを組みましょう。(「はじめに」より抜粋)

だとすればやはり、夫婦の信頼関係がなにより大切だということになるのでしょう。しかし夫婦といえども、相手の心を100% 正確に理解することは不可能。だからこそ、うまく伝わっていないと思ったら、お互いの気持ちを正直に伝えることが大切だといいます。
○「働き方を変えようとする」ことが重要

ところで子育てに関する夫婦の役割分担を考えるとき、必ず直面する問題があります。すなわち、「男性はいまの働き方を変えられない」という現実。しかし『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』(堀江敦子 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、そんな状況も変わりつつあることを指摘しています。

出産するまでは夫と同じくらいバリバリと働いていた女性でも、産後の育児休暇中に仕事をしなくなり、すべての家事を背負ってしまうことに。その結果、家事全般を担うのは自分であり、「働き方を変えるのは自分なのかもしれない」という無意識の刷り込みが、いつの間にか染みついてしまうというのです。

だから、夫に早く帰ってきてほしいと思っても、それを口に出しにくくなってしまうということ。

また男性側も、「毎日こんなに忙しいんだから、働き方は変えようがない」と思い込みがち。男性はキャリアと人生とのバランスについて女性ほど考える機会がないためか、“いまの仕事”に没頭して将来のプランは先送りにする傾向があるわけです。

つまり、夫婦の働き方や家事育児の両立については、育児中から意識的にバランスをとらないと「夫の長時間労働」に傾くものだということ。

育児中に「家事全般は妻、仕事は夫」という構造をつくってしまうと、妻がどんどんワンオペに陥ってしまうもの。そのため早めの段階で、夫婦一緒に働き方を変えようとすることが重要だといいます。

その際に重要なのは、「働き方を変えることが、自分にとって必要なことなんだ」とパートナーに腹落ちしてもらうことだと著者は主張します。

転職までいかずとも、今の会社に柔軟に働ける制度がないか聞いてみてもいいかもしれません。少しずつ情報を与えたり、問いかけをしながら、「働き方を変えていくための選択肢」を考えるきっかけを一緒につくっていきましょう。(64~65ページより抜粋)

夫婦にはそれぞれの立場や思惑がありますから、最初から考え方が一致するとは考えられないかもしれません。しかし夫婦だからこそ、そうした歩み寄りを怠るべきではないということです。

先にも触れたとおり、子育て本の大半はお母さんを対象に書かれています。しかし、どうであれ夫も積極的に、それらに目を通してみるべきだと感じました。そうすることで、やがて必ず同じ価値観を共有できるようになるはずなのですから。

○著者プロフィール: 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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